《大好きだった馴染みに彼氏が出來た~俺にも春が來た話》早く行け!!
「おはよう凌平」
「おはよう真理」
三年になり、俺は真理と高校へ一緒に通うようになった。
とは言っても、最寄りの駅から10分程の距離。
僅かだが、それは幸せな時間。
しかし俺の隣に一匹のお邪魔蟲が付いて居た。
「真理ちゃんヤッホー」
「こら翔子、橋本キャプテンと言わんか」
「いいじゃん、學校じゃ言わないんだから」
「けじめは大切だ」
「じゃあ、義姉さん?良いわね」
「アホ!」
「アイタ!」
妹の頭にチョップするが全く効いてない。
さすがは我が妹、素晴らしい石頭だ。
そんな會話をしながら朝の登校。
しかし真理の様子がおかしい、いつもの元気が無い。
「今日は來るかしら?」
「...佐藤(千秋)か」
「うん、今月にってからずっとだから」
やはり真理の原因は千秋の事。
三年も真理は千秋と同じクラスだった。
4月は來ていた様だが、5月の連休が明けてから、ずっと千秋は學校を休んでいた。
「そうみたいだな」
「何か聞いてない?」
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聞いてないかと言われたら...
「特には」
「噓が下手ね」
忽ち真理に見破られてしまう。
俺達に隠し事は厳だからな、妹みたいにポーカーフェイスは苦手なのだ。
「お兄い、正直に言いなよ、私先に行くね」
「うむ」
妹に言われんでも分かっている。
些細な噓も止だからな。
先日も真理に黙って友人達と新しく出來たラーメン屋に行ったのがバレただけで怒られてしまった。
一緒に行きたかったらしい。
可い奴め。
「早く教えなさい」
いかん、説明だ。
翔子、こんな時は逃げるんだな。
「うむ、実は昨日あいつ(千秋)の母親から連絡があってな...」
千秋の親から來た電話。
縁が切れて以來初めてだった。
『ごめんなさい、こんな事今さら凌平君や翔子ちゃんに言えた義理じゃないのは分かってる、でもお願い...』
話の容は深刻だった。
先日行われた中間試験。
最近績を落としていた千秋は巻き返しを計り連日の徹夜で試験にんだ。
結果は逆に績を落とす事になってしまった。
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『こんなんじゃ悟に...なんでよ!!』
帰宅した千秋は泣きびながら部屋に閉じ籠ってしまったそうだ。
「そうだったの」
「それで攜帯を繋がる様に頼まれてな」
験を控えたこの時期に休むのはリスクが高過ぎる、だがあいつから今さら連絡が來るとは思えないし、俺からは何も言えんが。
「凌平」
「なんだ?」
「千秋をブロックしてたの?」
「ああ、向こうから先にしたんだ。
何か問題でも?」
「そうよね、それは分かるけど」
真理の表がさえない。
ブロックは俺のケジメと言うより意地だった。
『もう千秋と話すもんか』と。
「だろ?」
「でも千秋、辛かっただろうなって」
「辛い?」
何が辛いんだ、向かうからブロックしたのに。
「凌平って、優しいからさ」
「いや、今はもう...」
千秋に未練は無い。
そんな事真理は分かっているだろう?
「分かってる、でも千秋は馴染み。
ずっと凌平が護って來た、そうでしょ?」
「そうだ、向こうの気持ちを無視してな」
離れたいのに、つきまとっていた俺。
恥ずかしい、だから何があっても千秋の力になれんのだ。
「...あんまり意地にならないで」
「意地?」
何が意地なんだ?
俺と千秋はもう他人...いや元々そうだ。
進む道は違えた、もうわらない。
なぜ意地になる必要が?
「あ...」
「なんだ?」
真理の困した聲。
それは高校の正門前に立つ1人の男が原因だった。
「...岸井君」
「山口か」
疲れきった山口の表に、みんな驚いている。子生徒達が心配そうだが、山口の雰囲気に近づけない様だ。
「ちょっと話があるんだ、し時間良いかな」
山口が聲を絞り出す。
いつもの奴からとても考えられない姿。
「今から朝練があるからダメだ、放課後のクラブが終わってからなら良いぞ」
「分かった、それで頼む...連絡するから」
「私は?」
真理が聞いた。
山口の憔悴を見ても、余り驚いた様子が無い。
「真理は外してくれ、これは僕と岸井君の問題なんだ」
「そう、分かった」
あっさりと返事をして真理が俺に頷く。
よく分からんが、頷き返した。
そして迎えた放課後。
山口の攜帯から連絡をけ、生徒會室に向かう。
途中、1人の子が泣きながら走り去って行った。
「いいか?」
「ああ、ってくれ...」
山口の聲に扉を開ける。
奴は大きな機に両肘を著いて項垂れていた。
「待たしたな」
「いや大丈夫だ」
部屋に置いてあるソファに座る。
別に斷る必要もあるまい。
「さっきの子は何だ?」
その顔に見覚えがあった。
二年の時に同じクラスだった五十嵐葵だ。
「ああ...彼が噂を流していたんだ...」
「噂?」
「僕と千秋が上手く行ってないと...馬鹿だ...噂を流した張本人に相談していたんだから...」
あの噂か、そりゃ間抜けな話だ。
確か五十嵐は千秋の友人だったと思ったが、は怖いな。
「早速だが、千秋から何か聞いてないか?」
「聞く?何をだ」
山口はいきなり話を始めた。
それだけ追い詰められているのか。
「ずっと千秋は休んでるだろ」
「なぜ俺に?」
「君は千秋の馴染みだろ?」
「そうだが、それがどうした」
「ちょっと冷たくないか?
君と千秋の関係はそんなに軽いだったのか!
真理が出來て、もう千秋は用済み、どうでも良いんだろ!」
言うに事欠いて、この野郎...仕方ない。
その挑発しだけ乗った。
「んな訳無いだろ」
「何?」
「軽い?俺はずっと好きだったんだ。
小さい頃からずっと、ずっと俺はあいつだけを!」
「それじゃどうして?」
「あいつが俺じゃなくて、お前を選んだからだ」
「拗(す)ねてるのか?自分が選ばれなかったんで」
「そうだ、確かに俺は拗ねていた」
「認めるのか?」
煽りに乗らない俺に毒気を抜かれた様だな。
真理のおだ。
「俺じゃ、あんな笑顔に出來なかったし」
「笑顔?」
「お前と一緒に笑っていたあいつの顔、あれは本だった」
「う...」
思い出したか。
しかし意外と平気なのは、真理の笑顔が心からのだと分かってるからだろう。
「あいつの家に行ったのか?」
「何を?」
「聞いてるのは俺だ、行ったのかあいつの家に」
「行ってない...千秋が大丈夫だからと」
「それで行かなかったのか」
「當然だ、迷になる様な真似を慎むのは當たり前だろ」
「...お前な」
呆れるよ、俺なら真理の家に飛んで行く。
例え玄関の扉が閉まっていても、叩き壊す...
しないけど。
「ちゃんとラインは送った!
千秋だって、分かったと返って來たんだ」
「それが間違いだと分からんのか」
「なんだと」
俺を睨む山口はなかなか良い面構えだ。
澄ましたいつもの表より、こっちの方がいい。
「あいつは直ぐに無理をする、自分の事で負擔を掛けたく無いって、素直じゃないんだ」
「そんな事...
僕は千秋の苦手な事をした覚えは無い」
山口め、自信ありげだな。
それなら、
「あいつは外食が苦手だった」
「まさか?」
「人に食べている所を見られるのが嫌だからが理由だったな」
「そんな...千秋はいつも嬉しそうに」
「外出もだ、人目が苦手で、家に籠りがちな奴だった」
「う...噓だ...あんなに楽しそうで」
「そりゃ、相手がお前だったからだろ」
「なんで岸井は僕に教えてくれなかったんだ!」
何をコイツは!
「馬鹿野郎!!んな事言えるか!!
千秋はこんな事が苦手です、でも俺と違って山口なら平気になりました、言うわけ無いだろ!!」
真理がそうなら泣くな。
千秋なら平気だ。
「だが...」
「お前だって好きだったんだろうが!
なんで千秋をちゃんと見ない!?
言わなかった?
違う!お前は自分、自分、自分の事ばっかりで千秋を見ようともしてなかっただけだろうが」
「...今も好きだよ」
「ならそれを伝えろ。
俺もちゃんと伝えているとは言えんがな」
今もたまに怒られる。
スマン真理。
「四角四面なお前の格は分かった。
だが、時には融通を利かせるのも大切だぞ」
「真理から聞いたのか?」
「いいや、だけど分かるんだ。
それと人の彼を呼び捨てにするな」
言ってやったぞ。
「人は簡単に変われない...」
この野郎。
「最後に一度、ちゃんと話をするんだな」
「...分かった、今から行くよ」
「そうしてやってくれ」
山口の肩に手を置いて部屋を出る。
結構な大聲を出したが、まあ良いさ。
聞かれても負けゴリラの遠吠えとでも誤魔化すか。
「終わった?」
「真理、待っててくれたのか」
「當たり前でしょ」
校門前に佇む真理。
夕照らされた真理の表。
なんて綺麗なんだ...心が洗われる。
「真理」
「なに?」
「大好きだ」
「何よ、いきなり...」
大切な事はちゃんと口にする。
當たり前の事だ。
「...私もよ、凌平」
はにかむ真理の姿に幸せを噛み締めた。
エピローグ行きます!
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