《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》17.一方その頃、勇者ビビアたちは⑦~
17. ~閑話 一方その頃、勇者ビビアたちは⑦~
「面白いぞ! 人間! いいや、アリシアとやら! 我が無聊をめるに十分! いいや、この1萬と數百年、この呪いのダンジョンに封印され退屈も極ったが、生きてきてこれほど面白かったことはない!」
「あら、閉じ込められているんですか? それはずいぶんお気の毒な話では?」
「左様。であるから、人間よ。見事我を討ち果たしてみよ!」
「えっ? なんでそうなるんですか?」
「ふ、我はもう生き飽きた。むのは心ゆくまで戦い、そして滅されることのみよ」
遠い目をされます。黃昏というやつですね。うーん、でもでも。
「自殺志願っぽくていやなんですが。それって自殺ほう助のような・・・」
あっ、そうだ。
「では私が勝ちましたら、一つ私の願いでもかなえてもらいましょうか」
「良かろう。腐っても我は十聖のフェンリル。かつて人の英雄と旅をした獣。人との約束はたがえぬ」
「?」
人の英雄と旅? その話もいつかおとぎ話で聞いたことがあるような・・・。
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「では參るぞ!」
「えっ⁉ もう、せっかちですねえ」
そんなわけで、私とフェンリルさんの戦いが始まったのでした。
ちょっと呪いの窟が崩落しそうなほどの戦いでしたが、ダンジョンというのは丈夫なもので、なんとかかんとか事なきを得たのです。
もちろん、私が勝ちました。杖は折れましたが、
「腕力がそれほど強いと言うのは、修行の果なのか?」
「もちろんですよ。アリアケさんもきっと喜んでくれますよね」
「・・・・・・・」
倒れ伏したフェンリル君が沈黙しました。いや、なぜに沈黙? アリアケさん、きっと喜んでくれるはずなのに。強くれなれ、と昔言われたので、強くなりましたので。
「それはともかく、一つ願いを聞いてもらいましょうか」
くっくっく、と邪悪に微笑みながら、倒れたフェンリル君に近づきます。
「良かろう。なんでも申すがよい。我が命と引き換えに永遠の命と若さをもたらす霊薬をするか? それとも我が昔飲み込んだ伝説の剣バルムがしいか? いいや、あらゆる病を治すために我が心臓のを・・・」
「フェンリル君‼ あなたは私の使い魔になりなさい!」
「・・・は?」
フェンリルは驚いた表を見せる。
「我を使い魔に。お主は聖ではなかったのか? テイマーだったのか?」
「いいえ。でも修行しましたから! 大丈夫です、使い魔になって一緒に行きましょう! 1萬年も閉じ込められたら、もう十分でしょう?」
フェンリルは驚いた表になり、その後し嬉しそうなを瞳に宿したあと、ふるふると首を振り、
「い、いいや無駄だ」
シュンとした様子で言いました。
「このダンジョンから我は生きては出れぬ。例えば使い魔になろうともな。例外はない。そういう呪いをけているのだ。使い魔になるのはいい。負けたのだから。しかし、ダンジョンの外には出れないから、役に立つことはできぬ」
心なしか、耳としっぽが垂れております。わんこ君だったのでしょうか。
「じゃあ、一度仮死狀態になって、アイテムボックスにってくださいな」
「・・・・・・・・・・・は?」
「あれ、わたし何か変なこと言いましたか? あっ、安心してください。アリアケさん直伝ですので。あの人って発想がちょっとぶっ飛んでるんですよ。それに私、聖ですので、アリアケさんも太鼓判を押してくれるくらい、蘇生魔が使えるのです。死んで2、3時間以なら蘇生可能です! これだけは、アリアケさんも凄い凄いって言ってくれたんです! 私と彼のアイデアで初めてできる技法だから、自慢なんですよ!」
と嬉しくて言う。
「そもそも蘇生魔を使えるような魔師は、かつての時代もほぼいなかったと記憶しているが・・・」
「あら、そうなんですか? でも私は使えます。それで、まだ何か問題はありますか?」
あっけらかんと聞く。
「え、ああ、うーん、そうだな。いや、もう何でもいいか。調子が狂うわ。この人間。・・・本當に外に出られるのか?」
「アリアケさんが保証してくれましたとも。あの方のことだから、ダンジョンのモンスターを外に出す方法がないか、実験されたか文獻を読んで裏を取ったのでしょうねえ」
「そうか。いや、でられなくともよい。そう、うまく行く道理はないのだから。だが夢は既に見させてもらった」
フェンリルは傍にやってきて、私の目の前でお座りをして頭を垂れるような仕草をした。
「我は十聖の獣フェンリル。そなたと、そしてその師たるアリアケに服従を誓おう。かつての英雄にそうしたのと同様の・・・いや、それ以上の服従を誓う」
そう言ってから、し迷ったすえに、
「あと、フェンリル君と言っているが・・・。訂正しておくが、我はメスじゃ。いちおう人型にもなれる」
「へ? 人型・・・? なんか嫌な予がどっとしたのですが・・・。もしかしなくても、とっても人だったりとかしないでしょうね?」
「では我はし眠る。ふ、ダンジョンの外で會えたならその時は・・・」
「ちょっと聞いてくださいよー!」
そんな言葉を無視して、しい青銀の巨が倒れる。
ズウウウウウンという轟音を立てながら。
「やれやれですねえ」
私はアリアケさんから託されたアイテムボックスに、死亡判定されているフェンリル君・・・もといフェンリルちゃんを収納する。アイテムボックスでも時間は経過するので急がなくてはならない。
「さてさて、では私もお暇させてもらいましょうか」
私はダンジョンから撤退を始める。
だが、もう勇者パーティーに戻るつもりはなかった。いちおう、挨拶くらいはするつもりだが、それはパーティーからの離を伝えるためだ。
「今回った亀裂をどうやって修復するつもりでしょうかねえ、ビビアさんたちは」
呪いの窟のクエスト失敗。その上、仲間を置いて撤退してきた。國王の失は深いだろう。仲間同士の関係にもヒビがったのには間違いない。アリアケさんと私が抜け、たぶんプララさんも、生きていたとしてもパーティーを抜けるように思う。囮にされて、パーティーに殘る程、お人よしではないだろう。とすると、3人しか殘らない。ならば、新しいメンバーをれる必要があるだろう。
「でも、誰がろうとするかしら」
ケチのついたパーティーには、なかなか人が集まらない。しかも、仲間を見捨てたパーティーなんて最低最悪だ。
私はそんな風に心配しながら退路を急いだのです。
「面白かった!」
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