《俺+UFO=崩壊世界》ロマンスは唐突に

俺は警備員のアルバイト……じゃない、依頼を遂行する為にし早いが現地へ赴いている最中だ。

どれくらい早いかと言うと、依頼開始時間が夕方の十八時なのに対し十七時に出発したのである。

場所はそう離れてないし、三十分くらいで著きそうだな。

いや、初依頼だったのもあるしさ、仕事容の説明とか質問とかしてちゃんと依頼人からも聞かないとアレかなぁ……って思ったんだ。

アレだな、初めてライバルとポケ○ンバトルした時に何となく、『にらみつける』や『なきごえ』を選択してしまう慎重さみたいなもんだよ。

そして初敗北を験してしまうのだ。全國で一何人の子供達がこの流れを経験しただろうか?

とりあえず俺はその過ちを犯した哀れなポケモ○ントレーナの一人であると、ここに述べておこう。

それはさておき、迎撃戦から帰った後、店の奧へと里津さんに連れ込まれた俺はとりあえず迎撃戦に參加した経緯や起こった事を話した。

里津さんは宮木伍長のご好意に関してはし驚いたじだったが、後は最後まで冷靜に話を聞いてくれた。

全てを話し終わり、俺が稅を徴収される農民の如くチェーンガンや分配品を差し出すと、里津さんは一つ呆れた様に溜め息を零し、俺の頭を優しく一つでて労ってくれた。

まもなくツン期が終わってデレ期にる兆しなのかな? し驚いちゃったよ。

まぁ、その後夕方から依頼がある事を里津さんに告げたら心底馬鹿にされた目で、『アンタ、生き急ぎすぎ』と呆れられたがな。

思わぬ好度ダウンである。デレ期が遠のいてしまったかな……。まぁ、里津さんのデレとか想像できんが。

ちなみに持ち帰った部品の量が多いから、部品の狀態を見極めるのに時間が掛かるとの事。仕事から戻ったら終わってるかな?

そんな事を考えつつ、俺は夕日が照らす街中を歩いて依頼場所へと向かう。

証明紙の裏に載ってる地図を見ると、依頼場所は組合所からそう遠く離れていない外周付近にあるようだ。

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組合所近くにはボタを持っている同業者達や職員を狙ってか、バーやら宿等が結構あるみたいだな。

依頼場所付近まで來ると間も無く太が沈むからか、彼方此方でドラム缶で焚き火を起こしたり、店先にカンテラを吊るして燈りを確保しようとしてる人が多く見けられた。

俺の同業者もチラホラとそこ等を歩いてる姿を見かけるし、既に酒を飲んだのか千鳥足な奴だっていた。どうやらここ等は彼等の集う遊び場みたいなじなのかな?

その分、なんというか……良く言うなら賑わっている。悪く言うなら騒がしいってじで、彼方此方で野太い聲で笑う聲や怒聲が飛びっている。

酷い奴等だと車を所持した輩が車のクラクションを鳴らし、蛇行運転させながら窓からを乗り出して騒いでたりしてました。

凄いよね、すんごい帰りたくなってきたわ。そりゃ警備員を雇う訳だよ、火や車を持った奴等が騒ぐ訳だからな。

今朝、南の駐屯地で會った同業者達はまだ大人しかった方なんだな……。『怖くないぜぇ』なんて調子乗っててホンマすみませんでした。

幸いにも、俺は誰にも絡まれる事無く依頼場所へ辿り著けた。

そこは一見普通のオフィスビルってじだが、ビルの中自には明かりは無く、傍らにある地下へと続く階段に火が燈されたランタンが下へ下へと幾つか置かれて源が確保してある。

恐らく地下にある子灑落たバー的なじなのかな?

まさか地上最強を決める隠された闘技場とかじゃあないとは思うが……。

もしそうなら俺じゃなく、地上最強の生対策に眼鏡を掛けたオッサンスナイパーを雇うべきだよ。不意打ちとは言えオーガに弾を當てたからな。

まぁでも、あの人って絶対後でオーガに殺られてるよね、多分。ご愁傷様です。

はー……それにしても夕方でこの騒ぎなのかぁ。夜とかどうなんの? ヨハネスブ○ク化しちゃうの? いや、むしろ超えるやもしれん。

『ヤウラの治安も悪くない』とかほざいてた過去の自分をぶん毆りたいわ。偶に夜中聞こえてきてた銃聲はここ等辺が発生源なのかな?

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し憂鬱な気分で階段を下り、地下に降り立つとすぐ近くに錆び付いた金屬製の扉があった。

他にも幾つか扉はあったが、とりあえず目の前にある扉をノックしてみる。

すると直に反応があり、ノックによって地下に響き渡った鈍い金屬質な音をさらに上回る怒聲が扉の向こうから聞こえてきた。

『開店はまだだよ!! 看板置いてるだろ?!』

「あ、いえ……。その、組合所から派遣された者なんですが!」

し周りを見渡しつつ、そう言葉を返す。

すると確かに扉の脇に置いてあった鉄板に営業時間と店の名前らしき文字が書いてある。薄汚れてて気付かなかったぜ。

えー……っと、『夜の安らぎ』ってのが店の名前なのかな?

ふーん。里津さんの『不屈』って言うネーミングセンスよりかは良いんじゃない? あれってどういう意味で付けたんだろう、今度聞いてみるか。

『組合……? あ、あぁ! なんだ、早いな。もう來たのか? まぁいい、って來い』

中からし焦ったじでガタガタとを漁る様な音が聞こえた後、そう許可が下りた。

俺は頭を低くしながら、扉を開けて中に足を踏みれる。

「あ、どうも……お邪魔しますぅん!?」

「……証明紙は? どこだ?」

中にるとL字を描いているカウンターの向こうから、この店の主人らしき年配の男が俺に向かってポンプアクション式のショットガンを向けていた。

俺が驚愕のあまり変な聲を出したのも気にせず、主人は軽くショットガンを揺らして証明紙の提示を求める。

ひ、ひぃ……怖いよぉ。警備員なんていらへんやんけ、こんなのもう……アンタ一人で十分やがな。

それともアレか? 『夜の安らぎ』って意味は『お前に永遠の安息をやろう』的なノリで名付けたの? 馬鹿なの? 死ぬよ?

とりあえず俺は主人を刺激しない様、ナマケモノの如くゆっくりとした作で懐から証明紙を取り出す。

主人は俺が証明紙を取り出したのを見ると、カウンターからショットガンを突きつけたまま出てきて俺の傍に寄ってくる。

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映畫の主役なら此処で主人が近寄ってきた瞬間、格好良く銃を素早く取り上げて『無用心だぜ、俺を雇って正解だったな?』なんて言うんだろうな。

ちなみに俺はそんな事はしない。プライドなんて一切無いからね。安全第一ですわ。

主人は俺を警戒してか証明紙を手に取ろうとはせず、瞼を細めて注視する。

暫く沈黙が続いた後に主人は一つ頷いてみせると、ようやく俺から銃口を外した。

「ふむ、どうやら間違いないようだが……。何なんだ、お前? HAを裝備しているが、防弾チョッキは著てないだと? しかもまだガキじゃねぇか。いや、だがローブはが開いて隨分痛んでるな……? まさかの上級って訳じゃあ……ねぇよなぁ。こんな依頼を上級がける訳がねぇ」

確かにこうして聞くと隨分アンバランスな奴だな、俺は。主人も戸う訳だ。

「は、ははは……々事がありまして……。俺は木津 沿矢です。Gクラス、ポイント580の新米で……警備員の依頼と伺ったんですが……」

「ああ、とは言っても何時も二人制で雇ってるから、もうすぐもう一人が店に來るはずだ。俺は店の開店準備で今は忙しくてな、仕事容はソイツが來たら聞いてくれ。しばらく席に座って待ってな」

主人はそう言うと、さっさとカウンターに戻ってなにやら作業を開始し始めた。

俺は素直に彼の言葉に従い、空いている席に腰を下ろす。

カウンターの中にある棚には酒ビンが大量に並んでるし、やっぱりバーっぽいな此処は。

と、此処で俺は店を照らす明かりがランタンではない事にようやく気付いた。

銃を向けられたりして焦ってた所為で気づくのに遅れたが、天井に吊り下げられた複數の電球がこれでもかと言わんばかりに輝いてる。

里津さんの家は工房に一つだけ非常用の電源裝置があるんだよね。それで工作用の機械の電源だけを確保してるとか。

この店は営業にそれを使ってるのかな? それともボタを払えば電気って普通に使えるなのか? うーん……ようわからんですたい。

けど電気を使った明かりはあまり外では見ないからな、その事から考えるとボタを払って使用できるとしてもかなり負擔がありそうかも。

その後、しばらくの間ヤウラの電気事に思いを馳せているとスキンヘッドの強面の男が店にやってきた。

思わず『強盜か!?』と俺は咄嗟に構えかけたが、主人が普通に挨拶をした所を見るにどうやら彼がこの店の正規警備員の様だ。

主人から俺の世話を頼まれたスキンヘッドの彼は俺を従業員専用の部屋へ連れて行くと、まずロッカーから取り出した二つのあるを両手で持ち、俺に問いかける。

「さぁ、どっちがいい? 防弾ベストか、それとも防刃ベストか。俺のお勧めは防刃だな。銃は安全裝置やら、構えて撃つっていう間があるが……ナイフだと『サッ』ってなじで対処が難しいからなぁ」

あっ、コレは完璧にアカン奴ですわ。日常的にトラブルが起こってますね。メッチャ自然なじやもん。

『ここに二つのベストがあるじゃろ?』ってな合でオー○ド博士的なノリですもん。選んだ後で戦闘なんですね。分かります。

「そうですねぇ……。とりあえず、俺は『サッ』ってなじで帰りたくなってきました」

思わず俺が弱音を零すと、彼はニヒルに笑って二つのベストを押し付けてくる。

「大丈夫だ、まだ組合所に送迎トラックが全部帰って來た訳じゃねぇからな。組合の奴等がない今は、そう繁盛はしねぇはずだ」

「あぁ……なるほど」

ってか、俺の同業者がない狀態で表はさっきの狀態かよ……。

探索場所から帰った後の打ち上げとか起こったらどうなるの? 死者が出るんじゃないの? 恐ろしいわ、本當に。

俺がし呆然としていると、彼はさっさと自分のベストを著て部屋から出て行った。

暫くの間俺は二つのベストを前に頭を悩ませたが、経験者である彼のアドバイスを素直にれ、防刃ベストを選んだ。

さてはて……どうなるかね、全く……。

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

依頼開始時刻になると同時に店は開店した。

俺の立ち位置は店の奧で、正規警備員のスキンヘッドの男り口近くを警戒する配置だ。

その際に主人の要請でローブをぐ様に言われた。

何でも、HAを裝備して警戒してる奴が居たら暴れる奴もなくなるかもしれないとの事である。

依頼主である彼の言に素直に従い、俺はTシャツの上から防刃ベストとジーンズと言うしアレな格好で仕事に就く事となった。

別にいいけどね、寒くはないし。

カウンターの近くに時計も置いてあるので時間も確認できるのだが、最初の客が來店するまで地味に一時間とし掛かった。

あまりの暇っぷりに油斷していた俺は突然の來店にし慌てたが、ってきたのが組合所の制服を著た男數名だったので拍子抜けしてしまう。

彼等はり口に居た警備員や主人と気軽に挨拶をわしたものの、店の奧で立って警戒している俺を見てし困する。

直に主人から組合から依頼をけた奴だ、との説明をけると『お疲れ様です』等とじで彼等は丁寧に挨拶をしてきた。

俺も腰と頭を低くして挨拶を返すと、彼等はテーブル席に腰を落ち著けて注文を始める。

ふむ、組合の職員とスカベンジャーやハンターってどういう間柄で表せばいいんだろうな?

同じ場所に所屬してるが働く容は全く違うからな……。ポケ○ントレーナーが彼等で、ポケ○ンが俺等ってじかな?

流石に腰が低かった組合所の職員が暴れだすとも思えないので、俺はその後も気楽に依頼を果たす事ができた。

たま~に同業者がフラっと訪れるも、それは二人や一人で數が殆どであった。

此処の客層は組合の職員が今の所多い。まぁ、送迎トラックが帰ってないしな。

そんな訳だから客も大人しいから暇だったし、後半は俺から申し出て飲みを運ぶのを手伝ったくらいである。ずっとボーっとしてると寢そうだったし。

主人はし……と言うか大分驚いたじで俺を見たが、素直に俺の申し出をけて手伝いを任された。

店の中はそんなに広くないから何処に持ってけば良いか迷わないし、俺は重さをじないから飲みったジョッキも楽々大量に運べるからな。

自分で言うのもアレだが、結構役に立ったと思うよ。毎日百ボタくれるなら此処に転職しようかな?

俺がそんなノンキな事を考えながら仕事をこなしていると、気付けばあっという間に終了時刻となっていた。

主人は大層ご機嫌な調子で俺の働きっぷりを労うと、『NO:90657』と記された金屬製の"タグ"を手渡してくれた。あざーっす!!

このタグとやらは組合所に依頼を頼み込んだ時に依頼主に渡されるで、これを依頼達時に依頼を請け負った者に返卻するのだ。

そしてタグを組合所に持ち帰り、証明紙とタグを提出する事で依頼主が組合所に預けておいた報酬がけ取れるって流れだな。

いやー、何事も無くて良かったよ。本當に。しビクビクしすぎたかな? 依頼達報告はとりあえず今度でいいだろう。僕はもうネムネムなの。

仕事を終えて防刃ベストを返卻し、ローブをに纏って瞼をりながら地下から表通りへ足を踏み出すと、其処は風景を一変させていた。

まず目に付いたのがそこ等の店に車や戦車が橫付けして、その周りで大聲で談笑する同業者達。

次に唖然としたのが、世の男共の劣を煽る様に恥かしげもなくを大膽に出したが、道行く男に流し目や軽くボディタッチをして客引きする姿。

それと、何故か路上の端でズタボロになって倒れこんでる輩がチラホラと居る景。しかも、誰もが完全にシカトしているという有様である。

最後、路上の真ん中で勇ましく素手でタイマンしている男達を囃し立てるギャラリー達。

他にも気になる細かい部分はあったが、とりあえずこれ等が鮮明に俺の視界に焼き付けられた酷い景である。

いやいやいやいやいや……確かにさ、俺は夜のヤウラをあまり出歩いた事が無かったけどさ。これはアカンでしょ。

ツッコミ所があり過ぎてどうすれば良いかわかんねぇよ。そこら辺もっと明確にしてくれよ、付き合いきれねぇわ!!

組合所の周りにある店には夜は近づかない方がいいな、絶対。

甘かった。完璧に俺の認識が甘すぎた。どうしよう、『夜の安らぎ』に戻って主人にお願いして朝まで匿ってもらおうかな? 無事に帰れる気がしないよ。

俺がそんな事を検討していると、突如し離れた路上の向こうから野太い大聲が聞こえて來た。

『だからよぉ!! ほんのしでいいんだって!! な?! 奢るからさ!!』

『……禮、す……。くしは……一人……落ち著……分…………すので……』

視線をそちらに向けると、なんとこの場所には似つかわしくない清楚な格好をした妙齢の人なお姉さんが居た。

白いワンピースや黒のボレロを纏った姿は彼の容姿にこれでもかとマッチしているが、この混ひしめく世紀末な通りでは驚く程に異様さを放っている。

しかし、その所為で要らぬ興味を惹いてしまったのか、俺の同業者と思われるローブを著た數名の男達が彼の行く手を塞ぎ、馴れ馴れしく聲を掛けていく。

彼等は釣れない彼のツンケンとした態度に次第に痺れを切らしかけつつあり、次第に聲量を上げて周りの人達の興味をかなり惹いていた。

む、むぅ……。あのお姉さんには悪いけど、この騒ぎで人目を惹いてる間にさっさと帰ってしまおうかな?

あんな人さんが相手なら、俺じゃなくても格好良い所を見せたい勇者の一人や二人が名乗りをあげるやろ。

そんなけない考えを思い浮かべ、俺が早足でその場を去ろうとした時にまたもや男が大聲を張り上げた。

『あぁ!? 壊し屋を仕留めた俺のいを斷るってのか!?』

――――――はぁ? 迫田を仕留めた? "テメェ"が? どこの世界線からお越しになったんだよ。

気付けば俺は足を止め、背後を振り返ってそんな大ホラを噴いた男を睨みつけていた。

男が口にした言葉をけ、いを斷っていたが大きく目を見開いてる姿が見える。

野次を飛ばして面白可笑しく事態を見守っていたギャラリー達も口を閉ざしてしまい、路上には數瞬の沈黙が訪れた。

その反応に気を良くしたのか、ホラを噴いた男を賞賛する様に周りの男達が口々に言葉を吐き出していく。

『このダノ・ヤクトさんはな、壊し屋とサシで戦って仕留めた強者なんだぜ?!』

『そうそう!! いやー、俺達も壊し屋が命乞いするけない姿を見てみたかったもんだぜ!!』

『おいおい、あんまり騒ぎ立てるなよ。恥かしいじゃねぇか』

恥かしいのはテメェのIQの低さだろうが。自分で大聲出しといて何言ってんだ?

よし……決めた。ぶちのめそう。気に食わないですわ、奴等は。

俺は確かめる様に武鮫を一つでながら拳を握り締める。

相手は――五人か、二人までは不意を突けば楽に行けるかな? 後は一気に懐へ飛び込んで戦に持ち込めば奴等が銃類を抜く暇は無いだろう。

一通りのプランを立てながら俺は男達に近づいて行くと、不意にいを斷っていたが男達に向けて華やかに微笑んで見せた。

「本當ですか? ……本當にアナタが壊し屋を?」

「あ、あぁ!! 本當だとも、俺が壊し屋を仕留めたんだって!!」

が笑顔を浮かべながら確かめる様に一つ聞くと、ホラを吹いていたダノと言う男は彼が信じたと思ったのか大きく數回頷いてみせる。

まさかいをけるのか?! 俺がこれはいかんと駆け出してギャラリーの間を抜いた瞬間、彼の左手が"ぶれた"。

そして次の瞬間、石を地面に叩き付けた様な鈍い音が聞こえ、ダノが様子を伺っていたギャラリーの間に吹き飛ばされていた。

突然飛んできた男を避けきれず、ギャラリーの數人が奴に押されて背後へと蹈鞴を踏んで倒れこむ。

ダノの顔面は鼻からの盛大な出塗れであり酷い有様だった。

奴はそのまま時折を震わせつつ、地面に倒れこんだまま起き上がってこない。どうやら気絶した様である。ざまぁないぜ!!

ダノの顔面を毆り飛ばしたは汚いでもったかの様に左手をブラブラとさせながら、右手をゆっくりと持ち上げて頬に當て、首を傾げながららかに微笑んで言う。

「噓はいけませんのよ? メッ、です。貴方如きに壊し屋が仕留められる訳がないでしょう?」

メッ……ってアナタ。俺的には『えっ』てなじですよ。

思いもしなかった展開に俺は呆気に取られ、足を止めてしまう。

だが、仲間を傷付けられた男達は頭にが上ったのか素早く気を取り直し、に罵聲を浴びせる。

「な、何しやがる!! この!!」

「こっちが下手に出てりゃあ、調子に乗りやがってよぉ!!」

まず男二人が気盛んに言葉を吐きながら、へと早足で近づいて行く。

己に近づいてくる男達を迎える様に靜かな足運びでは一歩を踏み出すと、そのまま左手の指先を近づいてきた男の板へとピタリと著ける。

唐突なソフトタッチに男が戸いを見せ始めた瞬間、は指先を折り畳むようにして短い距離で勢いをつけ、そのまま板を強打した。

それによって発せられた音は思わず周囲で様子を伺っていたギャラリーの度肝を抜き、僅かに後ずさりを見せる程のモノである。

男は短く息を吐き、目を見開いたまま左を押さえて膝を著いた。口は開きっぱなしで、唾が糸を引いて地面へと落ちていくのが見えた。

し、心臓を狙ったのか?! お、おっかねぇ……アレは苦しそうだ。

はさらに近くに居た戸いを見せる男に向き直ると、素早くビンタを振る様な作で左手を顔面へと走らせた。

男はそれをけ數瞬頭を揺らす様なきを見せると、そのまま後ろに倒れこむ。

を覗き込むと、男は白目を向いており気絶している様子が伺えた。

瞬時に仲間を倒され、そこでようやく自分達の不利を悟った殘りの二人が武を手に取ろうとしたのだろう。

ローブが揺れき、俺の優れた聴力が僅かに金屬質な音を捉えた瞬間、俺は気付けば駆け出していた。

とは言え、相手もソコソコの経験を積んでいた様であり、明らかに武を構える作に俺の速度が追いついていない。

ローブから男がハンドガンを取り出し、に向けて構えた瞬間を狙って俺は懐から取り出した"タグ"を右手で投げつけた。

タグは僅かに風を切り裂く様な音を奏で、男の脇腹近くに著弾する。

金屬製であり、俺の怪力で勢いが乗せられていたタグは余程の威力があったのか、男は掌から銃をこぼして蹲った。

最後に殘った男が僅かに揺を見せ、こちらを向いた瞬間俺は素早く左手を最短距離で打ち放ち、相手のハンドガンを摑んで言う。

「良い銃ですね。けど……俺のHA程じゃあない」

言って、力を込めてハンドガンの銃を武鮫で握り潰す。

金屬が軋む不愉快な音は、いやに大きく周囲に響き渡った。

だが、男はそれで諦めなかった。

男は顔を怒りで赤く染め上げ、脇を締めて素早く毆りかかってくる。

ボクシングスタイルに似た構えから繰り出された左フックを俺は"わざと"食らい、蹈鞴を踏んで制を崩した様に見せる。

するとソレを追撃のチャンスと悟った相手が大きく踏み込んできた時を狙い、俺はを大きく回転させて変側的な軌道で回し蹴りをに打ち込んだ。

思ったより綺麗にカウンターが決まり、男は大きく弾かれた様にして路上へと吹っ飛んで倒れこんでしまう。

い、いかん。死んでしまってないよな? 一応意識して手加減はしたつもりなんだが……。

最悪な結末を思い浮かべ、俺が僅かに顔を青くし始めた時に周りのギャラリーから大歓聲が送られた。

「やるじゃねぇか!! 小僧!! どうだ、俺達と一杯飲まねぇか!?」

「素敵!! 私達の店に來ない!? 君ならタップリとサービスしちゃうわよ?」

「なんだ、壊し屋を倒したなんて大噓じゃねぇか。ガキとにいい様にやられてらぁ」

「強くて綺麗なお姉さん!! 俺達と食事しませんか!?」

などなど、夜の路上は突如として大盛り上がりを見せて賑わった。

俺は気恥ずかしさで顔を赤く染め上げ、俯き加減で片手を上げて無言でソレに答えることしか出來ない。

しかし、ギャラリーの一人が突然大聲上げ、事態は急変した。

「お、おい!! 憲兵隊がこっちに來てるぞ!! 皆、散れ散れ!!」

その聲をけ、素早くギャラリーは蜘蛛の子を散らした様にこの場から遠ざかっていく。

気付けば周囲にはき聲を上げて倒れこむ男達、そして絡まれていた、最後に俺しか殘されておらず、先程の騒ぎが噓の様に靜まり返ってしまった。

そのまま俺が唖然としていると路上の先の暗闇を裂くように眩いが覗き見え、排気音が聞こえて來た。

恐らく、憲兵隊とやらの警戒車両が近づいている様だ。さっさと退散した方がいいだろう。

と、其処で俺は致命的なミスを犯してしまっていた事に気付いた。

「あ……!! タグ!! タグはどこに行った!?」

俺は素早く地面を見渡すも、タグは何処にも見當たらない。

強く投げすぎてにめり込んだか!? 等と俺は混しながらタグの攻撃を食らって蹲ってる男の脇腹をさすって調べるも、めり込んではいない。

ジト目で俺を睨むその男の視線になんとなくムカッとした俺は軽く一つ蹴りをれた後、地面を這う様にしてタグを探す。

そんな泡を食った様に慌てふためく俺を見て、お姉さんが申し訳なさそうに聲を掛けてくる。

「あらあら……ごめんなさい。わたくしの所為で坊やが困った事になってしまって……」

「い、いえ……。俺が勝手にやった事ですので……」

そう言葉を返す事ができたものの、四時間の働きがパァとなってしまったのはし落ち込んでしまう。

顔を上げると憲兵隊の車両が大分近づいて來ている事に気付き、俺は仕方なく腰を上げてお姉さんに聲を掛ける。

「と、とりあえず逃げませんか?! 憲兵隊ってのに捕まったら厄介そうですし」

「あら、確かにそうですわね。じゃあ……はい」

俺がお姉さんに逃げる様に持ちかけると、彼はスッと右手を差し出した。

あまりに自然な作で差し出された右手だが、俺はそれが何を意味するかの見當がつかない。

アレか? 『この手を摑め!! 空に飛んで逃げるぞ!!』的なノリなのかな? 大分無茶があるだろ。

のスラっとした右手を前にしてそんな下らない事を考えていると、彼らかな笑顔を浮かべながら俺に一つ不満を零した。

「減點、ですわよ? 男が逃避行を繰り広げる時は、殿方がの手を引かないと始まりませんわ」

「ぅえ!? ……じゃあ、その、失禮しまぁす」

こんな時に何言ってんの!? とツッコミをれるか迷ったが、今は逃げる方が先だと俺は一つ我慢して彼の手を右手でそっと摑んだ。

は満足そうに一つ頷くと、らかく摑んだ俺とは対照的にギュッと俺の手を力強く握り締めて言う。

「エスコートに期待してますわよ? 騎士(ナイト)さん」

――そう言って微笑んだ彼は本當に楽しそうで……。俺は僅かに時を忘れ、彼の表に見とれてしまった。

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