《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》18.賢者は冒険者ギルドを訪れる
18.賢者は冒険者ギルドを訪れる
「ここは何という町じゃ?」
「ここはメディスンの町だ。人口は1萬人くらいか。オールティの町の途中にあるから立ち寄ったんだ。まあまあの大きさの町だぞ」
「・・・の割には、ずいぶん人出がなくないかのう? わしの気のせいか?」
「いや、気のせいじゃないだろう。えーっと、ちょっとすみません」
「はい、なんですか?」
俺はたまたま通りかかった通行人をつかまえて事を聞くことにする。
「どうしてこんな様子なのかですか? 実は最近町の近くに”魔の森”が現れたんです。それで王國からも騎士団が派遣されたり、冒険者が駆り出されたりしているんです。商業も止まって完全にパニック狀態なんですよ」
「なるほどな。了解だ、ありがとう」
町人は去っていった。
「あ奴、わしを見て目を丸くして、それから旦那様を羨ましそうに見てたぞ? わしがドラゴンというのがバレたのかの? 完璧な擬人化のはずなんじゃが」
自分を見下ろしながら言った。
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「うーん、そうではないな。おおむね男と言うのは、人の連れを見ると羨ましがるものなんだ」
「!? そういうことか、では旦那様も鼻が高いじゃろ!!」
じゃろじゃろ! とを張ってくるが、
「いや、できれば目立ちたくないんだが。むしろ、意外な盲點だった。難儀している」
「ぎゃふん!」
なかなか表現かなドラゴンである。ともあれ、
「先ほどの者が言っておった『魔の森』というのは何じゃ?」
「魔王が作るモンスターの巣、といったところだな。早期に駆逐しないと大変なことになる。何せダンジョンとは違って、モンスターの行範囲に制限がない。放っておけば町は壊滅するだろう」
「旦那様でも駆逐するのは難しいのか?」
「まさか」
俺は首を振る。そんな段階になればこの國は終わりだ。
それに、
「魔の森には、第1段階から第5段階まである。恐らくまだ第1段階だろう。その段階であれば、皆に任せておいても構わないだろう。それに困ったら勇者が派遣されるはずさ」
「なるほどのう。旦那様の期待にこたえ、うまくやれると良いの」
俺は頷く。
「もっと詳しい狀況は冒険者ギルドにでも顔を出せば分かるだろう」
「冒険者ギルドとな? そこに旦那様も所屬しているんじゃったかの?」
「そうだ。まあ、ランクはCだがな」
冒険者ランキングはEからSまである。なので、下から數えた方が早い。
「それはおかしいじゃろ? どう考えても。仕組みに瑕疵があることは明白じゃぞ?」
ゲシュペントドラゴンの娘、コレットは眉を寄せて言った。
だが、俺は首を橫に振り、
「社會制度というのは、一般的なレベルにしておかないと機能しない。俺がはみ出し者なのが悪いとも言えないか?」
コレットは大きな目をぱちくり、とさせてから、
「なるほどのう。確かに旦那様は規格外じゃて。じゃが、それはそれで孤獨なことじゃなぁ」
「そう思うか?」
「うむ! 竜種も同じじゃて。強すぎて、誰も近づけぬし、近づいてこぬ! 一緒じゃな!」
「いや、俺は一般人として生活したいタイプなんで。竜みたいに目立ちたくないと常々思ってるし」
「なんと、裏切り者め!?」
そんなことを話しながら、冒険者ギルドへと向かう。
「それはともかくとして、先に言っておくが、俺は勇者パーティーを追放になっただ。本當は彼らが俺から巣立った、とうべきだが、世間とは盲目的だ。理解したいように、事実を曲解しがちだ。だから、冒険者ギルドでは何かしらのペナルティをけるかもしれんなぁ」
「その時はわしがこの町ごと焼き払ってくれようぞ!」
力強く言う。口からキシャーと炎が微量れていた。
「気持ちは嬉しいがコレット。持つ者は、考え方を変えないと人間社會ではやっていくのは難しいぞ?」
「ふむ。わしが永劫に旦那様と一緒にいるには、考え方を変えぬといけぬということか?」
永劫? という言葉に首を傾げながら、いちおう「そういうことだ」と頷く。
するとたちまちコレットが熱心な様子で耳を傾けてきた。
なぜだろうか?
「さっきも言った通り、社會制度は一般人に合わせて作られている。なら、逆転の発想として、俺のような人間が、そっちのレベルに降りて行き合わせてやればいい」
俺は淡々と、
「それが持つ者の責務というものだからな」
「な、なるほどのう! 眼から鱗じゃ! わしの旦那様はさすがじゃな! わしも下々の者には優しくしてやるとしようぞ!」
「下々というわけではないんだがな。あくまで自分が特別であることを忘れなければいい」
「分かったのじゃ!」
本當に分かっているのか不明だったが、とりあえずいきなり街を焼き払うことはしないだろう。俺の匙加減ひとつで地図から一つ町が消える。ここで暮らす一般人たちの営みを守るのもまた役割と言えば役割なのだろう。
さて、そんなことを會話している間に冒険者ギルドへ到著した。
扉を開き、辺りを一瞥した。
普段よりもピリピリとした雰囲気が漂っているのが分かった。人數も多く、って來た俺たちをギロリとにらんだ。どうやら、何事かが起こっているのは確かなようだ。
掲示板にも全く依頼書の張り出しがない。そこには通常、各種の依頼が大量にられているはずなのだが。
「予想通り、何か起こっているようだな」
「どうするのじゃ?」
「そうだな・・・。とりあえず付カウンターに行ってみるか」
俺は付まで行き、そこの付嬢に話しかけた。
「すまない。ちょっと聞きたいのだが」
「失禮ですが、お名前を窺っても宜しいでしょうか?」
け付け嬢は忙しいのか、下を向いたまま言った。
「ああ、そうだな。俺はアリアケ=ミハマ。そしてこっちはコレット=デューブロイシス。冒険者登録をしているのは俺だけだが・・・」
と、途中までそう言うと、付嬢がびっくりしたように顔を上げて、俺の方を見てから、
「アリアケ⁉ あの勇者パーティーを追放になったという、あのアリアケ=ミハマですか⁉」
大聲で言った。
その途端、周囲の目もこちらへ向く。
「そうだが・・・」
「ちょっと、そこで待っていてください! いいですか、逃げないでくださいね! お、『王國からの勅』があります!! ギ、ギルド長~!!」
そう言って奧の階段から2階へ駆けあがっていく。
周囲は一気にざわつき始めた。
「やれやれ、やはり大ごとになるか」
俺は嘆息した。しかも、よりにもよって、王國からの勅とはな。一冒険者に大仰なことだ。
いい加減に目立たずひっそり田舎暮らしがしたいのだが・・・。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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