《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》80.教會の深淵。白きフォルトゥナ。そして好きな人を馬鹿にする勇者は馬に蹴られる

80.教會の深淵。白きフォルトゥナ。そして好きな人を馬鹿にする勇者は馬に蹴られる

「なるほど……」

真っ白な、真っ白な髪、真っ白なドレス、深紅の瞳を持つフォルトゥナは、顔を伏せて目を合わさないようにしながら、囁くように言う。

「さすがは大教皇リズレット・アルカノン様です。人にしておくには惜しいお方。教會サイドの切り札を、こうして差し向けられていたわけですね。私ごときでは敵うはずもないと、このティアラを外さずにはいられません」

「また、教會か。一何がおこっているんだ。 それに切り札?」

「ええ。ゆえに、お恥ずかしながら、こうして彼らの頭を、クチャクチャと私の権能で書き換え、心を意のままにして差し向けてみましたが、あまり魅力的な餌にはなっていませんでしたね。アリアケ様の趣味嗜好に思い至らず申し訳ない限りです。やはり、お隣の聖アリシア様のパッチワークするべきでしょうか?」

頬を朱に染めて、手で顔を隠す。

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その指の隙間からこちらをちらちらと見てくる。

だが、その言っている容は、常軌を逸していて、脳を犯す毒をはらんでいる。

「さっきから何を言っておるのじゃ、このフォルトゥ……」

「コレット! 彼の名を呼ぶな!」

「のじゃ!?」

俺の言葉に、コレットは驚いて言葉を止める。

「彼の名は忌み名だ。口にすれば呪いをける。あれはそういう代だ。だから特に彼が目の前にいる狀況では名は呼ぶな」

そういうと、白きフォルトゥナはうっすらとはかなげに、照れたように微笑んだ。

「ああ、さすがアリアケ・ミハマ様。旅の星神シングレッタの加護を得た有史以來の方です。2つ目の試練も簡単に乗り越えられてしまいました」

「君が切り札と言うことは最初から察しがついていたんでな。切り札が敗れた以上、さっさと家に帰るんだな」

「左様ですか。本當に素晴らしいですね。好きになってしまいそうです」

「悪い冗談だな。それにこれから俺たちは君のことを『白い』と呼ぶ」

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すると、初めて彼は手で顔を覆うのをやめて、こちらを見た。

「ご提案頂いた通り、今日はこれで帰ります。呪い返しの法まで修めているとは予見違いでした。完敗ですね。あなたには乾杯というべきでしょうか。ああ、今のダジャレは恥ずかしいです。ただ……」

は言いにくそうにすると、

「ですが彼らがあなたと話したいと言ってきかないので、置いていきます。ご迷をおかけしますがよしなにしてくださいね」

なに?

いつの間にか彼の後ろから二人の男が現れる。

それは、

「アリアケええええええええええええええええ! てめえ、許さねえぞ! 許さねえ! 俺のどもをとりやがってええええええええ!!」

する男と、

「フォルトゥナ様のためにひとぎましょう」

淡々とした調子でアイテム使用の準備をする冷靜な男。

勇者ビビア・ハルノア。

そして、勇者パーティーのポーター、バシュータ・シトロであった。

「どうしてとは言うまい。やれやれ、お前らはいつもやっかいな相手に魅られるなぁ」

俺の呆れ聲に、

「うるせえ! 何を訳の分からない託を並べてやがる! アリアケ・ミハマぁぁぁああああ!」

不肖の弟子であり、今回もその真骨頂をいかんなく発揮する勇者ビビアが襲い掛かって來たのであった。

攻撃してきた勇者の攻撃をスキルで回避しながら、説得を試みる。

「馬鹿な真似はよせ、ビビア。お前はられているんだ。あの白いに!」

正気に戻れ、ビビア! というか、そもそもだ。

「デリアやプララは全然お前のではないだろう。そんな二人を盜った盜らないなど、そもそも立しない。とんでもない言いがかりだぞ?」

「はああああああ!? 二人は俺にべたぼれに決まってんだろうがあ! それになあ、アリアケええ!」

ニチャリと、ビビアが下卑た笑いを浮かべると、全員に聞こえるような大聲で、

「てめえこそ、大聖や他の人を、騙して、はべらせていんだろーがぁ!!」

と言ったのである。

騙す?

はべらせる?

どういうことだ?

俺は意味が分からずに首をかしげた。

一方、ビビアは俺を心底見下した表で、

「はっ! とぼけたって無駄だぜ! てめえが何かそいつらの弱みを握って連れまわしてるのは分かってんだ! どーせ悪鬼非道なてめえのことだぁ! とんでもねえ弱みを握っていいようにしてんだろうが!」

「そんなことは無いと思うが……」

「はん! てめえの意見なんか聞いちゃいないんだよ! てめえはいつもそうだ! 後ろの方で偉そうなことを言うだけで全くてんで役に立たねえ口だけ野郎さ!」

「うーむ」

俺は相変わらずポーターや支援職の重要の分からない、この不肖の弟子にどうしたものかと困してしまう。

だが、そんな俺の様子を怯んだと勘違いしたのか、ビビアは得意げになった。そして、

「そーら、そこのカワイ子ちゃんたち、このアリアケなんざ足元にも及ばない超絶最高イケメン勇者のこの俺、ビビア・ハルノアのパーティーに今なられてやるぜえ!」

ビビアは攻撃を仕掛けながらも、たちに話しかけたのである。

「アリアケなんかといてもいいことはねえぞ。つまらねえ男だ、そいつは! 趣味もねえし、剣の腕もねえ! 魔法だってろくに使えねえ! だから追放してやったんだ! この栄えある勇者パーティーからなぁ」

だからよ! と続けた。

「あんたらみたいな人はこんな奴のパーティーにいるのはもったいねえって! 俺のパーティーにくりゃあ、いくらでもいい思いをさせてやるからよう! 富も名譽も思いのままだぜ! 何より!」

ビビアは自信満々に、

「何よりこの俺様がいるんだからなぁ。こんな嬉しいことはねえだろう。なぁ!」

そう言い放った。もはや俺のパーティーメンバーが勇者パーティーへ加することが當然と言った様子で。

しかし、

「あの、冗談は顔だけにしてください、勇者様……」

「…………は?」

その言葉にビビアは何を言われたのか理解できず、きを停止させる。

それもそのはずだろう。

そのあまりにも辛辣なセリフを言ったのが、俺たちのパーティーの中でも最もおとなしい聖槍ブリューナクの使い手ラッカライだったのだから。

「先生は本當に素晴らしい人です。落ち込んでたボクを気強く勇気づけてくれて、長を見守ってくれました。修行の時も自分の犠牲を顧みずに稽古をつけてくれたこともあります。だからこそボクは……私は先生と一緒にいるんです! ずっと、これからも、ずーっと!!」

そう強く言い放ったのである。

それは普段おとなしい彼からは想像できない強い意志の表明であった。

というか、ずっとを余りに強調しすぎて、まるで一生一緒にいるような、誤解を與えるニュアンスになってしまっているぞ。

と、そんなことを考えていると、

「うむうむ! よく言ったのじゃ! ラッカライ! そなたが言わんかったら、儂のイライラブレスで、この辺り一帯焦土じゃったぞ!」

コレットが腕組みをしながら、勇者へ言った。

「小よ、よく聞くが良いのじゃ! 旦那様はこのゲシュペントドラゴンの末姫の見初めた相手よ! 1000年の封印がどのような苦痛であるか、そなたのような矮小な輩にはわかるまい。そんな儂を、まるで王子様のように旦那様は救い出し、同ではなく儂と向き合い、優しく言葉をかけてくれたのじゃ。このような慮外な力を持つ儂のようなものでも、一生ついて行っても良いと言ってくれた! ならばこの朽ち果てるまで添い遂げるほかなかろう!」

「んなぁっ!?」

コレットらしい堂々とした宣言であった。

ただ、ついてきてもいいとは言ったが、たかだか旅に同行することを、この朽ち果てるまで添い遂げるというのは、ちょっとオーバーな表現だとは思うが……。

などと思っていると、次にフェンリルが、

「まあ我はなぁ。主様の膝の上でまどろむだけよ。そうすれば片時も離れんで済むゆえなぁ」

狼らしいことを言った。片時も離れないというのは、彼らしい大人びた比喩表現だろう。

そして、最後に、

と! 怒りの! アリシアさんぱーんち!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオン!

「んぎあぁあああああああああああああああああああああああああああ!?」

聖剣の防をもろともせず、アリシアの全力の一撃が勇者へと吸い込まれると、その一撃で勇者が大きく吹っ飛ばされた。

「わ、わ、わ、わ、わ、わ……」

パンチを放った聖は、何かを言おうとして、顔を赤くしてパクパクする。

そして、

「わ、私のボクネンジンになんてことを言うんですかぁ!? 私の! 私だけのボクネンジンなんです! 最高のボクネンジンなんですからぁ!! 私のボクネンジンを馬鹿にしたら、マジで許しませんよ!」

ボクネンジン?

誰のことだ?

相変わらず彼の言葉は難しい。

だが、おそらく俺のために怒ってくれたのだろう。アリシアにも、みんなにも禮を言わねばなるまいな。

「ラッカライ、コレット、フェンリル、俺のために言い返してくれてありがとう。嬉しかったぞ。とはいえ、売り言葉に買い言葉とはいえ、奴のパーティーにりたくないからって、ずっと俺といてくれるというのは、ちょっとオーバーな表現ではあると思うがな」

「うーん、樸念仁ですねえ」「のじゃ。なんたる樸念仁」「これはひどいのう」

「ん? 何か言ったか?」

「「「さあ」」」

たちは首を振った。

ああ、それと最後に、

「アリシアもありがとう。ええと、君が何を言っているのかは分からなかったが、とりあえず今しばらく俺と一緒に來てくれるということでいいんだな?」

「うわあああああああん! ですよねえ、伝わってませんよねえ! ていうか、周りのみんなの子力が高すぎませんか!? 聖さん周回遅れじゃないでしょうか!?」

なぜかわめきだした。

「うーむ、やはりアリシアの言葉は難しいな……」

と、そんなやりとりをしている間に、

「やれやれ、薬草を多めに持ってきてよかったですよ」

バシュータが吹っ飛ばされて瀕死になっていた勇者ビビアをかついで戻ってきた。

ビビアは気絶している。

「勇者さんが先走ってしまったんで、今日の勝負はひとまずお預けっすね。ではでは、またの機會に」

「逃がすと思っているのか?」

「ええ、もちろん。ていうか、もう逃げてますんで」

「なるほど、これはやまびこ草で數秒前の映像を映し出してるわけか。本當に優秀なポーターだよ、お前は」

この聲はもう聞こえていないだろうがな。

やまびこ草の効果はせいぜい數秒。

徐々に勇者とバシュータの姿はあせて消えていく。

デリアやプララは白いが回収したのか、いつの間にか跡形もない。

まぁ、最初から捕まえようと思っていたわけではないし、彼らが何かしらの手段で逃げ出すのは想定の範囲だ。

下手に刺激して、あの奇妙なと対策もなしに戦うような事態になるよりかは、相手が撤退している間に、一度報を整理した方がいい。

そう俺の直が告げていた。

いや、それにしても、

「なんとも風変わりな相手が出てきたものだ」

は何となく察しがついている。

「さっさと俺は田舎でスローライフをしたいだけなんだがなぁ」

俺は大きくため息をついたのであった。

ありがとうございます!

第1巻は発売後、大人気で即重版しました!

Web版から大幅加筆修正・増量しています。

気になる方はWebだけでも大丈夫ですが、無料『試し読み』だけでもどうぞ! 買ってもらえたらもっと嬉しいですが(;^_^A

https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/series/detail/yuusyaparty/

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