《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》64.前試合 その⑧ ~勇者の仇をうつべく立ち上がる仲間たち プララ編 後編2/2~

64.前試合 その⑧ ~勇者の仇をうつべく立ち上がる仲間たち プララ編 後編2/2~

「ぶひひひいいぎ□□■□■□いいいいGIGI□□■□■□‼ GIGI‼ IGGI□□■□■□AAAAAAA‼」

勇者の咆哮がコロシアムにこだました。

豚とゴブリンが混ざったような嘶きに、大衆はたまらず耳を押さえる。

聞くだけで神に異常をきたすかのような、呪詛めいた咆哮だ。人間の出せる聲だとはとても思えない。

「俺の予想すらも超えるほどだっ……!」

その醜悪さに、さすがの俺も息をのむ。俺すらも、やはり人智を請える汚穢《おわい》めいたものには嫌悪を抱くとうことか。そのことを勇者ビビアは自ら現することで俺へ教える。

一般人などは到底耐えられまい。か弱いなどは気分が悪くなったようで、席で次々に気を失ったり、をおさえて蹲《うずくま》っている。

「賢者様っ……! は、早く……」

「早くその化けをっ……!」

「化けをこの世界から消滅させてください! 英雄アリアケ様! その化けを、一刻も早く!」

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人々の心が化けビビアを嫌悪し、また同時に英雄の俺に希を見出していることが分かった。

だが、それだけでビビアの化けぶりは終わらない。

「キ■□■!キ■□■キ■□■キ■□■あああああ■□■アアアアアアAAAAA■□■AAAAAA―――‼」

とともに、

『バッキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン‼』

「い、いっやあああああああああああああああああああああああああああああ⁉」

「お、おええええええええええええええええええええええええ」

「も、もうお嫁にいけないっ……⁉ ぶくぶくぶく……」

たちの悲鳴がまたしてもコロシアムに響く。

無理もない。ビビアはを更に強化したようで、格を數倍に大化させたのだ。

そして、その際に、に著けていた防一式を全て弾き飛ばしたのである。

今のビビアは生まれたままの姿であり、超満員の大衆や王族たちの前で、全で仁王立ちする、まさに犯罪者であった。

荒い息をつきながら、白目を剝き、そして咆哮をあげつつ涎を垂らす化け

ビビアはそんな何もに著けない狀態で、はばかることなく衆人環視の中を四つ足の狀態で闊歩したのだった。

「賢者アリアケよ! その犯罪者を滅してくれえええええええええ⁉」

どこからか、國王らしき者の悲鳴も聞こえてきたような気がする。

と、大衆たちの恐怖と嫌悪がピークに達した時、

「□□□□□■□■□■■! □□□□□□□□■‼ □□□□□□□□□□■□□□□□□□□□■■■■■■■■■■―――!」

ビビアが四つ足で大地を蹴る!

服も、何もかもをキャストオフしたその姿は、空気抵抗の一切を拒絶する野生そのものだ。聖剣は相変わらず口にくわえていて、唾でべちゃべちゃになっている。

音速を越えるほどの速度でビビアが迫った! すれ違いざまに切りつける気か⁉

しかし、

『ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュ!』

「髪のに魔力を込めて打ち出しただと⁉」

余りにも意外な攻撃に、虛を突かれた俺はさすがの俺も防ぐだけになる。一本一本の髪のに膨大な魔力が込められていて、刺されば大怪我をするだろう。人間の技ではない!

無論、それと同時に勇者ビビアの頭髪がどんどん減していくのだ!

「やめろ、ビビア! それ以上やったら生えてこなくなるぞ!」

「□□□□□■□■□■■―――! □□□□□□□□■―――――‼」

ビュビュビュビュビュビュ!

駄目だ、通じない! 本當にいいのか、ビビア!

「ゲロは吐くし、化けだし、全だし、ハゲだし。もう最低よぉ!」

「最低勇者!」

「最低勇者ビビア!」

観客たちから最低コールが巻き起こる。

(哀れだな、ビビア……。そこまでして俺に追いつきたいと思ったのか?)

俺は憐憫のを催す。

俺にしでも近づきたい気持ちは分かる。

優れた相手に憧憬《しょうけい》の念を抱くのは人として自然なことだ。

だが、俺の高みにいたずらに手を延ばせば、お前のような不幸な輩が作られてしまう。

に至ろうとして、崖から羽ばたいた愚かな人間のように。

俺はそのことを反省する。

俺が優れ過ぎていることの弊害が、太のような屆かぬ高みにあることが、こんな悲劇をまき起こしてしまうだなんて……。

ならば、

「せめて、一思《ひとおも》いにやってやる。これで終わりだ、勇者……。いや、化けビビアよ!」

「ああああああああああああ□□■□■BI□いいいいAABEEEEEEEE□□■□■□―――‼ BIBABAAAAAAAAAAAAAAA□■□■□AAAAAAA――-‼」"

何を言っているのかわかない。もはや個人の區別もついていないのだろう。

ビビアが……、いや、真の化けが迫る!

大衆が俺の勝利を願った。

『≪メタモルフォーゼ・ビビッド!≫』

俺は自らにスキルを行使する。メタモルフォーゼ自は変のスキルだ。だが、俺はこの技を応用しての一部だけを変形させる。

勇者のマネというわけでもないが。

すると、

「綺麗……」

「羽が生えた……?」

「神……様?」

そんな聲が観客かられる。

勇者に対するものとは真逆の反応が返って來る。

まあ、確かに俺は神に近い男ではあるが、そのようなものに興味もないし、なりたいとも思わないが。

そんなことはともかく、俺はスキルによって、あたかも翼人種のように羽を背中より生やす。

バサリと上空へと舞い上がり、地上で四つ足のまま、悔しそうな表をしてこちらを見上げ、《な》す《すべ》もなく睨み付けるビビアへと告げた。

「不出來な弟子、ビビアよ。これで終わりだ。だが最初に謝っておきたい」

「先生?」

ラッカライが不思議な顔をする。

「俺のような高みを目指し、失敗した結果が、まさにお前なのだろう。だが、化けになろうとも、俺にその手は屆かん。今、お前が俺を見上げるだけしか出來ないようにな」

その言葉にラッカライは深く頷く。

「その通りです。哀れな勇者様。あなた程度の方が先生のレベルに達することはありえません」

そう憐れんだ表で、兄弟子……しかし、はるかに劣った兄弟子へと告げた。

しかし、ビビアはもはや知能すら殘っていないのか、野生の獣にも劣るうめき聲をあげると、を思い切りかがめる。

そして、

「ABIABEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!」

意味不明の絶とともに、俺へと跳躍し、とびかかって來たのであった!

「≪魔力暴走≫」

「≪魔力増強≫」

「≪魔力放出!≫」

俺はそんな哀れな獣を撃ち落とすべく、スキルの多重詠唱を行う。

の魔力が増幅し、俺の手に槍のごとく収束、形された!

「片槍大審判(偽・グングニール)!」

カッ!

俺の放つ魔力の槍が、太へと手を延ばす獣を焼き、撃ち滅ぼす。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

俺が放つ天のに焼かれながら、哀れな化けは落ちていく。

そして……。

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンン…………。

を目指した人が辿る末路と同じく、大地へと落下し、そのを強く打ち付けられのであった。

観客たちの喝采の聲とともに。

~プララ視點~

「ち、ちっくしょう……。まさかあたしが負けるだなんてえっ……⁉」

あたしはパニックに陥る。

あらゆる手段を使ったのにダメだったのだ。

もはや、この狀況をひっくり返すことは出來ない!

なら、

「逃げるしかねえ! あたしさえ無事ならそれでっ……!」

急いでコロシアムから出しようとする。

だってのに唐突に足に激痛をじて、転んでしまうっ……!

「痛ってえ⁉ なんなんだよ、一……ひぃっ⁉」

あたしは息をのむ。なぜなら、あたしの足にはガッチリと、ゲロと涎、あらゆるの付著した爪が、深々と食い込んでいたからだ!

「デ、デリア! ちきしょう、放せ、放せええええええええええええええええええええええ!」

だが、その摑んだ手はビクともしない。

その上、

『ガブリ!』

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ⁉」

噛みつきやがった! その上、ジュルジュルとをすすり始める!

「くそ⁉ 無茶させまくったから、魔力が枯渇してっ……⁉」

魔力タンクのあたしを喰らって、魔力を補充しようってわけ!?

でも、悪夢はそれだけじゃなかった!

『むくり……アー……あー……アー……』

『ズル……ズル……ズル…………』

勇者が起き上がり、白目を剝きながらあたしの方に腹ばいで迫って來た。

エルガーも涎を垂らしながら迫って來る!

「や、やめろ!? やめろって言ってんじゃん⁉ 寄るな! 寄るんじゃねえよ! カスども!? ひ、ひぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい⁉」

ビビア、デリア、エルガーがあたしのに喰らいつく。

いや、それだけじゃない!

さっきあたしが吐いたゲロやまで、魔力が満たされていればお構いなしにすすろうとする!

他人に自分のそれを飲まれるなら死んだ方がマシだ⁉

しかも大衆や王族が見てる前でええええええ⁉

「いやあああああああああああああああ、誰がだずげでええええええええええええええええ あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

あたしの絶がコロシアムに響き渡ったのだった。

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