《モテないキャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜》148 君を絶対に手放さない⑦

12月中旬の月曜日、俺は事務所で仁科さんが來るのを待つ。

念のために朝、迎えにいくべきかと思ったが……彼を信じるべきと思い、メッセージだけ送って事務所で待つことにした。

しかし、やりすぎた……。

いくら好きな子で一緒に仕事したいと思ったからってマンションに押しかけて、近所迷考えずんだのは良くなかった。

帰ってからあまりの恥ずかしさに発狂しそうになってしまった。

あれは……ストーカーと間違えられてもおかしくないよなぁ。

何て事をしてしまったんだ、俺は……。

だけど俺が何とかするって言ったんだ。

今まで培った縁を使って何とかしたい。

時間が過ぎ、葵や所長が事務所にやってくる。

そして……仁科さんが來た。

「お……おはようございます」

仁科さんは言いづらそうに恐る恐る喋る。先週、本社に行きますって言っていたからな。

本社にいるはずの子がここにいるなんて……って話になったらまずい、ここは俺がフォローしよう。

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「所長、葵……実は」

「ちゃんとこっちに來たわね。絶対に本社なんて行かなくていいわよ!」

「そうです! 仁科さんは大事な浜山のメンバーなんですから」

「みんなありがとう……」

フォローする必要はなんてなかった。

「花むっちゃんが來てくれた後、所長も葵ちゃんも電話をくれたんだ。行かなくていいって……」

「そ、そうだったのか」

仁科さんが狀況を教えてくれる。そうか、みんなやっぱり俺と同じ気持ちだったんだな。

「仁科から聞いたわよ、まさかその日の晩に家までいくなんてね」

「花村さんの熱ぶりもそこまでいくんですね」

くそ、俺の好意は2人にバレているから言われたい放題だな。

仁科さんはみんなから好かれたことに照れつつも申し訳なそうな顔になる。

「でも……beetがこのままじゃ仕事にならないしどうしましょう。先週のようなことがあったら倒れてしまいますよ」

「そうね」

「所長」

俺は3人に聞こえるように大きな聲を出し、承認権限を持つ所長へ言葉をかける。

「俺、この連休で考えたことがあります。下手をすれば懲罰ものになるかもしれません」

「言ってみなさい」

◇◇◇

「なるほどね」

そこでしっかり聞いてくれるのはありがたい所だ。

俺はみんなに伝わるようにやろうとしていることを話した。

「そんなわけで2日ほど有給を頂きたいと思います。やばい時に申し訳ありませんが……」

「あなたね……。よくそんな手を考えるわね」

「すいません。でも一矢報いないと……やるからには本気でやらないとって思います」

「花村さん」

「花むっちゃん……」

仁科さんも葵も心配そうに俺を見る。

その手が功するかどうかは俺の手腕次第だ……。1つでも斷られたら失敗の確率が激増する。

「いいわ。そのリスクも含めて私が責任を取ってあげる」

「所長……すみません」

「私の名前を使っていいからやるだけやりなさい。あなたの本気を見せてもらうわ」

「はい!」

所長は応じてくれた。

仁科さんも葵もこの手に関わってくれる。

絶対に失敗できないな……。

「なら、その手を使う前提の工作を始めましょうか」

「工作ですか?」

葵の問いに所長は事務所のを取った。

時刻はいつのまにか8時30分の始業を超えている。

「おはようございます。浜山SOの作です。メールを送らせてもらったbeetシステムの不合の件、仁科の手を借りないと業務を回せない狀態です。復舊次第すぐに仁科を私の責任でそちらに送りつけますので何卒復舊を急いでもらえるようにお願いします。えぇ、宜しくお願いします」

そう言って所長はを置いた。

あまり良い話ではなかったため張が走る。

所長が振り返る。

「もちろん行く必要はないわ。これはあくまで……beetを復舊させるための方便だから」

その言葉に全員が安堵した。俺もちょっとびっくりしたよ。

所長が方向転換したらもう勝ち目が無くなるからな。

「これで一時的にbeetが復舊すると思うわ」

奴らはわざとbeetのシステムを止めたんだ。復舊することはわけないはず。本當にシステムダウンしたわけではないのだから。

「今回、仁科を戻す條件をつけたからね。でも仁科が來ないって分かるとすぐにbeetを使えないようにしてくると思う」

結局待ちけるのはそれだ。すぐに使えなくなってしまうんじゃ……。

そこで葵がき出し、椅子に座ってパソコンを作する。

「つまり使えないこと前提、オフラインでも仕事ができるように準備すればいいってことですね。先週は急だったのでどうにもならなかったですけど、beetが使えないって分かってるならやりようはあります」

「オフラインでもできるのか?」

それに反応し、頷いたのは仁科さんだ。

「うん、もちろん機能は100%全部は使えないけどね。オフラインでやった作業を別の営業所でアップロードすればいけると思う」

俺はよく分からないけど、そのあたりは他の三人の方が詳しい。

できるって言うならできるだろう。

葵……私が後で名古屋の所長に話をつけるから悪いけど」

「ふぅ……分かりました。いったん年末までわたしが名古屋の方に行ってそこで仕事します」

葵ちゃん……ごめんなさい」

「花村さんの手が上手くいくならオールオッケーですし、我慢しますよ」

そういうことか。

名古屋の営業所は普段通りbeetシステムがいている。

まぁ、書類の承認とか……どうしても紙ベースじゃないといけないものはある程度遅れてしまうがオンライン系を別の事務所で仕事すれば可能な限りのロスを防げるってことか。

「そういうわけでしばらく旦那様のお世話が出來なくなります」

「そうか……。それは寂しいなぁ」

「ふふ、寂しいと思ってくれるなら我慢できます。今日は家事しに行くのでいっぱい一萬円を使いましょうね」

「花むっちゃん……? ふーん、葵ちゃんへのいたずらはまだ続いてるんだね」

「ちょ! ふ、普通の家事代行だから!」

「しょうがないわね。葵がいない間、私が家事してあげようか?」

「遠慮します!」

ったく所長め、隙あらば好意を差し込んでくるな。

仁科さんちの家まで押し掛けた手前で他のの子とイチャイチャしてるなんてマジで男のクズじゃないか!

いや、もう遅いかもしれないけど。

よし……。

「それじゃ皆さん、逆転できることを祈って……全力で戦いましょう!」

「ええ、當然よ」

「分かりました」

「みんな……ありがとう。あたしも……一緒に戦うから!」

そして、beetシステムが復活している間に出來る準備をし、その翌日仁科さんが本社に來てないと分かるとすぐにbeetシステムは使えなくなってしまった。

これを確認した後、俺は最後の手を打つために事務所を出る。

……軽々しくbeetを使えなくしたことをめちゃくちゃ後悔させてやる。

さらに時は過ぎ、再三の呼び出しの連絡もまだ仁科さんの所屬は浜山SOなのでとぶっちする作所長。

beetシステムの停止は年末の終わりまで続くことになる。

事前準備したおかげでお客様にご迷をかけつつも最悪なパターンは避けられて、今年度の業務を全て終えることになった。

年始一回目の出勤である1月4日。開示された組織表に仁科さんの所屬は浜山SOから総務部報シスアド課に変更となった。

本來1月4日は新しい組織の元へ出社するのだが、仁科さんは浜山SOに変わらず出社する。

どこかのタイミングで奴らが痺れを切らすと思っていたが……思ったよりも早かった。

そう、1月5日に報シスアド課の吉名課長が浜山SOに聞き取りに來ることが決まったのだ。

さてと時間はわずかだが……パズルのピースは揃っている。

大勝負の日が始まる。

絶対に負けるわけにはいかない。

勝負の時です。

明日は0時、12時、20時、21時の4話更新します。

一気に進めます。

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