《星の見守り人》007 漂流者

いよいよこの恒星系の探査も終わり、次の恒星系へと行く準備が出來た。

副長が私に報告をする。

「船長代理、全ての探査艇の収納が終わりました、次の恒星系に向けて発進したいと思います。」

「そうだな」

副長の報告に私がうなづく

そこに通信長が聲を挾んできた。

「ちょっと待ってください。

先行探査艇から救難信號の報告がってきます」

機械のように(と言っても実際亜人は機械なのだが)淡々と通信長が報告する。

先行探査艇というのは本探査をする前に天の位置や狀況をざっと調べたり、主だった天に探査衛星を設置する全長20mほどの中型亜人艇の事だ。

探査船には全部で3隻搭載されていて、3恒星系先の予定までを、先に予備探査する事になっている。

本船が現地に著くと、回収されて、補給整備の上で、さらに次の星系へと送られる。

その先行探査艇から報告がって來たのだ。

「救難信號?

この辺は一番近い有人星からも500年は離れているはずですが・・・」

船務長の報告に副長が驚く。

何しろ宇宙の深遠を探査する船だ。

他の船とすれ違ったり、出會う事などはまずない。

ごくまれに他の探査船と信可能域にったりする程度だった。

「しかも通常電波だそうです」

さらに通信長が報告する。

「通常電波だと?

それでは同じ星系に我々のような宇宙船がいない限り、どこかに通信が屆くのは何年も先になってしまうではないか?」

またしても呆れるように驚く副長

「とにかく通常電波で救難信號が出ています」

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「まあ、とにかく救難信號が出ているんだ。

予定を変更して、先にその恒星系へ向かおう」

「了解しました。

航宙長、進路を救難信號の方向へ。

探査の方も予定を変更して、救難信號が出ているナハール恒星系を先に探査する。

恒星系に到著次第、副隊長は通常通り探査を開始。

各亜人探査艇を出して所定の探査を始めるように」

「了解しました」

副隊長が答える。

そしてワープするコランダム777。

やがて該當の恒星系に到著する。

「ワープ終了、ナハール恒星系に到著しました」

航宙長のビアンカが報告する。

「青恒星ナハール、直徑300萬キロメートル、表面溫度約10000度、

公式天文一覧と一致します」

「先行探査艇を収容、本船は救難信號の方向へ向かう」

「副長、この宙域に連邦の船が來た記録は?」

私の質問に即座に副長が答える

「公式記録では無人探査船も含めて本船が始めてです。

この救難信號の主はおそらく民間の船でしょう」

副長の言葉に副のミオも説明を加える。

「ええ、民間の探査船や個人の自稱探険家の人たちは、時々信じられないような航宙をしますからね」

「とにかく行ってみよう。

本船はこれより漂流船の探査に向かう。

先行探査艇は映像可能距離まで漂流船に近づいてくれ。

それと醫務長を呼んでくれ。

戦闘隊長は一応警戒制を、航宙飛行長は大小醫療艇と亜人探査艇を1艇・・・

それに汎用艇を1艇と、一応小型戦闘機も3機、発進準備を」

醫療艇は遭難者などを収容する一種の病院船で大型醫療艇は12人、小型醫療艇は3人をそれぞれ手院治療可能だ。

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亜人探査艇は本來天探査に使用する全長10mの小型艇だが、各種の計を積んでいるので、こういった狀況不明な場合の探査にも向いている。

汎用艇は萬能艇とか複合艇とも言われていて、醫療艇や探査艇・工作艇等の機能をしずつ持っていて人間の居住空間もあるため短期間の臨時基地にもなる。

今回は人間がいる可能が高いために、場合によっては、必要になるかもしれない。

そのために汎用船も念の為に用意しておこうと私が判斷したのだった。

そして萬一、未知の攻撃を考えて小型戦闘機も同行させる。

「了解しました」

全員が一斉に仕事に取り掛かる。

「どう思う、ミオ?」

私は一通り指示を出すと、椅子に座りミオに問いかける。

「現狀では何とも言えませんね。

個人探検の可能が高いとは思いますが…」

「そうだな」

2人で會話している所へ白を著た醫務長が第一艦橋にって來る。

「救難信號ですって?

船長代理?」

醫務長はB2級亜人で、見かけは人間に例えるなら40代の落ち著きのある靜かなといった所だ。

長い黒い髪を後ろで三つ編みにして右肩から前に垂らしている

「ええ醫務長、そうですよ 」

「乗員の確認は?」

「これからです」

ようやく先行探査艇が目的の宇宙船の映像を撮影可能な距離に到著する。

「先行探査艇、目的の宇宙船に近付きました。

映像出ます」

手早く作しながら船務長が報告する。

その映像を見た一同が驚きに聲を上げる。

「なんだ?ありゃ・・・一いつの船だ?」

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私がそう聲を上げるのも無理はなかった

その船はどう見ても現在よりも100年近くは古い形式であろう郭を語っていた。

さつまいもか、ラグビーボールのような紡錘形で船尾は先の部分を切り落としたような形

タケノコかドングリ型と言ってもいいかも知れない。

その船は所々というか、ほとんど元のままの場所がないのではないかと思えるほどに継ぎ接ぎで雑な修理をしてある。

すばやく観察したミオが説明をする。

「基本的な構造は100年ほど前の標準的な民間の長距離探査宇宙船ですね。

全長30メートルほどで、ようやく民間でワープ船が出回り始めた頃の代です。

あの型の船では、原型のままでは、とてもここまではこれない筈です。

おそらくエンジンは比較的新しいに換裝してあるのでしょう」

「參ったね、どうも・・・ とにかく調べてみよう。

本船は漂流船の1時手前で停止。

探査隊を編して出してくれ、副長」

「はっ!副長補佐エダジマ3等、ハトリ1曹、スタイン2曹、ハルナ3曹」

副長の司令とともに艦橋のパネルに指名された4名の姿が出る。

副長補佐のエダジマはいかにも固い軍人を絵に描いたような見かけは30代のC2級男亜人だ。

パイロットのハトリはアングロサクソン系の20代形男型のC3級亜人、スタイン2曹は20代の亜人、ハルナ3曹は10代後半のピンクの髪をした型C5級亜人だ。

「「「「はい」」」」

「探査隊として、汎用宇宙艇であの宇宙船の探査をせよ。

エダジマ副長補佐は探査のため、該當船の報を移して行く事。

全員探査艇に搭乗しだい、探査開始」

「「「了解」」」

エダジマ、ハトリ、スタイン、ハルナのそれぞれの顔が艦橋のパネルに映り返事をする。

「醫務長は大型醫療艇と小型醫療艇の手配を、

大型艇の方はここで待機、小型艇は準備でき次第に発進」

私の指示に醫務長が返事をする。

「承知しました。大型醫療艇には副醫務長とドクターアサミ、

小型醫療艇にはドクターセインが搭乗。

大型醫療艇は格納庫で待機、小型醫療艇は探査隊と共に発進、

目標の宇宙船近辺に到著次第、指示があるまで待機」

「亜人探査艇、及び、戦闘機は目標の周囲で待機」

「了解、亜人探査艇、戦闘機は目標周囲で待機」

「救難船の手前十秒に著きました」

「よろしい、探査艇は目標の探査を開始、他の船は周囲で待機、

ただし、汎用艇は安全が確認されしだい中に乗り込んで調査を開始」

「了解」

私の命令にてきぱきと返事をして行する副長。

「ふ~」

取り合えず指示を出し椅子に深く座り込む私に副長が言わずもがなの質問をする。

「人がいるでしょうか?」

「わからんね。ここから見るだけでもボロボロだし、あんな船がここまで來ていること自が不思議なくらいだ。

だけど救難信號がでているんだ。

ミオ、あの船の乗員予想は?」

「建造時のままのデータなら乗員は1人から5人までのはずです。

しかしあの頃の船はワープエンジンをまだ十分に小型化出來なくてあの大きさの船ならワープエンジンだけで場所を船の半分以上は取っていましたし、補給や生命維持の事を考えると、こんな長旅をするのなら3人…いえ2人が限界だと思います」

「やはりね…あれだけの大きさがあっても2人か・・・」

そう私がつぶやくが、私が乗っている宇宙船とて、現在乗っている人間は私一人だった。

しかしこの船の場合は、その気になれば100人くらいを乗せて數年航行する事も可能だが、目の前にある遭難している船はそうは行かない。

「當時の技ではそれが限界です。

そもそも船長代理も存知の通り、あの大きさは現在の宇宙航行法に反しています」

私の質問に仕方がないといったじで答えるミオ。

「そうだな、現行の法律が施行される以前の船か・・・」

ワープ航法確立以降、あまりにも杜撰な宇宙船が製濫造され、遭難や未帰還船が相次いだために70年ほど前に生存率向上のために新しい宇宙航行法が制定された。

その法によれば、超速航行をする有人宇宙船は安全と生活環境維持、出艇の搭載義務等のために最低でも全長100m以上、全幅20m、全高20m以上でなければならないという條文が含まれている。

しかしその法律施行以前に建造されて登録をされた宇宙船にはその法律が適用されないという條件がつけられていた。

すでに実用に供されている宇宙船を全て廃船にするわけにもいかないために付加された條件であったが、そこが抜け道になっていた。

時代は流れ、當時のほとんどの船が次々と廃船になりながらも改造を加えながら僅かに現在でも使用されている宇宙船が存在していた。

この遭難宇宙船もその一つだった。

「目的はなんだと思う副長?」

問いかける私にナタリーが答える。

「狀況からして輸送船や観船の類とは思えません。

民間組織の探査船ならこの宙域まで探査に來ることもありえますが、あれほど古い船で探査に來るとは考えられません。

そしてもちろん我々銀河連邦の公式探査船でもありません。

以上の観點から、あれは個人の探検家の確率が高いと推察されます」

「副の意見は?」

副長の意見を聞いた私が反対側にいたミオに問いかける

「副長に同意です。

何らかの組織があれほどの小型舊式船に人間を乗員させて、これほど遠方まで恒星間航行させるとは考えにくいです。

あの宇宙船でしたら例えエンジンを比較的新しいに換裝したとしても・・・

あくまで元のと比べてですが・・・

ここまで來るのにも相當の年月をかけたでしょうし、おそらく個人か家族単位の探検家、もしくは移民船と思われます」

「移民船?2~3人でかい?」

ミオの答えに私が驚いて聞き返す。

「はい、若いカップルなどは場合によって、地球というか、世間に落膽した上で自分たちの熱気に逸って片道燃料と食料だけを積んで自分たちだけの「星」を探そうと後先を考えずに宇宙に出る場合があります」

「そんな事が?」

驚き半分、呆れ半分の私に説明を続けるミオ。

「はい、その場合、當然若い男には最新式の宇宙船など手にりませんから信じられないほど古い宇宙船を購して、とにかく宇宙に出てしまう傾向があります」

「しかし・・・そんな星がおいそれと見つかるわけはないだろう?

文字通り天文學的な確率だ。

だからこそ、こうやって我々が星間探査を行っている訳だし・・・」

「いいえ、彼らは宇宙に出れば必ず自分たちの星は見つかるという信念のもとに行しています。

現実は見ていません。

無免許で宇宙船の縦資格もなく、天文知識も星改造知識も農耕技さえもありませんが、その信念だけは揺るぎません。その結果・・・」

「その結果?」

「深遠の宇宙で事故を起こして漂流して救出されるのは良い方で、最悪の場合は、そのまま救助されずに死亡する場合もなからずあります」

「なるほどね・・・そう言えばそんな話を授業で聞いたような記憶もあるな・・・段々思い出してきたよ」

そうこう話しているうちに探査隊が辿り著く。

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