《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》13.一方その頃、勇者ビビアたちは③~
13. ~閑話 一方その頃、勇者ビビアたちは③~
「があああああああああああああああああああああああああああ⁉⁉⁉」
俺は激痛の走る腹部を見下ろす。
骸骨騎士の剣が俺の腹部を貫いていた!
「あ、あがああああああああああああああああああ⁉ いでえ⁉ いでえ⁉ いでえよおおおおお‼」
嗚咽がれる。ヒューヒューといううるさい音がなっていた。それが俺の口かられる息の音だと知ったのはしばらくしてからのことだ。
だが、おかしかった。
「なんでだぁ! 相手は・・・モンスターはただの骸骨騎士なのにいいい⁉」
骸骨騎士はレベル20程度。ランクB程度の冒険者なら倒せるモンスターだ。
「俺のランクはSなのにい! 貫けるはずがない! 俺のを! ダメージなんてけるはずないんだ! ただのレベル20程度のモンスターにぃ‼」
激痛で涙が流れて前が滲んで見えない。
痛みで混し、俺の目の前に骸骨騎士が立ち、今まさに俺の首に剣を振り下ろそうとしている現実すら見えていなかった。
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「危ない!」
と、そこへエルガーが飛び込んでくる。
國の盾と言われるほどの鉄壁を誇る男だ。
(くそ、ノロマめ。もっと早く來い)
俺は心で悪態をつきつつも、ホッとする。
だが、これで大丈夫だ。時間が稼げる。
腹はまだじくじくと痛みを伝えてくるが、冷靜になり始めていた。
恐らくこれは何かの間違いだ。そうだ、誰にだって萬が一がある。勇者である俺でさえも油斷していたのだ。二度とこんな不運は訪れることはない。ただの偶然。そう偶然だ。
そう自分に言い聞かせる。
しかし、
「ぐ、ぐあぁぁあああ・・・・」
押されていた。
「おい・・・」
「ぐ、ぐあああ。う、うぐぐっぐぐぐぐ、がああああああ」
「おいっ・・・」
「ぐぐううぐうぐぐっぐぐぐううううううううううあああああああああああ」
「おいって言ってんだよ!」
俺は腹から大量に流れ出るを抑えながら、喚き散らした。
「何やってやがる! エルガー! 骸骨騎士ごときに押されてるんじゃねえぞ!」
「だ、だが、勇者よ。違うんだ。いつもなら、これくらいの攻撃、難なくけ止められていたのに・・・ぐ、ぐあああああああああああああああ」
鋼の。國の盾。そう言われた男のは骸骨騎士の膂力に押される。通常攻撃に難なく切り裂かれ、そこかしこから出を始める。
明らかに骸骨騎士と戦うにはレベルの足りない冒険者の姿がそこにあった。
(馬鹿な、そんな馬鹿な! 俺たちはアリアケ以外、全員Aランク以上。俺と聖に至ってはSランクの冒険者なんだぞ!)
なのにどうして、骸骨騎士一匹倒すことができないのか。
「このでくの坊が! 頑丈なだけが取り柄のお前みたいなのを何で連れてきてやってると思ってるんだ! 盾役すら満足にこなせねえのかよ!」
「だ、黙れ! お前こそ勇者のくせにいきなりやられてたではないか! 自分のことは棚に上げて、この恥知らずめが! いつからお前はそんなに偉くなった! いつものでかい俺に怯えていた腑抜けのくせに!」
「何だと‼ お前誰に向かって口をきいてるか分かってんのか⁉」
「二人とも邪魔よ、どいて!!」
罵り合う俺たち二人を罵倒しながら、拳闘士デリアが割り込む。
「くらえええええええええええええええええええ!」
彼は魔力でを強化し、またユニークスキル『祝福された拳』による防不可攻撃のスキルを持つ無敵のファイターだ。
彼の拳をまともにけて立っていられる敵はいない。
「え?」
「「は?」」
デリアがポカンとし、俺とエルガーが間抜けな聲を上げた。
「噓、どうして・・・」
「なんだよ、どうなってるんだよ!」「そんなこと知るものか!」
錯狀態になった。なぜなら骸骨騎士はデリアの攻撃をけてなお、そこに立っていたのだ。いや、それどころか、ダメージすらけた様子がない。
そして次の瞬間には、
「うげえええええええええええええええええええええ」
デリアが雄たけびのような悲鳴を上げた。
中を傷だらけにしてその場に倒れる。
骸骨騎士の至近距離からの魔法攻撃が直撃したのだ。だが、それは詠唱も特にない魔力をぶつけただけの単純な魔法だった。
「あの程度の魔法一撃で瀕死だなんて・・・」
俺は目の前で起こっていること全てが信じられずに、ただただ恐怖を覚え始める。
気付けばガタガタと歯が鳴り始め、涙が流れ始めた。
「そ、そうだ、プララ! 魔法で支援しろ!」
俺は天啓とばかりに言った。
何で気づかなかった。プララの魔法支援があれば攻撃力・防力が格段に上昇するはずだ。
今回は不意をつかれたために、魔法によるバックアップが間に合っていないのだ。
「早くしろ! でないと全滅だぞ!」
「・・・るよ」
「プララ! どうした! 早く支援魔法を!」
「もうやってるって言ってんのよ!」
「・・・・・・・・・は?」
もうやっている? 何を?
「攻撃支援魔法も防支援魔法もどっちもありったけ掛けてるってんのよ! でも、なぜかいつもみたいな支援力が出ないのよ!」
「じゃ、じゃあ。今のこの狀態が・・・こんな狀態が・・・俺たちのベストな狀態だってのか?」
俺は愕然とする。
「噓だ、噓だ、噓だ、噓だ」
俺は腹の痛みにをよじり、知らぬ間に涙を流しながらいた。なんでこんなことに・・・。
「俺は選ばれた勇者なんだ。なのに」
倒れ伏した拳闘士、脆い盾役のでくの坊、明かりすらつけられない魔法使い。こんな役立たずどものせいで、俺はこんなところで死んじまうのか・・・。
「なんでこんなことにい!」
俺は斷末魔のようなびをあげる。
と、そこに。
「エリアヒール。『天使の息吹』」
場違いだと思う程冷靜な詠唱が聞こえた。それと同時に腹にあった傷がみるみる治っていく。
「アリ・・・シア・・・」
「ふう」
彼はこんな事態だというのに全くじていないようだった。冷靜に次の瞬間には大聖水を使って骸骨騎士を一時的に無力化した。しばらくはかないはずだ。
まさに大聖とも言うべき貫祿がある。
「なんでこんなことに、とおっしゃいましたが・・・」
と、アリシアは靜かに口を開く。
「そんなことは決まっています。あの人がいないからに決まっているでしょうに」
あの人・・・。俺はギリギリと割れるほど歯ぎしりする。それが誰を差しているのか、俺には痛いほどわかったからだ。
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