《モテないキャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜》66 男、花村ミスをする……

ここから先はあまり覚えてない。

だが、そんなことが許されないのが社會人の世界だ。

クレームがあったことに対して、本當にこちらが悪ければ謝罪訪問と是正対策が必要になってくる。

今のご時世であればなぜこのような事態が発生したか「なぜなぜ分析」方式で解析していくことが多い。

営業所の會議室で俺と営業擔當の仁科さん、作所長の3人での今回の件のあらましを共有する。

「自分が消してしまったあの設定データは正しかったんですね」

「うん。あれは15號館で使われている特殊なサンプルに適応させるために組んだ設定なんだよ。もちろん開発・設計に依頼して作ってもらっているって聞いている」

仁科さんは淡々と事実を述べる。

それを俺は知らずに勝手な判斷で設定データを書き換えてしまった。

自分が元開発・設計チームだったから、知識があると思い込んでやってしまったのだ。

「花村くんは一度仁科に連絡すべきだったわね。その奇妙な設定が正しいのかどうか、報告と相談が必要だったと思うわ」

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「その通りです……」

どうして俺はあの時仁科さんに確認しなかったのだろう。

仁科さんに確認してその設定の詳細を知り、設計・開発チームに裏取りを取っておけば完璧だった。

メインを書き換えてもサブでそのデータが殘っていればすぐに復舊できたのだ。

「問題はこれからね。謝罪訪問のアポは取れてるから私と仁科で行ってくるわ」

「じ、自分も行かなくていいんでしょうか」

「三好さんの上の人が結構面倒くさい人でね、あたしと所長だけの方がいいと思う」

さ、最悪だ。

自分のミスのために忙しい仁科さんや所長の貴重な時間を使わせてしまった。

今回の件で殘業をしない方針なのに2人の殘業を増やしてしまっている。

「問題はサブの方まで消しちゃってるから復舊が困難なことよね……。一から作り直すのは簡単なの?」

「正直大変です……。一度裝置を本社に持ち帰って試験サンプルから設定データの書き出しが必要なんです」

その大変さは俺が一番よく知っている。

だからこそ今の現狀が割と絶的だったりする。

「仁科さん……本當に申し訳ない」

「やってしまったことは仕方ないよ。ただ……Y社に提案する予定だった簡易メンテナンス計畫が推し辛くなったから、し方針を変えなきゃね」

「うん……」

この計畫のためにこの數ヶ月いろいろやってきたんだ。

その中心人の俺がこんなポカミスをやってしまっては顧客に推奨もできない……、最悪だ。

◇◇◇

所長と仁科さんが謝罪訪問に行き、お客様と話をしてきた。

やはりデータが使いにならないことと今回のトラブルの顛末書を出せという話になったらしい。

4月からここまで上手くいっていたのに……、2人の頑張りに泥を塗る形となってしまった。

今までの結果データから設定データを復元しようとしているが上手くいかない。

設計が所有しているデータフォルダにそのデータは殘っていなかった。

くっそ、突貫でデータ作って、組み込んでそのまま終わらせているんだろうな。相変わらず杜撰な対応だ。……そこで育った俺だから杜撰なことをしてしまうんだろうな。

殘業して顛末書は完したが、最終どういう方向に持って行くかが決まらない。

所長と仁科さんが殘業時間を使って、部長達と話をしている。

これまでもこういった事例はなくはないが、やはり再度裝置を本社に持ち帰り、無償で設定データを作って組み込む。

そういった対応をするしかない。

「落ち込むなぁ」

殘業時間にカタカタとパソコンを打ってどうするかを考える。

向けの是正報告の資料も作らないとな……。

「はぁ……」

「ため息をついたら幸せは逃げちゃいますよ」

向かいに座っている九寶さんに注意されてしまった。

「ごめん……」

「花村さん、落ち込んでますね」

「そりゃね……。やってはいけないミスをしちゃったからね」

「ふふ、花村さんでも失敗することがあるんですね」

「そりゃそうだよ。超有能だったらとっくに出世してるからね」

そう、副部長に昇格した同期の笠松くんならこんなミスはしなかったんだろうなと思う。

ミスは誰にだってある。だけどやってはいけないミスをどれだけなくできるがポイントじゃないかって思う。

「って……九寶さんはどうしたの? もう就業時間は終わりでしょ」

今は18時を大きく過ぎている。

いつもの九寶さんならスマホをポチポチやってる所だが、仕事用のパソコンを使っていた。

「えっと、そういう意味ではお仕事ですね」

「……何をやって」

「テスモのデータ取りって社業務システム『beet』の編集機能を利用してるんですよね?」

「うん、そうだね。データの保存とかそういったこともね。ただ今回の裝置は『beet』ができる前に設定データを作ってるから殘ってないんだよ」

「だったらわたしは社前だったので見たことはないんですが『beet』の前システムでやってたのは間違いなんですよね」

「ああ、総務の該當チームが『beet』を作り上げるまではそうだったと思う」

「だったら上手くいけば設定データをサルベージできるかも。『beet』は前システムを一部使っているので」

「ほ、ほんとに!?」

俺は九寶さんの側へ寄った。

「確証はないですし、一件一件調べないといけないので……時間がかかりますが」

もうすでに良い時間だ。

九寶さんにそれをやらせるわけにはいかない。

「いいよ、後は俺がやる。九寶さんは帰ってくれて構わない」

「……花村さんは『beet』を上手く使えるんですか?」

「うっ……」

業務システム『beet』は結構複雑である。

浜山では仁科さんと九寶さんが詳しく、実は所長もそこまで使いこなせてない。

メインの部分は誰でも使えるが、奧深くは結構ブラックボックスみたいになっており、実はよく分かってない所が多い。

「花村さん」

九寶さんは笑った。

「テスモの設定データの組み方や整備の仕方、サンプルに応じたセンサーの仕様でどういったものがあるか教えてください」

「はい?」

「わたしはそれを分かりません。聞いてもなかなか覚えられません」

「あ……ああ」

「でも『beet』の使い方は分かります。花村さんとわたし、得意分野は違います。この前に裝置のことで花村さんが助けてくれた禮をさせてください」

九寶さんはにこりと笑った。

そのしい笑みにが熱くなってしまう。

俺は彼の気遣いがとても嬉しかった。

ええ娘やぁ。

各々みんな得意なことは違うと思うのです。

男花村シリーズ、最後のお話「67 男、花村と支え合う仲間達」をお楽しみください

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