「はい、1Ｑの振り返り終了！　2Ｑも頑張るわよ！」

「おつかれさまでした～」

所長の言葉に所員3人は聲を合わせた。

7月上旬のある日、浜山ＳＯに所屬する4人は4月～6月に位置する1Ｑ(クオータ)の振り返りミーティングを行っていた。

フォーレスは3月締めである。4月から俺が加わったため所員1人あたりの売り上げは落ちてしまったが、予算進捗にいたっては前年比を超えているためまずまずといった所だ。

全社統一でこの時期に振り返りと2Qの目標を発表していくのである。

「來週末はフォレコンですね」

「うん、葵ちゃん、予約は大丈夫？」

「ばっちりです！　任せてください」

そうか……そういえば來週末だったな。

その時期だってことは頭にってたけどもうそんなに近づいていたいたんだ。

フォーレスコミュニティ、通稱フォレコン。福利厚生を運営する部署であり、いろいろ取り組みはしているのだが一番の目玉は7月上旬の土日に行う創立行事だろう。

事務所のみんなで決まった所へ行き、まとめた領収書をもらえば決まった上限額までは補助が出る仕組みとなっている。

そのため全國の営業所でこの日にはなにかしらレクリエーションを行うのだ。會社行事ゆえに出勤日なので強制參加となっている。

「てっきり名古屋や橫浜と合同でやると思ってましたけど、違うんですね」

浜山ＳＯは地方ゆえに人數がない。

人數の多い、他の営業所と合同でやるのがセオリーとなる。

「お斷りよ。せっかくのレクリエーションが臺無しになるわ」

所長がはぁっとため息をつく。

「名古屋に橫浜。……京都までおいが來たんだけどね。下心見え見えのとこに仁科や葵を置いていけないでしょ」

「西日本からもいが來るんですね」

なるほどね。レクリエーションということでハメを外す社員も多い。

特にフォーレス社員の中でトップ5に絶対る3人がいるここは何としてでも呼びたい。

「花村くん、行きたかったらそっち行ってもいいわよ」

インドア派で書籍化作業をしないといけない俺としては會社の行事に參加するのは苦痛に近い。

特に近隣とはいえ浜山から名古屋、橫浜は遠いので絶対に行きたくない。東京なら作家仲間に會えるから考えたけど。

「名古屋も橫浜も知り合いはいないので……。それより今年はどうするんですか？」

「うん、去年と同じとこに行こうと思ってるんだ～」

「去年……どこ行ったの？」

「浜山シーサイドビーチですよ」

九寶さんが教えてくれた。

浜山シーサイドビーチ。2年前に出來た浜山市の南の海沿いに存在するレジャー施設だ。

太平洋の大海原に作られた大きなビーチに、大規模な食事街に去年で日本一に輝いたシーサイドホテルは景観もサービスも最高だと聞く。

俺が東京行っている時に出來たから行ったことないんだよな。

景観良き、飯が味し、観客も多い所だ。

そこだったら俺も行きたいな。幸い會社行事があるって分かっていたから副業はお休みにしてたし、いっぱい観できる。

「あたし達ね、去年と同じで創作合宿を行おうと思ってるの。こういう機會でもないと3人集まってがっつり出來ないしね」

「じゃあ、俺もその合宿參加させてください。それに俺が車を出しますよ。4人1臺で行けば楽ですよね」

「へ？」

何気なく言った言葉だったがみんな目をぱちくりとさせていた。

「ってことはえ～っと、その……」

し恥ずかしそうに九寶さんは狼狽える。

みんなの創作は理解してるし、問題ないはず。

飽きたら観をすればいい。1人で外へ出るのは慣れているさ。

「そう？　ま、花村くんなら大丈夫でしょ。意見もしいと思ってたし」

「は、恥ずかしいけど……そうだよね、花むっちゃんも一緒かぁ……」

「し、信頼してますし」

なんだ……この違和。

俺は何か大きな見落としをしているんじゃないかと思った。

でも男だし、車出しするのはおかしくないはず。なんだいったい。

まぁいい。7月最初の土日はみんなで創作合宿だ。

「じゃあみんなちゃんと水著は買ってきなさいよ」

え？

◇◇◇

7月の土曜日、朝10時。

朝一で洗車に行き、綺麗に汚れを拭き取って、外面は艶だしワックスで輝かせる。後部座席も綺麗にゴミを取った。消臭スプレーも當然かかさない。

3人が俺の車に乗るんだ。シートはちゃんと綺麗にしておかねば……。

男らしく足要員になったわけだが、思った以上に用意が面倒くさい。

この創立の行事の幹事をしてくれた仁科さんや九寶さんに比べたら車を出すことなんて大したことないんだけど、綺麗なを乗せるとなるとさすがに適當な対応はできない。

「おっと時間だ。行くか」

いつもはアニソンぶっぱだったが、好度を気にしてロクに聞きもしないロックミュージックを車で流す。

何がいいか分からないけど、年頃の男っぽい雰囲気が車に広がる。

しかしまぁ……、7月のシーサイドビーチ。普通に泳ぐのは當たり前なのだが、最後の最後まで泳ぐって発想がまったくなかった。

いを斷りまくっているの子達が俺に水著姿を見せてくれるなんて思ってもみなかったのだ。

べ、別に水著ぐらいで揺する俺じゃない。

どれだけラブコメで水著シーンを書いてきたと思っている。

小説だって打ち切られる前に挿絵や口絵を見たいと思って水著シーン序盤に出しまくってたら読者から何回海行くんですかこいつらってクレームが來たくらいだ。

「ふっ」

気取るのはやめよう、正直楽しみです。ありがとうって土下座したいくらいです。

まだ陣會ってすらいないのにこの妄想はキモすぎるな……。

ボロが出ないように気を引き締めよう。

目的地の方向と距離の関係で仁科さん、所長、九寶さんの順に拾うことになった。

車を走らせて仁科さんの家の前に到著し、さっそく呼び出す。

「ここが仁科さんの住むアパートか」

の1人暮らしだけあって、向けのアパートとなっている。

アパートの口のオートロックは當然、まわりからも視認されづらい構造だ。

路肩で待っていると大きなバックを肩にかけたが現れる。

「あ、花むっちゃん、おはよ～」

憧れの同期の私服姿！　いつもスーツ姿ばっかりだったが目新しい。

らしい笑顔で俺に手を振ってくれている！

あ、もうこれだけで満足だわ。仁科さんはものすごく可かった。

これから所長と葵を迎えにいきます。

ただ迎えにいく前に二人きりの車、ちょっとしたラブコメがあるかもしれません。