土曜日、無くなりかけてるノートの紙の補充のため、地元のお店に來ていた。

このお店はメインはDVDや漫畫、CDのレンタルであり、店の奧の一部が文房エリアになっている。

り口からると、店にはシャートンの曲が流れていた。さらには一番目立つり口前でシャートンがランキング1位を取っていることを宣伝するビデオ広告まで映っている。

本當に凄い人気だ。

既に自分はネットで注文済みだが、CDの発売が決定したためらしい。シャートンの説明が書かれた紙のパンフレットまで置かれていた。

何気なく手に取り、開く。これまでのネット上での活履歴や、再生數順に並んだ曲達が載っていた。

もちろん1番上はバズった最新の曲。全部見てみたけど、やはりあの幻の曲はない。消されている曲は対象ではないということか。

（それをまさか、山田さんが持ってるなんて……）

クラスの子からは嫌われることを覚悟して発言したのに、山田さんから慕われ始めた時はびっくりした。

ただ想定外の申し出だったけれど、月曜日が楽しみだ。山田さんもシャートンのファンみたいだし、これから々話していけるだろう。

期待に口元が緩む。一どんな曲なのだろうか？

「あれ？　潤くん、だよね？」

「え？」

背後からの聲に振り返る。特徴的な素の薄いグレーの髪。縁の茶いお灑落なメガネ。記憶にあるよりも幾分か垢抜けている。

「理ちゃん……」

「よかった。やっぱり潤くんだ」

俺の反応に確信したようで、目の前のの子は薄く笑みを零す。

川理。同じ中學の同級生でしオタク気質なの子。そして、俺が中2の時にフラれた相手だ。

フラれてから疎遠でほとんど話していない。地元だし、會う可能は低くない。だけど正直あまり會いたくはなかった。

「久しぶりだね」

「うん、久しぶり」

上手く笑えているだろうか。笑みは引き攣っていないだろうか。手先がし寒い。

「なにしてるの？」

「シャートンの宣伝が凄かったから見てたんだ」

「シャートン、ね。今流行ってるよね」

「理ちゃんも知ってるんだ？」

「テレビでいっぱい流れてくるからね。いい曲だし、私は好きかな」

ふわりと軽い微笑みが理ちゃんの顔に浮かぶ。ああ、変わってない。

し垢抜けた大人っぽい彼の表が昔の彼と重なる。

「そっちは？」

「私は『戦國大名大戦』の小説版が発売されたからそれを買いにきたの」

「まだ好きなんだね。全然変わってない」

「飽きるわけないよ。大好きなんだから」

一年以上前、彼と話すようになったきっかけが『戦國大名大戦』というゲームだった。

俺はゲーム自が好きでハマっていたが、彼はそのゲームに出てくるキャラクター達のビジュアルが好きでハマっていた。

たまたま彼の鞄につけていたキーホルダーから話が広がり、それが仲良くなるきっかけになった。

「よかった。普通に話してくれて」

「え？」

「ほら、その、あの時以來あんまり話さなくなっちゃったから」

「そう、だね」

視線がわり、彼のぎこちない笑みが脳裏に焼き付く。そうだった。告白した時もこんな表をしていた。

はぁ。なんで俺は忘れていたんだろう。とかもううんざりだと思っていたというのに。

子に近づかないようにしよう、そう學前に決めていたじゃないか。

理ちゃんとの過ごしてきた関係が、今の山田さんと重なる。同じ趣味のきっかけ。もしかしたら仲良くなれるかも、なんて考えていた。

自分自、仲良くなったの子のことが好きになりやすい節がある。その結果が今、目の前の彼との距離だというのに。

あんな経験したくないなら、期待してしまうような関係は築くべきではない。なんてもううんざり。

なくともこれ以上山田さんと近づかないように気をつけないと。

子からは離れて過ごす。そう決めたのだから。

「潤くんは、まだ『戦國大名大戦』にハマってるの？」

「前ほどは熱中してないよ。時々遊ぶくらいだね」

「そうなんだ。流石にゲームは発売して時間経っちゃったもんね」

どこか懐かしむような聲。一瞬だけこっちを見る瞳が遠くを見るようにける。

「し、潤くん変わったね」

「そう？　自分としてはそこまで変わった気はしてないけど」

「ううん。変わったよ。大人っぽくなった。落ち著いているじでかっこいいよ」

「……そう」

大して意味のない言葉。そんなことは分かっている。だけどその言葉に昔、何度振り回されたことか。

やっぱり子と近づくとこういうことがあるから嫌だ。

「また今度話しようよ。今もメッセージアプリはやってるでしょ？」

「うん。変わってないよ」

「分かった。今度メッセージ送るね」

理ちゃんはスマホを出して、なにやら細かく畫面を弄る。細い指先がいているので、何かメモでもしているのだろう。

今更連絡が來たところで、すぐに切って終わりだ。多分社辭令だろうが。

久しぶりに話した理ちゃんとの會話は自分でも驚くほど冷めたものだ。なにか心躍るようなことは一切ない。

さっさと別れて紙を買いたい、ぼんやりそう考えている時だった。

「あ、そういえば潤くんって東高校だったよね？」

「そうだけど」

「じゃあ、山田茜って人知ってる？」

－－－－彼の口から隣の席の山田さんの名前が出てきた。