昨日の夜は全く寢れないまま、風呂場での出來事が頭から離れなかった。

下著姿のユキ、彼が恥ずかしがりながらも俺の背中を綺麗に洗い流してくれた事。そしてそんな彼が隣の部屋で眠っている姿を想像すると、心臓の高鳴りは止まらなかった。

助けてくれた恩返し、あなたに盡くすと言ってくれたのは噓ではない事を知った。夕食に使われた食も綺麗に片付けられて、彼はお風呂から上がった後も浴槽を綺麗に洗ってくれた。

朝になってからもそうだ。ユキは俺を起こしにやってくる、朝食だけじゃなく晝食の為にお弁當まで用意してくれた。昨日いだ服も綺麗に洗濯されていて、他の類も丁寧に畳まれていた。キッチンに積んでいたゴミ袋も綺麗さっぱり無くなっている。

俺の世話を焼いてくれるだけじゃなく、自分の支度もしっかり整える姿には心したし、そんな彼と肩を並べて學校へと向かえる事が嬉しかった。

授業で分からない事があれば何だって教えてくれるだろう。晝休みになれば二人で並んで彼の手作り弁當を食べる。そして放課後になれば今のようにまた肩を並べてマンションへと帰るのだ。

俺の隣を歩く制服姿のユキは、朝の日差しよりもずっとずっと眩しく見えた。

「なんか……まだ夢を見続けてるみたいだ。ユキと再會出來た事もそうだけど、一緒に暮らすだなんてさ」

「あたしもそうですよ。晴くんとこうして一緒に居られるなんて夢を見ているようです」

ユキはそう言って嬉しそうに笑ってみせた。

その笑顔を見てが熱くなるのをじる。

「學校でもまた仲良くしてくださいね。勉強で分からない事があれば何でも聞いてください、どの教科でも遠慮なく」

「そうさせてもらうよ。小學生の頃もそうだったけどさ、相変わらず勉強はあんまり得意じゃないから。この高校にれたのも３年間必死に勉強してギリギリだったし」

そうやって話をしながら、俺達は桜が咲き誇る並木道を抜けて校門に辿り著く。

校門の向こうは朝から騒がしい。新生を部活に勧しようと集まる先輩達と、それに興味津々な新生達が集まっている。

俺はその景を見て立ち止まっていた。

新しい高校生活が始まるのは正直言って怖かった。

昨日までは校門の向こう側に足を踏みれるのが不安で仕方がなかった。

クラスメイトとは仲良く出來るのか、勉強は上手くいくのか、んな不安に押し潰されそうになっていた。けれどユキがそんな暗がりに居た俺を明るく照らしてくれる。

校門の前で立ち止まっていた俺に向けてユキは手を差しべて、俺の瞳をじっと見つめながら優しく微笑んだ。

「晴くん、一緒に行きましょう」

彼の言葉が俺の背中を押してくれる。

手を引いて前へと進ませてくれる。

「ああ、行こう」

ユキが傍にいてくれる。不安は消し飛んでいた。

俺はユキと一緒に校門の向こう側へと足を踏みれる。