《ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ》15 『カエルのお妃』

おっす!

いやー今日は気分が良いぜ。

なにがあったんだって?

まあ聞いてくれよ。

世の中にはよ、んなラスボスってのがいるよな。

うちの仕事場だと親方だよ。

國だと総理大臣ってやつだな。

それじゃあよ。

回転ずしのラスボスってなんだと思うよ。

ウニ?

真鯛?

馬鹿野郎!

そりゃ――

大トロに決まってんだろ!

なんつっても、一皿800円もすんだぞ。

二皿で1600円だぜ。

三皿で……えーと……2千……2、いや300……

とにかくよ。

まさに大トロはラスボス中のラスボスよ。

それをよ、今日、ついに食ってきたんだよ。

ついにラスボスを撃破してきたわけだ。

おめーよ、今日から俺のことを壽司王と呼べな。

なんつってもよ、壽司界の王者こと大トロ様を食ったんだからよ。

あ?

で、大トロは味しかったのかって?

……うん。

まあ、なんつーか――

俺ぁ、ハンバーグ壽司の方が好きだな。

……って、んなことはどうでもいいんだよ!

壽司王とかなにくだらねーこと言ってんだよ!

しょうもねーこといってねーで、さっさと始めるべ。

こりゃすんげー昔々のことよ。

ある國に、王様と王子3人が暮らしてたのよ。

でよ、王様は王子三人にこう命令したのよ。

「3人とも、野原に行って矢を放て。そして、その矢を拾ったものを嫁にするのだ」

ってよ。

3人の王子は言われた通りに行すんの。

そしたらよ。

一人目の矢は貴族の娘が拾ったわけ。

二人目の矢は商人の娘。

でよ、3人目の矢はカエルが咥えてたのよ。

3人目の王子は當然、カエルから矢を取り戻そうとする。

するとよ、急にカエルが喋り出すのよ。

「私はカエルですが、きっとよい妻になります。ですから、私を妃にしてください」

ってよ。

で、王子はしょうがなく、カエルを妻にすることにしたのよ。

……いやよ。

この王子さんよ、すげーよ。

普通にすげーべ。

俺ぁしちまったぜ。

きっと、求婚してきたカエルに同しちまったんだろうけどよ。

なかなか出來ることじゃねーよ。

両生類との結婚なんてよ。

呼吸する嫁なんてキツイだろ。

ま、がありゃなんとかなると思ったんだろうけどよ。

現実は厳しいぜ。

カエルとの結婚生活つーのはよ、きっと忍耐の連続だと思うんだよ。

夫たるもの、時には嫁さんの愚癡とかも聞いてやらねーといけないわけよ。

普通の愚癡ならいいけどよ、カエル社會の愚癡なんて聞いてらんねーべ。

仕事で疲れて帰ってよ。

夕飯食べながら、

やれ隣の旦那はたくさんハエ取ってくるだの。

向かいの奧さんの卵がオタマジャクシになっただの。

最近の池は蛇が出て治安が悪いだの。

近頃お父さんのジャンプが低くなったみたいだの。

とか言われたらたまらねーべ。

第一、向こうの親に挨拶行くこと考えてみろよ。

もしご両親が人間語を喋られなかったらよ……

ひたすらゲコゲコいってんのを聞いてなきゃいけねえんだぜ。

「娘さんをください」の返事が「ケロケロ」だったら嫌だべ。

そもそも、だよ。

結婚式は水中と陸、どっちでやるんだって話だよ。

まあ、式っては嫁側の意向を大事にするもんだからよ。

やっぱ水中になるんだろうな。

……いや、俺ぁ嫌だぜ。

結婚式の間、ずっとずぶ濡れの花嫁なんてよ。

その點、ユミんちはいいぜ。

ちゃんと陸で結婚式あげれるしよ。

ユミの親父さんもゲコゲコ言わねえし。

あーあ。

そうだなぁ。

俺も、ユミとの結婚とか考えてみっかなぁ。

でよ。

まあなんだかんだあって、実はこのカエルが元は人間で、悪い魔法使いにカエルの姿に変えられちまってたって判明するのよ。

王子、立ち上がるわな。

んで、世界中を探し回って魔法使いを見つけ、倒すわな。

カエル、人間に戻るわな。

二人、幸せに暮らすわな。

まじ、めでたしめでたしだわな。

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