《ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ》8 『ドン・キホーテ』

うぃーす。

わり、ちっと遅れたわ。

いやーなんかよー、さっき駅前でいきなりインド人にサイン頼まれてよー。

なんか、俺をインドの俳優と間違ってるみてーでよ。

どうもそっくりらしいのよ、俺とその俳優。

よく分かんねーけど、適當に俺の名前書いといたわ。

んなことより、早速はじめるか。

今日は、また外國の話持ってきたぜ。

すんげー昔の話よ。

ある村によ、ドン・キホーテっつーおっさんがいたらしいのよ。

こいつがまたぱっとしねーオヤジでよ。

いい年こいて騎士になる夢見ててよ。

いっつもその話ばっかしててよ、村のみんなに馬鹿にされてたらしーのよ。

でよ。

このおっさん、なにを迷ったのか、本の騎士になりてーって言いだしてよ。

年食ったロバと一緒に世界を救うたびに出たわけよ。

んでよ。

ただの風車を巨大なモンスターだと思い込んでよ、騎士の振りして突っ込んでいったわけよ。

はっきり言って、傍から見たらただのアホだよ。

みんなはおっさんを馬鹿にしてよ、口とか叩きまくったの。

でもよ、おっさんは本気なのよ。

本気で、世界を救おうとしてたの。

しかも、自分の嫁さんになる姫さんが、この世界のどこかにいると勝手に思い込んでよ。

旅を続けるんだよ。

いや、せつねー話だよな。

村人からはいよいよ馬鹿にされてよ。

もう完全に頭がおかしいヤツ扱いよ。

でもよ。

俺ぁ、この話を聞いて、すぐにある人を思い出したんだよ。

そう。

キムラ先輩よ。

先輩はよ、おっさんになってからオシャレに目覚めたんだよ。

バツ2でよ。

子持ちでよ。

パンチパーマでよ。

再婚してよ。

子供が5人に増えてよ。

そっからアイプチ始めたんだよ。

臭も気になる年齢になってから、しさを追求する旅に出たのよ。

という巨大なモンスターに立ち向かったワケよ。

その姿はまるで、風車に突っ込むドン・キホーテのようじゃねーか。

俺ぁよ、そんなキムラ先輩を見てると思うんだよ。

いいじゃねえか。

人から笑われたって。

ってよ。

自分が好きなように生きる。

好きな自分になれるように生きる。

そんなの、當たり前のことじゃねえか。

考えてみりゃよ。

俺たちゃ、いつもいつも誰かに笑われてよ。

えれーやつにこき使われて、軽く扱われてよ。

でも、何も文句も言えずよ。

そのたびにみっともなく愚癡ったり泣いたりしてよ。

いつのまにか、當たり前のことが出來なくなっちまったんだよな。

この世知辛ぇ世の中でよ。

いったい誰が埼玉のドン・キホーテことキムラ先輩を笑えるっつーんだよな。

ただよ……

最近、そのキムラ先輩から加工アプリで加工した自撮り寫メが送られてくるんだよ。

死ぬほど目がでけーんだよ。

あれ、すげー怖いんだよ。

……わり。

やっぱ前言撤回するわ。

好きに生きるのはいいけどよ、風車に突っ込むのはやっぱよくねーよ。

やりすぎは駄目だぜ。

ま、それでも俺ぁ、キムラ先輩のこと好きだけどよ。

で、ドンキホーテなんだけどよ。

結局、姫様は見つからず、旅の途中で倒れてしまったらしいぜ。

マジで々考えちまうよな。

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