《現実でレベル上げてどうすんだremix》呪
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廃工場にやって來たのだ。
相も変わらぬ心がすさむような場所。すさむような心があれば、の話だが。
ここへ來た理由も相変わらず、力を使っての暇つぶしのため。
とはいえいつものような場當たりではなく、今日はあらかじめ試すmagicを決めて來ている。
試みようとしているのは、〔〕の魔法。
覚えたのは鮫頭を殺した時で、だから結構前なのだが、
その効果が効果だけに、今の今まで使うのを敬遠していたものでもある。
字面だといまいちよくわからないじだが、
効果はいってしまえば単純で、“対象の別を変える”というもの。
あえてしめす必要もないかもしれないが、
この久坂厳児、多數派に屬する自認の持ち主である。
だからになりたいなどという願とも無縁というか、そもそも今まで考えもしなかったこと。
だったらいちいち試す必要などないかもしれないが……
思い起こされるのは先日の、自宅で行われた喜連川らとの勉強會。
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その折、期せずしてどもの不可解さにれた俺は、つくづく思った。
ってわからねえ。
わからねえなら、なっちまえばいいじゃん、に。
……冗談半分の思いつきである。
ともあれ、というのがどんなじなのか、気になったのは事実。
ならばこれもいい機會かと、試してみようと思った次第。覚えたのに使わないのもどうかという、貧乏めいた考えもし。あとは、あれだ。もしかしたら実際使うことで、思わぬ有用がわかるかもしれない……ねえか、さすがに。
ともかくそんなわけで、まず〔結界〕で周囲への隠蔽工作を俺は施し、
「…………」
たっぷりためらい、
「……〔〕」
やがてあえて唱えて、それを発。
同時に、
「――っ?!」
かあっ、と、の中心から熱くなる覚。
やや遅れてぼうんっ、と薄紫っぽい煙が全からふき出て、それに包まれ――
「…………、……変わった、か?」
知らず閉じていた目を開け、すくんでいた、その背筋をばし、
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そうして呟けば、たしかに聲が、し高くなっている。
おまけに視點が、先程よりし低い。
つまり背がんで、聲が変わって。
「うお」
視線を落として、変な聲が出た。
部が、
男の板ではありえない、布地の盛り上がり方。
「……大きさは普通、か? いや、よくわからんが」
ついつい出る獨り言。だいたい喜連川くらいか、いやし小さいか。シャツの襟ぐりを広げて見えたそれと、海水浴での記憶を照らし合わせて、そんなことも思う。
の、他の部位も検めてみる。やはり全的にんだのか、服が上下ともだぼついてしまっている。上のTシャツの方はこういうお灑落と言い張ることも出來そうだが、下のジーンズの方はそうはいくまい。腰回りがゆるゆるでずり落ちてしまいそうだが、で引っかかってかろうじて止まっている狀態。
人目が無いとはいえ半けつでいるのもどうかと思い、とりあえずベルトで調節。
「そういや、顔はどうなってんだろな」
ふと気になる。
はなのに顔だけ元のままだったら……正直かなり気悪い。
端末のカメラで確認してもいいが……
「……ちょっと試してみっか」
ひとつ思いつく。
〔幻影〕の魔法で“鏡”を再現できないだろうか。
「やってみるもんだな」
発し、目論見どおり目の前に出現した姿見に一人頷く。
そうして確認した現在の俺の全像は……
正直あんまり、元の面影がない。
なんというか顔も含めて、全的にごく自然にだ。
頭髪が結構びていて、先程から微妙に覚えていた違和はそれか、とも気づく。
元の顔の面影も、かろうじてなくもないが――
「なんかどうも、見覚えが……?」
し考え、気づく。
そうだ。どちらかというと、俺よりも彌に似ている。
それこそあいつに姉がいたら、まさにこんなじなのではないかという顔。
そう考えると母親と、それから父親の面影もどことなくじる。彌は両者のいいところを絶妙に配合してあの顔立ちだが、その配合を微妙に変えたじが今〔幻影〕鏡に映っているそれだ。
てことは版の俺は、案外人なんだろうか。
……なんかこう、不な発想だ。自分の顔のよし悪しなど自分ではわからない……そういうことにしておこう。
「にしても……しっかし」
ためつすがめつ、〔幻影〕鏡の向こうを眺める。〔結界〕で人目を阻めているのをいいことに、屋外にもかかわらずシャツの裾を首元までまくり上げたりもしてみたり。
顔はさておき、つきは正直これ……かなりすけべなのではないか。筋量が減ったのか元の筋張ったじは和らぎ、代わりとばかりに全ほどよくついた脂肪が、そこはかとない艶めかしさを醸し出している、気がする。
志條の背を高くして、若干筋質にしたじ――知っているもので例えればそんなじ。……引き合いに出されてもいい迷だろうが。
「しっかし、なあ……」
似たような呟きが、また出る。
正味な話、かなり好みなじの形の仕上がり(?)。
にもかかわらずそういう(・・・・)気持ちがまったく湧かないのが、かなりの違和。
いや、いっても自分のなんだから當たり前だろう、ともたしかに思うが。
けどなにもじない最たる理由は、やはり今の俺がだからだろう。
なんだろうな、この、
好き放題できるがものすごく近にあるのに、まったくそんな気にならない現狀。
滅茶苦茶損している気がしてしまう。
「無え(・・)しな。なにより。當然とはいえ」
座に手をやりつつ、溜息。
元の狀態ならそこにあるべきものは、今は無い(・・)。
なんたる奇妙さ、そして心許なさか。
この狀態で勉強會の時の狀況になっても、たぶんなにもじないのだろう。
逆にあるいはこの狀態だと、賀集とかに変な気持ちを抱いてしまったりするのだろうか。
海での奴らの海パン姿を思い出そうとして、
頭を振って全力でその発想を追い出す。それは、駄目だ。危険思想だ。
「……狀態、か」
ふと思いつき、ステータスボードを出してみる。
――status――
name:久坂 厳児
age:15 sex:F
class:―
cond:転
Lv:80
EXP:3268 NXT:29
HP: 469/ 375▼
MP: 165/ 255△
ATK:436▼
DEF:323▼
TEC:204
SOR:639△
AGL:559△
LUC:Normal
SP: 3240/ 3240
――magic――
〔治癒〕〔蛍〕〔浄化〕〔火炎〕〔雷鳴〕〔氷結〕
〔賦活〕〔解除〕〔防壁〕〔睡眠〕〔瘴毒〕〔消音〕
〔醫療〕〔守護〕〔障壁〕〔衝撃〕〔影無〕〔幻奏〕
〔悠揚〕〔彩〕〔放棄〕〔魔玉〕〔幻影〕〔暗闇〕
〔天恩〕〔示現〕〔曝〕〔吸魔〕〔影〕〔魔封〕
〔蘇生〕〔極〕〔城塞〕〔即死〕〔隕星〕〔業寄〕
〔仮初〕〔製薬〕〔注〕〔収納〕〔念〕〔鈍速〕
〔獣化〕〔読心〕〔錬魔〕〔替〕〔歩加〕〔不〕
〔〕〔忘卻〕〔反転〕〔転移〕〔結界〕〔倍速〕
〔塩柱〕〔自〕〔核熱〕〔復元〕〔反〕〔停止〕
――special――
【防】【回避】
【鹿音】【八卦酔】
【手加減】
【広域化】【次連魔】【三倍座】
【霊召喚】
【警戒】
【挑発】【威圧】
【見る】
【マッパー】【マーカー】
見ればcondと、各パラメータが変化していた。
“cond:転”
この狀態だとHP、ATK、DEFが低下し、逆にMP、SOR。AGLは上昇するようだ。
それとHPとMP、どうも変わるのは最大値だけで、現在値に関しては“転”前のを引き継ぐらしい。そのへんの反映は、減った狀態のを回復させた時にあらためて、ということか。
……當然ながらsexの項目も変わっていて、そこがなんともいえない気分にさせられる。
「んん……」
ボードから顔を上げ、再び〔幻影〕鏡へと目を向ける。
ってどんなじなのか、気になったがゆえの此度の奇行であるわけだが……
「よくわかんねえな、正直」
素直な想がもれ出る。
が変われば神構造とかも変わったりするのかもしれない――そう考えていたが、そうでもないのかもしれない。なくとも元の狀態と今とで、自覚できるほどの変化は俺の中に見出せない。
このまましばらく過ごせば、あるいは別なのかもしれないが、
さすがにそれは勘弁というか、無理だろう。まず家に帰れねえ。
結局のところ、
になっても、はわからん。
いやあるいは、俺がわからないのは他人――人間か。
とか。
「……」
鏡を見ながら、そろそろ戻ろう、と思う。
〔〕の魔法は、もう一度〔〕をかければ元に戻るというか、解ける。
逆にそれ以外戻す方法はなく、たとえば今唐突にMPが盡きたら、とても大変なことになるだろう。
「……、……」
ともあれ、戻そうとして、し考え、
なにを思ったか、最後にひとつ遊んでみようという気になる。
「〔獣化〕」
〔〕のひとつ上の表示のmagic、〔獣化〕
効果は“対象をcond:獣化”にするというもの。
それすなわち、
ぽんっ、と白っぽい煙が全からふき出て、包まれ、
それが晴れれば、
頭頂には獣の耳。
後ろの腰元には獣の尾。
それから両腕も、獣のような有様に。
端的にいえば、
コスプレの誕生である。
ただの悪ふざけとしか思えないcondで、実際こうなるとMPは封印(表示がグレーアウト)、SORとTECの値も減しさらには魔法も使えなくな(グレーアウトす)る。
ただし代わりにHP、ATK、DEF、AGLは上昇。いわゆる弾戦特化狀態ともいえ、場面によっては使える、といえなくもないかもしれない。
「…………」
それはそれとして、鏡の向こうの獣。
追加された部位のはどこも髪と同じ。そして耳と尾のじはなんとなく貓っぽい。
両手を掲げて、広げる。球。あ、爪が出しれできる。
あと足も同様の変化をしているのか、靴の中がもそもそする。
「……にゃあ」
なんとなく呟き、
遅れて、猛烈に恥ずかしくなった。
サービス回(どんな層向けの?)
【コミカライズ&書籍化(2巻7月発売)】【WEB版】婚約破棄され家を追われた少女の手を取り、天才魔術師は優雅に跪く(コミカライズ版:義妹に婚約者を奪われた落ちこぼれ令嬢は、天才魔術師に溺愛される)
***マンガがうがうコミカライズ原作大賞で銀賞&特別賞を受賞し、コミカライズと書籍化が決定しました! オザイ先生によるコミカライズが、マンガがうがうアプリにて2022年1月20日より配信中、2022年5月10日よりコミック第1巻発売中です。また、雙葉社Mノベルスf様から、1巻目書籍が2022年1月14日より、2巻目書籍が2022年7月8日より発売中です。いずれもイラストはみつなり都先生です!詳細は活動報告にて*** イリスは、生まれた時から落ちこぼれだった。魔術士の家系に生まれれば通常備わるはずの魔法の屬性が、生まれ落ちた時に認められなかったのだ。 王國の5魔術師団のうち1つを束ねていた魔術師団長の長女にもかかわらず、魔法の使えないイリスは、後妻に入った義母から冷たい仕打ちを受けており、その仕打ちは次第にエスカレートして、まるで侍女同然に扱われていた。 そんなイリスに、騎士のケンドールとの婚約話が持ち上がる。騎士団でもぱっとしない一兵に過ぎなかったケンドールからの婚約の申し出に、これ幸いと押し付けるようにイリスを婚約させた義母だったけれど、ケンドールはその後目覚ましい活躍を見せ、異例の速さで副騎士団長まで昇進した。義母の溺愛する、美しい妹のヘレナは、そんなケンドールをイリスから奪おうと彼に近付く。ケンドールは、イリスに向かって冷たく婚約破棄を言い放ち、ヘレナとの婚約を告げるのだった。 家を追われたイリスは、家で身に付けた侍女としてのスキルを活かして、侍女として、とある高名な魔術士の家で働き始める。「魔術士の落ちこぼれの娘として生きるより、普通の侍女として穏やかに生きる方が幸せだわ」そう思って侍女としての生活を満喫し出したイリスだったけれど、その家の主人である超絶美形の天才魔術士に、どうやら気に入られてしまったようで……。 王道のハッピーエンドのラブストーリーです。本編完結済です。後日談を追加しております。 また、恐縮ですが、感想受付を一旦停止させていただいています。 ***2021年6月30日と7月1日の日間総合ランキング/日間異世界戀愛ジャンルランキングで1位に、7月6日の週間総合ランキングで1位に、7月22日–28日の月間異世界戀愛ランキングで3位、7月29日に2位になりました。読んでくださっている皆様、本當にありがとうございます!***
8 78【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
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