《お月様はいつも雨降り》第従八

<登場人

木戸浦 淳司 (きどうらあつし)

公安調査庁公安調査 連続破テロ事件の犯罪組織を長井と共に追う

長井 (ながいしげよし)

公安調査庁公安調査 連続破テロ事件の犯罪組織を追う

森脇イツキ (もりわきいつき)

ベンチャー企業『クトネシリカコーポレーション』の代表取締役

白帽をかぶり、紺地にストライプがった軍服姿の兵士が慌ただしく行きかう甲板の上に木戸浦は立っている。

既に木戸浦は多くの殘な仮想験をテストの中で味わわされている。

(また、戦爭……今度は水兵か?)

彼らは木戸浦がそこにいることに気付いている様子もなく、聲を掛け合いながら張られたワイヤーや、機関砲の目視確認に追われている。

古い石造りの建造が立ち並んでいる岸壁沿いには、時代遅れの艦船が何隻も係留されており、この係留地が大きな街の中の港であることを木戸浦に條件付けた。

見上げると數羽のカモメが並ぶポール上の星條旗が曇り空にたなびいている。

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(アメリカ……それもこの艦はだいぶ舊式だ)

水兵は所定の持ち場に至急つくよう、スピーカーから力のった聲で命令がる。水兵はデッキから下がる者や、機銃座に並ぶ者など統率されたきで所定の場所に移を始めた。

百二十秒前からのカウントが読み上げられると、水兵たちはその場からかず次の指示に備えた。

(この企業の人工知能は俺の何を確かめたいのか?)

木戸浦のには心地よいそよ風があたるがある。カウントがゼロへと進むにつれて、エンジン音と金屬音の混じった音が高まりカモメたちの鳴き聲をかき消していく。

「スリー、トゥー、ワン……」

甲板が大きく揺れると同時に汽笛が鳴り響き、木戸浦の視界は眩いで遮られた。

(何を起こした?)

艦は確かに港に浮いていたが、先ほどまでの曇り空が雲一つない青空になり、市街地の様子も一変していた。

(違う街にいる)

近くの水兵へ目をやると、彼らは所定位置でかずにいる。

「ねぇ、面白かったでしょ?僕たちの始まりの瞬間、君が子どもの頃からずっと、ずっと見ていたかったんじゃない?」

い聲に振り向くと、十歳くらいの東洋系の年が立っている。

(俺に話しかけている?)

「そうだよ、公安調査庁の木戸浦くん……」

(ばれていたのか!)

木戸浦はすぐにゴーグルやコントローラを外そうとしたが、自分のを思うようにかせなくなっていることに気付いた。

「何を慌てているの?木戸浦くん……じゃなかった、これは違う名前だったね、噓をつかなくてもいいのに、もう、ふざけないでよ、噓は泥棒の始まりだって先生が言っていたじゃない」

その年は自分の腹を抱えて狂ったように笑い出した。

「みんな知ってるよぉ、君たちが僕たちに何をしようとしているのか、だって、そのために君がいてくれたんだから」

(お前は……)

その年は森脇イツキの年の頃を模しているものだと木戸浦は直した。

「でも、君は何か忘れているんじゃないかな……ああ、違った、僕たちが忘れさせていたんだっけ」

(何を言ってるんだこいつ、しかし、何でかないんだ、俺のは!)

年は木戸浦を見て優しく微笑んだ。

「お帰り……君がこうして戻ってくるのを僕たちは何年も、そう何年も待っていたんだよ……だってさ、君は……」

した木戸浦調査の消息が途絶えたことを長井が知ったのはそれから三日後のことであった。

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