《俺+UFO=崩壊世界》信じてる

「っは……っはぁ?!く、暗い! 怖い!」

目覚めた俺は、まず混した。

何故なら視界全てが真っ暗闇だったからだ。

まさかさっきの戦闘で目を負傷したのか? そう思って瞼をるが、生憎目脂っぽいのしか取れない。

いや、それでいいんだけどさ。目玉とか取れたら発狂するわ、絶のあまりディフェンダーで頭を撃ちぬくかもしんない。

次にのダメージはどうだ……? の熱を持っている場所をゆっくりとっていく。

「っあ……痛いぃ……。けど、まぁうん……死にはしないか」

青痣ぐらいはできるかもだが、それで済めばの字だろう。

を良い様に毆られすぎたな、顔も痛いが別にアイドルじゃないしどうでもいいや。

多分骨は折れてないはずだ、最悪としても皹くらいだと思うが多分平気だと思う。

次に狀況を探るべく手探りで周りを調べると、直に何かが手に當たった。

すぐにソレを覆う様にして掌を置いて、さわさわする。

ヒンヤリとしたソレは所々尖った様な部分もあって……!!

「ボスLG式だこれー!?」

慌てて弾き飛ばすと、耳障りな音を立てて奴が俺から勢いよく離れていくのが分かった。

しかし、次の瞬間急に眩いが暗闇の中で凝らしていた俺の眼を不意打ち気味に焼いた!!

「ぐああああああああ!! め、眼がーーーーーー!!」

の耐久力は上がったが、こういう刺激には弱いらしい。

俺はどこぞのラピュ○王の様に瞼を押さえる事しか出來ない。

俺は暫く悶えながら徐々に掌の中で瞼を開き、しづつ明かりに鳴らしてからようやく手を退ける事ができた。

空けた視界の先には《通路》があった。

眩いほどに磨き上げられた白い廊下は天井からの白い輝きを跳ね返し、を増幅させている。

一瞬夢でも見てるのかと思ったが、通路の先にボスLG式の姿を見つけその考えを沒にする。

とりあえずエレベータの中から転げる様にして這い出て上を見上げる、すると大きなが開いており其処から落ちてきたのだと分かった。

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何とか覗き込むが、この明かりの中でも中は真っ暗であまりよく見えない。

「どれだけの高さから落ちたんだ……?」

それに此処は何処だ? 病室っぽい部屋とかは無いし、困ったな。

俺はとりあえずボス式LGに近づいて膝を著く、そして殘り僅かになっている裝甲板を引き剝がして中を漁る。

コイツは凄い強かったし、もしかしたら部品が高値で売れるやもしれん。

とりあえず無事そうな部品を中から取り出して廊下に並べた所で、俺はある事に気付いた。

「そうだよ……リュック置いてきたんだった。抱えるだけ抱えるしかないか」

重さは問題ないが、細かい部品とかが落ちてしまう。

そういうはできるだけジーパンのポッケや、ベルトポーチの中に詰めて俺は廊下を歩き出した。

広い廊下に寂しく俺の足音だけが響き渡る。

たまに右に曲がったり、左に曲がったり、またまた右に曲がったりを繰り返すだけで一向に何のドアすらない。

おいおい、何なの? 暫くして曲がった先に一緒に落ちて來たエレベーターがあったりしたら俺泣くよ?

俺はゲームにある迷いの森系とか大嫌いだからね、製作者の悪意をじるから。

ゴール手前で最初に戻るとかなったら積みゲーと化すからね?

俺が辛い現実を避ける為の自己防衛妄想システムが作し始めた頃、ようやく通路の途中に一つのドアを見つけた。

何とか発狂する前にソレを見つける事ができてよかったと、深い安堵の溜め息を零しながら近づいていく。

扉は両開きで鉛、一瞬エレベーターかと期待したがボタンは無い。

代わりに、何か小さいガラスみたいな四角形のが近くの壁に張り付いてあったので指で押してみる。

《エラー! 登録されたDNAではありません》

初めて扉に拒絶されてしまった。

何か好みに似たの聲だったし、し傷ついた。

とりあえず、他に行く場所もないので俺は床に部品を下ろすと気だるげに武鮫を構えた。

「ふーん……なら覚えておけ。これが俺のDNAだっ!!」

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々と疲れ切っていた俺は傍から聞いたら誤解されるであろう臺詞を放ち、何の考えも無しに武鮫を扉に叩き付ける!!

すると頑丈そうな見た目とは裏腹に、あっさりと扉は奧に雑な軌道で吹き飛んでいった。

俺は満足そうに一つ頷くと武鮫をパンパンと右手で叩く。

「困った時はこの手に限る」

困ったらとりあえず叩いとけばハプニングは乗り越えられるからね、なくとも映畫の中ではそうだった。

部屋の中は暗かった、いや一部分だけ青白いが見える。

とりあえずソレを確かめようと部屋に足を踏みれると、直に明かりが自で點いた。

部屋の中は何と言うか……よう分からん床に設置された大型の機械で一杯だった。

首を捻る事しかできない俺は、次の瞬間思わず大聲を上げた。

「ま、まさか寶の山じゃないのかコレ?! ど、どうしよう! もって帰れるか?! いや、そもそも此処から帰れるのか俺!?」

うわー、と鼻息を荒くしながら部屋の中をキョロキョロ見渡しつつ足を踏みれる。

と、先程外からも見えた青白いが見えた部分が気になったので其方に足を向ける。

その機械は細長いで、まるで棺の様に見えた。

何となく嫌な予じながらも、を放っている部分をソーッと覗き込んで俺は絶句した。

――青白いに包まれる様にして、が居た。

しかも丸だ、いや首元ぐらいまでしか見えてないが多分そうだ。

ただ、興とかはしないよ? だって真っ青だもんこの人、仏かな?

背中に広がるようにして長い白髪……というか凍り付いてるじのロングストレートが背中の後ろまでびてる様に見えるが、どこまであるかはわからないな。

機械の中で眠る彼の顔は本當に穏やかで、まるで今にも起きてきそうだ。

とはいえ、閉じられたまつが急にフルフルしだしたら多分ビビルがな。

顔を見る限り……俺より年上だな二十歳くらい?

小ぶりなはほんのし開いており、まるで吐息を吐く為の様にも見える。

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とはいえ、白い靄が時折彼の顔を過ぎってよく見えない。

俺は機械に手を當てながら、四方から何とか中の様子を確認すべく覗き込もうとする。

すると何かを押したじがして部屋の中に機械音聲が響き渡った。

俺は敵の襲撃かと構えるが、流れてきた言葉に愕然とした。

《解凍を開始します。周囲のスタッフは後ろに下がってください。繰り返します、解凍を……》

「ぅええええええ!? あ、あかん!! やっちまった!! す、ストップ!! ストップ!! あ、冷たい!! っていうか痛い!!」

俺は慌てて押したと思われるボタンを、ポケモ○を捕まえる時の様に猛プッシュするが止まる気配が無い。

あ、そういやあれってデマなんだっけ? くそ騙されたぁ!!

そうこうしているに機械の隙間から白い煙が冷気を伴って噴出し、急激に機械と周囲の空気が痛いほど冷たくなったのに耐え切れず後ろに下がる。

俺はこういうのにも弱いのかぁ、とまた一つ自分の耐久度の弱點を認識しつつ呆然と見守るしか出來ない。

ガクブルしながら先程の戦闘でボロボロになったローブを押さえているに、徐々に煙が収まっていくにつれ部屋の溫度も徐々に戻っていく。

そしてようやくヤカンの火を止めた時の様に、噴されてた煙のきは緩やかになり……消えた。

「……どうしよう」

思わず呟いた瞬間、最後っ屁を放つかのように機械からまた勢いよく煙が紛失されてビクッとする。

それが終わって今度は機械の蓋が持ち上がって上に開いていく。

完全に開け切った狀態になったが、機械の中から先程のが出てくるような気配は無い。

恐る恐るすり足で近づくと、俺は思わず鼻を押さえてしまった。

先程とは違い機械の中に居た彼は完全にも戻っており、しかも全が何も隠されておらずバッチリと々見えてしまったからだ。

あ、あかん。里津さんと暮らしてたし、々忙しかったから最近リビドーを放ってない俺には刺激が強すぎる!!

だけどチラチラ見ちゃうのは男の子だからだよ? 仕方ないよね、生だもん。

思わず顔を赤く染めてジーッと彼を見つめてると、突然カッ!! とまるでホラー映畫の様に彼の瞼が開け放たれた。

俺はあまりの事態に驚きを通り越して唖然とし、機械の中にいた彼も俺を見つけると徐々に瞼を震わせて、まつに僅かに付著した粒氷を振るい落とす。

はそのまま何事かを呟こうと口を數回開け閉めする。

俺を見つめて何かを言いたい様だが……瞬きを止めて此方を見つめる様は凄く怖いです。

正直近づきたくないが仕方ない、俺は彼を見ない様に顔を背けつつ彼にゆっくりと近寄って耳を寄せる。

「こ、こち……こちらを……向いて下、さい」

「えっ? み、見てもいいんですか? あ、後で怒らないで下さいよ?」

謝料要求されて、これ以上借金背負わされても嫌だからな?

俺が至近距離で彼の顔を見つめる形になる、すると先程の苦しそうな表は一何処に行ったのか、彼は普通に瞬きをしながら冷めた目で俺を見ているではないか。

その冷たい視線とまだ僅かに殘る冷気に俺がゾクゾクしていると、突然後頭部を雑に彼に右手で摑まれた。

「登録するDNAを採取します」

「は……んぅ!?」

次の瞬間、彼はいきなり俺を無理矢理機械の中に引きずり込んでを合わせてきた。

正直抵抗しようと力も込めていなかったので無理もないが、それ以上に彼の力が強すぎる気がした。

振り解こうにも彼れていいのか戸っていると、何と彼は大膽にも舌をれてきて俺の口の中を舐め回すようにかす!

息苦しさと混の中で俺はただ耐えるだけで瞼を必死に閉じていると、ようやく満足したのか彼がやっと俺を解放してくれた。

俺は慌てて初キスを奪われた生娘の様に顔を真っ赤にしながら、口を押さえ後ろに蹈鞴を踏んで距離を取る。

いや、初キスだけどさ。こんな海外のAVみたいなキスだと予想してなかったし。

は俺とは対照的に揺を見せずに、ゆっくりと足を片方ずつ出して機械から出てきた。

そして前を隠そうともせずに々揺らしながら俺の前に素早く立って見下ろしてくる。

で、でかい、180はあるかもしれん。うん、まぁ他のもでかいけどさ。

長い白髪……ってか銀髪? は腰の辺りまでびており部屋の明かりをキラキラと反している。

此方を見下ろす眼は真紅であり、その瞳のとは違って向けてくる視線はすんごい冷たい。

鼻は高く、頬はスッキリと逆三角形を描いており顎もスッとしている。

は小ぶりだが潤いを保っており、しかも厚くてエロイじだ。

俺が彼の放つ威圧満なボディに圧倒されていると、突然目の前で彼が跪いて衝撃的な事を口にした。

「これより、このは貴方のですマスター。どうか、私に名をお與えください」

「…………勘弁してくれよ」

當然と言うべきか、俺は彼の問いに答える事ができないまま部屋を靜寂が包んでいった。

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

「あーあ、最近何も狩れてないよぉ。沿矢君に自慢できないじゃん」

今日も荒野を一日中駆け回り獲と會えなかった苛立ちからか、珍しく普段は行儀の良い弓が助手席にだらしなく背を預けながら言葉を発する。

弦は街中にあるコンクリートの皹や窪みに気をつけながら車を運転し、孫のその態度を橫目で見ながら諌めるように小さく言葉を返す。

「貯えはまだあるだろうに……そう焦るな。それと木津に自慢も何も、あいつはオメェを最初から尊敬している様に見えたが?」

それどころか奴は俺にも尊敬の眼差しを隠す事無く向けてくるぞと、弦は弓に見える様に口角を僅かに上げた。

組合所に行けば、どちらかと言うと妬みの視線の方が多い中で沿矢の様な男は珍しい。

――ああ言う真っ直ぐな男が多ければ、組合に所屬する同士達のトラブルもなくなるのだろうが……。

そう小さく弦は憂いを帯びた溜め息を零す。

弓は分かってないとばかりに勢いよくを撥ね起こすと、弦の橫顔に向かってブーブーと不満を垂れ流す。

「分かってるよぉ! だから、お姉さんとして恥ずかしくない振る舞いを見せたいのっ!! 沿矢君もそうすれば私を頼ってくれるかもしれないし!」

ぷんすかと擬音がつきそうな程の勢いで、弓は大聲で高らかに自分の考えを主張する。

弦は弓が何を言ってるのかと眉を顰めたが、ふと先日沿矢に會った時の事を言ってるのだと気付いて驚きつつ言葉を返す。

「弓よ。なんだオメェ、まだ納得いってなかったのか? クースは別に危険な所じゃねぇって、態々俺達も調べてから狩りに出かけたじゃねぇか」

そう、沿矢がクースに行くと聞いて二人は一応あの町の事を調べておいたのだ。

クースまさしく初心者が基本を學べる良い訓練場みたいな場所だと、弦は調べた結果で思った。

デパートやスーパーにいるOG式は行パターンの基礎を押さえていて、それを理解すればLG式やBA式に対処する時も生かせる経験は積める筈。

それにクースは時折報を知らない者か、程度を弁えてない無謀な者が病院に足を踏みれた時ぐらいでしか死者は出ていない。

他の町と比べると発見されたばかりで比較的荒らされてもいないし、良い経験と資を手にれてくるに違いない。

弦はそう思い至り別段何の心配もしていなかったし、奴を案したのが顔見知りの付嬢だと知って沿矢が報面も知り得ているのを確信する。

の面倒見の良さは仕事の域を超えている所があり『いいスカベンジャーになりたきゃ、登録するのに田中を選べ』とまで主張する者もいる。

弦がそれ等を述べつつ、し心配しすぎじゃねぇか? そう弦が弓に言うと弓は顔を伏せた。

「だって沿矢君ってし無茶な所があると言うか、見てると守りたくなると言うか……」

そうか? 弦はその聲をらすのをグッと押さえた。

一言それをらせば、またもや大聲で反論してくる事は目に浮かんで見えるからである。

黙って運転に集中し組合所で燃料を補給して帰るべく速度を上げようとした所で、バックミラーに僅かに明かりが反したのに気付く。

「え? なに? ……送迎トラック? 今日戻ってくる日だっけ……載ってないや、ってことは怪我人が出たんだ」

弓がバックから予定表を取り出して確認を取ると眉を顰めた。

ある程度の銃創や切り傷は現場で手當てできるが、怪我の度合いが酷いと組合所でないと治せない。

あまりに酷い時はそのままメイン居住區にある病院に搬送される時もあるが、それはランクが高くないと行われない。

その様な大怪我を負った者はもう仕事に復帰できないかもしれないし、ランクが低いという事は蓄えもないであろうからだ。

な様だが、醫療品は貴重品なのだ。誰もそれに文句を言う事は無い、組合所で治療をけさせて貰えるだけでもの字なのだ。

弦はトラックが猛スピードで近づいてるのに気付き、大人しく道の脇に車を寄せて道を譲る。

するとトラックが脇を通る時に謝のクラクションを一つ鳴らした。

どうやら、禮儀の良い兵士の様だが彼等のような者はあまり多くは無い。

続いて資回収用のトラックも過ぎていった所で、後に続く様にハンドルを戻し後ろに並んでトラックを走らせる。

トラックの荷臺には査定をけるであろう纏められた荷は一つしか置いてない。

それを見るとどうやら今日出発した組で怪我人が出た様だが……。

弦がそこまで考え込んだ時、弓が急に瞼を細めてフロントガラスに顔を覗かせる様にした後に、突然車の窓からを乗り出してライフルを正面に向けてスコープを覗いた。

「ばっ!! 弓!! 何してる!! やめねぇか!!」

下手をすれば、いや間違いなく銃をあちらに向けてる所なんぞを見られたら、軍に注意をける所ではすまなくなる。

弦が取りすのも無理は無い、あわやハンドルを切って脇道にろうとした所で弓が車の中に戻ってくる。

「何を考えてる!! 奴等が容赦をしない連中だって事を……どうした、弓?」

弦は弓の無謀な行を大聲で咎めようとしたが、弓の表が青く染まってるのに気付いてトーンダウンさせた。

弓はを押さえて自分を落ち著かせようと數回を息を吐き、ゆっくりと弦に向き直った。

「あ…………君の……」

「……何?」

呟くように吐かれた言葉は、トラックの騒音で聞こえなかった。

弦が眉を顰めて問い返すと、今度は先程とは違って大聲で弓がぶ様にして言った。

「あれ! 沿矢君の査定資だった!! 名前が書いてあって……クースで何かあったんだよ!!」

「…………っ!!」

弦は一瞬聲を詰まらせたが、すぐに弓を落ち著かせる様に頭を素早く回転させて言葉を吐く。

「弓よ……そうだとしてもだ。査定資があるんなら無事に戻ったんだよ奴は! 今頃はキャンプで休んでるか……下手すりゃ前のトラックに乗って戻ってきたかもしれん」

「え……あ、そ、そうか。そうだよね……。じゃあ、誰かが病院にでも行ったのかな」

「そうだろうとも。丁度いい、組合に著いたら聞いてみるか」

弓を落ち著かせはしたが、弦も心では嫌な予じてはいた。

だがそれを顔に出すような真似はせず、ただ前のトラックに追隨するのみだった。

會話で溢れてた數分前が噓の様に車は靜まり返り、ただ早く著けと願うばかりだった。

いや、もしくは著かない様に彼等は願っていたかもしれない。

――そうすれば、殘酷な真実を知らずにすめるから。

しかし時は止まる事をしない。

組合所に著くとすぐさま送迎トラックから怪我人が二人運ばれていくのが見えた。

怪我人は兵士達と付き添う様にいた一人のスカベンジャーに囲まれて慎重に運ばれていく。

弓はすぐさまトラックから出てその運ばれていった二人が沿矢でない事を確認し終えると、今度は送迎トラックから降りてくるであろう荷臺へ視線を向ける。

と、其処でようやくトラックのエンジンを切った弦が弓の橫にならんで話しかけてくる。

「どうだ? 運ばれてたのは奴だったか?」

「ううん、今から事を聞いてみるね。……あの! だ、大丈夫ですか? クースで何かあったんですか?」

トラックから出てきたのは一人だけで、そのが組合所にろうとした所で弓はに濡れていた彼を気遣いづつ聲を掛ける。

そのはセミロングの茶髪をなびかせて素早く此方を向く、そのはリュックを一つ背負いもう一つは片手に持っていた。

手に持っている方からは恐らくOG型と思われる手がはみ出ているが、背負っている方には何もっていない。

背負う荷が逆なのでは? そう弓が困した時に彼が口を開いた。

「このは私のではない。廃病院にアタックした奴等がいたんだ。彼等は罠に掛かり、九人中生還したのは三人だ。いや……一人は助かるかどうか分からないな。今から治療をける所だ」

「は、廃病院……? あ、あの新人の子はいませんでしたよね? 私と背が同じ位で黒髪の中中背な男の子なんですが……」

「っ……!!」

弓が不安気に問うと、冷靜に話を進めてくれていたそのの瞳が揺れた。

しばらく沈黙が流れ弓が再び問おうとした所で、そのは大切なを扱うかの様に両手に持ちなおしてリュックを押し付けてきた。

いながらも弓はそれをけ取ってリュックと互に見ていると、彼は瞼を伏せて思い出す様に言った。

「木津 沿矢と言う子だろう……? 彼は……私がキャンプに怪我をした男を運んだ後、また病院へ戻ろうとした私に著いてきてくれた。そして病院の中に生存者を救出に行って見事に二人を救ってくれた。彼のような……勇気を持った人を私は初めて見たよ。それは彼の荷だよ、私より知り合いの君が持つのがいいだろう」

「え? あの……」

弓は彼が何を言っているのかよく分からなかった。

う弓とは違い、弦は彼が何を言っているのかを理解して無念そうに瞼を閉じた。

そして彼は最後に瞼を開けて弓に視線を合わせるとハッキリ言った。

「彼を最後に見たは、彼がLG-103式と相対して逃がしてくれたと言っていた……殘念に思う。では私はこれで……失禮する」

はそう言って顔を伏せると、素早く組合所にっていった。

弓と弦はその場に佇み、しばらく沈黙の時を過ごした。

だがいつまでもそうしている訳にはいかないと、弦が弓の肩に手を置こうとした瞬間に弓は弦の方へ機敏なきで向き直った。

弓は憮然とした表で、弦が想像していた表とは違い彼は呆気に取られた。

「行こう、弦爺」

「は? い、行くってオメェ……」

どこへ? その言葉を弦が発しようとした瞬間、弓は髪を逆立てる勢いで弦へ怒鳴りつけた。

「クースに決まってるじゃない!! 別に沿矢君が死んだ所を見た訳じゃないのにさ!! 何を諦めてるのよあの人達はぁ!! もし生きて戻ってキャンプが無かったら飢え死にしちゃうじゃない!! あったまきた!! 無責任もいい所だよ!! 早く私達が迎えに行かなきゃ!!」

「い、いや、だが燃料が……」

「だったら早く補給してきてよ!! 私も食料と水を用意しとくから!! ほら行ってよジージぃ!!」

弓が弦を『ジージ』呼ばわりする時は余程の不安を覚えているか、興しているかのどちらかである。

恐らく今回は後者であるようだ、弦は弓のあまりの勢いに押され慌ててトラックへと駆け戻っていく。

弓はそれを見屆けると、顔を雑に袖で拭って食料と水を調達すべく組合所の扉を潛った。

「信じてるからね……私は」

リュックを抱える手を握り締め弓が吐いたその呟きは、クースの悲報を聞いてざわめくフロアの喧騒に紛れて消えた。

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