《現実でレベル上げてどうすんだremix》あんまりらない方がいいところ

環境依存文字って使っても大丈夫なんですかね?(無知)

あらためて、階段を下り扉の前へ――行く前に、“cond:気絶”中の古幸に、念のため〔睡眠〕を重ねてかけておく。ただの気絶ではそのうち目を覚ます可能があるが、magicによる“cond:睡眠”なら自然に起きることはないはず。……たぶん。

この先にいるのが悪霊であれなんであれ、対処するならmagicやspecialは使わざるをえない。しかしそれを古幸に見られるのは……どうも気が進まない。喜連川には知られている現狀いまさらかもしれないが、だからこそいたずらにばらすこともないだろう、とも思う。

もちろん、古幸の場合知った時の反応が非常に鬱陶しそうだ、というのも大きい。

ならばここに至る前のどこかの段階で、寢かせて置いていってしまえばよかったのかもしれない。

実際、途中それに気づき、そうしようとも思ったのだが……

(古幸(こいつ)が“鍵”だったかもしんねえからな)

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この狀況の主賓は、おそらく俺でなく古幸。

そう思う拠は、彼だけが見たという幻覚。

寫真を見つけ、それが消えると次の扉が開く……そういう流れでここまで來たが、たぶんそれは古幸――幻覚を見た者でなくてはならず、俺だけが寫真を拾ったりしても駄目だったのだろう。元兇の過去の追験をさせるとかそういうのが、この狀況の趣向なのではないか。

それでも力押しでどうにかなったなら、遠慮なく単獨行したんだが……【鍬鑼振】込みの本気の蹴りでも破れない扉など、どうしようもない。“攻撃威力を最大四倍にする”【鍬鑼振】からの暴力は、おそらく現狀俺が出せる最大威力なのだから。

気を取り直して、今度こそ扉へと向かう。

その前に立ち、そこでふと、これが最後の扉と決まったわけでもないことに気づいてしまう。

……どうすっかな。もしこの向こうにもまだ扉があって、解錠に古幸が必要だったら。

(……まあ開けてみりゃわかるか)

逡巡はほんのし。いつもの適當さで、俺は扉を開く。

続く先は、長めの廊下。暗いが視界が利かないというほどでもないので、階段に燈した〔蛍〕(古幸の気を逸らして死角から放ったやつ)はそのままにして、すたすたと先へ。

幸いもう扉が行く手を阻むようなこともなく、

(この部屋が、終點か)

廊下を抜け、ざっと周囲に目を配る。

いくつか目につく調度は、ここが誰かを住まわせるための部屋であることをしめしている。一人の居室にしては余裕があり、しかし派手にき回るにはやや手狹――そんな広さ。

というか、地下に位置していることも鑑みれば、ここは居室というよりは、座敷牢なのだろう。

ってきた最後の扉も、思えば妙に頑丈そうだった。

であるならここは、はたして“なにを”閉じこめるための牢だったか。

「って、考えるまでもねえか」

部屋の中央奧に目を留め、獨り言。

『……………………』

その中空に浮かぶのは、なんとも形容しがたい真っ黒な靄の塊。

大きさは直徑二メートルほどで、形はおおまかに球狀。

〔暗闇〕の魔法にも似ているが、結構くっきりとした図形的なあれとは違い、

的になにやらうごめいていて、なんというか、いかにもそれらしい。

要はあれがこの部屋の、ひいてはこの屋敷の主。

此度の事態、その元兇。

『……ああ、きてくれたのね? わたくしの――、……ちがう。あなたはあのひとじゃない。あのひとじゃないのに、どうしてあのこをかばうの? あのことおなじ、わるいこ……ひとのすきなひとをすきになる、よこれんぼさん……ふふっ、ふふふふふ……っ!』

「喋った」

靄から聲が発せられ、し驚く。

けど古幸に“憑依”した時も喋っていたのだし、なら驚くことでもないか。

とはいえ言ってることは錯気味で、意思疎通ができるかはし疑わしい。てかなんだ『橫慕さん』って。文脈的に古幸のことなんだろうが。

『……わるいこには、おしおきするの。わたくしがうけたくるしみを、そのままあじわってもらって……ふふふっ! ほかのこたちも、きっといまごろすてきなゆめをみていましょう……ええ、わたくし、にくいの。たのしそうにいきているこたちは、みんなみんな、みなみなみなみなみなみなみなみな……っ!』

歪んだ、ぶつぶつとした呟き。

それがもれるにつれ、靄からの【警戒】のじがじわじわと大きくなっていく。

靄そのものも、もごもごとしたうごめきを増している。

『――あははっ! ……なのに、ねえ、どうしてあなたはおきているの? どうしてへやにとじこもって、しずかにゆめをみていられないのかしら……? ……さっきもそう。やさしくくびりころしてあげようとしたのに、どうしておとなしく、ころされてくれないのかしら……っ!』

そりゃお前、(古幸の)ステータスが足んねえからだよ。

そう思ったが口にせず、代わりにどうやって始末をつけるか考える。【見る】で確認できたのは、あれが“不死者”で“レベル持ち”なこと。毆る蹴るは、まあ無駄だろう。〔浄化〕が無難なところだろうが、あれは“レベル持ち”相手だと失敗したりするんだよな。當たるまで連発するのは、なんかたるい。

『……けど、そうよね。ひとのからだをかりてやったのでは、だめよね。くだすのはやはり、みずからのてでなければいけないわ――』

いっそこの際、新しく覚えたやつを試してみるのもいいかもしれない。

などと考えているところへ、

『――こんな、ふうにッ!!!』

さっきも聞いたような臺詞とともに、

真っ黒な靄があたかも突風のように、俺へと殺到。

『うふはははっ! じょうぶなからだでも、うちがわからならどうかしら? ひとのこころなんてみなみにくくて、もろいもの……さあ、あなたのよわさ、こころのうちすべて、わたくしのまえにさらけだすといいわ……っ!!』

まとわりつき、言葉どおり俺の中へと浸みこんでこようとする靄。

うわあやべえ油斷したな、などと思う間もなく、

『むしばんで、のっとってあげる……そうしてあなたのかわをかぶって、あなたのおともだちもみな、わたくしが、』

意識は真っ暗な靄に呑まれ――

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『いやああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』

――なかった。

「?」

しだけめまいのようなものをじたが、それも一瞬。

もとくになんともなく、靄がまとわりついていたりもしない。

というかその當の靄本は、部屋の隅っこまで後退し、こまってぶるぶる小刻みに震えている。

なにやらんだあと、あそこまで逃げたようだが……

いやなんか逆だろ。なんで取り憑いた方が恐怖してんだ。

『いやっ、こわい、いやあっ! やめてっ、わたくしをぬりつぶそうとしないでぇっ!!』

「しねえよ。つかしてねえよ」

俺のつっこみが耳にっていない……いやどこが耳かわからんが、とにかく半狂で聞こえていない様子。狂ついでに靄は震えを増し、加えてぼひゅ、ぼひゅっ、とあたりに小型の靄を吹き出し始める。

ばら撒かれた靄の小塊はボールのようにぽんぽん弾み、壁や調度に衝突するとべちゃあ、と弾けて黒い染みになる。なんかばっちい。

攻撃、なのだろうか。そう當たりをつけ、こちらに飛んでくるものは一応避けておく。

避けながら、そういえば忘れていた防系の魔法を自分にかけたりもする。これやっとけば、そもそもさっきの取り憑きも防げたかもしんねえな、などと思いつつ。

『あなたのなか、あなたのこころ……どうなっているのっ! ひたすらに、そこなしの、まっくろ――いえちがう、ちがうっ! わからないっ!! あんなの、にんげんのこころじゃないっ!!!』

なんか心外なこと言われた。

勝手に這ってきて勝手に恐怖して、逆切れもいいとこである。

しかし奴さん、俺の中にいったいなにを見たのやら。

こちとら別段腹を立てていたわけでも、いつもより機嫌が悪かったわけでもないのに。

つまり“平常どおりの俺”の心れてああなったわけだが……なおさら失禮な話だ。

まあ正直、

俺も自の心のなどいちいち完全に把握していないが、

なんとなく、まあそうだろうな、という妙な納得もある。

他人に平然と暴力を振るえるし、

人間を殺しても、とくになにか思うところもないのが、俺という奴なのだから。

「まあ、んなことはさておき」

切り替えるように呟き、あらためて真っ黒靄と相対。

なんかごちゃやってる向こうさんをつい見守るようにしてしまったが、

どうせ殺す相手にそんな必要、當然ないわけで。

……不死者を“殺す”というのもなんか変な話だ。“消す”が妥當な表現か?

とにかく俺は、特殊能力と魔法を使う準備を。

使用するのはまず、【三倍座】

『――っ!』

させた途端、になにかが膨れ上がるような覚。

向こうもそれを察したようで、錯している場合じゃないとばかりに、

をぶるりと震わせ、

『――、あああああああああっ!!!』

一瞬の溜めののち、び。

同時に吐き出されたのは、怒濤のような黒い煙の奔流。

見た目にそぐわぬ勢いでこちらを飲みこもうとするそれごと、

「〔極〕」

した魔法で、俺は迎え撃つ。

直後、

真っ白に染まる視界。

その先に一瞬だけ、黒い靄が見えた気がしたが、

『!?! ――……』

それもたちまち、暴力的な白にかき消されていく。

攻撃らしき煙ごと向こうさんを飲み込んだ【三倍座】併用の〔極〕は、

「わあお」

どうやらそのまま天井まで穿ったようで、

眩んだ視界が戻った時には、夜空に浮かぶ月までが拝めた。

表示がおかしかったらごめんなさい。

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