《【書籍化&コミカライズ】勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖、お前に追って來られては困るのだが?》92.教會侵編 ~その1~
92.教會侵編 ~その1~
俺たちは大教皇リズレット・アルカノンの執務室へと招かれた。
ソファに腰かけて、出された紅茶や菓子を口に運ぶ。
コレットたちを待っていようかと思ったが、
「とりあえず報告だけ先に聞いてしまっても良いかしら? あなたたちが會ったフォルトゥナとやらについて」
とリズレットが言った。
話し合いならともかく、報告は先にしてしまった方が効率が良い。
というわけで、さっさと俺たちが出會ったあの『白き』について報告する。
「なるほど、私が貴方たちを呼んだのをどうやってか知り、妨害に出た訳ね。幸い、アリアケ君が規格外だったおかげで事なきを得たわけね」
「奴は俺のことを『切り札』と言っていた。あなたが提案したアリシアとの婚姻とも何か関係があるんだろう?」
「まぁ、そんなところね!」
彼は紅茶をズビーッと勢いよく飲むと、
「元々、この聖都には不思議な噂話があったわけ。白いしいが現れると、それまで普通に過ごしていた人が、突如として殺人鬼になってしまったりだとか、一夜にして人格が変わってしまう、みたいなね」
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「出來の悪いホラーのようだが?」
「もちろん! も葉もない噂だったわけ! でも……」
彼は長い髪をくりくりといじりながら、
「ここ最近になってその白いを見たって人が頻発しはじめたのよ。で、案の定、変な事件も多発しはじめた。も葉もない噂だと思っていたけど、これは只事じゃないなと思ったわけ!」
「それが俺をアリシアと結婚させてまで聖都へ呼び出そうとした理由なのか?」
「そうそう。あとはアリシアの報告でアリアケ君が超有能らしいことは分かってたから! 私は有能な人材に目がないのね!」
ふーん、と俺は思った。
噓は言っていないようだ。
(ただ、すべてを言っていないだけだな)
そう直的に見抜いた。
さすが、國教をつかさどる大教皇だけある。噓をついてはまずい相手を間違わない。
やれやれ、骨の折れることだ。やはり、偽裝結婚をして侵したことは正解だった。
「あとはあのドラゴンのことだが、地下封印《アビス》と言っていた。あれはなんのことなんだ?」
「この教會の地下には強力なモンスターが封印されていて、かつてドラゴンたちとの共闘によって封印しているわけ。その封印が最近し弱まってきているのよ」
「で、それも協力すればいいわけか?」
「え? あー。シャーロット王たちの手前、あんなじで啖呵切ったけど、そこはこのリズレット・アルカノンが命に代えても解決するから安心して頂戴! なーんていうと大げさだわ! 大船にのったつもりでいてねん♬」
やはり噓は言っていない様だな。
俺はこっそり嘆息しつつ、持っていたティーカップをテーブルに置くと、
「すまないがトイレを借りたい。どっちに行けばいい?」
「あら、それなら部屋を出て左に出てもらえればすぐですわ」
「分かった」
俺はそう言ってリズレットの執務室を出た。
さて、
「スキル≪構造解析≫開始」
俺はスキルを使う。
教會本部は様々な機能が集合した建だ。
1階は神學校で、2階から上が行政施設になっている。
だが、
「不思議なことに地下につながる階段がなかった」
これほど機能を詰め込んでいるのに、なぜか地下フロアが作られていないのである。
その理由は、
「ま、そうだよな」
俺はスキルを終了させて、右側の通路を直進しだした。
一見したところ、壁があるだけで、行き止まりのようにしか見えない。
しかし。
『ブオン』
俺が手をかざすと、その向こうに更に空間があることが分かった。強力な結界で空間がねじまげられているのだ。
そして、その先には、
「なるほど、垂直移床(リフト)か」
俺はためらいなく、その床の上に乗る。
スキル≪構造解析≫によれば、地下へと通じるルートは、この招かれた者以外はれない大教皇の執務室の前を通らないといけない上に、このリフトを使わなければたどり著けないようになっていた。
「地下封印(アビス)か」
ドラゴン(シャーロット王)はそう言っていた。
そして、大教皇リズレット・アルカノンは自分が何とかすると言う。
要するに、この世界をどうにかできる二人が、自らく必要を直接的にしろ、間接的にしろ表明しているのだ。
「今回の事件の核は地下《アビス》にあるようだな、やれやれ」
俺はもう一度ため息をつきながら、ゆっくりと下降を開始する。
世界の核心にれるために。
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