《包帯の下の君は誰よりも可い 〜いじめられてた包帯を助けたら包帯の下はで、そんな彼からえっちで甘々に迫られる高校生活が始まります〜》第14話、眼鏡の下③

車を降りるといっぱいに吸い込みたくなるような森の香りが広がっていた。

ここは山の中の別荘だ。小鳥遊家が所有する立派な見た目のログハウスで、生い茂る自然に囲まれたのどかな場所にある。暗くなった辺りからは靜かな蟲の音が聞こえてきて、こうして立っているだけで癒やされるというものだ。

庭には大きな照明があって、既に設営されたバーベキューの會場を明るく照らしている。俺達が到著する前に小鳥遊家の使用人が用意してくれていたらしく、円形のテーブルと椅子が並べられ炭火焼き用のグリルが構えてあった。

「雛倉くん、あのさ。ちょっとわたしはユキっちに見せたいものがあるから、先にバーベキューのとこで座って待っててよ! ユキっち行こ行こ!」

「それじゃあ晴くん、ちょっと行ってきますね」

立夏はユキを連れて別荘の中へとっていく。

俺は言われた通りバーベキューの會場で二人が戻ってくるのを待つ事にした。

秋奈は先に行っている、という話だったけど姿が見えない。バーベキューの方は準備も終えているし、別荘の中で俺達が來るのを待っているんだろうか、そんな事を思いながら椅子に座ってゆっくりしていると――。

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別荘の裏口の方から誰かが現れる。

初めて見るだった。艶のある綺麗な髪が夏の風でふわりと揺れる。黒髪のショートボブ、目鼻立ちは整っておりも白くてがある。白を基調にしたワンピースを著ていて、出るところはしっかりと出てスタイル抜群。その姿から清楚さが滲み出て、という言葉が良く似合っていた。

そんな彼は俺に気付くと笑顔を浮かべて近付いてきた。

誰だ……? いや、見覚えはある気がした。けれど名前が出てこない。そもそもこんな目立つ程のを見たら忘れないはずだった。

この覚、以前にもじた事がある。

そうだ――學式の日、ユキに出會ったあの時と同じ覚だ。

は無言のまま俺の隣の席に座った。

どうして俺の隣の席に? という疑問を一瞬抱いたがそれもつかの間。近くで見たの顔立ちが驚く程に可くて俺は思わず見惚れてしまう。

ここに居るという事はきっと立夏の友達だろうとは思う。同じ學校か……それで何処かで彼を見た事があって、それを覚えていたのだろうか?

はじっと俺に見られている事に気付いていた。

き通るような真紅の瞳でこちらをちらりと見た後、頬にほのかな朱が滲んでいく。目の焦點はテーブルに向かっていて、何やら張しているのか肩がし強張っていた。

小さく口を開いて息を吐き、上下に揺れる元に手を當てる。白かった頬はますます赤みを帯びていって、彼は上目遣いで俺を見ながら小さな聲で呟いた。

「ど、どうかな……?」

「え?」

「その……言ったろう?」

「な、何を?」

「驚かないで、しいって……」

「それって、どういう――あ」

聞き覚えのある聲だと思った。

そしてその聲と、俺の良く知るの姿が、今目の前にいるの姿と重なった。

俺の前で頬を赤く染めながら恥ずかしそうに指を絡めて、上目遣いで俺を見つめる彼、分厚い眼鏡の下にあるその素顔は――秋奈のものだった。

「あ、秋奈?」

「あれ……? もしかしてボクが秋奈だって気付いてなかった?」

「メ、メガネはどうしたんだ?」

「その、コンタクトにしてみたんだ」

「髪は……?」

「やるならとことんしようと思ってね。短くしたよ」

「まじかよ……」

目の前の景が信じられなかった。

三編みにしたおさげ、分厚い黒縁メガネの印象が強すぎて、俺は今この瞬間まで彼が俺の良く知る秋奈だという事に気付けなかった。隣の席で何度も教科書を見せてくれて、席替えをした後も前の席で振り向く彼が、目の前にいるだと分からなかった。

「以前にも言ったようにね、ボクも変わりたいって思ったんだ。立夏に協力してもらって、髪型もそうだけどメイクの仕方だって教えてもらった……今著ている服も二人で選んで、キミに見てもらう為に今こうして著ている」

「変わっていく所を見てしいって言ってたけど……そういう事だったのか」

「うん。そして率直な想を聞きたい、どうだろうか? 今のボクは」

秋奈はその紅い瞳でじっと俺を見つめる。

真剣な眼差しだった。その瞳を見た瞬間、心臓が高鳴った。

俺が今、秋奈を見てじている事。髪を短く切り、眼鏡を外して素顔を見せた秋奈は――羽化した鮮やかな蝶のように可憐でしい。それを伝えようと、聲に出そうと口を開いたその時。

別荘の扉が開く。

ユキと立夏が別荘の中から出てきていた。

その姿を見て秋奈は立ち上がる。

「殘念。時間切れのようだ」

「時間切れ……って秋奈?」

「今の質問の答えはいずれ聞く事にする。それまで楽しみに待っているよ」

呼び止めようとするが秋奈はそのままユキと立夏のもとに駆け寄った。

頭を下げてユキに挨拶をする秋奈。

の姿を見てユキも目を丸くして驚いていた。

艶やかな白銀の髪を揺らすユキと爽やかな短い黒髪をした秋奈。二人のが星空の下で並ぶ姿は幻想的で綺羅びやかに見えた。

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