《お月様はいつも雨降り》第三従一

<登場人

靜寂秋津 (しじまあきつ)

就活中の大學生、謎の企業からの姿をした人型端末『シャン』を贈られる。

シャン

『月影乙第七発展汎用型』の人型端末

小野なな子 (おのななこ)

『小町』という別名をもつコスプレーヤー兼アングラ界のアイドル アキツとは同じゼミ

シャンはアキツが現場に至るルートを、閉鎖する警の所在を確かめながら伝えている。

「そこ、右じゃ白い壁の民家の塀をまた乗り越えて」

「大丈夫なのか、こんな場所を通って」

「ここまで來て、上様はたどり著けなくなってもいいのか、上様の命令ならルート検索を止めるが」

「止めなくていい」

「それなら、そこのガレージの屋を踏み抜かないようにしながら隣のマンションのベランダに飛び移るのじゃ」

アキツは自分のしている行為が不法侵にあたるのではないかと心配していたが、シャンはすました顔で導を続ける。

「もうすぐ、そのイチイの生垣を抜ければ、さっきのなな子がいた映像の場所じゃ」

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アキツがかき分けるようにして生け垣を抜けると、いつもよく見ていた參道の景とは一変していた。

なぎ倒された並木の葉の下には、死傷者の黒くなっただまりが長い參道の石畳を濡らしている。切斷された犠牲者の半はまだいたる所に打ち捨てられままで、この現場から助かりそうな人間を道路に広げたブルーシートに運び出すためには消防署員が駆けずり回っている。

そして、し離れた參道の差點では、機隊や警の幾重にも重なったの中心できを止めた鬼のような面を付けた大きな人形が靜止していた。

「流れ弾が來るおそれがある、この場所は危険だ、すぐにここから移しろ」

「馬鹿言うな、移しろったって、この數を見てみろ!そのための応援の人數がまったく足りないんだ」

避難を指示する警に救助にあたっていた消防署員が抗議の聲を上げている。

アキツはすぐになな子がそこにいないかを確かめようとしたが、に汚れた多くの負傷者の中から探し出すのは至難の業であった。

「そこの君、けるか」

「はい」

「運ぶのを手伝ってもらえるか、そこの止している男を向こうの通りまで運ぶんだ」

この狀況を間近に見るアキツには擔架を手に救いを求める消防署員の願いを無下に斷ることはできなかった。

「上様、上手くり込めたの、負傷者や犠牲者のパーツを照合したけれど、この近くに、なな子はいないようじゃ、運び出された先にいるかもしれないの、その辺はわしに任せておけ」

アキツはし安心したが、シャンがパーツと稱した石畳の上に転がったままのまみれの右腕や首を見て、素直に喜べる気持ちにはならなかった。

差點をめる商業ビルの屋上ではセミオートマチックの狙撃銃を構えた特殊部隊の隊員が本部指揮からの狙撃命令を待っていた。

狙撃隊員の覗き込むスコープの中心に面を付けた大人形の頭部が映っている。その上空に浮かぶ巫姿の人形には別の複數の隊員が部を狙っていた。

本部に詰めていた現場指揮は、近くの建造に殘る避難の狀況を確かめた後、躊躇なく発砲許可を下した。

鬼のような面が破片とともに空中に高く吹き飛んだ瞬間、竹がはじけたような音が現場に重なった。

その様子を一部始終シールド越しに張しながら見ていた機隊員は、狙撃作戦が無事に功したことを確信した。

「発砲止め」

姿の人形たちは地面に落下しきを止めたように見えたが、部に大きなを空け、頭部を失った大人形の方は倒れもせず、両手には乾いたに塗られた長剣が握られたままであった。

狙撃隊員をはじめとする機隊の誰もが、この痛ましい犠牲者を生じさせた事件がようやく収束に向かうとじていた。彼らが安堵したその時、周囲のざわめきの中から男のささやき聲が聞こえてきた。

祝詞のようなその聲は首のない大人形かられ聞こえてくる。

取り囲む機隊員がシールドをしっかりと構えようとした瞬間、近くの警備車両ごと彼らの千切れたが辺りに四散した。

大人形が自分がまだけることを見せつけるかの如く長剣を高々と掲げた。アスファルトの地面に臥せっていた巫姿の人形も立ち上がり、地面から煙が立ち上るようにフワフワと宙に

かろうじて生き殘った機隊員らは後ずさるようにして人形との間合いを広げていく。

「!」

衝撃音に混ざって悲鳴やガラスの割れる音が聞こえてきた。

「シャン、何があった?」

「どうやら客人の使いは再起したらしいのぅ、天敵が近くから消えたようじゃ」

「こんな時にいなくなったのか?それなら、どうやったらあのデカいの停止できるんだ」

「いなくなったのは、何か別のミッション命令が下ったものと予想する、それとあの使いを停止させるのなら心のを全破壊するのが一番手っ取り早い」

「壊すったって武なんて持ってないし」

「犠牲になった勇敢な警からし拝借する手も選択肢にはあるぞ」

「馬鹿言うな、そんなことできる訳ないだろ、それ以外には何か、何かできることはないのか」

「あるにはあるけども、それには上様の協力が必要じゃ」

「協力……すればいいんだな」

「うむ、任せておけ、上様がこうして一緒ならわしも頑張る」

シャンの自信ありげな顔を見たアキツは、五人目の負傷者を救急車両に運び終えると、救急隊員が止めるのも聞かずすぐに現場へ引き返していった。

ほぼ同時刻、日本政府は自衛隊法八十一條に基づく自衛隊の治安出命令を承認したのに引き続き、自衛隊法七十六條の防衛出を承認すべく臨時國會を召集した。

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