《モテないキャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜》19 追放された同期③
「え……」
衝撃的な話だった。
仁科一葉と言えば俺の中のイメージでは総務部の中の一部署、會社のシステムを構築する所にいたのだ。
「配屬された當初はすごく楽しかったんだ。3ヶ月くらいで果を上げて表彰された時が一番だったかな」
「ああ、社報でも大きく取り上げられたな」
この子、同期なんですよって言って部の人達に自慢していたのが懐かしい。
おまけにとびっきりのだから紹介しろってうるさかった。紹介できるほど仲良くなかったけど……。
だからこそ仁科さんは同期の中でトップクラスの出世頭になるって思っていたんだ。
「それを気にいらなかったのがエルダー(教育係)なんだ」
「……」
「きっかけは些細だよ。元々格が合わなかったのと……あの人が社で憧れていた人があたしに告白してきたことが勘にさわったみたい」
「そんなのただの嫉妬じゃないか」
「うん。でも、まわりをまとめるのが上手い人だったからあたしはチームでも孤立しちゃって。報はまわしてくれない、大事な書類は捨てられる。小さな嫌がらせが止まらなかったの。事なかれ主義の所屬長にもそっぽ向かれて、気付けば同はみんな敵対するようなったの。相談できる人が男の人しかいなくなって……相談したらしたで付き合え、関係になれって」
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「八方塞がりだ……無茶苦茶だ」
社でも選りすぐりの人である仁科さんに頼られたら男社員は舞い上がってしまうが……それにしたってひどい。
「ごめん、本社でも気付いてあげられなかった」
「花むっちゃんを責めてるわけじゃないよ! 花むっちゃんは設計・開発グループで頑張ってるのは知ってたし……。それが前提で……大きな事件は次にあったの」
「きっかけ?」
「社業務システム『beet』があるじゃない?」
「ああ、就業管理になってるソフトだね。あれ上手く出來ているよなぁ」
「あれの幹のシステムの7割はあたしが作ったんだけど……果は全部先輩に取られちゃった。」
「え、そうなのか!?」
「始めからそれが目的だったのかも。果のない私の評価は最低。チーム員とコミュニケーション取れないことも指摘されて……部署異が告げられたの」
チームぐるみの嫌がらせにしては大きすぎる。正式に評価査定もしない上司もむごい。
本社では仲良くやってると思っていたけど……見えてなさすぎだったのかもしれない。
「訴えれば覆せたと思うけど……さすがにメンタルボロボロだよ。正直退職も考えたんだよ。だけど……浜山SOに來ないかって話があってね。本社から離れたかったし、ここでダメなら本當に退職って思ってた。でも浜山SOは凄く居心地が良かった。所長は厳しいけど間違ったことは絶対言わないし、出來たら褒めてくれるし……葵ちゃんもいい子で競いがいがある」
「……」
「でも転勤してもまだ嫌がらせは続くんだよね」
「……それがあのメールか」
あのメールの嫌な所は発信されたアドレスが違う所だった。
1人が複數のアドレスを使ってる可能が高いと思ってたけど……もしかしたら組織だって仁科さんを辭めさせようと思っているのかもしれない。
「所長や九寶さんの所にも來たのか?」
「うん……。2人ともびっくりしてた」
「他のSOは」
「近隣の名古屋や橫浜は來ていないって所長が言ってた。さすがに大きいSOだしね」
そこまでする気はないってことか。
あくまでターゲットは仁科さんだけにして、その近い、周囲にだけ影響のあるような嫌がらせだ。
さすがに客先にまで迷がかかることはしないと思うが……。
「所長は部長に報告してると思うけど、多分そこで止められてると思う」
「部長も事なかれっぽいしね。さすがに近隣のSOまで広がったらくとは思うけど」
今の段階だと微妙なのかもしれない。上の方針は見えづらい所も多いし。
それに……。
「実際所長も九寶さんも気にしてなかったでしょ」
「うん、所長はこんなバカなメールに気にしてる暇はないって笑ってたし。葵ちゃんも知らない人のメールより知っているあたしを信用するって言ってくれた」
ああ、そうだろうな。俺が來た時から3人はすごくチームとして出來上がっていた。
あんな適當なメールごときで潰れてしまうな関係なはずがない。
「でもやっぱきつかったなぁ」
「え?」
「花むっちゃんに知られたのは思ったよりダメージをけたよ。まだまだ弱いなあたし」
「異だもんな。そこは仕方ないよ」
「そういうわけじゃないんだけど……。でも、……ああ、やっぱ悔しいなぁ。まだあそこに振り回されている」
仁科さんは箸を持ちながらもうーうー頭を振り回して唸っている。
やっぱり思う所は一杯あるんだろうな……。
元々仁科さんは強気なの子だ。気なわけじゃない。だからこそ思う所があるんだろうな……。
「古巣に一泡吹かせたい、そういうわけだね。それが小説にも表れている」
だから仁科さんは追放ざまぁを書いている。
「っ!? そうだよね。そんな気持ちがあるから追放ざまぁを書いちゃうんだよね」
転勤當初の仁科さんは本當に伏せていたのだと思う。
だけどこの1年……営業業務として活し、今年営業としてき始めた彼は新たなステップへと進み始めている。
趣味に勤しんでいるからこそ……復調してきているのだろう。
「だったら古巣に一泡吹かせてみよう」
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