《ニセモノ聖が本に擔ぎ上げられるまでのその過程》11

ジトーっと司祭様を睨んでみるが、あちらは気にした様子もない。

「……ホント、司祭様っていい格してますよね」

「お褒めの言葉ありがとうごさいます」

こんなの詐欺もいいとこだが、今更なんだかんだ言っても、逃げようもないし、こんなところまで來ちゃったんだから仕方がない……。さすがに死なない程度には守ってくれるだろう。

弟妹たちよ。お姉ちゃんは命がけで働いてくるからね……。ちゃんと勉強するんだぞ……。

***

次の日には、別の村に移するので朝早くから出発する準備をあわただしくしていた。

外に出るともう馬車の準備がされていて、騎士団長さんとその仲間たちが準備萬端で待っていた。

「おはようございます!聖様!さ、馬車へどうぞ!」

「おはようございます。騎士団長さん、自ら踏み臺になるのやめてくれませんか?昨日までちゃんと踏み臺ありましたよね?逆に乗りにくいんでやめてください」

「いえいえ!遠慮なく踏み臺にしてください!さあ!」

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相変わらず騎士団長さんが面倒くさい。もう無視して人間踏み臺をジャンプで飛び越えて馬車に乗ろうとしていると、後ろから『聖様』と聲がかかった。振り向くと、昨日説教した年らと、泥仕合をした村人たちが立っていた。

「もう出発するのか?あのさ、昨日卵無駄にすんなって言われたから、殘りはゆで卵にしたんだ。聖様にあげるよ。なんかよくわかんねえけど、卵超好きなんだろ?たくさんあるから食えよ」

「うわ、ゆで卵山盛り!贅沢ぅ!え?いいの?ホントにコレ、全部くれるの?噓じゃない?い、いいよ……私三つくらいで我慢するよ。みんなもホントは食べたいんでしょ?そうでしょ?」

「あ……マジで卵好きなんだな。いいよ、今年は鶏がいっぱい増えたから、卵たくさん採れるんだよ。全部持ってけよ」

「うわぁ……君らちょういい子だったんだね。なんか、ラリアットとかしてごめんね。有難くいただくよ~」

「あの、俺らも悪かったな。なんか聖様っての誤解してたよ。ウチのジジイ、昨日から腰が治ったってすげえ鍬ふるってんの。アンタに治してもらったって。聖様って本だったんだな」

「うちのババアもアンタに蟲歯治してもらったおかげだって言って堅い豆ボリボリ食ってたよ。マジでアンタ聖なんだな。泥団子投げてきやがった時は、コイツ頭おかしいとか思っちまったけど、本當は……泥にまみれることで俺らに歩み寄ろうとしてくれたんだろ?お綺麗な服で高いところから言われても誰も聞きやしねえもんな。ホント、すげえよアンタ」

「へ?ああ、癒しの力っても気休めみたいなもんですよ。まあでも病は気からって言いますしね。良くなったなら結果オーライですね。泥団子は私じゃなくてあなた方が言い出したんでしょ。人のこと頭おかしいとか言わないでください」

「ああ……?うん?ごめん……?」

村の方々はなんか微妙な顔をしていた。

最初の村はなんだかんだいっても皆いい人ばっかりだった。

神信仰の聖様にも親切だったし、無理に信仰を押し付けなければ他の地域でも上手いことスルーしていけるんじゃないの?

馬車の中でもらったゆで卵をむきむきモグモグしていると、超前向きな気分になってきた。

遠ざかっていく最初の村を眺めながら、私はこの先もまあなんとかなるだろ~と楽観的なことを考えていた。

***

は立派な檻……もとい頑丈な造りの馬車なので、が疲れることはないが、相変わらず司祭様がグイグイ質問責めしてくるので神的疲労がすごい。

あまりにも神経を削られて、休憩の時にぐったりしていたら、騎士団長さんが心配そうに聲をかけてきた。

「聖様。ずっと狹い馬車の中では息が詰まるでしょう。気分転換にたまには馬に乗ってみませんか?」

「えっ?いいんですか?乗ります乗ります!ちょっと閉鎖空間に死そうだったんですよー」

「では俺の馬にお乗りください!さ、どうぞ俺の背中を踏み越えて!」

「いやそこは普通に手を貸してくれればいいんじゃ?踏み越えるほうが乗りにくいです」

「いえ……踏み臺が聖様のお手を取るなど烏滸がましいにもほどがあるかと自重しました」

「踏み臺じゃないですよね?騎士団長ですよね?」

無駄なやり取りをしながらも馬に乗せてもらっていると、やや後ろから小さめの馬に乗った魔師の雙子君たちが近づいてきて、騎士団長と私を見て、二人そろって呆れた聲をあげた。

「はあ~?ダレンさぁ、あれだけコイツのこと嫌ってたのに、なにあっさり手のひら返してんの?プライドとかないの?」

「やっぱさあ、コイツ僕たちが知できない洗脳魔法とか隠し持ってるんじゃない?じゃなきゃダレンがオチるわけないと思うんだけど」

「ファリル、ウィル。俺は聖様の本當の姿を理解していなかったんだ。二人も今の聖様とちゃんと話す機會を設けてはどうだ?そうすればきっと…………うわっ!」

話している途中で、雙子がなにか攻撃魔法を仕掛けたらしく、騎士団長さんがとっさにそれをけたが、後ろにはじけ飛んだ。

突然のことに驚いて、彼らの方を振り返って見ると、雙子は肩で荒く息をして、きつい目で私たちを睨んでいた。

「……僕らがァ!コイツにどんな目に遭わされたかダレンだって知ってんだろ?!それ以上言ったらマジで殺すから!」

「ダレンには失したよ。アンタとルカ様だけはまともだと思ってたのに」

すんごい深刻そうなやり取りに加わる勇気もなく私はずっと黙っていたが……。

いや、ちょっと待って。聖様は雙子をどんな目に遭わせたの?親の仇くらいの深刻度だったよ?殺意すごい。

雙子と団長さんはしばらくにらみ合っていたが、雙子が『もういい』と言ってその場を離れた。

騒ぎを聞きつけた司祭様が私たちの元へ來て事を聞くと、私に『お話があるので馬車にお戻りください』言って馬から降ろされてしまった。

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