《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》89.ラッカライをぶ
2021.4.19大幅修正
89.ラッカライをぶ
~ラッカライ視點~
時はしさかのぼります。
先生とアリシアお姉様がお二人で湯あみをされることになったので、ボクは覗きたい気持ちを押さえるために玄関先に出ていました。
いちおう、姉妹の誓いによって、順番を決めてありますので、お姉様と先生が一緒になるのは納得しています。
ブリギッテ教は強い男やが、異を何人娶るのも自由と言う、ある意味ぶっ飛んだ宗教観ですので、その教徒たるボクには問題ありません。
とはいえ、嫉妬がないと言えばウソになるでしょう。
嫉妬というより、うらやましいと言いますか、羨といったところですかね。
ああしてご両親が公認で、お二人の結婚を後押ししようとしているのですから。
「うらやましいなぁ!」
本當に、羨ましい限りです。ボクだって先生と二人っきりでお風呂にったりしたいです。
それで、先生のお背中を流したりして差し上げたい。
そ、そ、そ、そ。
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「それに、場合によっては私のなんかも、先生に洗ってもらったりして! それでその流れのままに、先生のことをあ、あ、あ、して……きゃっ、やっぱり恥ずかしい!」
ボクは聖槍をブンブンと振り回しました。
と、そんなボクに対して、
「いつからそんなふしだらな娘になった! ラッカライよ!」
その聲にボクは、
「お……お父……様。ガイア棟梁様!」
久しぶりに再會した父の聲に驚いたのでした。
「どうしてお父様がここに?」
「ふん! ラッカライ、お前が勇者パーティーを追放されたうえに、アリアケなどという、やはり勇者パーティーを追放された無能と一緒にいると聞かされてな! 連れ戻しにきたのだ!」
「連れ戻しに?」
「そうだ! さあ、早く家に帰るぞ。アリアケなどという得のしれない無能と一緒にいても、絶対にお前のためにはならん! 勇者パーティーを追放される程度のおまえの腕なら、やはり儂の手で直々に鍛えねばなるまい」
そう言って、ボクを連れ戻そうと手をばしますが、
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「それは困ります、棟梁様」
「な……に……?」
お父様は驚いた顔をします。
それもそのはず。今までボクが……。私がお父様の言いつけを破ったことなどないのですから。
「口答えするのか、娘のくせに!」
「娘であるからこそ、お父様の間違いは正すべきだと思いまして」
「なっ!?」
あっさりと言い返す私に、お父様は顔を真っ赤にしながら、口をパクパクとします。
どうやら、私が言い返してくるのが本當に意外のようです。
思い返すに、私は人の顔ばかり見て生きてきたのでしょう。
「娘の反抗期につきあっている暇などない! いいから帰るぞ!」
「帰る理由がありません、ガイア棟梁様。前提が間違っているんですもの」
「なんだと?」
「だって、ボクは……。私はアリアケ先生のもとでとても強くなることが出來ましたから。勇者パーティーに追放された私を見捨てずに鍛えてくれて、前試合では勇者さんたちをやっつけることが出來ました」
「あんな無能にお前を鍛えることなど出來るはずないだろう!」
お父様はボクの意見など聞くつもりはないようだ。
それは別にいいんだけど。
でも、なんでだろう。このは……。
「ねえ、お父様……」
「なんだ?」
「さっきから先生のことを無能無能とさげすむように言うのはやめてもらえませんか?」
「無能を無能と言って何が悪い!」
その言葉に私のどこかが……。
「では、先生が本當に無能かどうか。確かめてみてはどうですか?」
「ふんっ、どうやって!」
「簡単です」
私はそう言いながら、聖槍ブリューナクを構えます。
「先生の今や唯一の弟子たるこの私を倒してみることです。お父様」
「なっ!?」
まさか、そんな提案が私の口から出るとは思っていなかったのかお父様は驚かれます。
「正気か! この棟梁たる儂に勝てると本気で思っているのか!」
「……」
「言っておいて怖気づいたか! だが、お前の提案は愚かだが都合が良い! し痛い目を見て目を覚まさせてやる! おまえが気づいたときには屋敷の中だ!」
チャキリ。
私はただ無言で槍を構えます。
戦いにおいて言葉は不要。ただ、相手のきに合わせて、後の先、その攻撃を制するのみ。
「喰らうが良い! 流星槍(りゅうせいそう)!」
強烈な突きがお父様から放たれました。本當に私を一撃で昏倒させるつもりの容赦のない一撃。昔の自分であれば決して防げない神技ともいえる素晴らしい一撃。
でも!
「邪龍一閃・弐の型!」
「なに!? それは聖槍のユニーク・スキル!? いつの間にそんな技をッ……!? 儂の衝撃波が打ち消されたじゃと!?」
「しゃべっている暇はないですよ! 派生! 邪龍一閃・參の型!」
「消失した魔力が聖槍の先端に集中して……!? ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
私の一撃は、お父様がとっさに防ぐために盾にした槍の柄の部分へと吸い込まれた。
槍はたちまち崩壊します。
その衝撃は余りに大きく屋敷全を揺るがしました。
「ぐ、ぬぬぬぬ。何とか防げたが……。これはまさか、この儂が……。けをかけられたというのか……」
それは分かってもらえたようです。
さすがに実のお父様を殺すわけには行きませんからね。
「これがアリアケとかいう輩の力というわけか……。お前の聖槍の力を引き出したとでも言うのか!?」
「はい! お父様! これでアリアケ先生が無能でないことはご理解いただけましたね?」
「む、むううう。そ、そんなわけがっ……! そんなわけがっ……!」
悔しそうにしています。
それにまだ納得してくれていないようです。
でも、
「伝えたかったのは、それだけではありません! このラッカライ・ケルブルグは宣言します! もう二度とお父様が私の先生を悪く言うことが無いようにはっきりとここに宣言します!」
「?」
ぽかんとするお父様。
それに、何だか後ろからドヤドヤと。
何事かと駆けつけてくる足音がいくつか聞こえてきますが、気にしません。
「この私。ラッカライ・ケルブルグは、アリアケ・ミハマ様をしています!」
「……は?」
呆気に取られていますが、続けます。
「先生は、私を深い闇から拾い上げてくれて、ここまで私を連れてきてくれた世界で一番敬する人です。だから」
私ははっきりと、
「我が槍は既にアリアケさんに捧げました。お父様を倒したのはアリアケ様へのの力です!」
そう宣言したのでした。
「あ、!? いや、それよりも、や、槍を!? 槍を捧げたというのか!? それがどういう意味か……」
「武人が槍を捧げるということの意味など、言葉にするまでもありません」
私の言葉に、お父様はみるみる顔を真っ赤にし、鬼の様な形相になり、
「なんということを! 認めぬ! お前が長できたのは、これまでの儂の鍛錬があったからこそ! そこに偶々現れたアリアケとやらが果を橫取りしただけじゃ!」
「お父様!?」
なんてことをいうのでしょうか。
でも、ボクはし違和を覚えます。
棟梁様は確かに意固地なところがありますが、ここまでではなかったはずなんです。
「許さぬぞ……。許さぬ。アリアケ・ミハマも。そして、儂の許可も得ずに勝手に弟子りしたお前も絶対に許さん! 覚悟するがいい!」
お父様はそう言って、さっそうと待たせていた馬に飛び乗ると駆け去っていきました。
「まだ話は! くっ、行ってしまいましたか……。何だか余計に大事になってしまった気がします」
とそんな頭を抱えている私の後ろから、
「いや、なかなか良い啖呵《たんか》じゃったのじゃ! ラッカライ! さすが我が弟子!」
「我も聞いていてスカッとしたのう。カッとならずに主様がいかに優れた人であると冷靜に伝えるとはなかなかのものよ」
「はい、私もしました!あんな風に好きな人へのを高らかに歌い上げるなんて、なかなかできませんからね! アリアケ様ご本人に聞かせてあげたいところですね♪ アリシア様にコレット様と來て、ついにラッカライさん! カオスっぷりが素敵ですね!」
「それだけは勘弁して! ボクの心臓が止まっちゃいますよ!?」
そんなやりとりが、先生とアリシアお姉様がお風呂タイムをしているときにあったのでした。
でも、これはあくまでケルブルグ一族の話。
私が先生にご迷をかけないように、ちゃんと収拾しなくちゃ……。
そう思いを決めるのでした。
~?????~
「許さぬ……。儂の娘が儂の許可も得ずに槍を捧げるなど」
「そう。あってはならないことですね。ガイア・ケルブルグ」
「娘は親の……父親のいうことを聞くべきなのだ。それなのにアリアケなどという似非賢者に騙されるとは。なんと愚かな……」
「やはり娘は、父の手元で育てるべきだったのでは?」
「その通りじゃ。不埒で下賤なアリアケから、愚かな娘を取り返し、再教育をせねばならぬ。儂だけにラッカライの人生を決める権利があるのだから」
「ええ、その通りです。ではどうされますか?」
「力が……。力が必要だ。全てを思いのままにする力が……」
「分かりました。ガイア・ケルブルグ。娘を思うしい父の真心を見た思いです。ではあなたに、4つの権能を與えましょう。≪長大な壽命≫、≪自己再生≫、≪破壊力≫、≪空の支配≫」
「ああ、ありがとうございます。????様」
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