《お月様はいつも雨降り》第従四

<登場人

靜寂秋津 (しじまあきつ)

就活中の大學生、謎の企業からの姿をした人型端末『シャン』を贈られる。

シャン

『月影乙第七発展汎用型』の人型端末

小野なな子 (おのななこ)

『小町』という別名をもつコスプレーヤー兼アングラ界のアイドル アキツとは同じゼミ

鹿みやび (しかないみやび)

アキツが救おうとした子高生

菅原 治 (すがわらおさむ)

気な格で人の心に遠慮なく踏み込んでくる小野なな子親衛隊員 アキツとは同じゼミ

柿本海人 (かきもとかいと)

眼鏡をかけ鋭い観察眼をもった小野なな子親衛隊員 アキツとは同じゼミ

小泉 廉 (こいずみれん)

アキツの小學校の同級生 シャンと同型の『月影人形』と共に行している

大椛 マサハル (おおなぎまさはる)

アキツの小學校の同級生 レンと活を共にする

上野カエデ (うえのかえで)

アキツの小學校の同級生 シャンと同型の男タイプの『月影人形』と共に行している

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長井 (ながいしげよし)

公安調査庁公安調査 連続破テロ事件の犯罪組織を追う

木戸浦 淳司 (きどうらあつし)

公安調査庁公安調査 連続破テロ事件の犯罪組織を長井と共に追う

あの出來事があってから、僕は答えが永遠に出ない疑問について繰り返し考えている。

(レンはあの時、なぜ僕をすぐに解放してくれたのだろうか、その気になればシャンと僕を監することだってできたはずなのに……殺すことだって)

「上様、どうしたのじゃ?」

シャンは次の日から、すべてのことが何もなかったようにふるまっている。発事故のニュースの続報では行方不明者の青年の名前がレンではなく、聞いたことの無い東洋系の外國人の名前だった。その他にも事故現場の殘骸から何丁もの銃などが押収されたことから國際テロ組織の犯罪ではないかと大きく報じられていた。

「鳴っておるぞ、なな子からじゃ、でなくてよいのか?」

「あっ」

あきれたような顔をしたシャンを目に、僕は慌てて部屋の隅に丸めたままの上著のポケットからスマホを取り出した。

「もう!ラインとか全然見てくれていないんだね、だから電話しちゃったよ、どこか旅行に行っていたんでしょ」

そうだ、僕はあれからずっとまわりの報を自分から切っていた。もしかしてニュースに僕の名前が指名手配で出ていたらとしたらなんて考えるとが苦しくなる。だからと言って、もし、スマホを手に取ったままだったら、ずっと自分の名前を繰り返し検索していたはずだ。

「ごめん……最近、何かだるくって」

「もしかして何かの染癥にかかったんじゃないの?病院に行って検査とかしたの?熱とかはあるの?」

「い、いやそういうんじゃないんだ」

「そっか、もし、就職とかのことだったらゲーム會社の偉い人とか知ってるから、相談してあげようか?」

「だ、大丈夫だよ、心配かけてごめん、本當に平気だから」

「そう、あのさ、もし、午後から時間が空いてたらさ、みやびちゃんと三人で買いに行かない?あの子、すごくしじまくんに會いたがっているんだ」

僕は答える前に反的にシャンの方を見ていた。シャンはわざとらしく澄ました顔で、手で大きく丸をつくって僕に見せている。

「い、いいよ」

「よかったぁー、それならいつもの駅の中央コンコースで十五時、いい?」

「分かった」

し前の僕だったら、こんなことがあったら天に昇るような気持ちでいたはずだ。でも、今は何で前向きな返事をしてしまったかし後悔している。

「もうウジウジしていないでしゃんとするのじゃ上様、上様はまだ生きているのが事実じゃ、わざと生かされているかもしれないということもありえる、でも、もう一度言うぞ、上様は今も生きてこうしてわしと會話しているのじゃ、いつも通り堂々としていればよい」

シャンの強い聲が、通話を終えたばかりでうつむき気味の僕の耳に響いた。

「僕がレンみたいに誰かに殺されることはないのかな」

シャンはケースのある所から、大きく飛び跳ね、ベッドの上にバランスよく著地した。

「わしが何で上様のところに來たのか、たしか出會ったときに伝えたはずじゃが」

そう言って大の字で腕を組んで立つ彼の瞳は、戯れる小さな子供のようにキラキラと輝いているように見えた。

のある建の會議室では重苦しい雰囲気が漂っていた。參加している者たちの中にはも混ざっているが、比率では圧倒的に男が多かった。服裝も様々ではあるが、大半は暗めのをしたスーツを著用している。

「資金面、構員の面においても當該組織は無差別大量殺人行為に及ぶ危険な要素を今も十分保持していると思われる、しかし……」

スライドの前に立つ銀髪の男は苦々しい顔をしたまま説明を続けた。

「その全容についての究明は恥ずべき結果となっているのは大きく変わっていない」

スライドに映し出されたのは、ようやく人の姿を保った炭化した死であった。

「當初、所轄が発表した犯行を主導したと思われる在日外國人だが、先ほど外務省を通じて訂正の通知がってきた、この男の歯形からの照會もすべて似非の報であり、當の名前の挙がった男は三十年以上前に自國で病死していた、桜田門の中野の報はすべてフェイクということだ」

男はそこで説明を一度止めると、參加者の中からため息に近い聲がれた。

「ひとつ質問をしてよろしいでしょうか」

參加者の中でも年若な青年が挙手した。

「許可する」

「例の人形の分析結果について我々に許される範囲で報をいただけるものでしょうか」

「今回の資料に載せなかったことが答えだ……と、いつもだったらここで終わりなのだが、政府の要請で在日米軍が接収したことは皆も知っておいた方がよい」

「八十八軍のやり方は昭和の頃から変わってないってことだ、逆らうことなんてできねぇな」

後方の席に座る初老の男が発した言葉にはし怒りのが含まれていたが、周囲の者たちは黙っていることしかできなかった。

「統括調査のおっしゃる通り、我々はGHQに守られて生まれた組織だということだ」

説明していた男は眉一つかさずにそう言うと、終わりが見えそうにない會議を再開させた。

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