《お月様はいつも雨降り》第二従五目
<登場人>
靜寂秋津 (しじまあきつ)
小學五年生、クラスメートから『ボウ』というあだ名で呼ばれている
小泉 廉 (こいずみれん)
アキツの小學校の同級生
大椛マサハル (おおなぎまさはる)
アキツの小學校の同級生
上野カエデ (うえのかえで)
アキツの小學校の同級生
播磨ヒロト (はりまひろと)
アキツの小學校の同級生
佐橋ユキオ (さはしゆきお)
アキツの小學校の同級生
大熊サユミ (おおくまさゆみ)
アキツの小學校の同級生
名栗ワカナ (なぐりわかな)
アキツの小學校の同級生
湯岐ジュン (ゆじまたじゅん)
アキツの小學校の同級生
諏訪山マモル (すわやままもる)
アキツの小學校の同級生
森脇イツキ (もりわきいつき)
アキツの小學校の同級生
モリワキルナ
イツキの雙子の姉でアキツの小學校の同級生
宿泊研修の夜、夕食が終わった後の自由時間、うちのクラスのほとんどの男子は今日のグループ活の話で盛り上がっていた。特にレンたちのグループの會話がみんなの興味を引き立たせるのに十分な容のようだった。
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だけど、窓の近くの向かい合う椅子に座る僕はイツキと研修所の近くにある『竜宮』の話をしている。僕は誰が好きとか、つきあっているとか、どうでもよくて、イツキの幅広い話題の方がずっと楽しかった。
「ここの樹海の下にはまだ発見されていないがいっぱいあるんだって、それが、どのくらいの深さや距離があるか、數がありすぎて調べることができないみたいだ」
「へぇ、イツキは何でも知ってるね」
「ほら、そこの近くの湖だって、來る途中に見ただろ、あのでっかい湖と繋がっているのは間違いないようなんだ、どんなに雨が降っても、三つの湖の水位が一定なんだって、噴火で流れ出た溶巖が百年間で大きな湖を分けたんだって」
「あんなに山からも遠いし、湖どうしで何キロも離れているのに、それってすごいね」
「うん、それで調査中にそのに吸い込まれて行方不明になったダイバーが何人もいるみたいなんだ」
「それ、すごく怖いな」
「でも、吸い込む力を利用して、そのルートを使えば道路に関係なく、すぐに移できそうじゃない?僕は便利だと思うけどな」
「そうやって考えるイツキってすごいよね、僕は吸い込まれて苦しくなる自分を想像しちゃうな」
「暗くて息のできない宇宙のような空間の中で?」
「うん、それでどこにもたどり著けなくて息が出來なくなって死んじゃう」
「あ、それいいアイディア!未知の生きがその流れてきた死を見て、僕たち人類という存在を知ってしまう」
「怖いけど、何か面白そうだね、でも僕の死は無しだ」
「ボウの死は大切なきっかけだよ『ファーストコンタクト』って言うのかな、もしかしたら、四次元人って、そんな水のトンネルのようなモノを使って違う世界から僕たちを観察しに來ているんじゃないかな」
「その方がもっと面白そうだ、でも死はいやだよ」
「生きていたらいいんじゃない?」
「それなら……って出會うのが四次元人だったらいやだよ」
「あはは、そうだね」
レンのグループがいっそう騒がしくなってきた。別の話をしている僕たちの耳にも否応なくってくる。
「マモル、あんな簡単な場所で迷子になったんだぜ」
「違うよ、レンが一人で先に行くから、俺は子に頼まれて探しに行ったんだよ」
レンの言葉をし不貞腐れながらマモルは否定しながら言葉を返した。
「レン、本當はジュンとデートしたかったんじゃないか、ずっと他のグループのジュンのこと話していたし、マサハルに盜られると思っていただろう」
僕であれば、こんなことを友達に言われたらすぐに顔を赤くして怒り出すだろう。でも、レンはやっぱりどこか違う。
「それの何が悪いの?」
「うわ、やられた」
ヒロトが笑いながら枕を抱きしめ並べてある布団の上を転がった。
「そ、そういえばレンは、ジュンとキスしたことがあるってき、き、聞いたんだけど……」
質問するユキオの方が顔を真っ赤にしている。
れ聞こえた言葉に僕は驚き、レンたちの會話に意識が飛んだ。
「稚園のときにはね、え、お前、キスしたことないの」
「あ、あるわけないだろ」
ユキオの否定の仕方はオーバーすぎるように僕には見えた。
「どうせ、ほっぺたにチュだろ」
それまで話に加わっていなかったマサハルも途中から會話に加わった。
「まさか、口に決まっているじゃん、舌だって使ったぜ」
「舌!ど、どんなじだか教えろよ」
ユキオは、鼻息を荒くしながら興味津々だ。
「それに、俺、ジュンだけじゃないぜ、もう一人いるんだ」
「もう一人ぃ?それはだ、誰だ!」
急にマサハルが揺しだした。
「ヒント、カエデじゃないよ」
それを聞いて、マサハルがほっとした姿にみんな笑った。
「何だ、マサハル、お前、カエデのことが好きだったの?あんなうるさいやつ」
マモルがからかった。
「うるせぇ、ぶん毆るぞ」
「みんな、僕の話の続き聞かないの?なら、答えは言わないよ」
レンがそう言うと、そこにいるみんなは靜かになった。
「答えはね、ルナ……」
レンがそう答えた瞬間に、僕はが張り裂けそうになった。
そんな僕の目の前を大きなカバンが橫切り、座っているレンの顔に直撃した。
「痛ぇ!」
それまで話にらず窓際に一人でいたイツキが椅子から立ち上がっている。
「冗談を言うな、ルナはそういうことはしない、特にお前みたいな……」
「何!ただの冗談だろ!」
レンは立ち上がり、イツキに飛びかかろうとしたところをマサハルが後ろから制した。
「やめろ、やめろって」
部屋が騒がしくなったところで、見回りの先生がってきた。
「こらぁ、何をしているか!」
その後、さすがにレンも、この騒の原因を説明できないまま、こっぴどく叱られていた。僕たちの部屋は強制的に電気が消され靜かにならざるを得なかった。
「ボウ、さっきの話を止めちゃってごめん……でも、冗談にしても僕は許せなかったんだ」
僕の橫で寢るイツキが僕に小さく話し掛けてきた。
「うん、僕もああいうことを言うのは好きじゃない、イツキが怒るのも無理ないよ、それも君が大切にしているルナのことだもん」
「ありがとう、やっぱり、ボウは僕の気持ちを分かってくれるね」
「ううん、普通のことだよ」
イツキは微笑みながら、僕の手を布団の中で握ってきた。
僕は何だかその瞳を見ているうちに、自分が水のトンネルに勢いよく吸い込まれそうになる姿を想像してしまった。
なぜなら、イツキの目は雙子のルナにとっても似ていたことにようやく気付いたからだった。
もしも変わってしまうなら
第二の詩集です。
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