《俺+UFO=崩壊世界》敗者の背中
9/5 サニア=サリアに直しました。
誤字や字も修正しました
迎撃戦は思ったより早く終わったのだが、逆に針通しと言う行為で時間が掛かるとは予想外な展開であった。
俺はこの後どうなるのかと、質問に答えてくれていた金髪の同業者に疑問を飛ばす。
彼は嫌な顔一つ見せなかったが、代わりに五ボタ払えば説明してやると応えた。
五ボタってアンタ……。いや、まぁ五ボタあれば芋とかネズミくらいは買えるけどさ。
俺は素直に五ボタを取り出して彼に渡すと、駐屯地に戻る道中で説明してくれた。
金髪の同業者が言うには、迎撃戦が終わればまず軍が編した回収班なる部隊が無人兵の部品を回収し、後々に駐屯地で部品の分配をするらしい。
組合所に所屬してる俺達は無事な部品だけを分配し、軍は回収作業の手間や塹壕を貸し出した代金として、壊れた部品やが開いた裝甲板を持っていくのである。
なんでもメイン居住區には宮木伍長も言っていた《プラント》なるが存在し、そこで壊れた部品を修理、もしくはリサイクルできるらしいのだ。
そういう壊れた部品も全く金にならない訳ではないが、無事な部品に比べるとやはり大幅に値は落ちるし、売り捌くのも楽ではない為彼等も納得している様だな。
聞いてて思ったのだが、もしかしたら俺がレイルガンでスパイダーのを吹き飛ばしでもしていたら、俺達の分配品は足だけとかになってたのか? そう考えると上手く足だけ破壊できて運が良かったなぁ。とは言え、あんな狀況では俺がそんな事を知っていたとしても手加減できたとは思えないがな。
いや、そう言えば金髪の人も足を吹き飛ばしてたな……。俺が足を吹き飛ばしたのは偶然だったんだけども……。まさか、彼は狙ってやったのだろうか? だとすると凄いよね。
雑談をわしながら同業者達と駐屯地へと向かっていると、突如として手を叩き合わせた乾いた音が聞こえてきた。
何事かと音が聞こえて來た方向に視線を向けると、訓練兵達を差し置いて塹壕から一人抜け出した武市さんが拍手を此方に向かって送っているではないか。
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「素晴らしい!! うむ、やはり組合所に所屬する諸君の働きはこのヤウラに多大な貢獻をしてくれているのだと、この眼を通して改めて実させてもらったぞ!!」
そう芝居掛かった口調で俺達に賛辭を向けると、武市さんは一人で納得するかの様に細かく頷きを繰り返す。
唐突な賞賛ではあったが彼の様な人さんに褒めて貰えたのは素直に嬉しいのか、同業者達は『へへっ』等と口に出しながら頬や後ろ頭を掻いて満更でもない反応を見せる。
何が『へへっ』だよ。迎撃地點に案してくれた兵士を無視した態度とはえらい違いだな。
俺的には武市さんに捕まってしまい、どこぞのハム太○の様に『へけっ』てな合である。
まさか此処で彼に捕まるとは予想外であった。てっきり彼は俺が一人になった頃を見計らって聲を掛けてくるのではないかと予想していた。
だが、彼は予想に反して大膽にも迎撃戦直後にすぐに絡んできたではないか……。俺の考えはお子様カレーより甘口だった様である。ちくしょうめ。
「ほら、お前達!! 何時までも鼠の様に狹い所に籠もってないで早く上がって來い。組合所の勇士達の中には、貴様等とそう歳の変わらん者もいるようだぞ?」
武市さんが塹壕に居た訓練兵達に聲を掛けながら、俺へと刺す様に鋭い視線を飛ばす。
弦さんに勝るとも劣らないその睨みをけ、俺は何時彼が迫田の事を問い詰めてくるのかと心底肝を冷やしてしまう。
訓練兵達は武市さんの言に従い、素直に塹壕から這い上がってくると直に綺麗に橫一列に並んでみせる。
ただ、彼の言葉を聞いたおで訓練兵全員の視線が俺へと突き刺さった。
確かに同年代である事を確認したからか、それとも武鮫やレイルガンを裝備している事に驚いたのかは分からない。
だが、訓練兵達の表には確かに目に見えて変化が起きた。素早く瞬きをして揺する者もいれば、瞬き一つせずに俺を凝視する奴も居る。
あれれぇ~? おかしいぞぉ~? 目を潤ませ顔を赤らめながら俺を見つめるの一人ぐらい居てもいいはずなのだが、何処にも居ないな。
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ふむ、俺の平凡フェイスが嫌になってくるね。イケ面になれる顔裝著用HAとか無いのかな? あったら探索を頑張るんだけど。
俺が新たな計畫を脳で組み立てていると、武市さんは一歩前に出て此方に言葉を飛ばした。
「この通り、私は今背後に居る訓練兵達をけ持っており、彼等を一人前の兵士として育て上げたい気持ちがある。そこで、だ。厚かましいお願いではあるだろうが、諸君等の経験談を彼等に語って貰えないだろうか? そうなれば訓練兵達の気構えも一層と強固になってくれるはずだ。勿論、貴方達の時間を長々と奪うつもりは無い。回収班の作業が終わるまでの間でいいのだが……どうだろうか?」
武市さんは言葉を紡ぎながら、最後に僅かであるが顔を橫へ向けて流し目でお願いする。
元々切れ目が目立つ瞼から覗くその視線は大変に威力があり、周りの同業者達のハートを打ち抜いた様だ。
彼等はまるで事前に打ち合わせていたかの様に聲を揃えて了承の返事をし、だらしない表を浮かべている。
此処で俺だけが『僕はママが作ってくれたアップルパイが待ってるから、先にお家に帰ります! 門限もあるし!!』とか言えたらどんなに爽快な気分を味わえるだろうか。
勿論、そんな評価がズタボロになりそうな言葉を現実で吐く勇気は今の俺には無い。
とりあえず駐屯地に向かってから話を伺うとの武市さんの言葉に従い、歩みを再開する。
足取りは軽くウキウキした表を見せる同業者達を他所に、俺はただ一人暗い気分でその後をトボトボと著いて行くのであった――。
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駐屯地に戻り、スパイダーの報をけ取ったパイプテントへと戻ってくると、設置されていたパイプ椅子を幾つか前へとかして同業者達と並んで座る。
訓練兵達と武市さんは対面に並んである元々設置されていたパイプ椅子に座り、こちらに向き直る。
そうすると、まるで記者會見をける俳優気分を味わえた。違いがあるとすれば彼達との間にテーブルが無い事くらいか。
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「貴重なお時間を割いて頂き、改めて謝を申し上げます。さて……まずは誰からお話を伺いましょうか……?」
武市さんはそう言うものの、明らかに視線は俺を向いているんですが。しは自重してくれませんかね? 僕のガラスな神が持たないよ。
このままだと俺からトークを開始する破目になりそうであった。だが、この世界にもKYな輩が存在したようであり、一人の同業者が椅子から腰を上げて高らかに名乗りを上げた。
「仕方ないな、まずは俺が語ろう! 俺の名前はルフ・コドレス。クラスはE+、ポイントは51021で先日昇級したばかりだ」
名乗りを上げたのはスパイダーに先制攻撃を回避された男であった。
彼は針通しでも真っ先に名乗りを上げていたな……目立ちたがりなのだろうか? とは言え、俺的には助かった。
俺の優れた聴力が武市さんが放った僅かな舌打ちを捉え、し冷や汗が浮かぶ。
だが、彼はすぐに穏やかな笑顔を浮かべるとルフと名乗った男に謝の意を伝える。
「真っ先に話をして頂ける様で謝を申し上げます。では、手短にどうぞ」
武市さん、本音が零れてますよ。『手短に』ってアンタ……。
だが、ルフさんはさり気にれた武市さんの毒に気付かずに話を始める。
「ああ!! アレは俺がEクラスに昇級したばかりの頃の話だ。Eクラスは中級のり口に差し掛かってる時期と言われていてな、俺としてもようやく生活が安定し始めた頃だった。だが、ってのは怖い。スカベンジャーにった當初は『ただ、食い繋ぐ事ができればいい』そう思ってた筈なのに、俺は気付けば順調に事を運べていた事実に油斷してしまったのか、ようやく馴染んできていた近場の探索場所じゃなく、探索場所の一つである廃都市ドノールへ初めて探索に出向いたんだ」
意外にも、ルフさんの話は引き込まれるモノがあった。
彼から視線を外し、チラリと訓練兵達へと向けてみれば僅かに前へとを乗り出している者も既にいる。
「それだけならまだいい。だが、俺は愚かにもたった一人でそのまま新しい場所で探索を開始してしまった。一人で探索すれば確かに資を獨り占めできるが、その分危険も大きくなる。 小さな町とは違い、都市部の路上は都市全を徘徊しているCG式と言う奴がいる。 俺が今まで探索していた探索場所なら廃墟部だけを気をつけていれば良かったんだが、都市部だとCG式が居る所為で一度都市にり込んでしまったら気が休まる暇が無かったんだ。もし俺があの時誰かと組んでいたなら、もうしやり様はあったんだろうがな……」
ほ~、CG式かぁ。ソイツは厄介ですな。
確かにクースでも街中では何の危険にも遭遇しなかった。
だが、都市部だとCG式と言う存在が彼方此方に居る為、探索難易度が大幅に上がってしまうらしいな。
「俺はしでも資を掻き集める為とは言え、何時もの探索場所に向かう覚で最小限の裝備と弾薬しか用意してなくてな……。襲い掛かってくるCG式の対処に手間取ってしまい、気付けば弾薬が底をついちまった。普段持ち歩いてるボタも最低限の分しかなくてな、キャンプで補給もできなかった。暫く、己の無力さを痛した日々を過ごしたよ。俺は結局、一度も廃墟にり込めないままドノールでの日程を過ごし終えてしまったんだ。要するに、俺が何を言いたいかと言うとだな『自分の力を過信しすぎるな』って事だ。とは言え、俺と違ってお前達は頼りになる仲間達が居るだろう。自分の手に余る事態に遭遇した時は素直に助けてもらえ。意地を張りすぎても、俺の様な無様な結果になるだけだろう……以上だ」
お、おぉ!! なんか普通に良い話じゃない? 教訓を學べる良いじの容である。
俺としてもし銘をけたぞ。ただ、彼が真っ先に攻撃を外した事実が無ければ満點だったがな。
あれってさ、やっぱまだ自分の力を過信してたんちゃうの? ねぇ? お兄さんにコッソリ教えてよ。
冗談はさておいて、俺は素直にルフさんへ拍手を送る。
それに釣られてか他の人達も拍手をルフさんへ送り、ルフさんも満更ではない様子で片手を上げてソレに答えていく。
最初はどうなる事かと思ったが、パイプテントにはどことなく和やかな雰囲気が流れ始めていた。
「貴重な験談を話して頂き、謝します。では、次は……」
「俺が話そう。と、その前にまず自己紹介をしようか、俺の名はオリバー・フィールズだ。クラスはDで、ポイントは113502。コドレスの話の容にケチをつけるわけじゃねぇが。やっぱり、組合所の《勇士》としては勇ましい験談も語らんとな」
武市さんがまたもや俺に視線を向けようとした途端、今度は塹壕で仕切っていた黒人の男が名乗りを上げる。
勇士、と口にしてチラリと武市さんに視線を向ける辺り、彼を意識しているのがバレバレである。純な男子中學生かっ!!
「……そうですか。では、始めて下さい」
そう言った武市さんの表には軽く口角の端を上げた笑顔が張り付いているのだが、その端が僅かに引くついてるのは僕の気のせいであってほしいな。
その話を始める相手に『三行でお願いします』なんてネット住民の様な無茶振りをしてこないだろうな?
「そうだな……。都市部の危険は先程コドレスが話してくれたおでなんとなく分かってきただろう? 実は都市部にある廃墟部のセキュリティも段違いに危険なんだ。俺はある日、チームを組んでる仲間達と……」
その後も一人が話を終えると俺以外の各々が名乗りを上げ、武市さんの表から何かが抜け落ちていく展開となった。
俺がどこぞのバラエティの大所なら『すべらんなぁ~』と相槌を打つぐらいには面白いし、為になる話も多かったのだが、武市さんは全く興味が無かったみたいである。
でも、訓練兵達も『おぉ』とか口に出るくらい何時の間にか夢中になってたし、験談聞けた事は彼等にとって良い経験だったのは間違い無い筈だ。
しかし、そうこうしているに遂に六人目の話が終わり間近であり、俺の出番が刻一刻と迫ってきているのをじ取って焦りが浮かぶ。
「……で、俺は言ったんだ。『おい、ボブ!! それは銃じゃなくて、チョコバーじゃねぇか!!』ってな!! 愉快な奴だろ? だが、こういう仲間がいると気分が盛り下がることも無く、探索を長く続ける事が出來る。ストレスは集中力を奪うし、下手すりゃ仲間割れなんて事態も起こす。組む相手の腕も確かに重要だが、それ以上に人格が伴っていないと駄目だと俺は思う……以上だ」
最後の同業者が話した容も上手くコメディとシリアスな部分が混ざり合ってて楽しめました。
いやー、良かった。じゃあ、そろそろお開きの時間かな? ママのアップルパイも冷めちゃってるだろうし。
俺的にはもう大満足で映畫のスタッフロールまで見終えた気分なのだが、當然そこで話は終わらない様だ。
武市さんはようやくこの時が來たと言わんばかりに、疲れた笑みを浮かべながら此方へ向き直る。
當然、話をしていないのは俺だけなのだから訓練兵達はもとより、同業者の視線も俺へと向く。
俺は溜め息を零したい衝を押さえ、ゆっくりと口を開いた。
「……俺の名前は木津沿矢です。えー必然的に俺が話を締めるじになってしまいましたが、見ての通り俺はまだ若造です。クラスもGでポイントは580と経験も淺く、皆さんの期待に副えるような話ができる自信はあまりありません。と、まぁ後でクレームが付けられないように予防線を張っておきますね」
俺が最後にそうおどけて言うと経験談を聞いて大分緩やかな空気になっていたおか、訓練兵達の間からし笑い聲が響く。
とりあえず何を話そうかとし思考を探らせていると、武市さんが突然聲を上げた。
「なるほど。君は経験が淺いのか……。しかし、君の若さで組合に所屬した経緯や、そのHAやレイルガンをどういう事で持つに至ったかなど興味が惹かれる部分が多い。そこで、だ。よければ訓練兵達や私の質問に答える形式で話を進めないか? どうだ? お前達も同世代の彼に興味があるだろう!?」
「「「「「はい!! 武市教!!」」」」」」
テントに響き渡る大聲量の中、俺は表を引き攣らせる事しかできない。
明らかに武市さんは最初からこの流れに持っていって俺から報を探るつもりだった様だ。
訓練兵達の表は活き活きとしており、誰もが目を輝かせている。
ここで俺が斷りの一言でも放とうモノならば、組合所では験談を語った同業者が俺をチキン野郎と罵り、軍では訓練兵達の間で話の最後に全てを臺無しにした弾男として語り継がれそうだ。
そして最終的には俺は稀代のKY野郎としてヤウラに名を轟かせそうである。
中學時代のとある日にブルマ廃止を止める為に生徒會長に立候補し、全學年の子と先生方に蔑んだ眼差しで見られた貴重な経験を持つ俺でもそれは流石に勘弁です。
まぁ、流石に皆の前で武市さんの口から『迫田を倒したのは君か?』なんて質問は飛んでこねぇだろ。
ここは一つ覚悟を決めるしかないな。今は『どうしてこうなった?』と脳で愉快なダンスをする前に、此処を乗り切る事に全神経を集中させるのだ!!
「はいはーい!! じゃあ、私から質問してもいいかな?!」
突如として大聲を張り上げ椅子から腰を浮かしたのは、ゴールドブラウンの髪がヘルメットの端からし覗き見えるの子だ。
とは言え椅子から立っても、背格好が心なしか小さく見える。あんまり背が高くないのかな? 150cmちょっとくらいだと思う。
ただ、制服の部分がやけに張りがあって大きく見える気が……。いや、間違いなくデケェ。
まさか元の世界でもお目に掛かれなかったロリ巨に崩壊世界で出會うとは……。思わず手を合わせて拝んでしまいそうである。
「……サリア。貴様は相変わらず落ち著きがないな。しは自重しないか」
武市さんが諭す様にそう言うものの、『よくやった』と言わんばかりに口角の端を持ち上げている。
確かにサリアと呼ばれたの子のおで、俺が質問に答えると言う流れは確立されたと見てもいいだろう。
「えへへ……。すみません」
サリアちゃんは花の様な笑顔を浮かべてそう謝罪する。
さがまだ殘る顔でそんな締りがない表を見せると、とてもじゃないが軍に所屬している人とは思えないな。
俺から見ると彼は學校の花壇に水をやりながら、お花に赤ちゃん言葉で話し掛けてそうなタイプだ。
あくまでそのイメージは俺のアニメ脳に犯された主観である。もう駄目かもしんねぇな、俺。
俺が自分の脳に不信を抱いていると、サリアちゃんは早速質問を飛ばしてきた。
「じゃあ、そのHAは何処で手にれたんですか?」
ふむ、やはり武鮫に関する質問が飛んできたか。
HAは大変に珍しい裝備みたいだし、全員の興味を惹いてたみたいだからな。その質問が來る事に驚きはないぜ。
俺は全員の眼が屆く様、武鮫を持ち上げて宙に翳しながら質問に答える。
「実は、このHAは俺のじゃないんです。知り合いの人が俺のある事を見かねて貸してくれたんですね。型番なんかは削れてて見えなかったし、持ち主も名前を付けてなかったので、俺はこの前腕部分にある連なった裝甲板から鮫を連想して、武鮫という名前を付けて呼んでいます。あ、ちなみに鮫ってのは海に居る生きで何百って種類がいるんですが、人を襲う獰猛な種類は実は數十種類のみなんですね。それと鮫には獲が放つの電気信號を遠くから信して狩りをすると言う特殊な能力があって……」
「え、えーっと。は、はぁい! 分かりました!! 私からの質問は以上です!!」
サリアちゃんは突然俺の話を打ち切るかの様にパイプ椅子へ素早く腰を下ろしてしまった。
ふっ、勝ったな。里津さんですら俺の鮫談義に五分として持たなかったからな。
そう言えば里津さんにクースから帰ったら鮫談義する事をすっかり忘れていたな。帰ったらすぐにでも話してみようかな。ぐふふ。
俺が心で勝利の味を噛み締めていると、次の挑戦者が遠慮がちに手を上げながら腰を浮かした。
表にさがまだ殘る黒髪の男の子は今度はレイルガンに向けて指を指しながら、質問を口にする。
「では、そのレイルガンは何処で手にれたんですか?」
俺に関する質問が飛んで來ない辺り、彼等の興味度合いが分かりやすくて助かるね。
AK○48とかのメンバーで、握手に來てくれるファンが居ない子の気持ちが凄くよく分かったよ。
ああ言う景を見ると、とても憂鬱な気分になれるよね。思わずチャンネル変えちゃうもん。
まぁ、俺に関する質問が來た所で答えられる回答が無いんだよなぁ……。出地とかどうするよ。あ、ちなみに彼はいないよ。
俺は脳でそれ等の対処法を思い浮かべながら、レイルガンを抱えて回答する。
「実はこのレイルガンも今回の迎撃戦に參加する時に知り合いの……人が貸してくれたんです。その人には貸しと言うか、ある事があってこの様な立派な武を借りけられたられたんですね。はい」
「……貸しと言うと?」
自重しろよ、ルーキー。明らかに言葉を濁してるでしょうがっ!!
宮木伍長の事を話すのは彼が武市さんに苦手意識を持っていた様だから咄嗟に伏せたのだが、その所為でいらぬ興味を煽ってしまったのだろうか。
「うーん。すみませんが、本人に了承も取らずに話せる容ではないので……」
「そうですかぁ……。分かりました」
質問した訓練兵は俺の返答に気分を害した様子を見せず、素直に椅子に腰を下ろす。
そもそも組合からはクースでの件は口止めされてるしな。こうした対応になってしまうのは仕方の無い事である。
ってか、こうして話してみて分かったが借りけたが多いな俺は。
多大な借金もあるし、ホント救い様がねぇよ。ラビィにも苦労を掛けてるしなぁ……けねぇマスターだ。
正確には武鮫は里津さんから貰ったなんだが、HAと偽ってる以上は貸しって事にしとかないと周囲の反応がとんでもない事になりそうなんだよね。
二つの質問が終わり、し間が空いてしまう。
今このタイミングで回収班が戻ってきてくれたらお開きになりそうなじだ。
そうなれば俺は彼等を英雄と見なして鼠を奢ってやったのだが、そんな奇跡は起こらなかった。
代わりに遂に恐れていた事態が訪れてしまう。
一どうしたのかと言うと、今まさに目の前で武市さんがゆっくりと見せ付ける様にして手を上げたからだ。
いや、待てよ? もしかしたら武市さんは唐突に片手を上げてクリ○ンの必殺技である、気円○を投げる練習をしたかった可能があるかもしれん。
俺が思わず淡い期待を抱いて現実を逃避している間に武市さんはパイプ椅子から立ち上がると、俺に鋭い視線を向けながら小さなから質問を放った。
「々と聞きたい事はあるが……。まず、HAを貸してもらう事となったある事というのは答える事ができるかな?」
「……えーっと、実は俺って以前に大怪我した事があって……。その治療費を払う為に俺は組合所に所屬したんですね。で、その際に知り合いがしでも負擔が軽減できる様にとHAを貸してくれまして……。まぁ、良い人なんですよ。はい」
思ったより普通な質問だったな。
武市さんの質問で俺が組合所に所屬した経緯も話せたし、大分訓練兵達の興味も薄れてきたんじゃないかな?
『…………HAを裝備したのは組合所に所屬してからと言う訳か。時期的に合わない……か?』
武市さんは質問が終わったと言うのに、そのまま立ち盡くしたまま小聲でそう呟いた。
俺の優れた聴力が言葉の容を捉えるも、一瞬彼が何を言ってるのかと呆然としてしまったが、すぐに彼は俺が組合所に所屬している時期を知っていた事を悟る。
お、おいおい……以前組合所であった後で俺の事をそこまで調査してたのか?! 迫田の舎弟が吐いた名前の響きが似てるってだけで?!
武市さんが幾ら賢いと言えど、大勢が所屬する組合の人達の中で全員の所屬時期を覚えておける訳が無い。
そう考えると彼はしでも可能があった俺に目星を付け、調査をしていたに違いない。
むむ……先程の回答はし迂闊だったか!?
いや、待てよ? そもそもHAを裝備した時期が迫田を倒した後だと分かったならば、彼の俺への疑いは晴れる方が高いか?
まさか生で俺が全裝著型HAを裝備していた迫田を倒したと言う結論には、流石に至るはずがないと思うが……。
俺は考えを纏めながらも自分の心臓が嫌な鼓を刻むのをじ取る。
てっきり武市さんは此処に著てからHAを裝備している俺を見て、迫田への疑を再燃させたと思っていた。
だが、いざ蓋を開けてみれば彼は既に組合所で分かれた後で俺への疑念を抱いており、調査を進めていたのである。揺するなってのが無理だ。
「ふむ、次の質問にろう。君が負った大怪我の原因は?」
武市さんが続け様に質問を放ったので、パイプテントにしどよめきが起こる。
俺としても彼が本格的に攻勢を強めてきたので焦ってしまう。
落ち著け俺、迫田や百式と戦った事に比べれば別段何てこと無いさ。冷靜に対処するのだ……。
「いやぁ、つまらない理由ですよぉ。外居住區でトラブルに巻き込まれる事なんて別段珍しくないでしょう?」
「つまらなくなんか無い。ヤウラの治安維持は我々軍が請け負う重要な任務である。君が巻き込まれたトラブルとやらを話してくれれば、私が対処してやろうじゃないか」
「いえいえ、もう終わった事ですから。それに武市さんは訓練兵達の相手でお急がしそうですしね」
「大丈夫だ。彼等はこれからフル裝備でランニングしながら玄甲へ帰還する手筈となっている。私は暫く手が空くんだ」
おい、訓練兵達が『そんな事聞いてない!!』って表をしてるぞ。彼等は武市さんの調査の犠牲になったのだ……。
それより、だ。HAを裝備している時期が迫田が死んだ時期と合わないと言うのに、彼は俺への疑いを晴らす事無く追求を強めてきた。
ど、どういう事だ? 何がそんなにも武市さんの興味を惹くの? 実は俺に惚れてるの? いかん、揺しすぎて願がれ出てしまった。
武市さんの勢いに飲み込まれつつも、俺は何とか斷りの言葉を吐き出そうとを震わせた所でパイプテントに兵士が駆け込んできた。
「お知らせします!! 回収班が帰還しました。組合に所屬している人達は……。あ、あの、お邪魔しましたか?」
兵士がパイプテントの異様な雰囲気を察してか、言葉を途切れさせて様子を伺う為に武市さんへそう尋ねた。
武市さんは小さく息を吐くと、己の高ぶりを鎮めるかの様にゆっくりと瞼を閉じてから兵士へと向き直り返事をする。
「いや、もう終わった。彼等を案してやってくれ」
「は、はぁ……。では、組合の皆さんは私の後に著いてきてください」
意外にも武市さんは大人しく追及の手を緩めてくれた。
同業者達は兵士の言葉に気を取り直した様子で、しおぼつかない調子でパイプ椅子から腰を上げていく。
俺は溜め息を盛大に零すのを我慢し、武市さんや訓練兵達に一つ頭を下げてから彼等の後に続く為に席を立つ。
そのまま武市さんの近くを過ぎろうとした折、彼の口から鋭い一言がれ出た。
「君は――A型なんだな」
「…………ぁ」
し、しまった。俺の左足の脹脛には宮木伍長が親切心で張ってくれた型を示す紙が張られているんだった!!
ゴミ山でだらけで暴れまくった俺の痕はあそこに大量にあったはずだ。迫田の事を調査した際にそれ等も回収されたに違いない……!!
型なんかはとっくに解析されていたのだろう。だからあんなに食って掛かってきてたのか!?
それにもしヤウラにDNA鑑定技があればゴミ山にあったと、俺から採取したがあれば俺への特定なんて容易く出來てしまう。
今はまだゴミ山にあっただけだが、俺自から流れるも検査されればあそこに居た事は確定的な事実となってしまう。
いや、それだけじゃない。迫田のブレードには俺が右腕でけ止めた時に大量のが付著したはず。
それが俺と迫田が接した事実をも示す証拠にもなってしまうじゃないか……っ!!
瞬時にそれ等の事実を認識し、思わず足が直しそうになった。
しかし、俺はすぐに気を取り直すと勢いよく足をかしてパイプテントから抜け出る。
もしかしたら、今の俺の後姿は武市さんから見たら敗者のソレに見えたのかもしれない――。
サリアがサニアになってて慌てて直しました。
何時もプロットを眺めながら話を投稿してるのに、一向に誤字や字が無くならないし、今回の様なミスも犯すとは……。
小説を書くって大変ですね。初めての作品ですので、注意深くしてる筈なのですが……。お恥ずかしい。
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