《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》85.親子喧嘩と外的政略結婚

2021.3.23大幅修正

2021.3.24大幅修正(申し訳ないですm(_ _"m))

85.親子喧嘩と外的政略結婚

俺は今、臨時で設けられた外のテーブルに座っていた。

ここは聖都セプテノからし距離のある場所に建てられた離宮であり、賓客《ひんきゃく》などをもてなすための場所だ。

そこには、聖都セプテノを破壊しようと襲來したゲシュペント・ドラゴンの王『シャーロット・デュープロイシス』とその腹心『フレッド』が対面に座っていた。

一方、人間側も聖都の重鎮たち、そして俺たち賢者パーティーがそろい踏みし、今後のことについて話し合いが持たれる予定であった。

しかし……、

「この馬鹿娘め! そんな人間のどこが良いというのだ! 目を覚まさぬか、コレット! 我が娘よ!! せっかく再會できたというのに、この親不孝者めが!」

「いかに父上と言えども、その言葉は聞けぬのじゃ! なんでわかってくれぬのじゃ! さっきも話したじゃろ? 旦那様は儂の唯一の乗り手! 儂を救ってくれた恩人でもあるのじゃから! 儂は一生旦那様と一緒にいると誓ったのじゃ! ラブラブなのじゃ!」

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「ラブラブだとおおおおお! 父は! 父は許さんぞ!」

「父上の許しなどいらぬのじゃ! のじゃのじゃ、プイ!」

先ほどからずっと激しい親子喧嘩の真っ最中なのであった。

ちなみに、俺がここにいる理由は、大教皇リズレット・アルカノンに、この聖都を救った英雄として、ぜひこの協議の場に同席をお願いされたからだ。その要請に俺は、アリシアを助けることにもつながると思い出席しているのである。

人とドラゴンの外の歴史は長く、険しい。時に両者がを爭う戦いを起こしたこともある。

だから、人類の切り札である俺を引っ張りだした大教皇リズレットの思は理解できた。どうしてもドラゴンの強大な力に人類は見劣りするから、外渉を有利に進めるために俺と言う超越的な存在が、控えめに言って人類には必要だからだ。

なのだが、

「人間如きにほだされおって! 父は許さぬ! 弱な人間に娘はやれぬ!」

「旦那様は弱ではないわい! 儂をかっこよく王子様のように助けてくれたのじゃ! 今思い出しても、くううう、かっこいいのじゃ。……それにそれに、さっき父上にも旦那様は勝利したのじゃ! 父上自慢のブレスを余裕で防いでいたのじゃ! さすが旦那様! 儂の旦那様は世界一なのじゃ!」

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「あ、あれは違う! そう違うぞ! 本気じゃなかったからな! ちゃんとした戦いで俺を倒さぬ限り、娘は絶対にやらんからな!」

「この頑固父上! じゃが、旦那様は100回やったら100回父上に勝つのじゃ! だって旦那様なのじゃからな! のじゃ!」

「馬鹿娘が! そんなわけあるまい! そんなことがあったら尾で皿を回してくれるわ!」

バチバチと。

両者の間で火花が散った。

うーむ、どうしたものかなぁ。

と、そこに。

「あの、ちょっとだけいいですか?」

そんな犬も食わない親子喧嘩の間に、ローレライがあっさりと口をはさんだのだった。

さすが、これくらいできないと、大教皇の娘なんてやってられないのかもしれないなぁ、と妙に心した俺である。

「ところでコレットさん。本題に行く前に一つだけ質問なんですが」

ローレライはそう前置きしてから、

「どうして、この方をさっきから父上と呼ばれてるんですか? それが私、さっきから気になって気になっているのですが」

「んん? 俺のことをか?」

彼は……。いや、そう彼は、首をかしげてから自分の人としての(・・・・・)を見下ろした。

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ドラゴンの巨のままでは離宮にることは出來ない。だから彼らは人化して室してきたわけだが、

「俺がいつオスだと言った?」

「でも俺とか言ってますし、父上とか言われてるじゃないですか?」

「王は尊大に振る舞うものだ。禮儀正しくするのは、そうだな、この隣に座るフレッドの仕事といったところか。それに父上と言うのは、同胞の頂點ゆえ、尊稱で呼ばせているにすぎぬ。わかったか、大教皇リズレット・アルカノンの娘よ」

「そうだったんですか」

ローレライは納得してうなずいた。

俺はもう一度シャーロットの方を見る。

俺もてっきり最初は男《オス》だと思ったのだが……。

人化したシャーロットは、の大きくあいたドレスのような服をきていて、また、コレットと同じ赤銅のような、長くしい髪をばしていた。

完全に(メス)のようだ。

そもそもシャーロットと言うのは名だしな。

「ふん、腰が折られたわ。いや、あえて折ったのか? ふん、まあ良い。アリアケとやらが俺のブレスを防いだのは事実。だが、正式に俺と戦って勝たぬ限り娘はやらぬ! これはゲシュペント・ドラゴンの王としての矜持の問題だ! 100回やれば、100回貴様が勝つというのなら、この勝負けるがいい、小僧……。いいや、賢者アリアケよ!」

ふ、なるほどな。ドラゴンとして負けるわけにはいかないということか。

力を誇りにするドラゴンの思考としては當然だな。

「まぁ、確かに俺が勝利したとまでは言えない。最後に地上にシャーロット王を墮としたのはコレットだしな」

それにあんな局所的な勝利は大局的には別に意味はない。ゆえにこだわるつもりはない。

「む! そうだ、その通りだ! お前、いや大賢者よ、なかなか分をわきまえているではないか!」

獰猛な笑みを浮かべて笑う。

「……ただ一つだけ言っておきたいことがあるんだが」

「なんだ?」

しかし俺は一點だけ訂正しようとする。

先ほどからなぜか、コレットの言葉をシャーロット王は曲解し、まるでコレットが俺に惚れていて、結婚を希しているかのように思い込んでいるのだ。

だからその誤解を解こうとして、

「彼に好意を持たれているのは確かだが、彼の言葉と言うのは非常に極端なだけでな。俺たちは決してそういう仲では……」

そう言いかけたところで、

「分かりました。では本題に行きましょう。その戦いにこの聖都の命運をかけてはどうでしょうか? そして勝利した暁にはコレットさんとの結婚も認める。そうすれば全て丸く収まります。ねえ、お母様?」

「いいわね! さすがローレライちゃん! 我が娘!」

「は?」

俺が言葉を発する前に、二人が意味不明なことを言い始めた。

俺は疑問を口にする。

「いきなり何を言い出すんだ、ローレライ。それに大教皇よ……。なぜ俺とシャーロット王の戦いに聖都の命運が関係ある?」

「それはあなたにかけるのが一番分(ぶ)がいいからに決まってるからよね! あなたを置いてこの窮地《きゅうち》を救える人は世界中見渡したっていないのだから!」

そう力強く言い切る。

いや、それはそうなのだろうが……。

「シャーロット王、今回聖都にやって來た目的は、『地下封印(アビス)』の封印が解けかかっているから。そのために私たち人間とドラゴンの盟約をこちらが破棄したと斷じたからね?」

アビスに地下封印か。それが俺とアリシアを政略結婚させようとしたきっかけである、教會の危機とやらの正なのだろう。

「その通りだ。そなたら弱な人類に、やはりアビスの封印を任せ続けることは危険……」

「なら、問題ないわね! だって、あなたと対抗しうる存在、私たち人類の切り札であり、救世主たるアリアケ・ミハマ君が、アビスを再封印するのですから!」

「なに! こやつがアビスの封印を!?」

「その通りよ! もしあなたにアリアケ君が勝てば、私たち人類がアビス封印の擔い手としてふさわしいことを証明になるでしょう?」

「むむ、確かに……。萬が一だが……もし、俺より強い者が封印するというのなら文句はない……」

いやいや。

お前は俺を認めていないんじゃなかったのか?

「良かろう!」

そう勢いよく、シャーロット王は咆哮するように言ってから、

「この俺を倒し、アビスを封じ、人類を救って見せよ、大賢者アリアケ・ミハマよ! そして、萬が一、萬が一だが、もしも俺を倒したその暁には! 人の仔よ! 我が娘、コレット・デュープロイスを伴として迎え、我らドラゴンと人類の平和と共栄の象徴となるがいい!」

そう宣言したのであった。

「いやいや、そんな政略結婚みたいなのは、コレットも嫌がって……」

「ぬわんと!? 旦那様は絶対勝つから、儂ってば旦那様と絶対結婚できるのじゃ!?」

「あれ? 嫌じゃないのか?」

「何を言うか旦那様! やったのじゃやったのじゃ! それに儂は末姫ゆえ政略結婚みたいなもんには慣れておる! あっ、もちろん旦那様とは政略結婚じゃなくても、もちろんそのう、あれじゃぞ? ずっと一緒におるつもりだったのじゃぞ? きゃっ!」

俺はよくわからずに混する。本當に心は分からない……ので、一旦置いておこう。

思考をシャーロット王との戦いとやらに向ける。

とはいえ、戦いに関しては、まぁ、無論負ける気はないが……。何はともあれ、

「お前らちょっと落ち著かんか」

俺は呆れた調子で言う。いくら何でも勢いで決めすぎだろう? もちろん、俺が戦えば勝利はするが……。

だが、

「そうですよ、皆さん、ちょっと落ち著きませんか」

そう同調して言ったのは、ドラゴンのフレッドであった。彼は朗らかな調子で言葉を紡ぐ。

「シャーロット王よ、そのような戦いで私たちの命運を決するのはよくありません。今回の遠征の目的である『家出した(・・・・)コレットお嬢様(・・・・・・・)』を発見したのですから、あとは當初の目的通り、人族を排除したうえで、地下封印を我らドラゴン種族によって破壊しましょう。大丈夫です、王の力ならそれが可能です」

「フレッド。ふうむ……」

シャーロットが考え込む。

すると、そのフレッドに向かって、コレットがなぜか不思議そうな聲で言った。

「フレッドよ、そなた今、儂のことを『家出した』と言ったか?」

「はい、そうですが?」

ふむ、と彼は首をかしげながら、

「儂はドラゴンの権能の弱さ故、追放されたんじゃが?」

「何、それは本當か!?」

コレットの言葉にシャーロット王は初めて聞いたとばかりに驚く。

そう、彼はドラゴンの4つの権能。『長大な壽命』『自己再生』『破壊力』『空の支配』

これらが余りにも弱いためにドラゴンの里を追放され、その後あの魔導士に捕縛されたのである。まぁ、本當はそういう呪いがかかっていたのだが。

しかし、

「はははは!」

フレッドが張り付いたような微笑みを浮かべたまま言った。

冗談を、何をおっしゃいますか、コレットお嬢様! 直系の姫にそのような仕打ちをする訳がありません! シャーロット王よ、コレットお嬢様はどうやらまだご立腹の様子。追い出されたと當てつけをされているのです。し時を置いて冷靜になってから再度お話をされた方が宜しいでしょう」

「むむ? 儂は本當のことを言っておるのじゃが?」

コレットは反論するが、

「ふむ。ここは外の場。確かに日を改めて親子の事は冷靜に話しあった方が良いだろう」

シャーロット王は納得する。

「だが、それはそれとして、フレッドよ、俺は決めたぞ! アリアケと決闘し、アビスの扱いを決めることにする! これは王の決定である!」

「……そう、ですか……。はは、かしこまりました王よ。……それに余り長居すべきではなさそうだ」

フレッドが何やらブツブツと言っているが良く聞こえない。

「ではな、救世主、大賢者アリアケよ! また後日、そなたとは『聖都』、いや世界の命運をかけて正々堂々と勝負しようではないか! 俺もドラゴンの誇りをかけて戦うぞ! 人族の英雄よ!」

やれやれ。

俺は嘆息する。

思った通り厄介ごとに巻き込まれてしまったようだが、

「シャーロット王よ。まだ俺には事態がよく呑み込めていないが、人族と竜族の命運がかかっているというのなら、俺が戦わざるをえまい。いいだろう、後日相応しき場で、人の矛にてドラゴンの王よ、お前を空から打ち落とそう」

俺くらいにしかこの難局を乗り越えられる者はいまい。

選ばれた人間と言うのはこういう苦労を背負いこまねばならないから難儀だ。はぁ。

「ふははっはあっはは! それでこそ人の英雄よ! 気概のある! だがまだ認めておらんからな! まだコレットをやると決めたわけではない! そこんところを勘違いするでないぞ、人間!」

「いや、そこは、そちらが大いに勘違いを……」

「はーっはっはっはっは! ではな!」

そう言って、シャーロット王は立ち上がると、なぜか上機嫌で部屋から立ち去って行った。

フレッドはそのあとを追い、最後にちらりと俺と、コレットの顔を見てから、立ち去って行った。

ちなみにその後姿を見ながら、

「これで順番が一つ進みますね。なんでも順番とのことですから」

「こ、こやつ……まさか……」

呟くコレットの姿に、フェンリルが珍しく戦慄の目を向けていたりした。

「ああ、大変だわ!」

と、次は、大教皇リズレットが今気づいたとばかりに悲鳴をあげた。

「まったく、次から次になんだ。今更、ことの大きさに気づいたのか、大教皇?」

「そう、そうなのよ、いやー、まいったわねー」

リズレットは焦りながら、

「大聖とゲシュペント・ドラゴンのお姫様とのダブル結婚ってことでしょう! ちょっとこれは普通の教會で式を挙げるだけでは足らないわね!!」

「「はぁ??」」

俺とアリシアの疑問に、リズレットは自信満々といった風に、

「でも大丈夫! なら聖都『セプテノ』全土をあげての結婚式にしちゃえばいいんだから! 安心してね♪ 財務長! 會計主管! 誰かある誰かある!」

「安心できる要素が一つもないんだが!?」

俺は思わずツッコんでしまう。

だが、彼弾発言はそれでは終わらなかった。

「それにそれに、アリシアちゃんのご両親にもそのあたり説明しておかなくっちゃ!」

「……へ?」

アリシアの素っ頓狂な聲が響いた。

「ご両親? へ? どうしてお父様とお母様の話が出てくるんですか?」

「あれ?」

リズレットは首をかしげてから、

「言ってませんでしたか? 結婚するんだから、やはりまずご両親に説明しないといけないでしょう。だから気を利かせて、あらかじめお呼びしておいたんですが?」

「ぜんっぜん、聞いてませんよ! このアンポンタン大教皇様!?」

今度はアリシアの悲鳴が響いたのであった。

ありがとうございます!

第1巻は発売後、大人気で即重版しました!

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