《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》24.アリアケは町の英雄として稱えられる
24.アリアケは町の英雄として稱えられる
「アリアケ様、本當に行ってしまうってのかい?」
「そうだぜ、アリアケの旦那。もっといてくださせえ。あ、何なら宿代も全部持ちますぜ!」
「おお、そうだそうだ! うちの町の名譽市民として、ずっといてもらうってのはどうだ、みんな!」
「賛‼」
「勝手に決めるな! まったく・・・」
はぁ、と俺はため息をついた。やれやれ、どうしてこうなった。俺ともあろうものに頭痛を覚えさせるとは、この冒険者ども侮れん・・・。キング・オーガのほうがよほど簡単だった。
魔の森との戦い。
あのモンスターたちとの戦いから1週間が経過した。
戦闘に勝利した町、しばしその勝利の酒に酔いしれたが、今は落ち著きを取り戻しつつある。
本來であれば、俺は戦いの後にすぐに出発するつもりだったのだ。
しかし、住民たちがそれを許してはくれなかった。
「まあまあ、アリアケ様! いい店があるんです。どうかおごらせてください! 冒険者の連中が一緒に飲みたいってうるさいんですよ」
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えーと、また今度。
「この町が無事なのもアリアケ殿のおかげです。ところでうちの娘を紹介したいのですが、どうですか? 今晩にでもうちにいらっしゃるというのは?」
ちょっと予定があるので遠慮しておきます。
「おや、英雄アリアケ様ではないですか。し戦いについて教えを請いたいのですが、弟子にしてもらっていいですか?」
よくないし、募集してません。
こんなじである。まったく斷るだけで大変だ・・・。
だが、さすがに旅の予定を遅らせるのもそろそろ終わりにしたいと思った。
「ちょっと目立ちすぎてしまったな。ついつい助けてしまった。まだまだ俺も甘い」
「困っている者をなんだかんだで見捨てられぬのじゃな、旦那様は」
「そんなわけないだろう。俺の力がなくても、人間たちがうまくやっていけるように、俺は極力手を出さないようにすべきなんだ」
「能力があるとそういった歴史的な視點でものを考えなければならぬから、旦那様の苦労は余人には理解しがたいからのう」
コレットの発言通り、俺は普通には生きられないというジレンマを常に抱えているのであった。神にはバックアップに徹しろと言われたしな。
「何はともあれ、出発する。世話になったなギルドマスター」
「水臭いことを言わないでください、アリアケ様」
ギルドマスターのオシムは俺に握手を求めてくる。
やれやれ。
俺はあきらめて握手をした。
「當然の話かもしれませんが、ライセンス剝奪については撤回致します。本當に失禮しました。それと、こんなふざけた指示をしてきた王國には、全ギルド連合をあげて抗議文を送っておきますのでご安心ください。また冒険者ギルドの本部にも、今回のアリアケ様の功績については広く喧伝しておりますので合わせてご安心してください」
「余計なことをするなっ⁉」
俺は思わず抗議した。 ・・・それに活躍を伝えるって言っても、信じないやつもおおいだろうに。
「ライセンス剝奪の撤回の撤回を要請する!」
「ライセンス剝奪の撤回の撤回を拒否します!」
「くそったれめが!」
靜かに目立たず暮らしたいだけだというのに!
「いい加減諦めてはどうかのう」
コレットが呆れた様子で言った。
「それではアリアケ様、コレット様。お元気で。もしまた寄られることがありましたら、顔をだしてください。ああ、そうそう。次の行き先としてもし≪オルデンの町≫に寄られるようでしたら、こちらの書狀を≪ミハイル≫という男にお見せください。出來る限りの便宜をはかってくれるでしょう。そして、そこの馬車は我々からのせめてものお禮ですお使いください」
俺はその封書をけ取る。そして、用意されていた立派な馬車を見上げた。
確かに、馬車はありがたい。急ぐ旅ではないので徒歩でも構わないのだが、それでも、彼らが俺に何か恩返しをしたいと言う気持ちをけ取るのも、尊敬をける人間の責任だと思った。
「ありがたく使わせてもらおう。では、今度こそ出発する。ではな、お前たち。達者で暮らすといい」
「はい。アリアケ様たちにシングレッタ神のご加護があらんことを」
俺とコレットは馬車を出発させる。
俺たちを見送る冒険者たちは、俺たちが見えなくなるまで深々とお辭儀をしていた。
「次はどこに向かうのじゃ、わしの旦那様?」
馬車の者臺でコレットが聞いて來た。
「そうだなぁ。せっかく便宜をはかってくれるというのなら、ギルドマスターの言っていた≪オルデンの町≫を経由するのもいいかもしれない。ただ・・・」
「何か問題があるのか?」
「ああ、オルデンに行くなら、次の街道を南に進むことになる。その途中に≪沃の大森林≫というところがあるので、そこを通ることになるんだが・・・」
「それが問題なのかの?」
「まあ、そうだな。そこはエルフが住む森でな。彼らは先代勇者との盟約によって、≪沃の大森林≫の通行を人間たちに許した。だから、勇者パーティーを追放された俺のことを、心よくは思わないだろう。場合によっては通行を拒否、悪ければひと悶著起こるかもしれない」
「なるほどのう」
「まあ、心配しすぎかもしれんがな。それに、まあその時はその時だ。急ぐ旅ではない。コレットさえ良ければ≪沃の大森林≫を抜け、オルデンの町に向かうとしよう」
「わしに異存などあるはずがない。旦那様の行くところが、わしの行きたいところじゃて!」
ニコリと笑って、コレットが言った。そして、頬を染めて、なぜかもたれかかって來る。疲れたのだろうか?
ともかく、こうして、俺たちの次の目的が決まったのである。
馬車はゆっくりと進んでいく。空は青く、風は穏やかであった。
何だか、つい先日まで勇者パーティーで冒険の準備に奔走して來たのが噓のようである。
彼らはうまくやっているだろうか。いや、疑うべくもないか。俺から巣立った彼らだ、きっとうまくやっているだろう。
そんな穏やかな気持ちで、かつての勇者パーティーの未來を確信したのである。
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