《お月様はいつも雨降り》第二従八目
<登場人>
靜寂秋津 (しじまあきつ)
就活中の大學生、謎の企業からの姿をした人型端末『シャン』を贈られる。
シャン
『月影乙第七発展汎用型』の人型端末
小野なな子 (おのななこ)
『小町』という別名をもつコスプレーヤー兼アングラ界のアイドル アキツとは同じゼミ
鹿みやび (しかないみやび)
アキツが救おうとした子高生
菅原 治 (すがわらおさむ)
気な格で人の心に遠慮なく踏み込んでくる小野なな子親衛隊員 アキツとは同じゼミ
柿本海人 (かきもとかいと)
眼鏡をかけ鋭い観察眼をもった小野なな子親衛隊員 アキツとは同じゼミ
小泉 廉 (こいずみれん)
アキツの小學校の同級生 シャンと同型の『月影人形』と共に行している
大椛マサハル (おおなぎまさはる)
アキツの小學校の同級生 カエデと活を共にする
上野カエデ (うえのかえで)
アキツの小學校の同級生 シャンと同型の男タイプの『月影人形』と共に行している
播磨ヒロト (はりまひろと)
アキツの小學校の同級生
鳥羽口ツカサ (とばぐちつかさ)
ヒロトの妹
佐橋ユキオ (さはしゆきお)
アキツの小學校の同級生
大熊サユミ (おおくまさゆみ)
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アキツの小學校の同級生
名栗ワカナ (なぐりわかな)
アキツの小學校の同級生
湯岐ジュン (ゆじまたじゅん)
アキツの小學校の同級生
諏訪山マモル (すわやままもる)
アキツの小學校の同級生 シャンと同型の『月影人形』と共に行している
森脇イツキ (もりわきいつき)
ベンチャー企業『クトネシリカコーポレーション』の代表取締役
アキツの小學校の同級生
モリワキルナ
イツキの雙子の姉でアキツの小學校の同級生
長井 (ながいしげよし)
公安調査庁公安調査 連続破テロ事件の犯罪組織を追う
木戸浦 淳司 (きどうらあつし)
公安調査庁公安調査 連続破テロ事件の犯罪組織を長井と共に追う
「停電か、バッテリーがもつまでに復舊してくれるといいんだけどなぁ、柿本、データのバックアップの方は」
「問題ない」
事務機が四臺もるといっぱいになる部屋と撮影用の六畳間のマンションの二部屋が、なな子の立ち上げたeスポーツの會社であった。
「今日の試合はキャンセルだってさ、定期的に配信できなきゃ売り上げびないんだよなぁ、この分だと來月は苦しくなるなぁ」
菅原は両手を頭の後ろに組んで椅子の背もたれにをあずけた。
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「でも、ネットワークは繋がっているじゃない、平気よ」
なな子はそう言ってスマホのニュースを真剣な顔つきで視聴していた。
「通信會社の中継局が落ちなきゃね、復舊までの時間にもよるな、ほら、北海道でブラックアウトした時だって、初めは繋がっていたけど、最終的にほとんど繋がらなくなった前例があるからなぁ」
どこかで楽が低い音で鳴った。
「あん?誰かのスマホに著信っていないか」
菅原のぼやきのような言葉に柿本が自分のスマホを確認した時、突然の揺れが部屋を襲い、固定していない小が機の上からり落ちた。
「地震?」
窓のカーテンを開けたなな子は駅の方向にモクモクと立ち上る灰の煙に気付いた。
「菅原くん、わたしちょっと撮影してくるから飛ばした映像をすぐに編集してサイトにアップしてくれる?」
「大丈夫なのか?」
「テレビ局より早い方が再生回數びるでしょ、時間は大切な要素よ、でもライブは面倒くさそうなの映ったらまずいからさ、ちょっとやめておこうと思う」
「姫、無理はだよ」
「ありがと、無理をするつもりはない、予想できそうなテロップ今から作っておいてね」
心配顔の二人を部屋に置いたまま、なな子は上著をはおり、會社のエントランスを兼ねた狹い玄関から走り出ていった。
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商店や近くの家からは何事かを確かめようと不安げな表をした住人たちが道路に出ている。そのような人の間をうように、なな子は駅の方へ走っている。
(あの汽笛のような音、間違いなく、しじまくんとみやびちゃんの三人で聞いた音だった)
崩れ落ちる建からアキツに手を引かれながら必死に逃げた時のことは彼の心に深く刻まれている。次の日からアキツと連絡がとれなくなった。
(あの音が聞こえてすぐにしじまくんは私たちを連れて避難した……しじまくんはみんなの知らないことを知っているんじゃないかな)
最後の彼からのメールは「確かめたいことがあるのです、ごめんなさい!」で終わっていた。
「本當にごめんじゃないわよ……」
現場に急ぐなな子の心には、もしかしたらいなくなったアキツがそこにいるのではないかという細い糸を手繰り寄せるような思いがあった。
実際の現場は、駅からしだけ距離が離れた舊街道沿いの神社の社殿だった。警察も到著したばかりで、何があったかを確かめようと押し寄せる人たちの整理に追われている。
列に割り込みながら前へ進むと、そこから見えたのは上から押しつぶされたかのように地面にめり込んでしまっている社殿の殘骸であった。その殘骸からは幾筋もの煙がそこかしこから上がっている。なな子はとても驚いたが、すぐにカメラとタブレットを繋いで狀況を報じようと準備を始めた。
鼓が破れるくらいの汽笛のような大きな音が、今度は空からではなく地面全を震わせた。なな子はその音に我慢できずタブレットを脇に挾み耳を押さえ地面にうずくまった。
「この音……」
神楽舞臺があった場所の空中に大きな黒い何かが渦を巻いているようなが開いた。そこから小袖の白(はくえ)に緋袴(ひばかま)をまとった巫裝束姿で面を付けた大きな人が出現し、からくり人形のようなぎこちないきで手に持つ弊串(へいぐし)を揺らし空中で舞を舞い始めた。
「何なのあれ……」
黒いは一段と大きく拡がり、金や銀糸が織り込まれた羽織にひげを蓄えた鬼のような面を付けた大きな人形が出現した。
なな子は無意識のうちに映像を菅原たちの部屋に飛ばしている。
その人形の両手には歴史の教科書で見たような長く幅のある両刃の銅剣が握られている。鬼のような人形が一振りし、地面に突き立てると、空高く土埃が舞った。
社殿の消火作業に當たっていた消防士らは近くの異様な様子に気付き、放水を止めた。
巫裝束の人形は舞を続けている。
今まで鈍重なきをしていた大きな人形は地面に突き立てた剣を引き抜き、消防車めがけて勢いよく投げつけた。剣はにぶい金屬音とともに車を貫きタンクにっていた水が音を立てて地面にこぼれていった。
消防士は思わず上げた大きな聲が合図になったように、フワフワと空中を飛ぶように舞っていた巫の一団が野次馬の群れに近付いた。
恐怖にかられた群衆は、悲鳴を上げその場から逃げようとしたが、後ろから來る人の波に押されきが取れなくなっていた。
なな子もその波に巻きもまれ機材を足元に落としてしまったが、もはや拾えるような狀況ではなかった。そんな混をあざ笑うかのように、なな子たちの頭上すれすれの空中で舞う巫たちは奇妙な歌なようなものを口にしている。
(焼鎌の敏鎌以て打掃ふ事の如く……)
「きゃっ!」
なな子は覆いかぶさってくるように逃げる人に強く押され、前の人とのわずかな隙間に倒れこんでしまった。全に打撲をけるなな子はこのまま自分が圧死してしまうのではないかと思った。
つむじ風が通り過ぎるように空気がいた瞬間、なな子の顔や手に生暖かいモノがしたたり落ちた。
あれだけ騒々しかった人のきがぴたりと止んだ。
人に踏まれる痛みが急に無くなり、何とか目を開けることのできたなな子はそこで信じられないような景を見た。
上半を切斷された灌木のように立ち並ぶ人々の下半がを吹き出しながらゆっくりと崩れ落ち、その橫を大きな神楽裝の人形が大剣を振り回しながら悠々と通り過ぎていく。
(助けて……しじまくん)
なな子は薄れる意識の中で、あの時の夕焼けに照らし出されるアキツの厳しい顔を思い浮かべた。
一方、部屋で畫を編集していた菅原と柿本は狼狽した。
「姫を助けに行かなくちゃ」
「でも、今、行ったら俺たちも殺されてしまうぞ、姫に言われたようにすぐに畫をアップするのが俺たちの役目だ」
柿本はそう言ったが、菅原はオロオロするばかりでどうすればいいかとまだ迷っていた。
「ちきしょう!何でこんな時にあいつがいてくれないんだ」
アキツのことであった。
その時、アキツは買ったばかりの電自転車で郊外の道路を走っている。
「快適、快適、まさにサイクリング日和じゃな」
上著の首の間からシャンが顔を覗かせ、風に髪をなびかせている。
「こんなんだと次の目的地に、いつ著くのか分からないぞ」
「もうし行ったところのターミナル駅前に停留所がある、鉄道は止まっても高速バスはまだ走っているようじゃ」
「この自転車は?」
「どこぞの誰にでもあげればよい、現金ならいっぱい持っているじゃろ」
「保険の手続きなんかもあるんじゃないか」
「上様はしっかりしてるのぅ、それならリサイクルショップという手もある、買ったばかりなので書類も揃っておるし、次のバスまでには十分間に合う……おっ……」
「どうした?」
「なな子姫の居る近所にが開いた、なな子のチャンネルに今流れている」
「なんだって!」
「相手は舊式の武を攜えているようじゃな」
「また、あのマネキンみたいな奴?」
「客人の使いは、出現場所の人の恨みや念をモデルに構築されるから、決まった形態はないと聞いておる、今回は古代宮廷の裝のようじゃの……途絶えた……どうやらカメラを落として壊してしまったようじゃ」
「どうしたらいい?」
「一番早くて簡単なのは、わしのネットワーク障壁を解除して、上様の昔の友に広く助けを求めればいい、しかし、わしらの居場所が相手先に瞬時につかまれるがの」
「敵か味方かもまだ分からないのに?」
「確かめてみるのもありと言えばありじゃ、分からぬ敵だったら火を花火のようにバーストさせてもよいぞ、わしがそれに合う兵をチョイスする、任せろ」
「チョイスされたって、そんなに武を持てないんだけど……」
(でも……このままだと、なな子さんが危ないかもしれない……でも、昔の記憶がない僕はどうすれば……)
シャンの威勢のいい返事を聞いてもまだアキツは迷っている。
都心の高層ビル一棟全が『クトネシリカコーポレーション』傘下企業の持ちである。
そのビルの高層階の一室、豪奢な調度品や絵畫が整然と飾られた大広間の中心に木製の円卓が置かれ、その周囲には若者たちが著席している。
「霞が関の騒ぎといい、今の騒ぎといい、私たちに緒であの場所にわざと客人のを導したんでしょ、私には分かるんだから、何人死んだと思っているのよ」
この部屋に似合わないカジュアルな服裝のカエデが顔も上げずスマホゲームをしながらぽつりと言った。
スーツ姿のイツキはその問いに何も答えず微笑している。
「この場での不用意な発言は慎んでもらいたいものですね、カエデさんたちが閉じた以外の存在を私たちにもつかむことはできません」
イツキの左隣に座る眼鏡をかけた長髪のはカエデの軽々しい言をたしなめた。
「馬鹿くさぁ、ワカナだって、心の中で本當はそう思ってるじゃん、今だってさぁ、知ってたなら、こんな部屋に集めてないで、わたしたちを前もって出現場所に向かわせればよかったでしょ、ねぇ、マサハルも何か言ってよ」
カエデの隣に座るマサハルは腕を組んだまま目を閉じている。
「失禮な、そんなことはありません」
「まぁまぁ、しばらくぶりに顔を合わせたのに、けんかはやめようよ、それよりもサユミとジュンはまだ到著しないの?」
ふっくらとした形で頭をきれいにそり上げてはいるが顔の殘るユキオだった。
「あいつらは神社の客人を監視している、奴らはどこに行こうとしているかってね、特にあの二人はイツキの言うことだけはしっかり守るから適役だよ、なくともカエデには務まらない」
マモルだった。
「何も知らない消耗品の信者をこれ見よがしに引き連れてでしょ、文句言うんだったらわたしもう帰るからね」
「カエデ、あともうしだけ待つように、わたしの分析ではそう結果が出ている」
イツキの右隣に座る青年が言った。
「前の職場でこっそり培ってきた分析方法ですかぁ?お疲れさまですぅ」
カエデに嫌味たらしくそう言われても、青年は表ひとつ変えない。
「!」
イツキ以外のメンバーは何かに気付いたような表をした。
「やっと、殻に閉じこもっていた大切な仲間が僕たちの心に接してきたね、ヒロト、君の分析力はやはり素晴らしいよ」
イツキは靜かにそう言って自分の隣に座るヒロトに優しい視線をおくった。
ここにもし、長井調査がいたら驚きの聲を上げたであろう。そこに座っていたのは、まぎれもない公安調査の木戸浦であった。
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