《現実でレベル上げてどうすんだremix》【防】と【回避】とmagic

{どうしよう

さっちゃん{つかれたー ちょっと休憩

さっちゃん{っておっとあけみんどしたん? 久坂君となんかあった?

{あ! さっちゃんお疲れさま 休憩中?

さっちゃん{そだよん もーあっつい! これ五月の気溫!?

さっちゃん{で、どしたん? なにがあったん?

{久坂君、不良みたいな人とどこか行っちゃって

さっちゃん{おおう!? 思ったよりバイオレンスな話だった!

景人君{何だかヤバいことになってるみたいだな 大丈夫か?

{あ、景人君も休憩?

さっちゃん{おつおつ~

景人君{うん、暁未 柚もお疲れさん

景人君{それで、久坂が不良と、っていったいどうしてそんなことに?

{うーん、実は私もよくわからなくて 道でばったり會ったと思ったら、そのままってじで

{向こうは久坂君のこと知ってるみたいで、久坂君もなんか、わかってる風ではあったんだけど

守久流君{ただの知り合い同士ではないのか? それは

さっちゃん{うおう! いきなり來たね守久流君!

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守久流君{ちょうど手が空いたところで目についたんでな

守久流君{普通に連れ立って遊びに行ったのではないか?

{私もそう思いたいけど、遊びに行くって雰囲気には見えなかったから……

{それこそほんとに、これからケンカしに行くみたいな

しおちゃん{わたしが様子見に行ってみようか?

さっちゃん{しおりんもいきなりだね! いつものこととはいえ

{それは危ないよ! もし本當にケンカだったら

{そもそも二人がどこに行ったかまでは、私もわからないし

しおちゃん{連絡つかないの? 久坂には

{うん というか、番號もアドレスもわかんない……

景人君{あれ? この間の日曜、誰か聞かなかったのか?

さっちゃん{そういえば聞いてなかった!! 不覚!

景人君{柚ならてっきり聞いてるものと思ってたけど

守久流君{連絡先は、明日にでも換しておくべきだな

守久流君{無事登校してくるのならだが

さっちゃん{縁起悪いこと言うの止ー!

しおちゃん{けど

さっちゃん{?

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しおちゃん{久坂ならなんか、ケロッとして學校來そう

さっちゃん{たしかに、すっごいそんな気がする!

「……久坂君」

端末を手にしたまま自室のベッドに仰向けになり、ぽつりと呟く暁未。

友人達とのやりとりで幾分軽くなった心。

それでもかすかな騒ぎが、どうにも彼の心からは消えてはくれなかった。

specialののひとつ、【防

姿勢を取り攻撃を防いだ時、けたの箇所が不明の原理で強化される力。試した印象だと、ただの素でもほとんど盾を構えたような堅固さというじ。ちなみにその検証自は、先輩方を殺した際の兇を、上空に放り投げてけるという方法で行った。

下手な刃くらいならば、それこそ真っ向からけても弾けそうな印象だったが……

「ぐ」

要は槍男の槍が、下手な刃ではなかったということ。

刺された痛みと不快きつつ、ひとまず俺は飛び退き穂先を引き抜きにかかる。

「あァ?」

一方、槍男の方も同様に後退。表から見て取れるのは、困々の揺。なんにせよ向こうも引いてくれたことで槍から抜けれたし、それに様子から追撃の心配もなさそうか。

ならば今のうちにと、〔治癒〕

そうして気づいたが、どうも〔治癒〕で治すと飛び散ったなども消え去るようだ。その様はどことなく、死が消える現象を彷彿させるような。

「……ナルホドなァ」

不意に槍男から、なにか得心したような聲。

「読めたぜ。――つまりおめえの“得”はその右腕ってワケか。刃けつけねェのか、それとも再生力が異常なンか……どのみちそれがおめえの、妙な余裕の源なンは間違いなさそうだな」

「……」

なんとなくだが、さっきから奴はなにか勘違いしているような。

なんというか、あちらとこちらで本的なルールの認識に齟齬があるというか。

けどそのへん、訂正しない方がこちらに優位に働きそうな気もする。相手に與える報は、ないに越したことはない。

「てこたァ、だ。右から攻めるのは得策じゃねェ……だったら、左かァッ?!!」

再度構え直し、突っ込んで來る男。

俺が右利きなのは間違いないが、別に【防】に左右で優位の差はない。

そしてどのみち、次の対処は【防】ではなく、

【回避】

(……相変わらず、妙な覚だな、これ)

以前試した時と同じことを思う。【防】は防姿勢という“行”によって発するが、【回避】それとは違い、回避を試みようという“意思”だけで発狀態となる。

そしてその顕現も、の部位などの“外部”ではなく“面”――

【回避】を発すると、自の“覚が加速”する。

もっと単純にいうと、周囲の景がゆっくりとじられる。この覚で相手の挙、その把握が容易になり、それがひいては的確な対処にも繋がる……そういう力。

「――」

周囲のすべてがスロー再生のようにじる。とはいえ、別に俺自が加速するわけでもなく。

槍男の作は実に緩慢に見えるが、俺の作はそのきよりもなお遅い。

というかこれ、避けられるか?

明らかに間に合わないような。

槍の切っ先は、ほとんど俺のれる位置で――

そういえば、この狀態で魔法撃ったらどうなるんだろう。

〔火炎〕

「ごおェッ?!?」

ふと思いつきで放ってみた魔法。

至近距離に突如出現した〔火炎〕は、さしもの槍男も避けようがないらしく。

顔面に炸裂し、炎上。

「うぶ」

しかし同時に、【回避】による覚加速も切れる。

攻撃に転じた時點で【回避】は働かなくなるようだ。當たり前か。

槍は穂先もばっちりと俺の左脇腹を抉っておりううわなんだこれ痛気持ち悪。

けど、

「ぎ、ァ――ッ?!!」

予想以上に激しく炎上している槍男。上がったび聲も、炎に巻かれて掻き消えるほど。

なんにせよ、ここを逃す手はないだろう。

〔火炎〕〔火炎〕

「ア゛ッ、ァ……――?!?」

そう思い、畳みかけて魔法を連

部、下腹部との中心線を沿うように狙えば、いよいよ槍男は激しく燃え上がっていく。いやあっついあっつい。

熱気に堪らず後退しようとし、そこで奧からせり上がる刺激的な覚。

「え、ぶ」

嘔吐。というか吐。槍が腹部に刺さったままなのだから、當然といえば當然。

のせいで服がびしゃびしゃと生溫かく、にもかかわらずは芯から寒気がする。それに加えて、あってはならない兇(もの)がにある異

「っ! ぐ……っ」

さすがに俺も、これは堪える。幸い持ち主からはすでに手放されているので、気張って柄を手にして槍を引き抜きにかかる。失からくる指先の震えが煩わしいが、

「――う゛」

〔治癒〕

それでもどうにか引き抜き、同時に魔法も行使。

直前、栓が無くなった傷口からどっとが吹き出て肝を冷やしたが……

「……はあ」

魔法は問題なく効果を発揮し、傷は無事塞がる。ついでに溢れて制服に染みついたも、やはり綺麗さっぱりに。たんに消滅しているのか、それともに戻ったりしているのか……失による悪寒がないから後者か? それもなんか嫌だが……どのみちクリーニングに出さなくて済むなら、それに越したことはないか。

「あ、シャツ開いてら」

けどあいにく服までは保証対象外らしい。けどいくら超常の力とはいえ、そこまで求めるのは蟲がいいか。こうなるとやはり、上著をいでおいたのは正解だった。〔火炎〕でMPを使い切らなかったのも、思えば俺らしからぬ機転の利きようだ。

「……………………」

ふと見下ろせば、足元に橫たわる黒い人形(ひとがた)。

とりもなおさず、先程まで槍男だったものだ。あれだけ激しかった〔火炎〕による炎上も今は鎮火し、もうしわけ程度に煙が上がるのみ。やがてそれらも存在ごと徐々に薄れていき――

てててててててーんてててんてんてーん

〈レ〈レ〈レ〈レ〈レ〈レ〈レベルがあがりました〉

「んん゛っ?!」

予想どおり鳴り響いた効果音と合音聲は、しかし予想に反して多重奏。

その大音量に俺は、思わず変なびが出る。

「……なんだってんだ?」

訝りつつ、表示狀態になったボードを確認し、

――status――

name:久坂 厳児

age:15 sex:M

class:―

cond:通常

Lv:10

EXP:60 NXT:5

HP: 70/ 70

MP: 24/ 24

ATK:77

DEF:73

TEC:31

SOR:70

AGL:62

LUC:Bad

SP: 55/ 55

――magic――

〔治癒〕〔蛍〕〔浄化〕〔火炎〕〔雷鳴〕〔氷結〕

〔賦活〕〔解除〕〔防壁〕〔睡眠〕〔瘴毒〕〔消音〕

――special――

【防】【回避】

【警戒】

【挑発】【威圧】

【見る】

「ああ、そういう」

納得し、頷く。

レベルが3から、一気に10へ。

つまりあの音聲は、その分だけ鳴ったのだろう。だからって重ねて鳴らす必要もないだろうし、そもそもなぜわざわざ音聲でアナウンスする必要が……と疑問は湧かないでもない。

それより、急に上がったレベルの方が問題か。まあ十中八九、殺した相手が“レベル持ち”だからだろう。思えば槍男も、なにやらそれらしいことを言っていたし。

さておき、ボードをざっと眺める。上がったレベル數相応に、各數値も大きくびている。magicやspecialもなにやら増えているが、そのへんの検証は後でいいだろう。

今はひとまず、さっさと帰りたい。腹を刺されて死にかけたせいか、変にだるい。

ステータスの數値だけ見れば、健康そのものではあるんだが。

「てか、回復してんだよな。HPとMP」

そんなことにも、遅ればせながら気づく。〔火炎〕三回と〔治癒〕二回で、レベルアップ前のMPは空になっていたはず。レベル上昇に全回復効果がある、というのが妥當な線だが、それを確信するためには、次のレベル上昇を待たなければならないか。

なんにせよ、とりあえずは帰ろう。そう思って階段方向へ足を向ける。

「って」

そこで不意に、なにか固いものを蹴った。

なんだ? と思って足元を見れば――

「……消えねえのか、これ」

槍だ。

男の振るっていた槍が、奴が消えたまさにその場所に落ちている。

「……」

嘆息しつつ、なんとなく拾い上げる。槍は全が均一の素材のようで、質は金屬的。しかし鉄というじではなく、重さもどうもそれらしくない。いや重いことは重いが、扱えないほどではない。もっともレベルが上がった今の俺の覚が、一般的である保証はないが。

にしても、まただ。殺した奴の持ちが殘ったのは二度目。前回の不審者のスタンガンと、共通するのは兇という點だろうか。こうぽんぽん殘りが出るのは、俺の立場上あまりよくはない。

いわばこれは証でもある。痕その他は変わらず消えているから犯行の足はつかないはずだが、痕跡はないに越したことはない。

というか、槍だ。こんな大仰な、あるだけで問題とさえいえる。

「……隠すか」

し考え、目が向いたのは部屋の隅。機など、この建の備品だったろうが雑多に積まれている場所。そこに紛れ込ませてしまおうという淺知恵。もちろんあれらが運び出される段になったら無意味だろうが、部屋の真ん中にぽんと置いてある狀態よりはましな気がした。個人的には、そのまま取り壊しが始まって瓦礫に埋もれるのを期待したいところ。

そう思いつつそちらへ向かおうとし、

『……――ッ』

また足が止まる出來事が。

これは、あれだ。最初のレベルアップの時と同じ。なんかへんな緑

『――――るッ? ――、そ――……!』

ざらざらとした立的ノイズ。

けど前回と違って、そこからは微かな聲が聞こえる。

途切れ途切れかつ小さ過ぎて、なにを言っているかはまるでわからないが。

『きこ――、――っ、……――――ない……っ』

にしてもこれは、なんだ。やはりレベルに付隨する現象か?

ふと思い立ち、手にしていた槍をなんとなく緑に突き刺してみる。

「そい」

『?! ――……』

ばちっという靜電気のような音を殘し、ぷつんと消滅。

なにかまちがえたかもしれない。

「まあいいや」

あまり気にしないことにする。

気を取り直してごみの山に近づき、一応指紋等を拭ってからそこへ槍を隠し、

それからあらためて、俺は廃ビルを立ち去ることに。

ふと誰かに見られていた可能に思い至り、一応帰りはビルの別の出口から別の通りへと出た。

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