《現実でレベル上げてどうすんだremix》サメなので手足くらい生えるし魔法も使える

という風(サメ映畫界限定)

海に面して開いただが、浸水しているのはり口付近のみ。

そこからし奧からは上りの傾斜がつき砂地が出している。

そこまで這り砂地に上がったところで、

ごごん、と。

「お?」

背後でが、その口を閉じる(・・・・・)。

「……」

いや実際、最初を目にした時、海面で口を開けるでかい魚のようだ、とも思いはしたが。

真っ暗になってしまったので、ひとまず〔蛍〕を燈しておく。しかしまさか、これを活用できる日が來ようとは。

魔法のに照らされたは、見たじもそしてったじも、普通の巖としか思えない。

しかし普通の巖窟が口を閉じるはずもなく。

加えて閉じた瞬間から働き始めたのは、もはやお馴染みの【警戒】の覚。

「つまり、そういうことだよな、こりゃ……」

【警戒】の出所であるの奧を見やり、一人呟く。

新手の“レベル持ち”

そうでなくても俺を脅かしうる存在が、この先に確実にいる。

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しかし旅先で、しかも脈絡もなくこんな事態に出くわすとは……正直し、期待はしてた。地元で他の“レベル持ち”と遭遇できないなら、出先ならばあわよくば、とか。

そんな味い話そうそうないだろう、とも思っていたが……

あるいはこの先にいるのが並外れた脅威で、今日俺は死ぬのかもしれないが、

(まあそうなったらなったで、そんだけか)

どのみち、ろくでなしが一人死ぬだけ、と。

ここに這った時と同様、たいした気負いもなく俺はの奧へと進む。

はゆるやかに左へ曲がってから、以降はゆるく弧を描くような右曲がりに。なんとなくだが、巖場の外壁に沿って通じているような気がする。

【マッパー】は屋形式に切り替わったが、表示自は予想どおり全面真っ黒……と思いきや、黒地の中央に白抜きで“NO DATA”の文字が。報が取得できていないのではと思ったのも、あながち間違いでもなかったか。とはいえ、なんもわからんのに変わりはないが。

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そもそもは枝分かれもなく一本道なので、【マッパー】の必要じず。

上り下りはしたが、道のり自もさほど長いものでもなく――

「おお」

ほどなく行くと、開けた場所に出る。

ちょっとしたドームというじの空間で、広さは育館、の半分くらいか。

砂地のところどころに、巖や水溜まりのある底面。壁面はこれまで同様巖盤。

そして壁面上部と天面付近に裂け目かか、何箇所かから外れ、注いでいる。

心を刺激するような景。

それこそ、地元の小學生などが遊び場にしてもおかしくなさそうな場所といえる。

奧の壁際に、正不明の巨大生がうずくまっていなければ、の話だが。

「なあんだ、ありゃ」

思わず間抜けな聲が出る。

「――、…………」

唸りか、いびきか、そんなじの音を発している“それ”。

丸まった背に太い腕と、おおまかな形はヒトのようにも見える。

しかしその背からびるのは……ひれか?

飛行機の翼のような一対のそれは、まずヒトにはありえない部位。

むしろそう、鮫のひれ。も灰で、質もそれっぽいし。

「…………!」

「うお、起きた」

やおらを起こす謎生

膝立ちの姿勢になったその姿は……いや本當になんだこいつ。

幹、それに手足は、やはりおおまかにヒトっぽい。

膝立ちの姿勢で三メートル近くはありそうなので、ヒトでないことは明らかだが。

人間のほどの太さの、筋骨隆々の手足。前腕にもひれがついていて、指先には鋭い爪。長い尾も持つらしく、背後でそれがゆらゆらと揺れている。あ、尾の先はやっぱ尾びれなんだな、鮫の。

そして顔面、頭部は、これもやはりというかおおまかに鮫。

さらにはどういうわけか、頭頂部に磯巾著のようなものがついている。あたかも王冠のようなそれは……いややっぱ磯巾著にしか見えねえわ。うねうねいてるし。

「……、……」

一歩、二歩と、こちらに近づく謎生。歩法はヒトのものよりゴリラに近いか。腕と腳が同じくらいの長さなので、そうするしかないのかもしれない。

「で、本當にいったい、なんなんだ? お前」

「……」

試しに話しかけてみるが、返答はない。言葉が通じるのか、そもそもそれだけの知能があるのか……無(ね)えような気がすんなあ、見た目的に。

「――」

「?」

「――――――――!!!」

突如、咆哮。

「ぐっ……!」

巖壁をも震わせるかのような謎生びが、衝撃をもって俺のにも襲いかかる。

つかダメージった。HPにして8。鼓を痛めるような代でないのは幸いか。

ついでとばかりに膨れ上がる【警戒】の覚をけ、

「……とりあえずやる気はまんまん、か」

「……!」

向こうさんの気概を見てとり、溜息混じりの呟きが出る。

それを理解してかいないでか、まるで笑うかのように牙を剝き出しにする“それ”。

「まあどの道、」

〈name:??? class:大喰 cond:通常 Lv:?? HP:????〉

「レベルがあんなら、殺すまでか」

【見る】で出てきた案の定の表示に、一人頷く。

“Lv:??”――格上の“レベル持ち”

そしてなんだかわからん、鮫頭……巾著頭? ……いややっぱ鮫頭の、謎生か。

「とりあえずいろいろ試すか」

相手はでかく、加えて表示が“HP:????”。

これまでを鑑みれば、“?”の數はそのまま桁數を表す可能が高いと思われる。

的が大きく頑丈そうな手合い。magicやspecialを試すのにはうってつけか。見て明らかに異常とわかる力な以上、おおっぴらに他人に向けて使える機會というのは意外にない。……この場合相手はヒトではないがまあ、“レベル持ち”ではあるわけだし。

「んじゃ上からいくか」

ひとまず攻撃魔法から。〔火炎〕、〔雷鳴〕、〔氷結〕と、続けざまに魔法を放っていく。

といっても魔法の連続使用には溜めというか、使ってから次に撃てるまでに若干間が空く。前に撃った魔法が著弾し消えてから一秒……はないと思うが、とにかく斷続的な連となる。

「! ?! ~~!!」

ゆえに鮫頭への被弾は、ぼうん、ばちぃ、ぱきぃ、というじ。

予告も予備作もなく飛んで來た攻撃に、じろぎ頭をぶるぶると振る向こうさん。

やはりそれなりに耐久力があるのか、せいぜい小突かれた程度しか効いていないようだ。

鬱陶しさ七割、揺三割、といった様子でこちらを睨めつける鮫頭が、

不意に踏みこみと同時に、その腕を振り上げる。

「!!」

「おっと?」

すると作に合わせて出されるのは、水の弾丸。

かなりの速度に驚きつつも、ひとまずかわす。

背後でばしゃあ! と飛沫のような音。

「向こうも飛び道持ち、か」

「……!」

勢い數歩左へ行きつつ、頷く。

そんな俺を見て、ほくそ笑むような唸りを上げる鮫頭。『その程度、自分にも出來る』とでも言っているかのよう。

先程の向こうのmagic(?)、弾の大きさはバレーボールほどあり、速度も俺の〔雷鳴〕より速いかもしれない。しかし思えば、こういう魔法的な攻撃を他者にやられるのは初めてか。いきなり來ると結構驚くな。

「――――!!!」

鮫頭が、腕を無茶苦茶に振りまわし始める。

そのひと振りひと振りで飛んでくる、水弾の連打。

「よっと、っと」

しかし來るとわかっていれば、避けられない速度でもない。

【回避】の覚を使うまでもなく、とんとんと危なげなく弾道から跳び退いていく。

「おっと」

ただ、足場には気をつけた方がいいかもしれない。

ところどころにある水溜まりは、いくつか意外と深いものもあるようだ。近づかないとわからなかったそれを、つんのめりつつもなんとか跳び越す俺。

「!」

それを隙と見たか、鮫頭の狙いすましたような撃。勢的に避けるのは無理と判斷し、俺は仕方なく【回避】の覚を使いつつ【防】の左手の甲を構える。

「――っ」

ばちっ、と目の前で弾ける飛沫。

ダメージはないが、そこそこの衝撃。

無防備の脳天に喰らえば、おそらくしの間意識が飛ぶだろう。そんなじに威力を見積もる。

「そういや、あれ忘れてたな」

ふと思い至り、自分にmagicを使用。

使うのは〔防壁〕、〔障壁〕、〔守護〕そして〔悠揚〕。効果は順に理、魔法防力上昇、自に不利になるcondの防止、そしてHPが減った場合徐々に回復させる、といった合。

ようするに守りを固めたわけだが……これも正直、どの程度効果があるのかまだいまいち判然としないところはある。まあないよりはましだろう、程度の判斷。

魔法をかけながらも足は止めていない。止まったら水弾の餌食だから當然だ。

彼我の距離は十メートルほど。

線から逃れるよう左右にきつつ、機を見て次に放ったのは〔衝撃〕。

「!!?」

見えない攻撃に揺を見せる鮫頭。様子からして〔火炎〕等よりは、やはり効いているか。

不意に弾の連を止め、顔をうつむける向こうさん。

「……――――――――!!!」

「またか!」

それから両手を地べたにつけ、再びの咆哮。

とっさに両腕で【防】姿勢。同時に腕に走る衝撃。

先程よりは軽減できたかもしれない、と思って確認すれば、ダメージ0。

「~~~~~!!!」

「おおう」

三度の咆え聲に目を戻せば、こちらへ突っこんで來る鮫頭が。どうもダメージになる聲とそうでないのがあるらしい。前者はspecialかなんかで、後者はただの行か。

などと思っているうちに振り上げ、振り下ろされた鮫頭の大腕が迫る。せっかくだから、力比べでもしてみようか。橫薙ぎ気味に振り下ろされる大腕を、迎え撃つように拳を合わせ――

「――おげ」

ぶっ飛ばされました。

「っが! っは……!」

一瞬意識が飛び、気づけば膝立ちにうなだれていた。巖壁に叩きつけられ、そのまま落ちたのだろう。ぐわんぐわんと戻る視界から、俺はそんな風に當たりをつける。

まったく、完全に油斷していた。なめていた、ともいえるか。

あちらさんのが、膂力は圧倒的に上らしい。

加えて格差、重量差もあるだろう。というか普通に考えたらそうなるよな、という話か。

驕った、かもしれない。

非常識な力をにつけたとはいえ、

俺が今まで死なずにすんだのは、結局のところは“たまたま”でしかないというのに。

白いの――“切り裂きキラー”に遭った時にも、似たような油斷をしたにもかかわらず、

なんというか、學習しねえなあ、俺。

「そりゃ、殺されもするわな。わけわかんねえ化相手なら、なおさら……」

「…………!」

知らず、ぼそりと呟かれる獨り言。

その意味をわかっていてかいないでか、のしのしと四足で詰め寄ってくる鮫頭。

「……まあ、だからって」

牙を剝き出した、笑顔のような鮫頭を見上げ、

「素直に殺されてやるつもりは、ねえけど」

こちらも不敵に笑い返す――

そんなことが出來るのならば、多は気の利いた反応なのかもしれない、などと、

衝撃でまだぼんやりした頭のまま、なんとなく俺は思う。

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