《包帯の下の君は誰よりも可い 〜いじめられてた包帯を助けたら包帯の下はで、そんな彼からえっちで甘々に迫られる高校生活が始まります〜》第5話、バレンタイン⑤
「はーい、並んで並んでー! おっとーそこ割り込み止だよー、ちゃんと後ろに並んでねー!」
晝休みの教室、メガホンを片手に元気な聲が聞こえてくる。
その聲の主は立夏である。
何故俺の教室に別のクラスの生徒である立夏の姿があるのかというと、ユキからチョコレート配りを手伝ってくれないかというお願いを聞いて、晝休みになってから馳せ參じたというわけだ。
教壇に立っている立夏は張り上げた聲で、教室から廊下まで溢れかえった男子生徒達を並ばせる。立夏の隣にはユキがいて、教卓の上に置かれた大きなダンボールの中――俺とユキが夜なべをして用意したバレンタイン限定の特製チョコレートを一人ひとりに手渡す姿があった。
學してから多くの生徒が集まる姿は何度も目にしたが、バレンタイン當日は今までとは比べにならない程に多くの生徒達でごった返していた。學校一のであり文化祭でも大活躍した歌姫からチョコレートをもらえるというのは、それはもう男子達にとって特別なものであるらしく、彼らは渡されたチョコレートを見つめながら激したように目元を潤ませている。
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「見てみろよ! オレのチョコ、ハートマークのがってるぜ! これってつまり……ユキちゃんはオレに気が――」
「んなわけあるかよ。星形の方が期待値高いね、白鳩さんからのお気にりって意味さ」
「ぼくのは花を象ったチョコレート、恐らくこれはバラの花……花言葉は永遠の! つまりこれはぼくへのの証……」
「あほか。ただの花の形を模しただけじゃねえか」
「ラッピングも可いよな~全部手作業だぜ」
「こんなのもらえるなんて夢みたいだ~」
喜んでいる男子生徒達に向けて優しく微笑むユキ。
「良かったらみんなで食べてくださいね」
そんな彼の笑顔を見て男子生徒達は歓喜の聲を上げる。その景を眺めながら用意されたチョコレートの半分は俺が手掛けた事を悟られないようにしなければと、無関係であるよう振る舞う為に窓の外へと視線を移した。
騒がしい教室の中と違って外はとても靜かだ。2月も中旬になって最近は雪も落ち著き、曇天ではあるものの今日はよく晴れていて風も強くないのでとても過ごしやすい気候になっている。
校庭の隅っこにはハート型の箱を持った子の姿があって、その前には男子生徒が一人立っている。それを勢いよく手渡して走り去っていく子とハート型の箱を渡されて呆然と立ち盡くす男子生徒、あれは本命のチョコレートだろうなあと青春の1ページを垣間見たような気がして、ほっこりとした気持ちになっていると――。
「――ねえ、晴」
俺を呼ぶ聲が聞こえてびくりと肩を震わせる。
まさかユキのチョコレート作りに俺が関わっている事がバレたのかと、恐る恐る振り向いてみればそこに居たのは秋奈だった。
「秋奈か……どうした?」
「隨分とキミが黃昏れてる様子だったからね、つい聲をかけてみた」
「別に黃昏れたつもりはないんだけどな。秋奈はチョコレート配り、終わったのか?」
「ボクかい? 義理チョコは用意してないよ、大変だからね」
「そうだったのか。あんなに頼まれてたから秋奈も用意してるのかと、てっきり」
「ユキさんが凄すぎるんだよ、本當に人數分用意しちゃうだなんて。やっぱりああいう所なのかな、人気者になる訣はさ」
「訣とかそういう問題じゃないと思うけどな……ただ真面目過ぎるだけさ」
「ふうん、そういうものか。ところで晴はもらったのかい、チョコレート」
秋奈にそう言われて男子の大行列を眺めながらため息をつく。
「流石にあの行列に加わる気にはなれないかな」
昨日のに俺とユキで山程作ったものなのだ。それをあの大行列に混ざってもらうというのは流石にどうかと思い、こうして大人しく席に座っている。けれど秋奈の質問の意図はそうではなかったようだ。
「ボクが聞きたいのはさ、普通に誰かから手渡されたりしてないかって事なんだけど」
「あ、ああ、そういう事か。いや誰からも手渡されたりしてない」
「朝に靴箱の中にっていたり」
「してない」
「機の中にこっそりと――」
「教科書とノートしかなかったな」
秋奈はその答えに満足そうに微笑んで、彼が一何を喜んでいるのかと俺は首を傾げた。
「なんで嬉しそうな顔をするんだよ」
「ふふ、だってさ、今年はまだ誰からももらってないって事だろう?」
「まあ……そうだな」
痛い所を突いてくれる。バレンタインの日にもらったチョコレートが0というのは、男子にとってはかなり悲しいものなのだ。モテる男子なら今日は子から渡されたチョコレートで鞄を一杯にして、ホクホクとした顔をしながら帰宅するはず。
平凡的な男子にとっては義理だとしてもチョコレートを一つもらえるだけで、2月14日がバレンタインという特別な日に変わるのだ。
しかし、俺がもらったチョコレートはいまだ0。そしてその俺の様子を秋奈は楽しげに見つめていて、その視線が妙にむずくじて落ち著かない。どうして俺がチョコレートをもらえていない事を喜んでいるのか、その理由が分からずに頭を悩ませていると、秋奈は後ろ手に持っていた何かを取り出していた。
「はい。これあげる」
「これあげるって……秋奈?」
それはラッピングされた小さな赤い袋で――そこでようやく理解する。秋奈が差し出したそれは間違いなくチョコレートだった。しかも手作りが満載のラッピングが施されていて、それが市販品ではないのは明らかだった。
「ボクのチョコが今年の晴の初バレンタインだね」
「もしかして喜んでた理由って……」
「そういう事。キミにとっての初めてになれたのが嬉しいのさ。ほらけ取って」
戸いながらもラッピングがされた袋をけ取ると秋奈は悪戯っぽく笑う。
「ちなみに味見はしてないから。ワサビとか辛子がっていたり」
「えっ? まじ?」
「冗談だよ。ちゃーんと味しいから安心して」
「何だ……びっくりしたぞ。當たり外れがあるベタなやつかと……」
「まさか。晴には味しくチョコレートを食べてしいからね、いたずらなんてしないよ。まあ開けるのは帰ってからにしてね。開けたらクラッカーが破裂する仕組みになっていて――」
「――はいはい、それも冗談な」
「ふふ、流石にバレちゃうか」
そう言って楽しそうに笑う秋奈はチョコレートを渡せた事に満足したのか自分の席に座った。その時に気が付いたのだ、今のが秋奈の照れ隠しだって事に。
前の席に座っている秋奈の後ろ姿を眺める。
すらりとびた華奢な背中、ショートボブの綺麗な黒い髪、そしてその髪の隙間から見える彼の耳が朱に染まっていて、彼が俺にチョコレートを手渡そうとした時に張していた事を、それを誤魔化そうとわざとらしい噓をついたのだと、それが分かって思わず頬が緩んでしまう。
「秋奈、ありがとうな」
「ど、どういたしまして、晴」
返事はするけど振り向かない秋奈。
今どんな顔をしているのかを想像しながら、可いハートのラッピングがされた紙袋を大切に鞄へとしまい込んだ。
今回のシナリオで100部目に到達しました!
こうして毎日投稿が出來たのは読んでくださる皆様のおかげです、本當にありがとうございました!これからも包帯の下をよろしくお願いします!
また連絡事項になりますが、現在ステキブックス社が開催している漫畫原作大賞にて『転生魔王が異界の言葉でデレてくる!』という作品で參加しています。たくさんの人から読んで貰えると【読者賞】という形でコミカライズされます、もし宜しければページ下部のリンクから読むことが出來るので読んでもらえたら嬉しいです、読んで貰えるだけで得點になります!
これからもよろしくお願いします!
本當にありがとうございます!
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8 156拾ったのはダンジョンコアでした!?
僕は前世の記憶を持つ子供だった。 僕は前世の記憶が蘇った時には孤児になり住んでいる村の村長さんに育てられていた。 僕はいつも通り村長さんのお手伝いをしていると森の中で水晶を見つけた。 水晶は水晶ではなくてダンジョンコアだったのだ。 ダンジョンコアを拾った僕はダンジョンマスターになった。 これはダンジョンコアを拾ったことでダンジョンマスターになった僕の物語
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