《モテないキャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜》142 君を絶対に手放さない①
12月となり、浜山SOに転勤して8ヶ月が経過した。
12月が期末となる企業も多く、最も忙しい月の1つと言える。
なるべく殘業をしない方針の浜山SOもこの月は帰りが遅くなることも多い。
日々の業務に休日の副業。
俺の仕事も忙しさを極めて、中々暇を取ることができない。
先日の溫泉旅行の際に決めた覚悟も……時間が経つにつれて萎んでいきそうだった。
茜さんに告白された場に確かに仁科さんはいたと思う。
あの時の夜は結局……あのまま何も出來ずに終わってしまい今に至っている。
「仁科さん」
「なぁに?」
「あ……、Y社の品証のテスモのことなんだけど……」
「うん、話してみて」
仁科さんは平常通りだった。
學生の時なら心の整理もつかず、微妙な雰囲気になったのかもしれないが、俺も仁科さんもいっぱしの社會人。
OFFと仕事時は割切るタイプである。
言いたいことは山ほどあるんだけど……上手く表に出せないなぁ……。
仁科さんはニコニコ顔で話してくれるけど以前のような心から笑っているような雰囲気には見えない。
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どちらかというと表面上だけにじる。
それが分かるのは……俺が彼のことを好きだからだろう。好意を自覚してから本當よく見てしまっている。
「むー」
葵の聲に視線をそちらに向ける。
PCの畫面をじろりと見て唸っていた。
「最近、beetの調子が悪いですね……」
社業務システム『beet』
フォーレスの業務の全てが詰まっていると言われる心臓部のシステムである。
業務メンバーは朝から晩までっているのでこれに不合があると仕事が完全に止まってしまうことも多い。
主力製品テスモのシステム構築もこれで行うから……もはや無くてはならないシステムと言っていいだろう。
beetの調子の悪さはみんなじていることだった。
「いつのまにか悪くなってたよな」
「11月末のアップデートからですね……」
「何があったんだ?」
「シスアド課からは何も報は上がっていないですね」
beetを作り上げたと言われている総務部報システムアドミニストレータ課。
仁科さんが前に所屬していた所でもある。
「……恐らくアップデートして、でも上手くいかなくても元に戻したんだと思います」
「元に戻したのに駄目なのか?」
「元に戻す方法が良くなかったのかもしれませんね」
元開発・設計だからそれは良く分かる。
言葉では簡単なように見えて、意外に失敗しやすいんだよな。
元の設定データに欠損とかあったりすると元に戻しているはずなのに上手くいかないことがある。
テスモでも本當によくある事例だ。
「beetを仁科さんが作り上げたという噂話が本當であれば……こうなるのは當然ですよね」
そう……あくまで噂話である。
俺と葵はそれが真実だと知っているが社では噂でしかない。
仁科さんはどう思っているのか……。
いや、それどころじゃないか。
「仁科、S社で次やるミーティングのレジュメできてる?」
「まだでーす! 結構いっぱいいっぱいですよ!」
S社の案件をどんどんやるようになり、仁科さんはオーバペース気味だ。
殘業も増え、慌ただしくしている。
「所長~。これ以上はきついです!」
「大丈夫よ。あなたが限界+1%くらいになるように仕事振ってるから安心なさい」
「うわ~~ん」
所長の能力ならマジでそれが出來そうなんだからマネジメント力すげーよな。
當たり前の話だが仕事量が多すぎてパンクしてしまうと能率が下がってしまう。
なので能率が下がらないギリギリの所を狙って、長分ちょっと増してるのがすごい。
これを後に俺もやられるんだろうな……。仁科が育ったら次はあなたよって言われたし……怖い。
「失敗しても私が何とかしてあげるから」
「失敗したい人間なんていないので……やりきってやりますよ!」
そして仁科さんは負けん気が強い。
S社案件をやり始めた時は會社間の違いで戸うことも多かったようだが、どんどん長して、意的に力をばしている。
そんな姿を見たら俺も葵も頑張らねばと思う気持ちになってくる。
「仁科さん頑張ってますね」
「ああ、そうだな」
「惚れ直しました? でも今の仁科さんは仕事一直線で聲をかけづらいですよね」
「……そうだな」
「手が出ないのであれば手が出せる所で済ますのもありですよ~」
「葵はブレないねぇ……」
順風満帆に見えた浜山SOの日常。
プライベートはいろいろあったけど、これからもずっとこのままでいられる。
そう思っていた。
それはそんな12月のある日のこと。
「なんですって!?」
突然の所長のびに俺達はみんな視線を向ける。
所長は立ち上がり、會社攜帯を持ち出し、プリプリ怒りながら外へ出て行った。
それまでパソコンの畫面を見ていたから……何か嫌なメールでも屆いたのだろうか。
當たり前の話だが所長のパソコンを見るわけにはいかない。
20分という長い時間を経て、所長は帰ってきた。
納得いかないという顔にも見える。
それから數日経っても所長はなかなか落ち著かない。
顧客以外のいろんな所に電話をしているようだった。
「……。ねぇ花村くん。ちょっと來てもらえる?」
「は、はい」
名前を呼ばれて、所長と一緒にミーティング室に行くことになる。
仁科さんや葵は呼ばれず、俺だけが呼び出される。
所長の顔立ちは若干戸っているようにも見える。
「ふぅ……」
「何があったんですか?」
「花村くん、よく聞いてちょうだい」
すでに定時は過ぎており、今ままでなら、ねぇ飛鷹ぁって貓で聲で迫ってくるものだが……今日の所長はそんな雰囲気をじさせない。
つまりそれほどのことなんだろう。
「――――」
「え? あの……もう一回言ってもらえませんか」
所長の口がもう一度開く。
「仁科に異命令が出たわ。それも最悪なことにあの子がここに來るまで所屬していた古巣の報シスアド課に戻ってこいってね」
ラストエピソードの始まりです。
明日は7時20時の2話投稿します。
話がきますよ! あくまでお仕事フィクションのお話としてお楽しみ下さい。
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