時は3月上旬まで遡る。

株式會社フォーレス　浜山セールスオフィスは4階建てビルの2階にある。

オフィスとしてかなり小さく、外からではぱっと見て事務所がここにあるかは分からない。

現時點ではしか従業員がいないため防犯的な側面もあり、このような立地條件となっている。

フロアには事務デスクが向かい合わせで並べられており、見た目麗しい3人の達が仕事をしていた。

時刻は19時30分。定時17時30分からすでに2時間過ぎている狀況。

殘業はしないと噂の浜山SOの所員達だがカタカタと各々の持つ端末に文字を打ち込んでいた。

「そーいえば所長、4月の人事ってもう発表あったんですか」

カタカタという言葉だけが響いていたオフィスで明るめな聲が突如混じることになる。

それは手元のタブレットに繋げているBluetooth型キーボードから手を離した社4年目の所員仁科(にしな)一葉(かずは)の発言だった。

仁科は飴のふわふわなミディアムヘアーが印象的で丸くクリクリした瞳をしており、見た目非常に可らしく気な格をしていた。

もし學園に通っていたなら誰よりも爽やかな學園一のアイドルなんて言葉で評されていただろう。

仁科の言葉の先は上司である作(みまさか)凜音《りおん》である。

「ええ、昨日正式な通達があったわ」

浜山セールスオフィスの所長の作は今年で28歳となる。

が小さいとはいえ1つの事業所の長を務めることは並大抵のことではなく、彼の能力の高さを証明していた。

年下の仁科よりも小柄ながらびしっとした紺のレディーススーツにを包む姿はその小ささをじさせない。

作は會社支給のノートPCとは別のオシャレな合いのノートPCに文字をカタカタと打ち込んでいた。

ENTERキーを押して區切りがつき、見上げる。

目のとがったつり目の彼は怒った時は非常に恐ろしいが、普段は笑みの多いらかなである。

髪型もセミロングハーフアップで決めており、艶のある暗髪は彼のしさにとてもよく似合うスタイルとなる。

自分のしさに絶対的な自信を持っていなければなかなかできないことだろう。

「はぁ」

作はっぽくため息をついた。

「そのじだと浜山にあまりよくない人事があったってことですか？」

スマートフォンに充電コネクターを差し込みフリック力をしていたの手が止まる。

姿勢が非常によく、背中まっすぐにばした様は仁科よりも一際長が高く見える。

背中まで長くびた流れるようにしい黒髪がゆらりと揺れる。

彼の名は九寶(くほう)葵(ひなた)。今年社の新人であり、4月で2年目となる。葵はこの中で一番の下の社員だった。

言葉使いも丁寧で言葉のトーンもらかい。見た目さながら深窓の令嬢という雰囲気を持っていた。

「次の4月から新しく所員が増えるわ。……それが男」

「ええーー」

「っ」

だけということもあるので、仁科も葵も不愉快な表を隠そうともしなかった。

「本社の設計・開発課の人が営業に転向だそうよ」

「開発部にの方はいなかったんですか？」

葵の質問に作はあそこは事務員以外は全員男子と答えた。

「そりゃあの製品……あたし達じゃ厳しいですけど……男かぁ」

「仁科はあんまり本社の人間好きじゃないもんね」

「まぁいろいろありましたからね……」

「わたしはすぐにここに配屬されたからそこまでは……」

「葵ちゃんだってあるでしょ。新人教育の時とか……」

仁科の言葉に思い出したように葵もし表が険しくなる。

「思い出しました……。わたしにお酒を飲まそうとしてしつこかったです。休日もってくるし……」

「他にもの子いるのにどうしてこっち來るかなーって思うよね。同期の男子もまぁ悪くはないんですけど……酒飲むと馴れ馴れしくて苦手だったなぁ」

お互いわかり合うように仁科と葵は対面の席で顔を合わせてうんうんと唸る。

「所長だってそういうのありましたよね？」

「私は中途だからね。そんなセクハラみたいな新人研修はけてないわ。似たような経験は片手では足りないほどあるけど」

3人ゆえに各々男に対して苦労していることが多い。

次の4月から本社の男社員がやってくるということで今まで3人でやってきたのに不安の聲が出てしまう。

「わたし……男の人、ちょっと苦手です」

「もう斷れないんですよね？」

「私も言ったわよ。でも……口を出した本部長が今回の大口案件を取りまとめしてくれたから……強く言えないの」

「部長には言うのに？」

「アレ、大したことないもん」

自所屬の部長への暴言に仁科も葵もし笑みがこぼれてくる。

本気では言っておらず、不安がっている2人に対しての作なりの気遣いであった。

「仕方ないし、彼はしばらく私につけるわ。あまりにも言や行が目が余るようなら上に言うから」

「所長、小さいのに大丈夫ですか？」

「小さいゆーな。空手2段ってチラつかせておくわよ」

長が150ししかない作は背の低さを気にしている節がある。

出ている所はしっかり出ているため決して子供のような小柄さはじさせないが、コンプレックスがあるのか営業活以外では厚底ブーツを履くことが多い。。

「更室は元々男別であるし……機とかパーテーションとかは追々……」

「しょ、所長の負擔にならないように頑張ります！」

「葵ちゃん、我慢強いのは知ってるけど……無理しちゃだめだよ。あたしか所長に絶対相談してね」

作は會社支給のノートのＰＣを開いた。

転勤してくる男社員のデータを參照する。

「といってもあたしもそんなに得意なわけじゃないんだけどね……。なるべく話をしないように……って無理だよね」

「わたしも不安です……。お客様なら割り切れるんですけど」

「本部長は真面目な子って言ってたけど」

作はクリックして名前を読み上げた

「花村飛鷹くんか……どんな子なのかしらね」

「っ！」「……！」

2人の口が止まり、作も不自然となる。

機はコ型の配置となっているため作の方からは仁科と葵が止まってしまったことがよく分かる。

作は一瞬不思議に思ったが気にせず、聲を挙げる。

「初日は駅に迎えに行った方がいいわね。セキュリティカードも渡さないとだし、私が」

「所長、それあたしがやります！　あたしにやらせてください」

「えっ!?　あなたなるべく話をしたくないって言ってなかった!?」

突然の手のひら返しに作は困してしまう。

「は、花村くんは同期なんです！　だからあたしがいくのは當然ですよね」

「さっき同期が苦手って言ってなかったっけ？」

「続々辭めていく中で同期はやっぱ大切ですから！」

あれだけ男に不満を持っていた仁科の変わりようである。

敏腕営業の作もタジタジになってしまっていた。

「あ、あの所長」

「どうしたの葵」

「花村さんって……この人ですか？」

「いや、私も顔は見たことが、って!?」

葵が突然取り出して作に見せたそれは毎月事務所に送られてくる社報だった。

そこには開発メンバーの寫真が載っており、赤ペンでぐるって花村飛鷹の所だけ丸がついていたのだ。

「しかもこれ……去年の社報じゃない。なんでこんなものを」

「はっ！　何でもありません」

おずおずと葵は社報をバッグにしまってしまった。

顔を紅くしてこまったままの葵に……。

「花むっちゃんが來るんだ……。久しぶりだなぁ……」

何かを思い出すように淡い笑みを浮かべた仁科。

（花村くん……か。彼に何があるのかしら）

気乗りしなかったこの人事にし興味を持つ作であった。

そして4月1日が來る。

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