《ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ》7 『屁ひり房』

うぃーっす!

いやー、やっぱ屋は超涼しいな!

やっぱよ、夏はファミレスに逃げるのが一番だよな!

あ?

今日はテンション高いなって?

そりゃそうだべ。

昨日の夜、ユミとばっちり仲直りしたからよ。

仲直りしすぎて、ちょっと腰がいてーぜ。

じゃ、今日も始めんべ。

パッキパキのおもしれ―話、用意してきたからよ。

すんげー昔の話よ。

ある村に、超人の嫁さんがいたんだってよ。

しかもその人の嫁さん、綺麗なだけじゃなくてよ、よく働いてもあってよ、非の打ちどころがなかったらしいぜ。

でよ。

ある日よ、その嫁さん元気がねーわけ。

それを心配した旦那のカーチャンがよ、どうしたんだって聞いてみたらしいんだよ。

そしたらよ。

その嫁さん、なんとこう答えたのよ。

「お義母さん、実は私、ここに嫁いでからずっとオナラを我慢してるんです」

いや、俺ぁ心したね。

結婚したことねーから分かんねえけどよ。

夫婦とかカップルってのはよ、いくら仲良くても、そういうとこの気遣いはいると思うのよ。

だってよ、あんまり無神経に屁をこかれたらたまんねーべ。

いくら好きでもよ、ぶーぶーこかれたら100年のも冷めるってもんだべ。

だからよ。

俺ぁ、この嫁さんは偉(えれ)ぇと思ったんだよ。

夫におならを聞かれたくない。

じゃねーか。

俺ぁ、そういうは抱きしめたくなっちまうぜ。

……とまあ、そんな風に思ってたんだけどよ。

この嫁さん、優しい義母(かあ)ちゃんに「そんな我慢する必要はないのよ。屁ぐらい、遠慮なくすればいいの」なんつって言われたんだよ。

そしたらよ……

本當に思いっきり屁をこいて、義母ちゃんを畑まで吹っ飛ばしたらしいの。

やりすぎだろ!

どうなってんだよ、この嫁さんのの構造はよ!

にそれだけの風圧を閉じ込めるとかありえねーだろ!

とまあ、俺も一瞬、そう思ったんだけどよ。

すぐに冷靜になったぜ。

嫁さんもわざと吹っ飛ばしたわけじゃねーんだよ。

生理現象だからよ、しょうがねーとこもあるよ。

それなのによ。

それを聞いた旦那が怒っちまってよ。

嫁に出ていけっつって追い出しちまったらしいんだよ。

いやよ。

俺ぁムカついたぜ。

この旦那は心がせめーよ。

だってよ、嫁さんだって、こきたくてこいたわけじゃねーんだからよ。

今までずっと我慢してただけえれーだろうがよ。

何も追い出すことはねーだろって思うぜ。

……ただよ。

よく考えたらやっぱり屁で人間を畑まで吹っ飛ばすのはヤバすぎるだろ!

ねーよ!

ねーだろ!

良いとか悪いじゃなくて、単純にこえーよ!

その嫁さん、ぜったい人間じゃねーよ!

きっと屁の國からやってきた妖かなにかだよ!

……まあ、でもよ。

それで離婚はねーよな。

好き同士で一緒になったんだからよ。

俺ならオナラの國の妖でも関係ねーよ。

俺ぁ、例えユミが屁の國の王でも別れねーぜ。

でよ。

屁こきの嫁さん、家を追い出されて実家に帰る途中、けなくなった船をそのオナラの力でかしたんだってよ。

さらに、オナラの力で柿の木の柿を落としたんだって。

そんでよ、村人たちにめちゃめちゃ謝されたらしいぜ。

……もうよ、一どうなってんだよ。

その屁の便利さは一なんなんだよ。

いい加減にしろよ。

んでよ。

すげー役立つってんで、旦那もよ、結局は離婚しなかったみたいだぜ。

マジで蟲のいい旦那だよな。

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