《俺+UFO=崩壊世界》開戦の
「くそ、まさか雨が降るとは……だから昨日のに帰ろうと言ったんだ」
荷臺から聞こえて來た武市 詩江の獨り言とも、自分への批難とも捉える事ができる"お言葉"が聞こえてきて、宮木 誠一はこれ見よがしに大きく溜め息を零しながら憮然とした口調で答える。
「へぃへぃ、俺が悪うございました~。でもですね、夜の荒野橫斷は危険だって大尉も結局の所は最後に納得したじゃないですか」
「それはそうだが……。今は小雨だがらまだいいが、これが本格的に降ってしまうと泥にタイヤが嵌ってしまう恐れが出るな……」
武市はそう言うと、自分の脇に置いてある百式の殘骸を手持ち無沙汰にでた。よく見ればその脇にも小さい袋があり、中には灰のローブの切れ端が全部っている。
これらの"証拠品"を回収する為に、昨日は太が沈む寸前まで長く苦労することになった。
とは言え、それ等の重労働を武市は全く苦に思う事は無く、むしろの底から次々と活力が溢れかえる思いで作業に當たった。
コレがあれば堂々と沿矢に事を聞けるだろうし、自分達が見つけた廃病院にある地下施設の存在を軍に報告すれば、今回の勝手な行による罰が軽減される可能が高いと武市は考えた。
ヤウラの軍は良くも悪くも実力主義であり、果を重視する傾向にあるのだ。そのおで且つ若年でありながらも武市は階級昇進が滯りなく行われてきたのである。
勿論の事、武市は罪が丸々無くなるなんて楽観的な見方はしていない。
それに彼が考えてる設定では宮木を脅して無理矢理に同行させた事になっているのだ。
たとえ地下施設の発見と言う功があったとしても、それなりの罰が下されるだろう。
だが百式の殘骸を宮木が目にした時に曬した醜態を思え返せば、武市は自分に下される罰の事さえどうでもよくなってしまい愉快な気分に浸れる。
武市が早速その愉快な景をまた脳裏に映し出して忍び笑いを浮かべていると、宮木の焦りとも怒りとも捉える事ができる大聲量が飛んできた。
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「あ!! あーあ!! また笑いましたね!? 止めてくださいって言ってるじゃないですか!! だって武市大尉が戻ってきたら背中にあんなん括り付けられてたんですよ!? そりゃ腰を抜かしますよ!! 百式だけでもアレだってのに、しかも塗れとか冗談じゃありませんよ!!」
「いや、すまない。分かってはいるんだが……な。くくっ」
武市は最後にそうニヒルに笑うと頬を押さえて気を引き締め、荷臺のり口から顔を覗かせて周囲を見渡した。
何の異常も見當たらず、敵影もこれまた見當たらない。天気には恵まれなかったが、幸運には見放されなかった様だ。
そう武市が安堵の一息を吐いていると、宮木の気遣うような一言が飛んできた。
「そろそろヤウラが遠目に見えてくる頃だと思います。……準備は良いですか?」
「……あぁ、構わない。覚悟の上だ。宮木伍長……ご助力に謝します。貴方が協力してくれなければ、どうにもならなかった」
武市は一つ頷くと、宮木に向かって最後にそう謝の言葉を述べた。
恐らく、いや……確実に自分は暫くの間、軍で取調べをける事になるだろう。
武市はその事に後悔はしてはいないが、沿矢に質問を問えるタイミングが遠のく事に歯い思いを抱いてしまう。
落ち著いた様子で謝の言葉を告げてきた武市に宮木は言葉は返さず、代わりに片手を軽く上げて左右に揺らして気楽そうに答えて見せた。
好奇心は貓をも殺す。とは言うが、後ろに居る雌豹なら大丈夫そうだと宮木は軽く微笑みながら一つ頷いて見せた。
それに彼の勘は結果的に『大當たり』だったのである。これには宮木もぐうの音もでない。
無慘な姿となった百式や謎の地下施設、これ等の事実を沿矢は隠していた。だからと言って憤慨する訳ではないが、話の一つは聞いてみたいと宮木とて思い始めている。
流石の武市も謎に満ちた地下施設の探索は一人で行う程の無謀さは無かったが、あそこが何らかの重要施設であると言う事は電源が未だに生きていた事実からも容易に想像できる。もしかしたら上級スカベンジャーですら手間取る様な罠や警備ロボがうろついている可能が高い。
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――思わぬ事実が明るみに出てしまったな……。
武市の唐突な行が掘り當てた衝撃の事実に宮木は驚きを通り越し、嘆すら覚え始めている。
これが萬年伍長である自分と大尉へと一気にり上がった彼との差なのかと、宮木は思わず納得してしまう始末だ。
しばらく車は靜寂に包まれ、そのおで車を叩く雨の音が強くなってきた事が明確に分かって武市は一つ息を吐く。
「雨……か」
武市は小さく呟くと、思い返す様に瞼を靜かに閉じる。
鉄の雨がヤウラに降り注いだあの日、自分の心を強く捉えて離さなかった異様な景。
あの日初めて覚えたを焦がすような強烈な好奇心を糧に自分はここまで來てしまった。
そのおで様々な事が分かり始めてきている。
しかし、あの景を生み出した"モノ"が何なのか……。その事は武市の中でも未だに検討もつかない。
閉じた瞼の裏に浮かび上がったのはある年の顔。
「君に聞けば……それも分かるのかな?」
ふとらした自分の呟きがらしくない"甘い"響きを伴っていた事に気付き、武市は思わず苦笑した。
念の為、もう一度周囲を警戒すべく荷臺から顔を覗かせようと武市が腰を浮かしかけた折、宮木の困した聲が車に響く。
「な……んだアレは? 黒煙? 火事か? 雨が降っててラッキーと言いたい所だが……"二箇所"同時に? ちと不自然だな……」
その聲に釣られて武市も荷臺の小窓から顔を覗かせると、遠くにヤウラの街が見える。
ヤウラには宮木が言った様に二箇所で黒煙が上がっており、確かに目を引く景だった。
「ふむ、放火の可能もありますね。憲兵隊は忙しそう……ッ!?」
武市が考えを巡らせながら言葉を述べている最中にヤウラの街中で大きな赤いが広がりを見せ、同時に煙が上がる。
武市は思わず言葉が詰まってしまい、宮木は大きく口を開けてを直させてしまった。
暫く車を沈黙が包んだが、ヤウラに近づくにつれてサイレンの音が大きく鳴っている事に武市は気付き、搾り出す様に聲をらす。
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「無人兵の突破を許したのか……?」
――そう呟くが、恐らく違うと武市の勘は強く告げていた。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
時はし遡る。
時刻は朝も朝だが、川 啓の纏う雰囲気は清々しいではなく、どんよりとした重い空気を纏っていた。
五階長である川 啓は睡眠を挾む事無く、沿矢が訴えてきた『殺害予告』なるの調査をしていたのだ。
部下の一人には十分おきにPDAを使ってノーラへの連絡をする様に指示し、 川自は殘った他の部下と共に25階にあるフロアの一室を使い、ノーラが宿泊していると思われる宿に片っ端から連絡をとろうと試みていたのだ。
數時間の時を費やし、ようやくノーラが泊まっている宿泊施設の確認が取れたのが、ホテルの従業員はノーラを通話口に出そうとしない。
何故と問うと、どうやら部屋にはノーラだけではなく"我等が"紅姫も滯在しているからである。
ノーラだけならともかく、様々な噂を抱えている紅姫様の機嫌を損ねたくはないと、従業員はノーラの部屋に訪れる事を強く拒否しているのだ。
時刻は早朝。恐らくまだ寢てると思われる時間帯であるし、それも無理はないと思うが……。
川は暫く頭を悩ませると、ふとある事を思い付いてしまった。
――そうだ。一緒に居るのならば……キリエのPDAに連絡をれれば良いだけではないか。
何故そんな簡単な事に気付かなかったのかと、川は苦笑しながらホテルの従業員に謝の言葉を告げてからPDAを切った。
PDAを作してキリエの番號を見つけると、川は僅かに躊躇いながらソレを押してコール音を鳴らす。
「……これで何にも無かったら、ポイントの半分を取り上げてやろうじゃないか」
據わった眼差しを浮かべながら川は沿矢への愚癡を吐くと、何となく姿勢を正してキリエがPDAに出るのを待つ。
一秒、二秒、そう時が過ぎていくと同時に自の心臓が強く鼓を波打ち、川は胃がキリキリする覚も味わっていた。
キリエ・ラドホルトの人柄は子供の純粋さに近い部分がある。
気な雰囲気で職員達に挨拶をする事もあれば、憮然とした態度でちょっとした事に職員へ文句を付ける事もある。
気まぐれな部分が特に目立ち、何週間もメイン居住區で遊び呆けていたと思ったら、唐突に出かけて賞金首を複數纏めて狩ってくる事もあった。
捉え所の無い人だが、腕は確かだ。
A+と言うランクは並大抵の努力で手に出來るモノではないのだが、彼は軽々とソレを取得して見せた。
徴兵活の所為で多數の勇士達が他に移り、落ち目だったヤウラの組合所もキリエの活躍のおで徐々に盛り返すまでに至る。
その功績は組合所のみならず、軍にさえ融通が効くほどに大きなだ。
そもそも軍とてスカベンジャー達が探し當てた資や、ハンター達が狩ってくる無人兵の殘骸を使わないとプラントをフルに生かせないのである。
"ヤウラに紅姫あり"とは正に的をる言葉で、今ではキリエはこの街に欠かせない重要人だ。
彼の預かり知らぬ所で"愚か者"が軍の手によって消された事実からも、それが伺えてしまう。
川自は彼に特に悪く思う所もなく、強い尊敬の念を抱いているのだが、やはりし気後れしてしまう所がある。
時が過ぎるにつれて川の心中には『もう、出なくて良いかも』との思いが浮かび上がり始めてしまう有様だ。
しかし、そんな川の思いを見事に裏切って遂にキリエが通話に出てしまった。
『ぅ~~……何? キャリアーでも出たのぉ?』
「あ、いや……。その、ノーラ・タルスコット殿にお伺いしたい事がございましてですね……。彼のPDAに連絡がつかない為、一緒に居られるラドホルト殿のPDAに連絡をれさせて頂きました。起こしてしまい大変申し訳ございませんが、タルスコット殿はお近くに居ますでしょうか?」
関口一番に獲の報を求める辺り、どうやら最近の紅姫は積極的に狩りを行いたい気分の様だ。
川はそう素早く推測しつつも、ノーラへ連絡を取りたい趣旨を伝える。
『ノーラに? えーっと……? あれ? ノーラぁ?! あれれ……』
「あ、あの! ラドホルト殿?!」
キリエの聲が遠ざかっていく事に気付いて川が慌てて大聲を張り上げたが、時既に遅し。
通話が途切れてはいないのは幸運だが、ゴソゴソとした音やら何かを引っくり返す大音量が聞こえてきて、川は暫く気が気でない狀況を過ごしてしまった。
『うーん……ノーラが何処にも居ないんだよぉ……。何処に行ったか知らない?』
「え、いや……私もそれが知りたいのですが…………」
相変わらずであるキリエのマイペースっぷりに川は戸いながらそう言葉を返してしまい、暫く沈黙が訪れた。
――もしや、機嫌を損ねてしまったか?
川がそう思い始めた時である。
まるで天から救いの手が差しべられたかの様なタイミングで、部下が息を切らしながら部屋に飛び込んできて吉報を告げた。
「ご、五階長殿!! の、ノーラ・タルスコット殿が組合所に訪れました!!」
「お、おお!! そうか、分かった!! ラドホルト殿、タルスコット殿が組合所に訪れたとの事です!!」
『え? 組合所に? わかった、切るね~』
「ら、ラドホルト殿? ってもう切れてるか……」
此方の返答を聞くまもなく通話を切られる事に今更腹を立てる訳もないが、何処と無く空しさをじた川は一つ溜め息を零しながら部下に問いかける。
「それで? もう殺害予告についての事は聞いたか? いや、私自が聞いた方が良いか……。彼は何処で待たせた? ちゃんと応接室にお通ししただろうな?」
川が席を立ってスーツの皺を正しながらそう問うと、報を屆けに來た部下が言葉を詰まらせながら言葉を搾り出した。
「そ、それがタルスコット殿は……。その、"著飾って"いると言いますか……大変に重武裝な形でして。殺害予告の件もありましたし、一時的に組合所のり口でお待ち頂く様にと、そうお願いして來た所なんです」
「…………木津君、君は一何をやらかしたんだ?」
川は呆然とそう言葉をらし、數秒の間だけその場に立ち盡くしてしまった。
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時きたる、とは正にこの事か……。
朝早く、俺が睡眠を貪っていると仮眠室に川さんが寄越した警備員が訪れ、ノーラさんが組合所に訪れた事を伝えてくれた。
川さんは律儀にも彼から事を伺おうとしたらしいのだが、ノーラさんは俺が姿を表さないと何も言わないと述べたらしい。
組合所に訪れたノーラさんは重武裝との事だったが、キチンと冷靜に対応してる辺り話し合う気になってくれたのだろうか?
とりあえずこのままでは埒があかないと川さんは判斷してノーラさんに武裝解除を要求し、それに応じれば俺を呼んでくると約束したらしい。
で、素直にノーラさんはその要求に従ってくれたそうなので、俺も素直にホイホイと警備員の案に従って組合所の一階に向かっている所だ。
「ソウ君。本當に宜しいのですか? 危険人と直接顔を合わせるなどと……。ご命令して下されば、ラビィがこの手で……」
「いやいやいや!! 大丈夫だって、タルスコットさんは武裝を解除したって聞いただろ? それに警備員の人達も待機してくれてるらしいし……」
エレベーターに乗り込んだ後、何やら不穏な事を口にしようとしたラビィの言葉を俺は遮り、そう捲くし立てた。
それが耳に屆いたのか、案をしてくれていた警備員が軽くを揺らして裝備の音を立て、『俺が守ってみせる』的なアピールをする。
しかし、それを軽くスルーしてラビィは再び俺に警告を促してくる。ああ、哀れな警備員さん……。
「しかし、その人は凄腕だとソウ君は言いました。どうか、その事を忘れずに対応してください。上手く妙手を使い、何らかの策を講じてるくるかもしれません」
「うん、そうだね……。気をつけるよ、ラビィ」
ラビィの言葉に俺は頷きを返すと、一つ息を吸って気を引き締める。
確かに、昨日俺がノーラさんにじたモノは背筋が凍る様な威圧も混じっていたのだ。
その事も考えると、まだ気を抜くのは早いと言う事は明らかである。
エレベーターの速度が遅くなり、扉が開かれる。
先に抜け出した警備員の後を追う様に俺も腳をかそうとしたした所で、これまで沈黙を貫いていた里津さんが一つ呟いた。
「……気をつけなさいよ、沿矢」
「はい、気をつけますね。ありがとうございます、里津さん」
俺は里津さんを安心させる様にグレードⅤの防弾ベストをでて見せ、彼に笑いかけた。
里津さんは一つ頷くと、俺の背中を軽く叩いてさっさと俺を追い抜いて早足で先に行ってしまう。
一階のフロアには騒ぎをじ取った職員や同業者達が多數居て、早朝だと言うにし賑わいを見せていた。
俺は警備員の案の下人垣の間を掻き分け、遂にロビーのり口に辿り著く。
「タルスコット……さん?」
自のドアである両開きのガラス戸の前で待ち構えていたノーラさん。彼は警備員が告げた様に確かに騒な出で立ちだった。
俺の著ているベストとまでは言わないが厚みがある防弾ベスト、各所に裝備してあるプロテクター、両の手には黒いグローブも裝著している。
そのベストの下に著込んでいるは俺が映畫やドラマで見た軍人が著込んでいるBDU(戦闘服)に似たで、先日見せてくれたワンピース姿などではなかった。
ノーラさんからし離れた所にいる數名の警備員は何やら様々な武を手に持っている。
アレが恐らくノーラさんから取り上げた武なのだろうが……凄い數だな。
何よりも目を惹いたのがノーラさんの髪型だ。
緩やかな波を描いていたブラウンロングヘアーは一つに纏められており、ポニーテールとなっている。
似合わない、って訳ではないが雰囲気が全く様変わりしていて俺は大変に驚いた。
タルスコットさんは俺を見つけるとらかく微笑んでくれる。
それは彼がゴーグルを裝著していても一目瞭然で見て取れたので、俺は大きく安堵して思わず息を零してしまった。
俺もそのまま彼に笑い返して近づこうとすると、近くに居た川さんが聲を掛けてくる。
「どうやら穏便に事が終わりそうですね。ヘマをしないでくれよ、木津君?」
川さんは茶目っ気な笑顔を浮かべると、俺の肩を一つ強く叩いてエールを送ってくれた。
俺は彼に大きく頭を下げると、謝の言葉を伝える。
「はい! 川さんには本當にお世話になりました。ありがとうございます!!」
川さんは一つ頷くと、さぁと一言だけ呟いて後押してくれた。
俺がそのままノーラさんに近づこうとした際、彼は片手を上げて此方に向ける。
「沿矢様、話したい事がございます。ですが、他の人もえてと言うのは……」
ノーラさんはそう言うと、困った様に笑って見せた。
他の人……と言うのは言わずもがな、俺に付き添ってくれているラビィと里津さんの両名の事だろう。
里津さんは俺が視線を向けると肩を竦めながら素直に下がってくれたのだが、ラビィは一歩もこうとはしない。
彼の強い忠誠心をじ取り、俺は謝の言葉を告げながらラビィに命令を下す。
「ラビィ、ありがとうな……。俺に何かあったらすぐに飛んできていいからさ。ここで待っててくれないか?」
「……はい。どうかお気をつけて、マスター……」
ラビィは最後にそう小聲で呟くと、瞼を伏せて一歩下がってみせる。
俺はそれを確認してノーラさんに向き直ると、彼は微笑を浮かべながらゆっくりと頷いて見せた。
周りには警戒している警備員の他にも、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべて事を見守る同業者達も居る。
だが、俺はそれ等の視線を撥ね退けると遂にノーラさんの正面に立った。
俺を見つめるノーラさんの瞳には、昨日じた威圧は混じっていない様に見える。
その事に深い安堵の念をじながら、俺はたどたどしくも口を開いた。
「タルスコットさん……。あの、俺は……」
「ノーラと、そうお呼びしてくれて構いませんわ。沿矢様」
俺がノーラさんに話しかけようとした際、彼は軽く首を振ってそう言ってくれる。
驚きに目を見張りつつも、俺はすぐさま込み上げてきた嬉しさに思わず笑みを浮かべてしまう。
「あ……はい!! ノーラさん。その、貴方が迫田と何らかの繋がりがあった事は俺も薄々気付いて……」
「沿矢様――覚悟は出來ましたか?」
俺がノーラさんが抱える想いを理解しようと言葉を述べ始めた折、それはすぐ様遮られてしまった。
驚きで彼に視線を合わせた際、俺は違和を覚える。
ゴーグルの中でる彼の金の瞳には、何やら線の様なが浮かび上がっていて――?
俺がその正を確かめようと注視し始めた時である。
ノーラさんは俺の正面からスッとをずらして、まるで死者に手向けるように言葉を吐き出した。
「お覚悟ができてなかった事は殘念に思いますが。壊し屋を殺した貴方の手腕にわたくしは敬意を表し、これを持って終わらせます」
ノーラさんはそう言うと、彼は僅かに口で何かを"転がす"様な仕草を見せた。
その瞬間、視界の端で何かがって見えた俺は彼から視線を外して正面に向ける。
組合所の正面にある大通り、その果てに佇む廃墟からが一線にびて來て――はそのまま俺に突き刺さった。
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「沿矢っ!!!!!」
轟音が組合所を大きく揺らし、次に響いたのは里津が放った力強い一言である。
しかし、彼が向けた視線の先からは既に沿矢の姿は瞬時にして掻き消えていた。
沿矢に直撃したのがレイルガンの砲撃であった事にすぐさま里津は気付いた。
その威力は凄まじいの一言であり、レイルガンの砲弾は一瞬で防弾である組合所のり口のガラス戸を吹き飛ばすと、威力はそのまま衰えを見せず沿矢に突き刺さってしまった。
當然の事その衝撃に耐え切れるわけも無く、沿矢は一瞬のに様々なを巻き込みながらフロアの端まで吹き飛ばされてしまい、厚いコンクリートの壁へと盛大な音を伴って叩きつけられる。
沿矢を貫いたレイルガンを遠隔作していたのは言わずもがな、ノーラ・タルスコットである。
電子補助ゴーグルに映し出される映像を元にノーラは予め"自分自"に狙いを定めておき、自分の正面に沿矢が立った事を確認すると、口に隠しれていた小型の遠隔裝置のスイッチを歯で押して撃したのだ。
ノーラは電子補助ゴーグルのスイッチを押してスナイピングモードを解除すると、次に口へ隠していた遠隔裝置を吐き捨てながら混を見せる警備員の一人に素早く薄し、防弾ベストとヘルメットの隙間を狙って手刀を形作った右手で警備員のを強く突いた。
えずきながら倒れこむ警備員を目に、ノーラは取り上げられていたM105グレネードランチャーを奪い返す事に功する。
組合所に突如として湧き上がってしまった混は思ったより大きく、まだアレを引き起こしたのが自分であると気付かれていない。
ノーラは素早くその事実を認識すると、懐からHE弾を取り出してM105に素早く裝填する。
いざ奧に倒れこんでいる沿矢に止めを刺さんとノーラは右手でM105を振り上げ、別れの言葉を告げる。
「では……さようなら、沿矢様」
ノーラが引き金を引く正にその時であった。
散らばったガラスを強く踏みつけながら此方に向かってくる"何か"に気付き、ノーラは大きく目を見張った。
"ソレ"を認識した時には既に遅く、M105は強く蹴り上げられてノーラの手元から離れていく。
しかし、彼はその寸前に引き金を引いており、『ポン』と気の抜ける様な音の後に組合所に音が響き渡る。
著弾地點は僅かに沿矢から逸れてしまい、被害は近くにあった柱を砕するだけに留まった。
M105を蹴り飛ばした衝撃はよほど強かったのか、ノーラは右手にじる強い痺れに舌打ちを放ちながら者に聲を掛けた。
「手痛い一撃ですわね。貴方、何者?」
その問いをけ、真紅の瞳を爛々と輝かせながら銀髪の戦乙は悠然と構えを取って答える。
「貴方を――排除します」
ラビィ・フルトが靜かに告げたその言葉とは対照的に、力強く放たれた拳が開戦の合図となった。
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※BKブックス様より第1巻好評発売中! リーダーやメンバーから理不盡なパワハラを受け、冒険者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者ロノム。 しかし、趣味に使える程度だと思っていた探査と感知の魔法は他を寄せ付けない圧倒的な便利さを誇っており、全てのダンジョン探索がイージーモードになるような能力だった。 おっさん冒険者ロノムはその能力もさることながら、人當たりの良さと器の大きさもあって新パーティのメンバーや後援者、更には冒険者ギルドや國の重鎮達にも好かれていき、周りの後押しも受けながらいつしか伝説の冒険者と呼ばれるようになっていく。 一方、知らないところでロノムの探査魔法にダンジョン攻略を依存していた前のパーティーはどんどん落ちぶれていくのであった。 追放によって運が開かれたおっさん冒険者のサクセスストーリー。
8 67クリフエッジシリーズ第四部:「激闘! ラスール軍港」
第1回HJネット小説大賞1次通過、第2回モーニングスター大賞 1次社長賞受賞作品の続編‼️ 宇宙暦四五一八年九月。 自由星系國家連合のヤシマに対して行われたゾンファ共和國の軍事行動は、アルビオン王國により失敗に終わった。クリフォードは砲艦の畫期的な運用方法を提案し、更に自らも戦場で活躍する。 しかし、彼が指揮する砲艦レディバードは會戦の最終盤、敵駆逐艦との激しい戦闘で大きな損傷を受け沈んだ。彼と乗組員たちは喪失感を味わいながらも、大きな達成感を胸にキャメロット星系に帰還する。 レディバードでの奮闘に対し、再び殊勲十字勲章を受勲したクリフォードは中佐に昇進し、新たな指揮艦を與えられた。 それは軽巡航艦デューク・オブ・エジンバラ5號(DOE5)だった。しかし、DOE5はただの軽巡航艦ではなかった。彼女はアルビオン王室専用艦であり、次期國王、エドワード王太子が乗る特別な艦だったのだ。 エドワードは王國軍の慰問のため飛び回る。その行き先は國內に留まらず、自由星系國家連合の國々も含まれていた。 しかし、そこには第三の大國スヴァローグ帝國の手が伸びていた……。 王太子専用艦の艦長になったクリフォードの活躍をお楽しみください。 クリフォード・C・コリングウッド:中佐、DOE5艦長、25歳 ハーバート・リーコック:少佐、同航法長、34歳 クリスティーナ・オハラ:大尉、同情報士、27歳 アルバート・パターソン:宙兵隊大尉、同宙兵隊隊長、26歳 ヒューイ・モリス:兵長、同艦長室従卒、38歳 サミュエル・ラングフォード:大尉、後に少佐、26歳 エドワード:王太子、37歳 レオナルド・マクレーン:元宙兵隊大佐、侍従武官、45歳 セオドール・パレンバーグ:王太子秘書官、37歳 カルロス・リックマン:中佐、強襲揚陸艦ロセスベイ艦長、37歳 シャーリーン・コベット:少佐、駆逐艦シレイピス艦長、36歳 イライザ・ラブレース:少佐、駆逐艦シャーク艦長、34歳 ヘレン・カルペッパー:少佐、駆逐艦スウィフト艦長、34歳 スヴァローグ帝國: アレクサンドル二十二世:スヴァローグ帝國皇帝、45歳 セルゲイ・アルダーノフ:少將、帝國外交団代表、34歳 ニカ・ドゥルノヴォ:大佐、軽巡航艦シポーラ艦長、39歳 シャーリア法國: サイード・スライマーン:少佐、ラスール軍港管制擔當官、35歳 ハキーム・ウスマーン:導師、52歳 アフマド・イルハーム:大將、ハディス要塞司令官、53歳
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