《お月様はいつも雨降り》第従二

僕はようやく自宅へ戻ってきたのは夕方になっていた。いつもであれば晝前には著くはずであったけれど、途中、乗っていた列車が何度も急停車していたため思っていたよりも時間がかかってしまっていた。

ネットニュースでは大規模な発事故とすぐに報じられたが、どの記事も最後は原因については疑問符で締めくくられていた。

シャンは帰路の途中から僕のバックにったまま、何も言わずずっと靜かにしていた。

「シャン、著いたよ、寢てるのか」

「寢てるわけがなかろう」

思っていたよりも元気な聲が返ってきたので、僕はしだけ安心した。

「シャンが壊れたんじゃないかと思ったよ……ほら、僕の……」

僕は上著の中で震えていたシャンのことを言おうとしたが、それを言ってしまうと自分が嫌な人間に思えてくるので止めた。

「僕の……友達の家を出てからさ……」

僕はレンの消息をすぐに知りたかった。

「実はな、上様の友人の家を出てから、監視カメラのデータを割り出すのにとても時間がかかってしまったのじゃ、なくともこちらでサーチできたデータはすべて修正した、上様の乗車した記録もついでにな」

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「それって、犯罪じゃないか」

僕にそう言われたシャンはし顔をしかめたが、ラックの上で仁王立ちのまま僕を指さした。

「上様はそう言うが、もし、あの出來事がただのガス発とかじゃなかったとしたら、警察は誰を容疑者に上げると思うのかのぅ、うつけじゃなければすぐに予想できるじゃろ」

「僕が容疑者になるのか!」

「容疑者として事聴取する選択権を持っているのは上様じゃない」

すまして話すシャンの言うとおりだと思った。

「レンはどうなったんだ、教えてほしい」

「上様の友人か?あの者なら亡くなったと思う、上様も住居の変わりようを目にしたであろう」

シャンがたいして気にも留めないように素っ気なく答えたので僕は驚いた。

「あのシャンと似た人形もか?」

「あの発は彼が起こしたものだ」

「どうして!」

「上様の友人と言う男、あれは本當に上様の友人なのか?」

確かにシャンの言う通りだが、僕は冷靜に話すシャンにし怒りを覚えてきた。

「何だよ、僕たちレンに助けてもらったじゃないか」

「助けるように仕組んだ演出だとしたら?」

「そんなことできる訳ないだろ!」

「彼とデータリンクした時に分かったのじゃ、罠を張り、そこに引っかかったわしらのようなだまされた蟲を捕らえるのが上様の友人をかたった者の生業じゃ」

「まさか……だって、シャンと同じ人形だっていたのに……」

「その人形だから、その人形だから、彼はマスターに逆らえなかったのじゃ!」

シャンは語気を強め僕をにらみつけた。

「上様の友人の家にはいろいろとが保管されておったからのぅ、彼ではそれを制することは不可能なので、わしが解除したのじゃ」

「あの建には、関係のない人もいたんじゃないのか!」

「生反応で知できたものは既にできるだけ手を打っておいた、後で調べてみるがよい」

僕は何も言えなくなった。彼が部屋を出てからずっと無口だった理由が分かった気がした。

「『わたしを破壊して』、それが彼のやっと伝えてくれた心の言葉じゃ……わしも上様に理不盡な命令をけたとしたら彼と同じことをするはずじゃ……だって」

シャンは泣き顔に変わっていた。

「それが人形じゃからのぅ」

シャンはそう言うと自分のケースの方によろめきながら移はじめた。僕は思わず立ち上がって倒れそうになる彼を優しく手に取った。

「シャン、大丈夫か」

けなくも消耗しすぎたようじゃ、上様の人形失格じゃな、すまぬがしばし休ませてもらう……上様、ごめんなさい……」

そう言ってシャンは目をつぶった。僕はすぐに彼をいつもの白いケースの中へ靜かに寢かせた。

(あやまるのは僕の方だろ……)

発事故の行方不明者はその部屋に住む若い男が一名という報道がされたのは、それからしたってからのことだった。

発事故の現場マンションでは、ただの事故現場とは違う々しい様子に包まれていた。多くの警察や消防署員が今までの発事故と異なる検証に時間を割いている。

そこにいる関係者すべてがの痕跡を捜査するのに必死であった。

「あいつら見ない顔だな」

「ああ、本庁からのお客さんとその取り巻きらしい」

鑑識の警察は規制線を越えて現場に訪れる集団に目をやった。

「俺たちじゃ、頼りにならないってか、署長がぼやいてたって話だ」

「國際テロリズム対策課が置かれたってのは聞いていたが本を見るのは初めてだな、キャリア組には逆らえない」

地元警察たちの會話をよそに、鑑識制服を著用した彼らは事前にすべて知り得ていたかのようによどみなくきはじめた。

十數時間後、鑑識の一人が何かを見付けたことを現場責任者に慌ただしく報告した。その責任者は報告の容に頬を緩め安堵の表を浮かべた。

本庁から派遣された鑑識の職員數人がすぐにその場に集まり、持參した特殊な形狀をしたケースにその発見したを慎重に移した。

派遣された職員のきが気になった地元の警察署員が鑑識作業の合間にこっそりと覗き見るとそれは黒焦げになった一の小さな人形であった。

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