《お月様はいつも雨降り》第二従九目
<登場人>
靜寂秋津 (しじまあきつ)
就活中の大學生、謎の企業からの姿をした人型端末『シャン』を贈られる。
シャン
『月影乙第七発展汎用型』の人型端末
小野なな子 (おのななこ)
『小町』という別名をもつコスプレーヤー兼アングラ界のアイドル アキツとは同じゼミ
鹿みやび (しかないみやび)
アキツが救おうとした子高生
菅原 治 (すがわらおさむ)
気な格で人の心に遠慮なく踏み込んでくる小野なな子親衛隊員 アキツとは同じゼミ
柿本海人 (かきもとかいと)
眼鏡をかけ鋭い観察眼をもった小野なな子親衛隊員 アキツとは同じゼミ
小泉 廉 (こいずみれん)
アキツの小學校の同級生 シャンと同型の『月影人形』と共に行している
大椛マサハル (おおなぎまさはる)
アキツの小學校の同級生 カエデと活を共にする
上野カエデ (うえのかえで)
アキツの小學校の同級生 シャンと同型の男タイプの『月影人形』と共に行している
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播磨ヒロト (はりまひろと)
アキツの小學校の同級生
鳥羽口ツカサ (とばぐちつかさ)
ヒロトの妹
佐橋ユキオ (さはしゆきお)
アキツの小學校の同級生
大熊サユミ (おおくまさゆみ)
アキツの小學校の同級生
名栗ワカナ (なぐりわかな)
アキツの小學校の同級生
湯岐ジュン (ゆじまたじゅん)
アキツの小學校の同級生
諏訪山マモル (すわやままもる)
アキツの小學校の同級生 シャンと同型の『月影人形』と共に行している
森脇イツキ (もりわきいつき)
ベンチャー企業『クトネシリカコーポレーション』の代表取締役
アキツの小學校の同級生
モリワキルナ
イツキの雙子の姉でアキツの小學校の同級生
長井 (ながいしげよし)
公安調査庁公安調査 連続破テロ事件の犯罪組織を追う
木戸浦 淳司 (きどうらあつし)
公安調査庁公安調査 連続破テロ事件の犯罪組織を長井と共に追う
大きな人形が大剣を振るたびにきらびやかな羽織から太に反したの雫がこぼれた。空に巻きあげられた犠牲者のの一部や看板の類が參道脇の店のガラスウィンドウを薄氷のように割っていく。
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応援に次々と到著する警察車両は人形の進路を防ぐように參道と國道との差點に停車し、防弾盾を手にした機隊が周囲を固めた。
「SATの現著まではもうしだ、それまでは市民の安全を確保しつつ傷しないように注意してあたれ」
隊長の命令は絶対であるが、數十メートル先から彼らの待機している場所にゆっくりと近付いてくる大きな人形にその隊員も恐怖と威圧をじずにはいられなかった。
後方で待機していた隊員の明のライオットシールドに飛んできた犠牲者の首がにぶい音をたててぶつかり、赤黒いの線が描かれた。
四メートルほどの丈をした大きな人形の頭上で舞う四の巫の姿
そこにいた多くの機隊員は自分の見ているの人形がこの世に実在していないモノのように見えている。
「せっかくスィーツが味しいと聞いていたのに食べられないのは殘念だね、しかも、飲みも來る途中の自販機でしか買えないなんてショックよ」
「冷たいモノなら何でもいいって言っていたじゃない」
「だからって、これはないでしょ、缶って飲み口がそのまま外に出たままだからなんかいやのにぃ」
現場が見通せるビル周辺エリアは既に警察から急避難を命じられ誰も殘っていない。商業ビルの二階に店を構えるカフェも店員は既に避難していて外の騒がしさが噓のように店は靜まり返っていた。
窓際席には、向かい合うようにが座っている。
二人とも買い途中のような違いのニットにパンツ姿で一人はブラウンヘアのショートボブ、もう一人はメッシュがったセミロングの髪型であった。
「しょうがないでしょ、イツキの命令よ」
目鼻立ちの整ったセミロングのはそう言いながら空中を飛びう取材ヘリに目をやった。
「ちょっと、あれ危ないんじゃない、ちょうど大人形の真上よ」
缶コーラを飲もうとしていたショートボブのはその言葉にしだけ上を見て、また視線を機隊の方に戻した。
「あの人たちだってどこかの上司の命令でしょ、ね、あなたたちもそう思わない?」
「はい、サユミ様の言う通りです、ここから確認できるのはヘリコプター會社所屬の縦士一名、テレビ局職員が二名、搭乗していますね、職務とはいえ、映像を撮るためだけに命を投げ出すなんて費用対効果ではずいぶんと劣りますけど」
「一部同意いたしますが、命令という趣旨で論ずるのなら私たちも同じ立場なのではないでしょうか、また、第一次的費用対効果面については特にあの乗りの減価償卻期間と乗員の現時點での借金額、生涯賃金を考慮して再計算をし比較する必要があると提案いたします」
「それはつまり、放送局の正社員か下請けかでも変わるということですね、そこはまだデータ不足でしたわ」
テーブルの上に二の型の人形が會話をしながら両手を窓ガラスに當て、児が外の風景を眺めるようにして顔を近付けている
「あんたたち、うるさいよ」
「サユミ様、それは失禮いたしました」
二の人形は同時にセミロングのの方を向き直り、座ったまま頭を下げた。
「『リグとラグ』は悪くないよぉ、私のちょっとした言葉に真剣に答えてくれただけだもんね」
ショートボブのは申し訳なさそうにしている二の人形に笑顔をつくって見せた。
「あっ!」
鳥のように空を駆けのぼるように飛ぶ巫裝束の人形がヘリの正面にカエルのように四肢で取りついた。
「やっぱりあの巫は大人形の防衛システムの一部ね、空からの攻撃は避けられる可能が高いか、あの使いには」
上空を飛んでいたヘリが部品を空中に散らしながら錐もみ狀態でビル街に落ちていく。
「サユミ、それってしずつ使いが強くなっているってこと?」
軽い地響きのすぐ後、ビルの裏でキノコ雲のような黒煙が上がる。
「客人の頭がジュン、あんたみたいに悪くなければね」
「ちょっと、それひどーい、ねぇ、聞いた?聞いてくれた?ちょっとひどいよね」
「サユミ様の指數が不快なのは理解いたしますが、表現方法としてジュン様の負のレベルを急激に押し上げてしまう単語と思われます」
「わたしもリグと一部同意いたしますが、ジュン様の神年齢に応じた長にとっては事実であることも大筋認めなければならないかと進言いたします」
それを聞いたジュンが頬を膨らせたとき、二の人形は急にテーブルの上に並んで立ち上がり、それぞれジュンとサユミに向き合った。
「私たちの不明だった仲間がアクセスを求めてきました、アクセスを許可しますか、コマンドを選択してください」
「もしかしてボウなの?ボウが戻ってきてくれたの?」
サユミはテーブルに乗り出すようにしてリグと呼ばれる人形を摑んだ。
「殘念ですがおっしゃる人とは異なります、それでも許可しますか?」
ジュンは何かに気付いたようだった。そして嬉しそうにラグと呼ぶもう一の人形に命令した。
「もちろんでしょ、すぐに繋げてちょうだい」
「承りました、映像を転寫します」
店のしい自然の映像を流していたモニターが切り替わり、畫面に一人の青年を映し出した。
「會いたかったよ、またみんなに……」
畫面の中で不敵に笑っていたのは、死んだと思われていたレン、その人だった。
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