《ニセモノ聖が本に擔ぎ上げられるまでのその過程》22
火あぶり……いやだなあ……って、ん?
油のった瓶をまじまじと見る。
……それ、普通の食用油じゃない?
え?燃料それだけ?て思ったので、とりあえず聞いてみた。
「……あのさ、それってただの油?えっと、もしかして、それを私にぶっかけてマッチで火をつける気でいる?」
「そうだ。恐ろしいか。苦しんでお前の罪を思い知るがいい。ああ、大聲でんでも構わないぞ。どれだけみっともなく喚いて死んでいったか、聖様は知りたがるだろうからな」
「いやそうじゃなくってさあ……油にマッチの火投げ込んでも燃えないよ?油はある程度熱しないと火がつかないからさあ。そんなことも知らないの?なんか偉そうな人だから、臺所とか立ったことないのかな。にしても燃料それだけでイケると思ってたのは結構アホだけど……」
「え?燃えない?噓だろ?だって油だぞ?おい、誰か知ってるか?」
「噓、燃えるでしょ。はったりだよ」
「えー油で燃えないわけないでしょ。つーかやってみればいいじゃない」
「いいから早くしようよ。ここ羽蟲多くてヤダ」
なんかワイワイ相談し始めたけど、誰も正しい人間の燃やし方を知らんまま來たらしい。
アホなのかな?いやアホしかいなかったから、今こうなってるんだよね。まあ食用油でも芯を作れば火は著くと思うけど……。
相談の結果、とりあえずやってみようぜと決まったらしく、ドボドボと頭から油をかけられた。
うん、オリーブオイル。つーか人燃やそうってのに食用のいい油使ってんじゃないよ。
そして火のついたマッチを投げ込んできたが、案の定油に浸って火が消えた。
彼らは多分、火が油にれた瞬間、ボッ!と燃え上がるのを想像していたらしい。アレ?オッカシイナァみたいな顔をしているけど、さっき私が言ったよね?聞いてなかった?
燃えないと分かった彼らは、慌てて何か燃料になりそうなものを探し始めたが、見つからなかったらしい。まあ船の上だしねえ……。
「……っや、やっぱり、水葬にしよう!それがいい!」
「そうだ!それがいいと思っていた!」
「水責めのほうが苦しいと思うわ!」
「きっとこれも聖様の思し召しだな!」
火あぶりは無理っぽいと諦めたようで、手っ取り早く川に投げ込もうということで意見が一致していた。多分面倒くさくなったんだね。
水に落とされるだけなら潛って遠くに逃げればいいかと思ったけれど、さすがにそこまでアホじゃなかったらしく、『縄で縛ってアンカーをつけて沈めよう』と黒帽子の人が言い出して、油まみれの私を樽から引っ張り出した。
「うわ、ぬるぬるして持ちにくい」
「おい、命乞いとかして泣きべよ。聖様に報告できないだろ」
「もうこれくらいでいいじゃん。早く落とそうよ、手がぬるぬる」
「ああん、髪飾りに油がついたじゃない!」
なんかね、全員不用らしくて、私を縛るまでにものすごく時間がかかっていたから、準備ができた頃にはみんなぐったりしていた。
そして、わあわあ言いながら私を船の縁まで運んで行って、せーの!と言って川に放り投げた。
ドボーーーン!と水しぶきをあげて落ちた私は、すぐに縄をほどくためにをよじらせた。
多分あの様子ならすぐほどけると思って、私は抵抗せずにいたのだ。
私を油まみれにしちゃうもんだから、手がって縄を上手く縛れていなかったんだよね。結び目が甘いし縛られた部分も油でるから、水に落ちてからでも解けると踏んでいた。
「んむむむむ」
案の定、縄は水にった時點ですぐに緩んで、結び目はすぐにほどけた。
縄から抜け出したところで、息が限界だったので急いで水面に顔をあげると、まずいことに船の上にいる彼らに見つかってしまった。
「あっ!沈まないぞ!なんでだ?!」
「縄解けてるじゃない!ちゃんと縛りなさいよ!」
「おい、泳いで逃げるぞ!なんとかしろ!」
「銛持って來い!刺し殺せ!」
あの騎士さんが銛を振りかぶっているのが見えて、私は必死に岸に向かって泳いだ。彼らの手の屆かないところまで逃げないと!
だが、泳いでいる途中で背中に叩きつけられるような衝撃をけた。
「っ……!」
背中に銛が當たってしまった。
おそらく肩甲骨あたりにぶつかったせいで、貫通はしなかったが、鉄の銛が背中にぶつけられた衝撃で、肺の中の空気が一気に押し出されて、痛みと衝撃で私は気を失った。
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