《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》78.結婚とはどういうことだ? そして馬車は一路教會へ

78.結婚とはどういうことだ? そして馬車は一路教會へ

ふうむ。

俺は目の前の茹ダコ狀態のアリシアを見てから、もう一度手紙に目を落とす。

そして、一番の疑問を口にした。

「俺との『結婚』とは何のことだ?」

「ひゃ、ひゃいん!?」

アリシアは飛び上がってから、なぜか目を思いっきり泳がせつつ、

「えーと、えーと」

空中にのの字を書きながら、

「い、嫌ですね~、アリアケさん。結婚と言っても、まんま結婚って意味じゃないんですよ~」

必死に考えを巡らせるようにして言った。

「結婚。マリッジ! つまり夫婦みたいに『仲良くしなさい』という、そういう意味なんですよ! 仲良く協力して、教會の危機を救う手助けをしてもらいなさい、と。そういう意味なのです!」

ビシ!

とアリシアが宣言するように言った。

何かを必死に隠蔽したように見えたが……。

まぁ、完璧な彼に何か後ろめたい事があろうはずもない。

だとすれば、彼の言葉を俺も素直にけ取るべきだろう。

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「では、俺とアリシアが結婚して(仲良くして)、教會に訪れているという危機を救えば良いというわけだな?」

「けけけけけけけけけけけ結婚!? そ、そんな急に!? まだ心の準備が!?」

「なんだ、俺と結婚する(仲良くする)のは嫌なのか?」

最近はしは心を許してくれ始めたかと思ったのだが。

「い、嫌じゃないです……」

「なら、俺と結婚するか?」

「は、はい……。ふ、ふつつか者ですが……どうか末永く可がって……」

なぜか仲良くするというだけで、アリシアの頭から湯気が上がっているように見える。

そして妙にしおらしい。

と、思っていたのだが。

「って、そうじゃありませーん!」

大聖アリシアの絶が宿屋にとどろいた。

「踏みにじられました! 私の純が踏みにじられました!!」

「いやぁ、また、もう一歩といったところでしたね、アリシアお姉様……」

「そうじゃろうか。儂にはとてつもない隔たりがあるように聞こえてならんのじゃが?」

修行から戻ってきて、アリシアの大聲を聞いたラッカライとコレットの二人が、何事かと慌てて部屋へと飛び込んできた。

ことの顛末を俺が冷靜に説明したのだが、

「はぁ~。やれやれ、またですか。まったくも~、これだから先生ってば……」

ラッカライから、伝説に謳われる地獄に通じる『メギドの』よりも、なお深いため息をつかれてしまった。

うーむ、なぜだろうか。

なお、その後フェンリルも戻ってきて、一言。

「しかし、アリシアがこんな調子では、そなたらの番は當分先よなぁ」

と言った。すると、

「それなんじゃようなぁ、フェンリルよ……」

「ボ、ボクは別に急いでませんので……」

と、これまた良く分からないやり取りをした。

子同士の會話は男子には一生分からないものなのだろうなあ。

さて、それはともかく。

「教會の危機を救う、というのはどういうことなんだ?」

俺は改めて、アリシアに送られてきた手紙の容について言及したのである。

「思い當たる節があり過ぎてよく分からないんですよね~。ブリギッテ教會の敵なんてごまんといますから」

「そうなのかえ? 國教だというのに?」

フェンリルが小首をかしげるが、俺もアリシアも首を橫に振った。

「ブリギッテ教會自はそれほど長い歴史のある教団ではないからな。ほんのここ200年くらいのものだ」

「そうです。元々は他の國でも信仰されている智神ワイズを奉ずるワイズ教が國教でした。ざっくり言えば、人と爭うことを良しとせず、人々の助け合いによる相互扶助によって穏やかに暮らして行こうとする知恵と優しさの神ですね」

「よく、そんな宗教の大転換が出來たものよなぁ。宗教は人にとって結構大事なものと理解しておったが」

その指摘は正しいな。

「実際には転換しきれていない。200年前、唐突にこの國の東端に塔と街が作られた。それがブリギッテ教の始まりとされている。そんな強引ともいえる始まり方だったために、この國には今だにワイズ教徒が多い」

「なんじゃか、まるでワイズ教では不都合だったので、無理やりブリギッテ教を普及さしたような印象があるのじゃ」

そうだな。あるいは、

「200年くらい前に何かあったのかもしれんな」

俺の言葉に、アリシアもうなずいた。

そのあたりの事は大聖と言われる教皇第3位のアリシアにすら、知らされていない事実らしい。

「ブリギッテ教がいい宗教だから、広まったんじゃないですか? ボクら槍の一門ケルブルグも熱心なブリギッテ教徒ですから」

「あ~、まあ冒険者ですとか、武人には人気ですよね、ブリギッテ教は、まぁ、武神ブリギッテを奉ずる、どちらかと言えば……いえ、完全に武闘派宗教ですからねえ。暴力を推奨しているわけではないですが、正しいことをなすために暴力は必要悪であり、大事なものを守るためには腕力を鍛えましょう、という宗教ですからね~。個人的にはどうなん? と思ってますがね~。あと特徴的なのは『悪魔』を超敵対視しているのが特徴でしょうかねえ」

「『悪魔』とは珍しいのじゃ! 人や竜、魔族とも異なる冥界の住人じゃな。その力は段違いと言われておる。會ったことはないがのう」

「悪魔について詳しい報は余り多く殘されていません。會ったら基本殺されますからね。記述も曖昧なものが多いです。最新の文獻でも2、300年前のものがせいぜいですかねえ。それ以降の記述は見たことがありませんね。あったとしても、見間違えか、思い込み」

「で、そんなところからの招待狀というのが、この手紙か」

『教會の危機を救え』

しかも、俺を連れてきてしいとも読み取れる容。

だとすれば相當の厄介ごとが予想されるわけだが……。

「べ、別にいいんですよアリアケさん。せっかくスローライフをしようとされてるのに、わざわざ私の厄介ごとなんかに付き合わなくても」

「そうはいかないだろう」

俺は微笑みながら、

「大事な(馴染の)アリシアの頼みなんだ。俺も教會に同行するとしよう」

そう言って頷いた。

一瞬、アリシアのきが止まる。が、次の瞬間には、

「くぅうう、この樸念仁! わざとやってるんじゃないでしょうか~!」

「なぜ怒っているんだ?」

「怒ってませんとも! このアンポンターン!」

なぜか怒り出したうえでに罵倒されてしまった。

ふうむ、やはりまだ嫌われているようだなぁ。

そんなことを思っていると、なぜか周囲にため息をつかれた。

なぜだ?

ともかく、そんな疑問は殘しつつも、俺たちは一路國の東端、ブリギッテ教の聖地であり宗教都市『セプテノ』へと馬車を走らせたのであった。

ありがとうございます!

第1巻は発売後、大人気で即重版しました!

Web版から大幅加筆修正・増量していますので、気になる方は、無料『試し読み』だけでもどうぞ!

https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/series/detail/yuusyaparty/

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