《【10萬PV!】磁界の王はキョンシーへ撲滅を告げる》③ 素贈與契約書

一時間後、京香はとある五階建てマンションの三階の部屋を訪れた。

そこには被害者の親二人と、姉と弟が待っていた。訃報は既に彼らに屆いている。京香が來たのは事後報告をするためだ。

「申し訳ありません。犯人を捕まえる事は葉いませんでした」

霊幻を一階の公園で待たせ、京香は獨り、族の前で頭を下げた。

どんな罵詈雑言が來たとしても京香は聞きれる用意があった。

――お願い、罵って。無能なアタシを。

犯人一人を捕まえらず、みすみす被害者の中を外へ持ち出された不手際を糾弾する権利が彼らにはあった。

そう、京香は期待した。

「そうですか。それは仕(・)方(・)が(・)な(・)い(・)事ですね」

だが、おうおうにして期待とは裏切られるである。

被害者の父親はその和な眼を悲しげに細め、やれやれと言った風に頭を振った。

「犯人達の追跡は続けます。いつか必ず、報いはけさせます」

「いえいえ、無理をなさらないで捜査さん。あ、ほら、クッキーはいかが?」

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頭を下げ続ける京香へ母親が慌てて菓子を差し出した。

周囲には見えないように京香は奧歯を噛んだ。

――お茶菓子? 仕方ない? あんた達の娘が無様な伽藍にされたのよ!?

そう言ってやりたかった。しかし、仮に言ったとしても、彼らには京香の言葉は伝わらないだろう。

京香がシカバネ町の外部から來た人間だから彼らのが分からないのだろうか。

頭を上げて、京香は懐からタブレットを取り出し、彼らへと差し出した。

「それでは、娘さんの素回収の同意書にサインをお願いします」

タブレット上には、タッチパネル式の契約書が表示され、下の方にサインをする場所がある。

契約書の名前は『素贈與契約書』

「……良し、これでよろしいでしょうか?」

「はい。問題ありません」

シカバネ町は生者にとって楽園とも言える町だ。

あらゆるサービスがほぼ無償で得られ、病院は原則無料であり、教育設備も充実している。

健康を害するレベルの仕事は一律に止され、賃金も必ず一つの家庭が充足に暮らせるだけ払われる。

アミューズメント施設も充実しており、それら全てを格安でする事ができた。

このサービスをけるのは簡単だ。『素贈與契約書』にサインし、年二度行われる健康診斷で異常なしの結果を出し続ければ良い。

安定した生活、充実した娯楽、適切な仕事。

全ては心共に健康な素を作る為。

より良いクオリティの死を作る為。

この町はキョンシーの素材となる死を産む為に作られた町だ。

住民の誰もが死後、世界へ出荷される地獄(みらい)を対価に生前の楽園をする。

故にシカバネ町、の為の町。

住民達はを管理され、健康なまま死亡する事がまれる。

何よりも重視されるのは脳。他のパーツは機械化で補えるが、脳だけは一から作れないからだ。

脳の質を基本として、死がキョンシーの素としてどれだけ有かどうかで住民達は格付けされる。

今回の被害者の素ランクはC+。この町においては平均より上程度。

それはつまり、世界で見ればトップクラスの素という意味だった。

被害者が狙われたのも當然と言えよう。蔵だけでも二千萬。脳には億の値段が付く。

「それでは、失禮いたします。この度は力が至らず、申し訳ございませんでした」

「そんなに謝らないで捜査さん」

彼らの態度は変わらない。

「素が死ぬなんてこの町では日常茶飯事じゃないですか」

最後に言われた言葉に京香は曖昧に笑う事すらできなかった。

バタン。

優しく閉められたドアを確認して、階段を降り、公園まで著いたところで京香は「あー!」と聲を上げた。

公園のり臺の一番上で空を見上げていた霊幻が緩慢にこちらへと顔を向ける。

「どうした?」

「るっさい。霊幻、マック行くわよマック。ハンバーガーのやけ食いに付き合いな」

「吾輩も食うのか? カロリーの無駄にるが」

「食え、腹にる限り」

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