《星の見守り人》002 宇宙探査船

銀河連邦が実地で探査する予定対象の天は、各恒星系の重力平衡で球を保っている天、構質にもよるが、要はだいたい直徑1000キロ以上で球の星、銀河連邦天文學會の基準で言うところの準星級以上の天だ。

他にも小さくとも特徴がある天には大型亜人探査艇を派遣して探査をする。

そしてもちろん可能な限り、その恒星系の全ての天を記録するのも仕事の一つだ。

星の大きさによって探査期間はまちまちだが、小さい天でも地球時間で3日、木星のように大きかったり、特殊な探査対象がある天ならば數週間かかる事もある。

1つの天に対してそれだけ時間がかかる訳だから、搭載してある複數の探査艇で同時進行するとはいえ、1つの恒星系全の探査にかかる時間は短くても1週間ほど、長ければ1ヶ月以上に及ぶ場合もある

そんな調子で各恒星系を巡るので、長い場合には何年にも渡って一人で深遠の宇宙を探索する羽目になる訳である。

話だけ聞くと、一人で宇宙の果てに飛ばされて何とも悲慘な仕事という印象があり、まるで20世紀初頭の燈臺守(とうだいもり)だと皮られる事もある。

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実際にその頃の燈臺守は文明から隔絶された場所に居住し、その実生活の悲壯さは當時の映畫にもなったほどだ。

事実、極稀ではあるが、その孤獨な仕事に耐え切れなくなり、探査を辭める者もいる。

しかし、人によってはさほど悪い環境という訳ではない。

船は最新型の200メートル級の第三世代型探査船、19世紀から21世紀頃の海に浮かぶ船ならば、かなりの大きさではあるが、28世紀の宇宙船としてはやや標準的な大きさで、それほど大きいほうではないし、小さいというほどでもない。

年単位で探査をする船だけあって居住は快適・・・いや文明圏から孤立した場所に行く探査獲得の為、かなり贅沢な作りとすら言える。

居住區は探査船全の20%近くを占めている

私の場合、船長代理という事で副長級の區畫を割り當てられている。

メインルームと寢室、多目的室、キッチンバストイレ付き、船の中でありながら小さい庭までついている、いわゆる21世紀的な表現をすれば3DK庭付きである。

そう、宇宙船の中にも関わらず、小さいながらも庭まで付いているのだ!

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特に風呂は大きく、副長級の部屋でも浴室は3m四方ほどもあり、湯船も大人3人はゆったりとれる大きさだ。

これは20世紀末からの長い宇宙船乗員や宇宙基地の駐在員の心理探査から確認された事だが、宇宙におけるストレスを緩和させる3大効果といわれるが、人(特に友人・家族)との會話、とのれ合い、そして風呂と判明したからだ。

これに食事をれて4大効果とも言われるが、特に風呂は重要視され、その中でも日本式の大量の湯で大きな湯船に浴するのが、最もストレス解消に効果的と実験結果が出ていた。

水が貴重だった初期の頃の宇宙船や宇宙基地では贅沢な施設だったが、小型で効率の良い生活系循環裝置が考案されて、水が富に利用可能になって以降は、ほぼ常備のとなっている。

28世紀現在、標準以上の大きさの大抵の宇宙船には、個室の風呂の他に、昔の日本の銭湯や溫泉のような大浴場がある。

最もその場合は湯船が急用の貯水漕の一部を兼ねている。

そして恒星間航行用宇宙船では必須裝備となっていて、法令によって風呂裝備のない恒星間宇宙船は存在しない

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また、この探査船も含めて長期航行が目的の船には大抵、植の促栽培室が備えられている。

これはもちろん植を栽培して食料にする目的だが、その他に心理的効果も目的に含まれている。

を眺めているだけでも人間の心理的ストレスは大幅に軽減されるためである。

これは20世紀頃からソビエト連邦やアメリカ合衆國の宇宙滯在実験によって確認された事だった。

それはともかく、本來は他に誰も人間が乗っていない船なのだから、空いている船長室である4DKの部屋を使っても良さそうなものだが、そこはやはり規則という事になっている。

それに宇宙で一人で暮らすのに、別にそんなに荷も必要無いので、3部屋もあれば十分過ぎる位だ。

上級船員居住區には、船長室クラスが2區畫、私の住んでいる副長クラスが2區畫、そして上級船員用の2DKが6區畫、合計10人は楽に居住できる。

これでたいてい乗員は終わりだが、その他にも士用の1DKが20室あり、他にも々と部屋があるので、実際には乗組員が50人程でも生活は可能だ。

そして長旅に備えて食堂、醫務室はもちろんの事、トレーニング室、娯楽室、大型風呂、プールまである。

醫師にいたっては驚くべきことに、このような遠距離探査船には、乗員として3人の醫師が義務付けられている。

通常の超速宇宙船は1人、かなり大型の宇宙船でも規定は2人だから、これは驚きの人數といえる。

理由としては銀河探査船は文明社會からはるか隔絶された場所を數年に渡って航行しなければならないために船で複雑な手を可能にするためや、救助のために搭載されている醫療艇等で、どこかに醫師を派遣しなければならない場合があるからだ。

何しろ急で大きな手が必要なのに、手室から1千年も離れていたのでは話にならない。

もちろん人間の醫師を3人も乗員として乗り組ませるには、醫師の絶対數が足りないので、大抵は亜人の醫師が乗り込むことになる。

他にも々と施設があるが、これだけの施設がこの船においては、基本的にはただ一人の人間のためにあるのだから確かに贅沢というべきだろう。

これに比べれば17世紀の大航海時代の船環境、20世紀の南極越冬隊や、22世紀の火星探検隊の方が余程厳しい環境だった。

事実、私は20世紀頃の南極観測隊の資料を見たことがあるが、28世紀の現在からすれば、信じられないほど悲慘な景だった。

極寒の中、厳しい観測をする観測員たち。

ブリザードの中、全くきが出來ない狀態が何日も続く・・・

17世紀の大航海時代の船ともなれば、もはや比較対照にもならない。

何しろその頃の食料と言えば、固くて蛆の湧いているようなビスケットと、固い干し程度だ。

水も満足に飲めず、次々と乗組員は病気になっていく・・・

そんな狀況に比べれば空調の整った広い部屋、溫かい風呂、贅沢と言っても良い十分な食事、娯楽施設、運施設といったこの船の環境設備は、當時と比較にならない天國だと言われても不思議はない。

もう一つの問題はこの宇宙探査船の中で人間が私ただ一人であるという點だ。

何しろ地球から遙か數千年、一番近い有人宇宙船ですら數十年、有人基地や有人星に至っては何百年と離れている狀態だ。

20世紀から23世紀頃の漫畫やアニメなどでは、の速度さえ超えれば距離など何も問題なしという話が多いが、冗談ではない。

たとえ超速航行での100倍の速度を出せるようになったとしても100年には1年、1000年には10年もかかってしまうのだ。

速航行裝置、すなわち一般で言う所のワープ裝置が発明されて以來、急速に能が向上されているとは言え、現在でもまだ1000年には通常ワープで1ヵ月半、出力の大きな高速ワープでも3週間はかかる。

當然の事ながら通信もそれに従う。

通信の場合は質量がほぼ0のために、超速通信の送信速度こそ無限大に近くなるが、さすがに1500年を超えると、様々な要因のために即時通信は困難になってくる。

通信中継のために1000年毎に方面司令部が設けられているほどだ。

このような文字通りの天文學的遠距離では直接通信はもちろんの事、中継通信もままならず、何ヶ月もの間、誰とも人間とは話すことすら出來ない。

先に述べた通り、友人・家族等との會話は宇宙におけるストレス緩和の最も大きな要素の一つではあるが、肝心のその対話が出來ないのでは探査の心理に不安をきたし、宇宙探査の幹を揺るがしかねない。

この問題を解消すべく銀河連邦宇宙探査局は回答を出した。

それが亜人である。

今や彼たちの存在は長距離宇宙船には欠かせない存在となっている。

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