《星の見守り人》009 イワシタ・チョウイチロウ

1週間後。

探査室で私が副隊長と星探査の検討をしている時に醫務長から連絡がった。

「患者の健康狀態は良好。未知の病原菌なども認められません。

隔離を解除しても大丈夫です」

醫務長からの報告に私がうなづく。

「そうか、もう健康と思っていいのかな?」

「はい、ここ數日の栄養補給と力回復施行の結果、ほぼ健常に戻ったといって差し支えないと思います」

「では本船に戻って、迎賓區畫の応接室に案してくれ」

「承知しました」

元々隔離のために本船の側で並行していた醫療艇が、本船に収容されるために格納庫へと向かう。

私もある程度指示をすると、その場を副隊長に任せると、副であるミオと共に応接室へと向かう。

「副隊長、後を頼む」

「了解しました」

「ミオ、調理長に例の食事の用意を頼んでおいてくれ。

それと技師長も応接室に呼ぶように」

「はい」

艦橋の2階ほど下に迎賓用の生活居住區がある。

その応接室には病棟著から來客用船服に著替えて、數日前とは見違える程に生気に溢れたイワシタがハルナ3曹に案されて待っていた。

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「いやあ、艦長!この度はどうも」

イワシタが座っていたソファーから立ち上がり、握手を求め挨拶をする。

「元気になられてなによりです。

改めてご挨拶します。

私がこの船の船長代理、兼、銀河第7方面探査団、

第5探査本部、第13探査隊隊長代行の如月です」

「探検家イワシタです、しかし船長代理と言われますと・・・?」

「この船には元々船長はおりません、私が船長代理でこの船の最高責任者です、

また、この船の唯一の人間でもあります。

もっとも今は二人になりましたがね」

私の説明に々いぶかしげな表をするが、すぐに納得がいったという表になるイワシタ。

「なるほど!人員節約という訳ですな!

それにしてもこの船は素晴らしい!

とても私の船と同じような目的の船とは思えないくらいです」

確かに言われてみればその通りなのだが、今の今まで私はイワシタ氏の乗っていた宇宙船と、自分が乗っている宇宙船が同じ探査船なのだという事を失念していた。

実際のところ、イワシタの船とこの最新鋭探査船たるコランダム777とはライト兄弟のフライヤー號と21世紀のジェット旅客機か、はたまた19世紀の蒸気船と、21世紀のイージス艦ほどの差があるだろう。

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それ以上かもしれない。

心して室を見回すイワシタに私が船の説明をする。

「ここ5年ほどの間に出來た最新式の深宇宙探査船ですからね。

居住も探査能力も以前の船に比べると、かなり上がっています」

実は一番上がっているのは対宇宙海賊用の戦闘能力なのだが、それをもちろん民間人に話す必要はないし、おいそれと話す訳にはいかない。

「なるほど、なるほど」

再び心したように周りを眺めながらうなづくイワシタ。

そんなイワシタに私が自分の橫にいる二人を紹介する。

「こちらは當船の技師長、こちらは私の副のミオです」

紹介されてイワシタに頭を下げる二人。

「や、これはよろしく、それにしてもお二人とも人で船長代理殿が羨ましい!」

乗員を褒めるイワシタに私もうなずいて話す。

もちろん私も自分の副や部下を褒められて悪い気はしない。

「そうですね、彼達は非常に優秀で、私も毎日助けてもらっています。

ところでこれまでの経緯やこれからの事をお伺いしたいのですが、食事でもしながらいかがですか?」

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その私のいに破顔一笑となったイワシタが嬉しそうに答える。

「それはありがたい。

いやあ、何しろしばらくの間まともな食事はしていなかったし

院中の醫療艇の病院食もかなり味しかったですが、こんな立派な船ですと、さぞかし凄い食事が出るのでしょうなあ・・・」

「ご期待に沿えれば良いのですがね」

そう言うと、私は先に立ってイワシタを応接室の隣にある特別食堂へ案した。

來賓用の特別食堂にり、テーブルに著く私とイワシタ。

そこに調理長と給仕が次々と料理を運んでくる。

メニューは白米にアジの干、納豆と生卵、それに豆腐とわかめの味噌、そして焼き海苔と梅干だった。

その28世紀の世でもいまだに変わらない、典型的な日本の観旅館の朝食然とした食事を見て、呆然と驚くイワシタ氏だった。

「いや、これは・・・さぞかし豪華なメニューが出てくるかと思いきや・・・

これは別の意味で驚かされましたな・・・」

「ええ、お名前と経歴から私と同じ日本の地球出とお見けしましたので、こういったが良いのではないかと思いましてね」

「まったく明察の通りで、私は舊日本の新潟地方出でしてね、米が大好きなんですよ」

「私は東京出ですが米は大好きですよ。

今は時間的には晝ですが、あえて朝食的なを用意してみました。

まあ量もたくさん作ってありますから、どうぞ、たくさん召し上がってください」

28世紀現在、日本の首都は星「トヨアシハラ」の新京(しんきょう)だった。

しかしもちろん地球の舊日本にも人は住んでいる。

私とイワシタ氏は共に地球の舊日本の東京と新潟出だった。

「では遠慮なく」

早速その晝飯を食べ始めるイワシタ。

食べながら大仰に喜んで話を始める。

「いやあ!味い!

こんな味い飯は何年ぶりだろう?

5年ぶり、いや7年ぶりかな?」

「そんなに?」

私も一緒に晝食を食べながら驚く。

「何しろ最後に人間とあったのもそれ位ですからなあ・・・

この梅干がまた泣かせる!

お代わりをいただけますかな?」

話しながらあっというまに白米の飯を一杯平らげるイワシタ。

そばにいたミオがご飯をよそう。

「いやあ!味い!本當にうまい!

まったく本當に副殿も人で羨ましい!

ウチのポンコツロボットとは比較にもなりませんなあ・・・

やはり飯は人によそってもらった方がうまい!」

豪快に食べるイワシタに目を見合わせてクスッと笑う私とミオ。

「それにしても梅干や海苔はともかく、この干や卵は一どうしたのですか?」

確かにイワシタの疑問はもっともで、他のはともかく、生鮮食品である魚や卵を宇宙の真ん中で、どうやって手したのかは誰でも疑問に思うことだった。

「この探査船には小型ながら効率の良い養用の水槽や養鶏場がありましてね。

魚や卵はそこで取れたです。

納豆も船の水耕栽培で長した大豆から數日前に作ったですよ」

「なるほど!

そんな施設や設備までが整っているとは、本當にこの船は素晴らしい船ですなあ」

私の説明にイワシタが改めて心する。

「それでは今までの経緯をお話していただけますか?」

食事を終わった後の日本茶を前にして私が話を切り出す。

それに対して食事が終わり、満足そうなイワシタが恥ずかしそうに話し出す。

「いやあ、話と言っても何ということはないですよ。

私は両親をい頃に亡くしましてね・・・

祖父に育てられたのですが、この祖父が変わり者の探検好きな學者でね。

私もそのを継いだのでしょうなあ・・・高校を卒業してから祖父にならって探検家になって、一緒に宇宙を探検していたのですが、その祖父も10年程前になくなってからは一人で宇宙を放浪していましてね。

遭難したという訳ですよ」

「それにしても隨分と地球文明圏から離れています。

わざわざこの星域に來た理由があると思いますが?」

「おっしゃる通り理由があります、その理由をお話しする訳にはいきませんが、それが祖父の志でもあり、私の意志でもあります」

「なるほど、こちらとしても個人的な理由は詮索しません。

しかしこれからどうするおつもりですか?」

私の質問にイワシタがその意味を理解しかねたじで逆に問いかける。

「というと?」

「現在あなたの船の故障箇所や破損部分はほとんどが応急修理を終わっております」

「そうですか!それはありがとうございます!」

「しかしウチの技師長が言うには、あのエンジンはかなり老朽化が進んでいるそうです」

「それはわかっております」

「修理は不可能ではないですが、またいつ事故を起こすかわからないそうです」

「そうですか・・・」

その私の言葉にため息をつくように答えるイワシタ。

「仮にこの先あなたが探検を続けるにしても、あの船では困難、いえ、はっきり言えば不可能だと斷言できます」

その私の言葉にイワシタは答えない。

「そこで提案なのですが、こちらで探査母艦から曳航船を呼びますから、どこかの星か、基地に行ってドックりをされたらいかがですか?」

本當はスクラップにしては?と言いたいのを何とか我慢して私が提案する。

「・・・いや、ご好意はありがたいですが、もしエンジンを修理していただけるなら、そうしていただいて、このまま出発したいと思います」

「何故ですか?他はともかく、あのエンジンはもう恒星間航行には耐えられませんよ?」

信じられないといった調子で技師長が問う。

「それも承知しております」

妙に殊勝なイワシタに私が説得を試みる。

「イワシタさん・・・

実は他の機械も修理とは言ってもほとんど中を換裝して、外見こそ以前のままですが、中はほぼ新品です。

食料や水と違って機械類は無料でさしあげると言うわけにもいかないので、仕方なくそうなった訳ですが・・・」

銀河連邦の宇宙船は規定により、宇宙で遭難者を発見した場合、その救助や航行安全のために多資の譲渡や修理を許されていた。

そしてその裁量は、その場の最高指揮に任されているので、今回私は最大限にそれを融通した。

見つけた場所が、地球基準で恐ろしく辺境だったせいも大きい。

「ありがとうございます」

「しかしエンジンだけはそうはいかないんですよ。

これだけはここまで老朽化してしまうと、完全に換するしか方法がありません。

ですが本船は銀河連邦の船という立場上、遭難船に対して多の機械の修理や食料の供與は出來ても、一個人であるあなたにエンジンを丸ごと差し上げるという訳にはいかないのですよ」

私の説明に一々うなずきながらイワシタが禮を述べる。

「お話はわかります。

修理していただけるだけでも私には大変ありがたい事ですから無理はなさらないでください」

「しかし當方としても必ずこの後で遭難するとわかっている船を修理だけして、後は無視するという訳にもいかないのです。

出來れば理由を教えていただけませんか?」

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