達の泊まった旅館は風呂場がいくつか存在する。

宿泊客や風呂のみの利用客のための大規模な溫泉場と家族や親しい人達が使う小規模の浴場が備えられていた。

今回、達は旅館の招待券に付隨していた特典による家族風呂使用券を使用し、５人で楽しく溫泉を楽しんでいた。

「しかし……本當に花村さん逃げましたねぇ」

達の雑談の最中、淺川葵は思い出したように語る。

この場は個室ということもあり、男共用のお風呂となっている。

唯一の男である花村飛鷹は速攻逃げ出した。

「でも……一緒にりますって言われても……正直困りますし」

姉である淺川茜はし顔を赤らめて呟いた。

「あら、私と葵はもう慣れたから……どんとこいだけど」

「え？　九寶さんのお仕事ってそういったのもやってるんですかぁ？」

「お背中流しますよって一回風呂に突したことがあったんですけど、逃げられましたね。２回目以降は鍵をつけられちゃいました」

「葵ちゃん……やりすぎだよ」

仁科の呆れ聲に葵はてへっとあざとっぽく笑う。

仁科と作にとってはこの葵は當たり前だが、直の面識がない葵と茜はこの姿を意外にじていた。

「これがの力なのですねぇ。お姉ちゃんも頑張らないと」

「む、無理に決まってるじゃない！」

「しっかし飛鷹も奧手よねぇ。５人が側にいるっていうのに……もうし食でもいいと思うだけど」

「食じゃないからこそ……ぐいぐいといけるんですけどね。食だったらわたしも所長も茜さんもとっくに処を散らしてますよ」

「確かに」

作はその通りと頷く。

「え？　え？」

「お姉ちゃん、ホテルに連れ込んだでしょ」

「あ……」

葵の指摘に同じベッドで寢たことを思い出し、顔を隠すように恥ずかしがる。

「それを言うなら仁科もよね。私達の中で一番最初にいたのは仁科だし」

「あぅ」

一歩下がった所にいたと思われていた仁科はその作の話で思わず仰け反る。

慌てて立ち上がった。

「そ、その話は……もうかなり前の話ですし！」

「まぁいいけど……。それより」

作はじっと仁科の一點を見つめる。

「あなたまた大きくなったんじゃない？　誰かにまれた？」

「大きくなってません！　上司がセクハラするー！」

「いいですねぇ。私なんて姉に奪われましたからねぇ……」

葵が目を細めて、茜のをじろっと見つめる。

妹の奇行に茜は思わずを隠した。

「奪ってないわよ！」

「雙子なのにカップ數が違いすぎる。大きい方と小さい方と言われ……どれだけ煮え湯を飲まされたか……」

葵はわざとらしく泣き真似をする。

「大きさで言うなら……わたしもそうですね。仁科さんや所長より小さいですし」

「……。九寶さんはＥカップとお聞きしましたが」

「は、はい」

「Ｅカップは巨の部類です！　小さいなんて言葉を使ってはいけません！」

「す、すみません」

「罰としてみなさん……私にませてください」

「バカなこと言ってないの。私からすればあなたのＣカップぐらいの方がいいわよ。肩が凝って仕方ないし」

茜はぐっと肩が凝っているアピールをする。

５人の中で最も長であり、仁科につぐの大きさを持つその姿はまさしく理想のに相応しい。

「肩こりますよね～。あたしももうちょっと小さい方が良かったです。服とかも結構困るんですよ。男を扇するとかよく言われますし」

「あたしからすれば所長や葵ちゃんの細さの方が羨ましい」

「そう？　運すればいいのよ。あと食事制限もね」

作は休日はしっかり運をしており、食事もバランスよく取っている。

努力することが好きな彼だからこそできる方法だろう。

仁科ははぁっとため息をついた。

「わたしは……」

葵はそこで詰まる。

「言っていいと思いますよ。わたしは何もしてませんが細いままですって」

「許すまじ！」

「だっておつかないんですもん。それにいいことばっかじゃないですよ」

葵は続ける。

「旦那様ってわたしの脇腹ばっかりむんです。わたしがくすぐったいのダメなの知った上でモミモミしてきますからね」

「葵の反応かわいいからね～。私も飛鷹の気持ちが分かるわ」

「もう、本當に苦しいんですんにゃっ!?」

「あ、ほんとですねぇ」

いつのまにか後ろにまわった葵が葵の脇腹をぐにっとんだ。

この中で一番年下ゆえにからかわれてしまう。

「そんな可らしく反応したら……そりゃいじめられますよ。楽しいですもん」

「やぁん、ちょっ……にゃっ！」

「こら葵、やめなさい」

「はーい」

「ううう……」

「いや、本當にすべすべので……らかかったですね。一萬円払えば九寶さんを好きにできるって魅力的ですね」

「もうアレは旦那様専用価格ですから！」

「……ちょっと羨ましいかも」

「あ、茜さん？」

ぼそっと呟いた茜の言葉を仁科は聞いてしまう。

だが……それ以上聞くことはできなかった。

「それで」

作はぴしゃりと話題を変えるような口調で喋る。

「仁科は飛鷹のことどう思ってるの？」

「どうって……」

「何もしないなら私も葵もごり押しするだけだし。飛鷹が我慢できなくなったら……決まりね」

「……」

「仁科さんは花村さんのことを好きだったんじゃないんですか？」

葵の直球の言葉に仁科は靜まる。

「わかんないの……。本當に好きなのかどうかも分からない。だってあたしは所長や葵ちゃんみたいに積極的にいけないもん……」

仁科はぼそりとその心を吐く。

「男の子はきっと好意いっぱいの方がいいんだと思う。でもあたしはそんな勇気が出ないもん」

「ま、気持ちは分かるわ。私も……そうだったし」

作はそっと仁科の側に寄って、彼の頭をでる。

その姿はまるで姉のように優しかった。

「自分のペースでいけばいいわ。でも……後悔だけはしないようにしなさい」

花村飛鷹が本當は誰が好きかを知っているのは作と葵だけである。

葵はそれを他の3人に告げる気はまったくない。

しかし作は……直で告げるつもりはないが、仁科の苦しみを理解しているためか……年上として上司として優しくなってしまう。

「……お姉ちゃんも頑張らないとね」

「……」

「この機會に告白するんでしょ」

「うん」

そんな仁科や作の姿に茜もまた覚悟を決める。

「んじゃー、私はお姉ちゃんの力になろっかな。花村さんにはお伝えしたいこともあるしね」

各々ヒロイン達は次へのステップを歩み始める。

全157話　約36萬文字　8月14日に完結となります。

まぁ完結してもそれで終わりはなく、アフターストーリーを定期更新でやっていくつもりです。

ざらにある本編完結ってやつですね。

書籍化の予定はまったくありませんが、そういう話を頂ける可能はゼロではない評価ポイントですので、長くのんびりと続けていこうと思います。

では明日の12時の更新をお楽しみください。