《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》28.エルフの里の崩壊

28.エルフの里の崩壊

封印牢というのは魔法的な牢屋であり、白く大きい卵型の球で、そこにる仕組みである。

その中にれば、中からの魔はきかず、また人かられる魔力なども外部へ屆かないと言われている。

すなわち存在を封印する牢屋、ということだ。

「封印牢は中からは理は無効化し、魔はすべて弾く無限監獄です。外からしか開けることはできません。このようなことになってしまい、アリアケ様にはなんとお詫びしていいのか」

セラがし涙ぐんだ。

「このセラが出來ることでしたら、お詫びになんでも致します。ア、アリアケ様が一生ここにとらえられるなら、そ、その私は一杯、アリアケ様に全全霊のご奉仕を・・・」

「いや、これくらいなら、すぐにでも出られるが・・・」

涙ぐんでいるセラには申し訳ないが、俺は素直に言う。

「一番単純な方法は、魔力反を≪反転≫させて『魔力吸収』へと転化させることかな。そうすれば、もともと吸収余力などないだろうから、すぐにキャパオーバーで自己崩壊するだろう」

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淡々と告げた。

一瞬、間が空いた後、

「ええええええええええええええ⁉」

「さっすが旦那様なのじゃ!」

セラは驚愕したあと顔を真っ赤にし、コレットははしゃいでいた。

「は、≪反転≫スキルなどというスキルが存在するのですか? き、聞いたことがない、すごいスキルではないですか!」

「そう言えば聞いたことないな~」

全てのスキルが使えると、何がレアかどうかなどどうでも良くなるのだ。

「規格外すぎますね・・・、アリアケ様は」

「そうじゃろ、そうじゃろ♪」

なぜかコレットが満足げにうなづいていた。

だが、一転して眉を寄せると、

「それにしてもセラは油斷も隙もないのじゃ・・・。ここぞとばかりに旦那様を寢取ろうとするのじゃから・・・」

「そ、そんなつもりでは~」

「旦那様はわしの旦那様じゃからな! まじで!」

「ううー」

セラは再び涙ぐんだ。

なぜか殘念そうに俺の方を見てから話を変える様に口を開く。

「そ、それはともかく、ではもう封印牢から出されるのですか、アリアケ様」

「いや、しばらくはここにいようと思う」

「えっ? どういうことでしょうか」

「俺がここにいれば、災厄である≪枯死≫は発生しないとエルフ長はお考えだ。しばらく俺がここにいて、実際にどうなるのか、彼が自分の目でしっかりと検証するのが一番早いだろう」

「そ、そこまでの深謀遠慮を・・・。それに、それも全てエルフ族のために、そのを犠牲にしてまでっ・・・! なんというお考えの深さ、遠大さでしょうか」

「いや、逆だよ」

えっ、とセラが意外そうな聲を上げた。

「これはエルフ族自が試されていると知ることだ。俺は君たち一族へチャンスを與えるだけ。エルフという種が、自ら真実を直視できるのかどうか、それを試す機會を、な」

セラは頷くと、

「おっしゃる通りです。ただ救うのではなく、長の機會を促す。まるでアリアケ様は神様の様な方ですわね。あなた様にエルフの命運をかける機會を頂けたこと、エルフ族として栄に思いますよ」

そう言って、エルフの姫はその名の通り、花のように微笑んだ。

~ 一方その頃、エルフ長ヘイズは~

封印牢へアリアケたちを封じ込め、最初の1週間、私は肩の荷が下りた様に安心していた。

「これで≪沃の森≫の災厄≪枯死≫は収束する!」

そう一族の者たちに宣言した。

エルフの皆も大いに喜び、自分を譽めそやし、さすがエルフ長殿だと言ってくれた。

エルフの里の長で最も求められるのは、この森の保全。その大目的を達しつつあるのだから、賞賛は當然のこと。私は意気揚々とした。

しかし・・・。

「エルフ長・・・魔素の発生がおさまりません」

「むしろ、だんだんと濃さを増しているような・・・」

「このままでは魔素によってモンスターが大量発生してしまい、エルフの里が全滅するやも」

「そんなわけなかろう! もう一度調査をしてみよ!」

「で、ですが」

「いいから行け‼」

私は思わず大きな聲で怒鳴ってしまった。

くそ、どうしてなんだ。私は一人になり、テーブルを思い切り叩く。

私は焦っていた。

私がエルフ長に就任したのはおよそ10年前。

私は先代よりもよほど森の保護に熱心な男だった。ゆえに、木々を手厚く保護し、それまで多あった伐採すらもやめることにした。

そのおかげで森はより活況となった。木々は以前よりも繁茂し、自然から力を得るエルフの力も増したのだ。

だが、今はその面影もない。

「くそ!くそ!」

私は悔しくて、歯噛みした。

1年ほど前からなぜか森が≪枯死≫しはじめた。

そのせいで同胞からは、

「エルフ長として不適格なのではないか?」

「森を枯らすなどと前代未聞だ。霊にされていないのでは?」

などと口をたたかれ始めたのだ。

どうしてなんだっ・・・。これほど自然をしているのにっ・・・!

悔しいっ。悔しいっ。

そんな時、ふと妹の顔と、なぜか勇者パーティーを追放されたあの男のことが頭をよぎった。

「セラの奴、怒っていたな・・・」

普段は気の優しい穏やかな娘なのだが、いざという時ははっきりとモノを言う妹だった。

「もし、妹や彼らの言う通り、パーティー追放と今回の件が無関係なら・・・」

そんな思いが頭をよぎる。

しくらい話を聞いてみた方がいいのかもしれん・・・」

ただ、一點だけ気になっていることがある。

最初から私がアリアケという男に対して敵対的だったのも、このことが原因の一つだった気がする。

部下の報告にあったのだが、

『セラ姫はずいぶんアリアケという男に”ご執心”だ』ということである。

私はそれを聞いて、思わず怒髪天を突いたのだ。

「な、ならん! まだセラはい!」

結婚など時期尚早だ!

私とセラは歳の差が大きい。セラは私がエルフとして200を數える時に生まれた妹であり、まだ15歳である。エルフとしてはまだい子供にあたる。なので、どちらかと言えば自分が親代わりのようなところがあったのだ。

なので、ついつい娘がご執心(惚れた)という男にきつく當たってしまった。

「・・・だが、そのせいでいきなり話し合いもせずに、捕縛しようとしてしまった・・・」

普段は話し合いを重視するタイプなのに、セラのことになると、どうも冷靜さを失ってしまうのだ・・・。

「だが、あの男がもし無実だとすれば、あの威風堂々たる態度。そして、あの街を救ったという噂・・・」

真実ならば、人の中でも最高位に位置するほどの男ではなかろうか。ならば結婚とは言わないまでも、正式にお付き合いくらいなら・・・いやいや。やはりまだ早いのではないか。それに男はオオカミだし・・・。

そんなことを考えていた時である。

「た、大変です‼ エルフ長‼」

飛び込んで來た仲間の悲鳴で我に返る。

「どうした!」

「山崩れです! 大規模な崩落が発生し、里が飲み込まれました!!」

「なんだって⁉」

それはありえない事態だった。

エルフの森は木々が繁茂している。そんな中で山崩れが起こるなんて!

私は呆然とするほかなかった。

だが、そんな風に呆けている暇はなかった。

エルフの民たちが大勢生き埋めになっているのだから。

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