《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》74.エピローグ① 大賢者アリアケへの稱賛と勲章授與
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74.エピローグ① 大賢者アリアケへの稱賛と勲章授與
~エピローグ アリアケside~
「救世主様!」
「大賢者様!」
「真の勇者アリアケ・ミハマ様!」
わあっ! と沿道の人々が歓聲を上げながら、こちらに喜びの笑顔や、涙を見せていた。
俺の顔が馬車から覗くと、その歓聲は一層大きくなる。
「世界を救ったくらいで、大仰なことだなぁ」
俺の不出來な教え子たるビビアを鍛え、そして新たな弟子であるラッカライの経験値を積ませようとして出場しただけの前試合で、こんな目立つ羽目になってしまうとは。
「うかつだった・・・」
あれほど目立たないように普段から気を付けているというに・・・。
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そうつぶやくと、アリシアが呆れたように肩をすくめ、
「まったくアリアケさんは困ったものです。すーぐ大事件を引き寄せてしまうんですから。英雄の気質なんでしょうねえ」
「迷をかけたな」
「もう、まったくです。な、何かお返しをしてもらわないといけませんね! た、例えば、デ、デ、デー・・・」
「はーい、そこまで、なのじゃアリシア!」
アリシアが話している途中で、なぜか急にコレットが張り付いたような笑顔で割り込んだ。
更に、
「ですね、コレットお姉様のおっしゃる通りです。抜け駆け、ダメ絶対ですよ、アリシアお姉様」
いつもは控えめなラッカライも、聖槍を振るうがごとく、毅然とした調子で聲を上げる。
うーむ、いつもながら子のやり取りと言うのは謎である。
ただ、そんな様子をポカンとした様子で見ていると、逆に彼たち3人がこちらを見て、
「「「はぁ~、ぼくねんじん・・・」」」
と、なぜか反対にため息をつかれたりするのであった。
うーむ、訳が分からん・・・。
と、そんなことをしている間にも、馬車は進む。
ゴトゴトと言う音もたてず、振すらほとんどじられない最高級の馬車だ。
・・・だが、殘念なことに、俺を一目でも見ようと沿道に集まった大勢の観衆からの稱賛の聲は、一向に鳴りやむ気配はなく、その騒々しい音を余計にしっかりと耳に屆けていた。
「ところで聞いた話によりますと、この馬車はもともと勇者パーティーさんたちが、この街に場する際に使用していたセレモニー用のものらしいですよ」
そうアリシアが言う。
「そうなのか、どうりで豪華な仕様なわけだ」
俺は頷く。
「にしても、その勇者パーティーたちを倒した旦那様が、その馬車で王城に招かれるというのは皮な話じゃよなぁ」
「勇者様たちも、街に場する際はこういった大衆たちの歓聲をけて、出迎えられたんですもんね・・・今は完全に逆になってしまってますが・・・」
「そうだなぁ」
俺は曖昧にうなずいた。
勇者パーティーは今は全員がバラバラになり所在が分からなくなっている。
勇者がモンスターに変し、世界を滅ぼしかけた事実から、彼らはなかば犯罪者の行方を捜すかのように、今も王國によって捜索が続いていた。
「俺が抜けたとたんに犯罪者集団にまで分を落としてしまうとはなぁ・・・。おかげでこちらが英雄になってしまって良い迷だが・・・。とはいえ、これも未なあいつらにとっては長につながるいい機會か。迷をこうむったことは許してやるか。だが、その代わり、この逆境にしっかりと打ち勝つようにしてもらうとしよう。今度こそ、師であり目指すべき目標である俺を、失させないようにな」
「さすが旦那様じゃな。々なことをあっさりと水に流してしまったうえに、あやつらの長を祈ろうとするのじゃから!」
「なに大した事ではないさ。それに、それが上に立つ者の使命というものだ」
もう慣れた、とつぶやいた。
「先生は本當に清廉高潔なお考えをされますよね、僕、しました! 本當はもっと威張っても良いことなのに。この馬車だって、これから先生に勲章を授與するために遣わされたものなわけですし・・・」
ラッカライがそういって、遠くに見えるこの街の城を見上げる。
そう、この馬車は今、この街の中央にある城に向かっていた。
救世主である俺に勲章を授與するために、王國がわざわざ手配したのである。
だが、ラッカライの言葉に、アリシアとコレットはなぜかニヤリと笑う。
そして、ちょうど観衆の群れが途切れる十字路に差し掛かったところで、
「よーそろー! です! さあさあ、者さん、お役目を代いたしましょう!」
「な、なにをする!? う、うわあ!?」
うーむ、目の錯覚だろうか・・・。
アリシアがその細腕で大柄な者の首っこをつかむと、ポイっと麻袋の重ねられた場所に放り投げたのである。
「にゃはははははははは! ほーれ、馬よ、走れ走れ! 走るのじゃ! まんまと出功じゃ!」
「ええええええええええ!? どういうことなんですか!?」
ラッカライは驚いているが、さすがアリシアとコレットは付き合いが長いだけあって、俺の考えなどお見通しのようだ。
俺は悠々とした様子で立ち上がると、
「よし逃げるぞ! アリシア! コレット! ラッカライ! これ以上、勲章授與なんて、目立つ羽目になるのはさすがに勘弁だ!」
俺はそう言いながら、スキル≪隠≫を詠唱した。
すると、慌てて追いかけてきた兵士たちが、こちらの姿を見失って、焦った様子で立ち往生しているのが見て取れる。
俺を先ほどまで救世主だ何だと祈るように歓聲を上げていた大衆たちも、突然姿が見えなくなったことに驚いて若干パニックなようになっていた。
「アリアケ様がお隠れになったぞ!?」
「な、なんとしてでも探すんだ! 俺たちの希のを!」
などとんでいる。
やれやれ。
俺は肩をすくめる。
やはり俺が目立つことは良くない。強すぎるし、規格外であるがゆえに、人々が自分たちで立つことを忘れさせてしまう。
俺がするべきは、この世界を救う者を育てること、バックアップすることであって、力と才能はあれど、俺自が英雄になることではないのだ。
そのあたり、完全に英雄といってよい今回の行については、ついつい流れで世界を救ってしまったとはいえ、反省が必要だろう。
「ところで先生、一どこに向かわれるおつもりなんですか?」
落ち著いたらしいラッカライが、首をかしげて聞いてきた。
風に流れる肩までばして髪をおさえるその姿は、完全に深窓の令嬢の仕草そのものだ。
「もちろん、のんびり暮らすためにオールティに向かう旅を再開する!」
その言葉に、
「しょうがないですね~、心配ですからこの聖さんも(ずっと)ついていきますね♪」
「わしは元から旦那様と(ずーっと)一緒じゃ!」
「はい、先生! 僕も(ずっとずっと)お供します♬」
3人がそう返事をした。
何か微妙な間《ま》をじた気がしたのだが、きっと気のせいだろう。
俺は、「アリアケ様! 英雄様はどこに行った!」とパニックを起こす大衆の聲を背中にけながら、もはや振り返ることもなく、海洋都市『ベルタ』を信頼する仲間たちと一緒に出したのであった。
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