《星の見守り人》012 大改裝
2週間後
イワシタ氏が技師長と主計長、ハルナ三曹とともに大改裝を完了した自分の船へと、小型連絡艇で向かっていた。
「これは凄い・・・新品同様、いや、本當にそれ以上じゃありませんか?」
以前と形狀こそ同じだが、新品同様にピカピカの自分の船を見たイワシタが驚く。
技師長が説明をする。
「2週間時間がありましたからね。
船長代理が、良い機會なので本船の技力でどこまで改造可能か試してみようと言われて、技科と機関科を総員して、時間が許す限り改裝しました。
それに余程興味を持たれたのか、船長代理自ら改裝の指揮を執られましたよ。
だらけだった裝甲も全て新型の張力鋼で張りなおして、綺麗にしておきました」
「そこまでしていただいたとは・・・」
「いえ、こちらとしてもこのような機會は珍しいので、こう言っては失禮かも知れませんが、ウチの技系隊員のいい経験になりましたわ。
詳細な記録も取らしていただいたので、今後こういった舊式船の修理やリファインの際の良い前例となるでしょう」
「なるほど、お役に立てたのならこちらも問題はないですよ」
イワシタの言葉に技師長がうなずきながら説明を続ける。
「エンジン自は航行能よりも、長期間壊れにくいをとの船長代理からの指示でしたので、最新式の自メンテナンス機能がある連邦の制式エンジンを取り付けました。
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本來はもうし小型の20メートル級宇宙船用のエンジンですが、この船でも十分使えます。
カバーする範囲と質量が本來のより大きいので、速度などはカタログ通りには出ませんが、それでもこの船の以前のエンジンから比べれば、はるかに航行速度は上がっています。
エンジンが新型の対消滅反応爐によるエンジンなので、以前の特定の銅や鉄のような金屬でないと燃料にならないタイプと違い、燃料の心配も不要です。
極端な話、紙くずでもプラスティックでも何でも燃料になります。
本來でしたら空間エネルギー吸収裝置のタイプを搭載できれば理想的だったのですが、さすがにアレはこの大きさに搭載するのは無理でした。
アレさえ搭載できれば燃料の心配は全く無かったのですがね」
「いえ、これで十分ですよ」
空間エネルギー吸収裝置とは文字通り、宇宙空間そのからエネルギーを得る裝置だった。
しかしこの裝置はかなり大型のために150mを超える大きさが無ければ、搭載するには無理があった。
「そして先ほども言ったように、このエンジンは自メンテナンス、自ら點検・補修作業を完全自で行うタイプですので、これでなくともエンジンに関して言えば最低でも50年は持つ筈です」
「それは素晴らしい」
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長年エンジントラブルには悩まされていただけあって、イワシタの喜びはひとしおだった。
そうこう話しているうちに、エアロックに接舷し、一行が縦室にはいると、技師長が再び説明を始める。
「エンジンの新型化に伴い、多縦系統が変わりました。
コンピュータに説明をれておきましたから、後でゆっくりと説明を見てください」
「はい」
「生命維持裝置、船室、食堂、醫療裝置も可能な限り新型にしておきました。
要は見た目は以前と同じですが、実際には新品同様です。
簡単に言えばクラシックカーに最新式の機械を搭載したようなじですね。
実際、この宇宙船で元のままの部分は竜骨に相當する桁材の部分と一部の裝品だけです。
その過程を全て映像記録で撮ってあります。
正直、これほど舊式の宇宙船を、これほど最新式に換裝した例はないので、この記録は今後の宇宙船工學の良い資料となるでしょう」
「何とまあ…」
自分の宇宙船部を見て、目を白黒させて驚くイワシタに、技師長のマリューが説明を終わると、主計長のフローラが説明を引き継ぐ。
「主計長のフローラです。
あとは補給資、燃料と醫薬品、それ以外は主に食料ですが、簡易調理食を2年分と加水宇宙食を3年分、それと非常食も3年分、さらに念のために急用食料プラントを2基、ご用意しました」
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急用食料プラントというのはプランクトンによる食糧生産裝置で、本來必ず宇宙船には搭載されているだったが、イワシタの宇宙船のは古すぎて役に立たなかったので、最新型の機械を新調したのだった。
これと栄養剤さえあれば、最悪でも今回のような栄養失調にはならないはずだ。
「それはありがたい」
「それと・・・船長代理のご命令で・・・」
「まだ何か?」
「お米を300キロばかり積み込みました」
「あっはっは!それはそれは・・・」
主計長の報告に思わず笑い出すイワシタ。
自分が米が大好なのを知って、如月がサービスしてくれたのだと思うと、思わず嬉しくて笑いがこみ上げてくる。
「それに付隨して海苔と梅干と塩、砂糖、醤油等の調味料類もいくらか、それと気にられた様子でしたので、本船の調理長特製のふりかけも3キロほど積み込みました。
後は醫薬品と炊飯、調理道、電裝系の修理部品などですね」
「何から何まで行き屆いた配慮でありがたいです」
「それとエンジンと並んで、今回これが一番の改造點なのですが・・・」
「まだ、何か?」
これ以上、一何を改造したのだろうと不思議に思うイワシタに、フローラが驚く説明を始める。
「はい、エンジンが小型になった分、機関室に余裕が出來ましたので、その余った部分を倉庫と、小さいながらも植の水耕栽培場にしておきました」
「え?水耕栽培場ですか?」
「はい、イワシタさんはうちの水耕植プラントも見學されましたね?
規模は小さいですが、基本的にそれと同じです。
機関室の上にある程度の空間の余裕が出來ましたから、全部で約90平米の水耕栽培面積が確保できました。
現在の水耕栽培技でしたらそのの半分、45平米ほどで年間2.2石ほどの米が収穫出來ますからイワシタさん一人なら食料の補給は何とかこの宇宙船で自給可能という事です」
「本當ですか?」
エンジンと並んで食料には散々悩まされていたイワシタだけに、この事は信じられないような朗報だった。
今までは食料が無くなれば文明社會まで戻り、金を払って買い求め、再び元の位置まで戻らなければならなかったのだ。
そのために大幅に時間と財産が食いつぶされて、もはやその事によりイワシタは探検それ自が不能にならざるを得ない狀況なほどだった。
それがこの宇宙船の中で賄えるというのは、イワシタに取っては魔法のようにしか思えない事だった。
「ええ、それに計算上、栽培面積に々余裕がありましたから、殘りの水耕栽培地に他の植、レタスや大豆を植えれば、以前より食生活はかなり改善されるはずですよ。
もちろん、そのための種や籾に濃料、各種小型農作業機械も倉庫には積んであります。
それに生命維持裝置の橫に、殘飯や尿を利用した化學料合裝置も併設しましたから、搭載した濃料を全て使い果たした後でも、理論上はずっと水耕栽培は可能です」
「おお~素晴らしい!そんな事が本當に?信じられないほどだ!」
私の探査船に滯在している間、イワシタが大きな興味を示したの一つが、水耕植栽培場だった。
水耕栽培工場自は20世紀からあったし、イワシタの宇宙船が作られた頃にも大型宇宙船や宇宙基地などには設置されていたが、一般の宇宙船に設置されるのは、まだごく稀な事だった。
それが最新鋭の宇宙船では、その船で新鮮な農作が作れる事を知って、大いに興味が湧いたイワシタだったが、もちろん自分の小さな宇宙船にはそのような設備を整える事は不可能だと考えていた。
そんなイワシタに技師長が説明する。
「ええ、本來ならば、これはかなり無茶な事で、私もこのような小さな宇宙船に水耕栽培所を作る前例を聞いた事はありませんでした。
正直、技的に可能かどうかもわからなかったのですが、調べてみた所、數ないですが、似たような前例がありましたので、それを參考に作ってみました。
うちの船長代理があなたの目的と窮狀を正確に理解して、今後、あなたが最も困るのはエンジンとその燃料、そして食料の補給だろうと考えました。
経済的な問題もさる事ながら、それをあちこちに寄港して補給する時間がイワシタさんには勿無いだろうという事で、可能な限り、この船で自給自足を実現しようと船長代理が考えた結果です。
もちろん栄養のバランスも考えてです。
経済と時間、あなたを最も悩ましているこの部分を解決して、本來の探検だけに集中していただきたいと、うちの船長代理が慮した結果だと思ってください。」
「何とありがたい!
そこまで考えて下さるとは言葉もありません!」
「はい、これで、この船は小規模ながら自給自足は可能です。
なりは小さいですが、機能的にはイワシタさんや、うちの船長代理のご期待に応える事は十分に出來ると思います。
もう栄養失調にはさせませんよ?
もちろん、調味料や他の補給資は何年かに一度はどこかに行って購しなければならないでしょうが、食料事に関してはかなり改善されたはずです」
その説明にイワシタは全で激を示すように答える。
「改善なんてではありません!
まるで天から新しい船をいただいたも同然のようです。
何から何までありがたいです!
しかしこんなに援助をしていただいて大丈夫なのですか?
あまりにも好待遇をしていただいて返って心配になってきた位です」
「ええ、確かに通常ではありえないですが、今回はうちの船長代理が々と都合をつけていたようです」
「なぜそこまで私に?」
つい先日會ったばかりの漂流者で、ロクに話もしていない自分の窮狀を、どうしてここまで正確に理解できたのか?
そしてその結果、イワシタが現在、何に困って、何が必要かを的確に、それこそ本人以上に分析し、それを何故惜しみなく援助してくれるのかをイワシタは本気で不思議がった。
そのイワシタの質問にマリューは肩をすくめるように答える。
「さあ、私にも理由はよくわかりませんが、ずいぶんとあなたに親近を持たれていたようですよ?
もし、自分があなたの立場だったらどうしてしいかと考えて、今回の結論に到ったようです」
「なるほど。
是非、直接船長代理にお禮を言いたいのですが、今どちらに?」
「船長代理は現在、本船の探査室にいらっしゃるはずです」
自分の宇宙船の見學と説明を終えて、コランダム777に戻ると、イワシタ氏は私を探して禮に來た。
「私船長代理、これほど々していただいてどう禮を言っていいかわからないほどです。
本當にありがとうございました。
私は何もお禮になる事が出來ませんが、心より謝しています」
「いえ、こちらもたまたま十分な時間と資材、それにこう言っては失禮かもしれませんが、私のあなたに対する個人的な興味があったからできた事です。
しかし確かに今後、他の連邦探査船に遭遇したとしても、今回のような援助はけられないでしょう。
あくまで今回は特別だと思ってください」
當然の事ながら普通の狀態で一個人探検家が、これほど好待遇と援助をける事はありえなかった。
たまたま船長代理たる私が舊式船をどこまで最新式にする事が可能かという問題を技師長と話していて興味を深くそそられた事と、個人探検家なるイワシタ氏に好意を持った結果だった。
「それはもちろん承知しております。
それにここまで改良、いえ、大改造していただいたら、もうそんな必要はない位だと考えています。
実際あの宇宙船にこれ以上の機能を持たせるなど不可能ではないかと思う位です・・・しかし実は今回厚かましいついでに、もう一つだけお願いがあるのですが・・・」
「なんでしょう?」
一見、わからない振りをしながらも、実は私はイワシタの答えをほぼ予想していた。
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