《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》43.魔剣暴走

43.魔剣暴走

「ぎ、貴族の私《わだじ》にごんな事をじで只で済むと思っているのがぁ!」

ハインリッヒが歯の抜けた口で思いっきりぶ。

しかし、

「うるさい、この犯罪者が! 大人しくしないか!!」

ハスがその頬を叩き、顔を地面につけて暴れるハインリッヒを取り押さえようとする。

「ぶべえ!? は、犯罪者だどぉ!? ご、ごの私がぁ!? じゅ、獣人ごときがぁ! ふ、ふざげるなぁああああ!!」

悔しそうに目を怒らせ、怒聲を上げた。

その言葉を聞いて、アリシアは淡々と首を橫に振り、

「殺人罪、殺人未遂罪、死損壊、死棄、公権用、竊盜、脅迫、その他もろもろ。言い逃れできる狀況では既にないのですよ、犯罪者ハインリッヒ? 前領主様も草葉ので泣いていらっしゃることでしょう。はぁ、あなたこそはまごうことなき≪貴族の恥さらし≫そのものです」

そう言って、冷めた目で見下ろした。

その言葉にハインリッヒは更に激高する。

「ぐおおおお! ごの選ばれた貴族の私に向かっでええええええええええええ」

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そして、

「だ、誰かだずげに來い! なんでだぁあああ⁉ どうじで誰もだずげに來ないぃぃいぃいい⁉ あの役立たずどもめがぁああ!」

周りに頼ろうと大聲を出す。

こんな時にだけ周りに助け求めるハインリッヒに呆れながら、

「結界をはってある。お前は檻にれられた犯罪者そのもの、というわけだ。そんな事すらも分からないのか? お前はもう終わりなんだ。無論、今回の件が公になればお前は領主の地位からは追放。一族からも廃嫡必至だろう。つまり、お前はもう貴族ですらないんだ。ただの犯罪者でしかない」

「くそくそくそくそくそくそ! そんな馬鹿なぁああぁあああああああああ!」

俺との戦いに慘敗し、その上貴族という地位すらも剝奪されるという事実が信じられず、ハインリッヒは泣きぶ。

「ふぅ、これ以上の問答は不要だな。さっさと犯罪者を連行するとしよう。縄をまいて猿轡をはめて連れて行くぞ。うるさくてかなわん」

「はい。アリアケ様。ほら、大人しくしろ、元貴族の犯罪者ハインリッヒ。正當防衛でここで殺されないことに謝しろ!」

そう言ってハスがハインリッヒに縄を打とうとした。

その時である。

「ぐ、ぐぎ、ぐぎぎぎぎぎぎ! 許ざん! 許ざんぞ!! お前だぢ全員皆殺じだぁああああああああああ!」

ハインリッヒが絶する。それと同時に、

『ブオン!』

地面に落ちていたハインリッヒの『魔剣』が獨りでに浮き上がったのである。

「なに!? あの魔剣はもしや!?」

俺は驚く。

「ふーはっはっはっは! そうだ! 魔剣の力を思い知れ‼ 今まで食った魂の數だけ、この刀の切れ味は鋭くなっている! 魔剣よ來い! そうして、こいつらを一掃してっ・・・」

「馬鹿!そうじゃない! それは剣ですらない! 『モンスター(・・・・・)』だ!」

「・・・へ?」

ハインリッヒが何を言われたのか理解できず、間抜けな聲を上げた瞬間、宙に浮かんでいた魔剣は突如ハインリッヒへと向かい、そのを凄まじい速度で貫いたのである。

「は? は? は? ぐえええええええええええええええええええ!? や、やべで! わだじの中にってこないでええええ!!」

ばきばき! びちびちびち!

そして、あろうことか、その剣は突き刺した部分から、ハインリッヒを≪捕食≫し始めたのである。

バキ! ベキ! ブクブク!

剣は一瞬にしてハインリッヒの部を食い荒らし、侵食する。骨が折れ、筋が破ける音がダンジョンに響いた。

同時に、破壊された部分が再創造され、何倍もの大きさへとブクブクと膨らんでいく。

それはやがて、まったく原型をとどめない悍《おぞ》ましい姿となった。

真っ赤な球のようなに大きな目玉が一つ、からは無數の手を生えている。

「な、なんじゃアレは」

突然の出來事に、コレットが目をみはりながら言った。

「簡単だ。アイテムに化けて冒険者を食らい自らを強化するモンスター。そんな奴は一種類しかいない。≪ミミック≫さ」

「ミ、ミミック!? ミミックって、あの寶箱になって冒険者を待って襲い掛かる、つまらんモンスターではないのか⁉」

「寶箱と一概に決まっているわけじゃない。それに、命を吸わせすぎたんだろう。ミミックの最終進化形”ヘル・ミミック”に至っている。こいつはもはや、『擬態したまま自ら人間を食らいに行く化け』だ」

アリシアが息をのみ、

「SSSクラス。災害級モンスターに違いありませんね」

「まさか最後の最後にこんな大が現れるとはのう・・・」

コレットも頷いて生唾を飲んだ。

しかし、

「よし、全員戦闘配置につけ。ハス、アンは下がっていろ」

俺はいつも通りに指示を飛ばした。

「「「「え?」」」

「やれやれ、なにを浮足立っている」

俺は嘆息しつつ、

「この俺がポーター(バックアップ)を務めるんだ。落ち著けば必ず倒せる」

「アリアケさん・・・。そうですね、あなたの支援があれば何があっても大丈夫です」

「その通りじゃな! よーし、ドラゴンの末姫の力、見せつけてやるからのう!」

一気に士気が上がった。

「あ、いや、余りはしゃぎすぎて離れすぎないようにな。スキルの支援が屆かなくなるからな?」

俺は逆に若干不安になりながらも、ヘル・ミミックの方へ視線を向けた。

「さあ、始めようじゃないか、ハインリッヒ。まだ意識は殘っているか? 俺が憎いならば殺して見せるといい」

「ぎしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

ミミックの瞳が赤く明滅し、憤怒の様相を伝えた。

その雄たけびは煉獄神殿にこだまし、戦闘開始の狼煙となったのである。

「面白かった!」

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